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四角形2(ライナス視点)
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ティアのワクチンのお蔭で患者の容態は安定しているので、俺は今のうちに症状などを書類へと記載している。
不幸中の幸いか、ラシットに噛まれたのは二人。
他の動物に噛まれたのが三人だった。
ティアが持っていたワクチンは三本だったため、ラシットに噛まれた子達は助かることが出来た。
エルドがファルマに取りに向かってくれているが、正直間に合わなかっただろう。
――メディはエタセルに来て良い方向に変わったな。
俺は奥の方で薬草を煎じているメディへと顔を向けていると、なんだか外が騒がしいことに気づく。
「なんだ?」
「何かあったのかもしれませんね」
俺の傍にいた村の医者も外を気にしながら口にした。
「この場を頼んで良いですか? ちょっと様子を見てきます」
俺はそう言い残すと、外へと出るために扉へと足を進めれば、「お兄様」という妹の声が背に届き立ち止まり振り返った。
すると、そこには医療セットを持ったメディの姿が。
「私もご一緒に参ります」
「わかった。行こう」
扉を開けて二人で外へと出れば、ちょうどコルタと遭遇した。
彼は俺達の姿を瞳に映すと、ほっと安堵の息を漏らす。
「……良かった。呼びに行こうと思っていたんだよ」
「何かあったのか?」
「リストが気絶しちまったから、見て欲しいんだ。たぶん、病気とかじゃなくてティアの事が原因だと思う」
「ティア?」
「そうだ。あいつラシット捕まえてきたんだけど、噛まれた上に引っ掻かれたんだよ」
「ティアが!?」
免疫を持っているから大丈夫と言っても無茶しすぎだ。
この場にいる人間で免疫を持っているのは、ティアしかいないから彼女が動く理由を理解出来るし、俺もティアの立場ならばそうしただろう。
「本人は一度噛まれているし免疫あるから大丈夫って言っているんだけどさ。一応見てくれないか」
「わかった」
俺は頷き外へと出れば、ちょうどリストを担架に運ぶ所だった。
心配そうにリストを見守っている村人の周りには、ティアの姿がなかったため、視線を動かしてティアを探せば左側に彼女を発見。
「ティア」
俺は彼女を視線で捉えて唇を噛みしめる。
ティアがレイガルド様に抱きしめられていたから。
自分の大切なものが傷つけられたような沈痛な面持ちをしている彼の様子から、誰が見てもティアのことが好きだと容易く理解出来てしまう。
「……レイ」
消え入りそうな声が聞こえ、俺は隣へと顔を向ければ、瞳を滲ませているメディの姿が。
「メディ、お前まさか」
俺の心から湧き出た質問をコルタが代弁してくれれば、メディは手で瞳をこする。
まさか、メディがレイガルド様のことが好きだったとは。
「お兄様。ご指示を」
「頭を打っているかもしれないし、病的なことで気絶したのかもしれないから、俺はリストを見る。メディはティアの方を。傷口を消毒してくれ。あと、安静にさせていて。ティア、絶対に探しに行くとか言い出すから。免疫持っていても他の感染症も心配だ」
「はい」
「メディ、大丈夫か?」
メディをティアとレイガルド様の元へ向かわせるのは酷なことだろう。
俺だって今すぐティアの元へと駆け寄り二人を引き離したいが、優先順位としてリストの方が高い。
ティアのことで気絶したのか、それとも病的なことなのか。
「私も薬師です。リスト様の件が先決だと理解していますので」
「俺も一緒に行く」
コルタがそうメディに告げてくれたため、俺は少し気が楽になった。
彼はメディがレイガルド様のことを好きだと知っているので、フォローしてくれるかもしれない。
「メディのことを頼む。俺も、リストを見たらすぐに向かうから」
コルタは頷くとメディと共にティア達の元へと向かった。
不幸中の幸いか、ラシットに噛まれたのは二人。
他の動物に噛まれたのが三人だった。
ティアが持っていたワクチンは三本だったため、ラシットに噛まれた子達は助かることが出来た。
エルドがファルマに取りに向かってくれているが、正直間に合わなかっただろう。
――メディはエタセルに来て良い方向に変わったな。
俺は奥の方で薬草を煎じているメディへと顔を向けていると、なんだか外が騒がしいことに気づく。
「なんだ?」
「何かあったのかもしれませんね」
俺の傍にいた村の医者も外を気にしながら口にした。
「この場を頼んで良いですか? ちょっと様子を見てきます」
俺はそう言い残すと、外へと出るために扉へと足を進めれば、「お兄様」という妹の声が背に届き立ち止まり振り返った。
すると、そこには医療セットを持ったメディの姿が。
「私もご一緒に参ります」
「わかった。行こう」
扉を開けて二人で外へと出れば、ちょうどコルタと遭遇した。
彼は俺達の姿を瞳に映すと、ほっと安堵の息を漏らす。
「……良かった。呼びに行こうと思っていたんだよ」
「何かあったのか?」
「リストが気絶しちまったから、見て欲しいんだ。たぶん、病気とかじゃなくてティアの事が原因だと思う」
「ティア?」
「そうだ。あいつラシット捕まえてきたんだけど、噛まれた上に引っ掻かれたんだよ」
「ティアが!?」
免疫を持っているから大丈夫と言っても無茶しすぎだ。
この場にいる人間で免疫を持っているのは、ティアしかいないから彼女が動く理由を理解出来るし、俺もティアの立場ならばそうしただろう。
「本人は一度噛まれているし免疫あるから大丈夫って言っているんだけどさ。一応見てくれないか」
「わかった」
俺は頷き外へと出れば、ちょうどリストを担架に運ぶ所だった。
心配そうにリストを見守っている村人の周りには、ティアの姿がなかったため、視線を動かしてティアを探せば左側に彼女を発見。
「ティア」
俺は彼女を視線で捉えて唇を噛みしめる。
ティアがレイガルド様に抱きしめられていたから。
自分の大切なものが傷つけられたような沈痛な面持ちをしている彼の様子から、誰が見てもティアのことが好きだと容易く理解出来てしまう。
「……レイ」
消え入りそうな声が聞こえ、俺は隣へと顔を向ければ、瞳を滲ませているメディの姿が。
「メディ、お前まさか」
俺の心から湧き出た質問をコルタが代弁してくれれば、メディは手で瞳をこする。
まさか、メディがレイガルド様のことが好きだったとは。
「お兄様。ご指示を」
「頭を打っているかもしれないし、病的なことで気絶したのかもしれないから、俺はリストを見る。メディはティアの方を。傷口を消毒してくれ。あと、安静にさせていて。ティア、絶対に探しに行くとか言い出すから。免疫持っていても他の感染症も心配だ」
「はい」
「メディ、大丈夫か?」
メディをティアとレイガルド様の元へ向かわせるのは酷なことだろう。
俺だって今すぐティアの元へと駆け寄り二人を引き離したいが、優先順位としてリストの方が高い。
ティアのことで気絶したのか、それとも病的なことなのか。
「私も薬師です。リスト様の件が先決だと理解していますので」
「俺も一緒に行く」
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彼はメディがレイガルド様のことを好きだと知っているので、フォローしてくれるかもしれない。
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