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少しずつ絡むそれぞれの恋模様2
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偶然ライの告白を聞いていたお兄様は、「ゆっくり考えていいよ。ティア、両手に花状態だから」と言ってくれたが、私はライにしか告白されてない。
両手というのは、お兄様の勘違いだと思う。
ライのことにも向き合わなければならないし、エタセルの国起こしについても考えなければならない。
なんだか、考えることがいっぱいだ。
「ティアが出した答えをお兄様は受け入れると思いますわ」
メディは察したのか、そう言ってくれた。
「そう言えば、話が変わりますけど、神殿裏の調査はいつからするんですか? ティア、申請を出していましたよね。セス様にティアに聞いて欲しいって言われていたんですよ」
「実はまだ迷っているの。禁足地なのがネックで。一応、住民の説明会も終わって、みんなも賛成してくれたんだけどね。神殿の祭事などで使用していたと思うから、歴史学者や宗教学者にも意見を聞こうかなって。開発に着手して貴重な歴史遺産に手を加えてしまったら取返しつかなくなるし。あっ、そうだ。メディ、『温泉の成分分析』って出来る?」
「はい。ただ、器具などが必要ですが。ファルマにならありますよ」
「セス様がしょっぱいって言っていたでしょ?」
「えぇ」
「温泉としても使うけど、『もう一つ使い道』を考えているの」
「もう一つのですか?」
「うん。使えるかは温泉の成分次第なんだ」
「ティアは凄いですね。エタセルのために色々考えてどんどん行動してくれている。ティアのそういう強さにあの方も……」
メディは言葉を途中でやめると、私に向かって曖昧に微笑んだ。
その時だった。玄関の扉をノックする音が届いたのは。
「おーい。いるか、二人とも」
「コルタ?」
私は立ち上がると玄関へと向かった。
扉を開ければ、声の主であるコルタが立っている。
「ちょっと良いか? ファルマ行きの件で話があるんだ」
「どうぞ。今、メディの作ってくれたケーキでお茶しているの。コルタもどう?」
「メディが作ったのならば、大丈夫だな」
「ちょっと待って。私も作ろうと思えば作れるよ」
「食えるものを作れよ」
今度作ってお兄様に味見をして貰おう。
「まぁ、とにかく中へどうぞ?」
彼を中へと招けば、メディが立ち上がって「こんにちは」とコルタに挨拶をするとコルタが軽く手を上げて「おう」と返事をした。
メディはコルタのケーキを準備すると言い残し、台所へと向かって行く。
「あのさ、聞きたいことがあるんだ。普通パーティーの参加って招待客だけだよな?」
コルタが小声で訊ねてきたので、私は頷く。
「警備の関係上そうだよ」
「だよなぁ……あいつ、参加するって言っていたか?」
コルタはメディが消えた台所をちらちら見て気にしながら聞いてきたため、私は彼の視線を追う。
もしかして、メディに聞かれたくないから小声なのだろうか。
「参加するって言っていたわ。レイにエスコート役を頼んでみるって」
「……レイか。そうだよな」
コルタは自嘲気味に笑うとゆっくりと息を吐き出しす。
あまりにも珍しい彼の様子に対して私が首を傾げれば、ちょうどメディが戻って来てしまったため、理由を彼に尋ねることは出来なかった。
両手というのは、お兄様の勘違いだと思う。
ライのことにも向き合わなければならないし、エタセルの国起こしについても考えなければならない。
なんだか、考えることがいっぱいだ。
「ティアが出した答えをお兄様は受け入れると思いますわ」
メディは察したのか、そう言ってくれた。
「そう言えば、話が変わりますけど、神殿裏の調査はいつからするんですか? ティア、申請を出していましたよね。セス様にティアに聞いて欲しいって言われていたんですよ」
「実はまだ迷っているの。禁足地なのがネックで。一応、住民の説明会も終わって、みんなも賛成してくれたんだけどね。神殿の祭事などで使用していたと思うから、歴史学者や宗教学者にも意見を聞こうかなって。開発に着手して貴重な歴史遺産に手を加えてしまったら取返しつかなくなるし。あっ、そうだ。メディ、『温泉の成分分析』って出来る?」
「はい。ただ、器具などが必要ですが。ファルマにならありますよ」
「セス様がしょっぱいって言っていたでしょ?」
「えぇ」
「温泉としても使うけど、『もう一つ使い道』を考えているの」
「もう一つのですか?」
「うん。使えるかは温泉の成分次第なんだ」
「ティアは凄いですね。エタセルのために色々考えてどんどん行動してくれている。ティアのそういう強さにあの方も……」
メディは言葉を途中でやめると、私に向かって曖昧に微笑んだ。
その時だった。玄関の扉をノックする音が届いたのは。
「おーい。いるか、二人とも」
「コルタ?」
私は立ち上がると玄関へと向かった。
扉を開ければ、声の主であるコルタが立っている。
「ちょっと良いか? ファルマ行きの件で話があるんだ」
「どうぞ。今、メディの作ってくれたケーキでお茶しているの。コルタもどう?」
「メディが作ったのならば、大丈夫だな」
「ちょっと待って。私も作ろうと思えば作れるよ」
「食えるものを作れよ」
今度作ってお兄様に味見をして貰おう。
「まぁ、とにかく中へどうぞ?」
彼を中へと招けば、メディが立ち上がって「こんにちは」とコルタに挨拶をするとコルタが軽く手を上げて「おう」と返事をした。
メディはコルタのケーキを準備すると言い残し、台所へと向かって行く。
「あのさ、聞きたいことがあるんだ。普通パーティーの参加って招待客だけだよな?」
コルタが小声で訊ねてきたので、私は頷く。
「警備の関係上そうだよ」
「だよなぁ……あいつ、参加するって言っていたか?」
コルタはメディが消えた台所をちらちら見て気にしながら聞いてきたため、私は彼の視線を追う。
もしかして、メディに聞かれたくないから小声なのだろうか。
「参加するって言っていたわ。レイにエスコート役を頼んでみるって」
「……レイか。そうだよな」
コルタは自嘲気味に笑うとゆっくりと息を吐き出しす。
あまりにも珍しい彼の様子に対して私が首を傾げれば、ちょうどメディが戻って来てしまったため、理由を彼に尋ねることは出来なかった。
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