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四角形1(ティア視点)
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「……ラシット」
完全に目があっている動物は、まぎれもなくお兄様がトラウマを持っているラシット。
ウサギのように長い耳を持つ毛の長い動物は、円らな瞳でこちらを見ている。
外見は可愛らしいのだけれども、ラシットの特徴は口の中と指先にあった。
ゆっくりと近づけばラシットが威嚇するように口を開き、蝙蝠のような尖った牙をちらりと見せつける。
しかもラシットは獰猛な性格。その上、あのふわふわの毛の中に隠れるように鋭い爪もあるのだ。
「わー、かわいい」と思って近づき抱っこでもしようものならば、躊躇いなく噛んだり引っ掻いたりする。
これは小さい頃に学習済み。
愛らしい見た目に惑わされると怪我をしてしまう。
「ケージ、ケージ!」
私は手にしていたケージを地面に置くと、ケージの扉を開ける。
そして、気合いを入れるとラシットの方へと体を向けた。
どうか捕まりますようにと強く願いつつ、私はゆっくりと足を進めてラシットへと近づいていき、威嚇しまくっているラシットを捕まえる。
やった! と安堵する間も与えてくれず、ラシットは大暴れ。
肢体を大きく動かして私の手から逃れようとしていた。
「ちょっと、待って。保護するだけだってば」
小さいのにラシットは力が強い。せっかく捕まえたのに逃げられるとマズいと、抱きかかえるようにすれば、首筋に激痛が走ってしまう。
あまりの痛みで視界が滲んで思い出す。あぁ、こんな痛さだったなぁと。
噛まれた事により、子供の頃に負傷した思い出が鮮明によみがえってきた。
ラシットにとって私の存在は自分を捕まえようとしている敵なので、容赦なく攻撃を加えていく。
散々噛まれたり引っかかれながらケージへの中へと保護し、私はゆっくりと一息つくために地べたに座り込んだ。
「お兄様、絶対に怒るよなぁ……」
でも、エタセルでは、免疫を持っているのは私かお母様以外いない。
セス様も大丈夫って言っていたけど、免疫持っているか不明だし。
ラシットは捕獲したけど、そもそも逃げ出したのが一匹のみなのかわからない。
新しいケージも用意しなきゃならないし、とにかく今は一度戻るのが賢明だろう。
私は立ち上がりケージを持つとなるべくラシットに衝撃がかからないようにゆっくりと歩き始めた。
地がうっすらと固まって来たかなと思い始めた頃、私は集会所に到着。
建物の前では集まって話をしている人から、慌ただしく駆け回っている人などの姿が窺えた。
みんな忙しそうで私には気づかない。
お兄様に見つからないようにとなるべく気配を消していたが、「ティア様、その怪我どうなさったんですかっ!?」と一人の騎士に見つかり叫ばれてしまう。
それを合図の様に、みんな一斉に私の方へ顔を向けてしまった。
無慈悲にもお兄様の姿も確認できる。
「ティア、ティア、ティア」
お兄様は何度も私の名を呼びながらこちらに来ると、私が手にしているケージを凝視。
そして、私の方を見て首や手の傷を見ると、体をぐらぐらと揺らし出したかと思えば、糸の切れた人形のように倒れ込んでしまう。
お兄様の名を呼びながら慌てた周りの人々が咄嗟に支えたため、頭を打つようなことはなかった。
「お兄様っ!」
「リスト様!」
支えてくれた人達のお蔭でお兄様は頭を打たずに済んだけれども、気絶しているようで長い睫毛が伏せられている。
「ティア、噛まれたのか?」
ライにお兄様を見て貰うために建物の方へと体を向ければ、声をかけられてしまったので弾かれたように顔を向ければレイの姿が。
顔を青ざめ、小刻みに大きな体が震えている。
「子供の頃に一度噛まれているので大丈夫です。それより、お兄様――」
お兄様の方が心配ですという私の言葉は喉から音となることはなかった。
それは何の前触れもなく、レイに抱きしめられたせいだ。
「危ないことをしないでくれ。俺の心臓が持たない」
今にも泣き出しそうなくらいに弱々しい声音が降り注ぐように上から聞こえてくる。
「ティアに何かあったら、俺はどうすればいいんだ。もっと自分のことを大事にしてくれ」
