白と黒

更科灰音

文字の大きさ
上 下
58 / 73

第58話:吉野川の日常その2

しおりを挟む
みんなで朝食を食べてるときにお嬢様が突然聞いてきた。
「今週末は佳乃の学校は文化祭よね?入るのにはチケットとか必要?」
うちの学校は招待券が無いと文化祭には入れない。
もちろん家族枠としてお嬢様と山田の分は申請済みで、安藤の分も追加で申請した。

この通り準備出来ています。
お嬢様にチケットを渡す。
「あら?名前が印刷されてるのね?」
写真付きの身分証明書が必要です。
「呪われた名前が・・・」
山田は文句を言いますが、呪われてても学生証と同じ名前のチケットじゃないと無効です。

「それよりもメイドの学校だけズルい!黒音の学校の文化祭終わったのに!」
山田の学校は先月だったそうです。つまりお嬢様に出会う前。運命を呪いなさい。
「体育祭はどっちも間に合わなかったしね。間に合う行事だけでも参加したいのよ」

あ、そうだ。お嬢様、今度三者面談をしたいそうです。
お知らせの書類とかは特にないのですが、もともとも期間をうちの親がブッチしたので・・・
「ああ、なるほど。親が本来の三者面談をすっぽかしたのね?いつでもいいわよ?」
では、担任にその旨伝えておきます。
「おそらく足りない単位を補講とか課題とかでどうにか補う相談が必要だと思うのよ」
お嬢様も私の単位は足りない前提なんですね・・・

「黒音は授業参観がある。マスターに出席を希望する」
うちの学校には授業参観は無いね。
「授業参観はいつなの?」
山田が『授業参観のお知らせ』のプリントを持ってくる。
「なーに、平日なの?これじゃ普通の親御さんは出席出来ないんじゃない?」
授業参観は平日が普通では?そもそも土日には授業がないし。
「まあ、会社で会議とかなければどうにかなるし。それにしてももう少し早く見せなさいよ!」
山田の持ってきたプリントには明後日と書いてある。
こんなギリギリにプリントを渡すわけないから、隠してたな?
お嬢様が来てくれないと思ってたのかもしれないけど。
「マスターは忙しくて出席出来ないと思ってた・・・」
まさか1週間分の仕事を3日でやって残りをサボっていたなんて思いませんからね。
「しかも3日のうち1日は予備日なんだよ!えへん!」
今のはリーゼロッテでしょうか?やはりたまに出てきますね・・・

「会社には先輩に出席をお願いするイベントが何もないっす・・・」
安藤が落ち込んでいる。普通会社にはイベントはないと思う。
「でも、年末の忘年会とかは出るっすよね?」
忘年会。お酒とか飲むのかな?お嬢様はお酒を飲んで大丈夫なのだろうか?
もちろん年齢的にはとっくに20歳を超えてるから問題ないと思う。
でも、見た目がお子様だからなぁ・・・内臓の機能とかもお子様レベルなのでは?
アルコールの分解とか出来ないんじゃないかな?
「まあ、一応会社の行事だから出席するわよ?ビンゴ大会とかもあるし」
お嬢様、ビンゴ大会が楽しみなんですね?

そうそう、今日から本番までの期間は文化祭の準備で少し遅くなるかもしれません。
「まあ、仕方ないっすね・・・」
夕飯が遅くなっちゃうのはまずいよね?どうしようかな・・・
「夕飯のこと気にしてるなら大丈夫よ?」
いいえ、夕飯だけでなく朝や昼もなんですが・・・
「最悪1階がスーパーだからどうにでもなるわよ。1週間だけでしょ?」
なんと言うか、お仕事をせずにお給金をいただくのが心苦しいと言うか・・・
「メイドちゃんはまじめっすね。先輩なんかサボりまくりっすよ?」
そう言えばそうでしたね?
気にしないことにいたします。

「じゃあ、そろそろ出かける時間よ?」
お嬢様にうながされ山田と一緒に家を出ます。安藤の会社はもう少し遅い時間です。
「じゃあ、マスター、行ってくる」
行ってきます、お嬢様。

「メイドは今日も階段?」
そうですね。階段で降りればいつもの電車に余裕で間に合いますね。
「黒音はエレベーター」
朝のエレベーターは信用出来ません。急ぐときは階段に限ります。
まあ、山田は電車ではなくバスですからね。学校直通なのが少しうらやましいです。

いつも通りの時間にいつも通りの電車に乗って通学。
最近は授業中もまじめにノートを取ってるんだよね。
もっとも書き写すのが精いっぱいで自分なりに要点をまとめるとかは出来ない。
この間ちらっと見た山田のノートはわかりやすかったんだよね。
授業の内容とかは置いておいて勉強の仕方とかコツとかを聞こうかな?
山田は成績いいみたいだし。成績がいい人のやり方を真似するのもありだよね?
この際手段は選んでられないよ!

なんて思ってたらあっという間に放課後に。
「看板やメニューなんかはこっちでやるから、吉野川さんは料理の確認をお願い!」
どうやら私だけは料理選任みたい。他に3人補助が付いたけど何をどうしようか?
まずは出来ることの確認をしよう。
適材適所を心掛けないと厨房係が崩壊するからね。
お客が少なければ私一人でも回せないこともないけど、そのためには前々日ぐらいから仕込み作業が必要。
放課後だけじゃ足りなくなる。
しおりを挟む

処理中です...