懇願に近い台詞を囁かれながら、私は苦しいくらいにレイに強く抱きしめられてしまう。
完全に目があっている動物は、まぎれもなくお兄様がトラウマを持っているラシット。
ウサギのように長い耳を持つ毛の長い動物は、円らな瞳でこちらを見ている。
外見は可愛らしいのだけれども、ラシットの特徴は口の中と指先にあった。
ゆっくりと近づけばラシットが威嚇するように口を開き、蝙蝠のような尖った牙をちらりと見せつける。
しかもラシットは獰猛な性格。その上、あのふわふわの毛の中に隠れるように鋭い爪もあるのだ。
「わー、かわいい」と思って近づき抱っこでもしようものならば、躊躇いなく噛んだり引っ掻いたりする。
これは小さい頃に学習済み。
愛らしい見た目に惑わされると怪我をしてしまう。
「ケージ、ケージ!」
私は手にしていたケージを地面に置くと、ケージの扉を開ける。
そして、気合いを入れるとラシットの方へと体を向けた。
どうか捕まりますようにと強く願いつつ、私はゆっくりと足を進めてラシットへと近づいていき、威嚇しまくっているラシットを捕まえる。
やった! と安堵する間も与えてくれず、ラシットは大暴れ。
肢体を大きく動かして私の手から逃れようとしていた。
「ちょっと、待って。保護するだけだってば」
小さいのにラシットは力が強い。せっかく捕まえたのに逃げられるとマズいと、抱きかかえるようにすれば、首筋に激痛が走ってしまう。
あまりの痛みで視界が滲んで思い出す。あぁ、こんな痛さだったなぁと。
噛まれた事により、子供の頃に負傷した思い出が鮮明によみがえってきた。
ラシットにとって私の存在は自分を捕まえようとしている敵なので、容赦なく攻撃を加えていく。
散々噛まれたり引っかかれながらケージへの中へと保護し、私はゆっくりと一息つくために地べたに座り込んだ。
「お兄様、絶対に怒るよなぁ……」
でも、エタセルでは、免疫を持っているのは私かお母様以外いない。
セス様も大丈夫って言っていたけど、免疫持っているか不明だし。
ラシットは捕獲したけど、そもそも逃げ出したのが一匹のみなのかわからない。
新しいケージも用意しなきゃならないし、とにかく今は一度戻るのが賢明だろう。
私は立ち上がりケージを持つとなるべくラシットに衝撃がかからないようにゆっくりと歩き始めた。
地がうっすらと固まって来たかなと思い始めた頃、私は集会所に到着。
建物の前では集まって話をしている人から、慌ただしく駆け回っている人などの姿が窺えた。
みんな忙しそうで私には気づかない。
お兄様に見つからないようにとなるべく気配を消していたが、「ティア様、その怪我どうなさったんですかっ!?」と一人の騎士に見つかり叫ばれてしまう。
それを合図の様に、みんな一斉に私の方へ顔を向けてしまった。
無慈悲にもお兄様の姿も確認できる。
「ティア、ティア、ティア」
お兄様は何度も私の名を呼びながらこちらに来ると、私が手にしているケージを凝視。
そして、私の方を見て首や手の傷を見ると、体をぐらぐらと揺らし出したかと思えば、糸の切れた人形のように倒れ込んでしまう。
お兄様の名を呼びながら慌てた周りの人々が咄嗟に支えたため、頭を打つようなことはなかった。
「お兄様っ!」
「リスト様!」
支えてくれた人達のお蔭でお兄様は頭を打たずに済んだけれども、気絶しているようで長い睫毛が伏せられている。
「ティア、噛まれたのか?」
ライにお兄様を見て貰うために建物の方へと体を向ければ、声をかけられてしまったので弾かれたように顔を向ければレイの姿が。
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「子供の頃に一度噛まれているので大丈夫です。それより、お兄様――」
お兄様の方が心配ですという私の言葉は喉から音となることはなかった。
それは何の前触れもなく、レイに抱きしめられたせいだ。
「危ないことをしないでくれ。俺の心臓が持たない」
今にも泣き出しそうなくらいに弱々しい声音が降り注ぐように上から聞こえてくる。
「ティアに何かあったら、俺はどうすればいいんだ。もっと自分のことを大事にしてくれ」
懇願に近い台詞を囁かれながら、私は苦しいくらいにレイに強く抱きしめられてしまう。
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