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更科灰音

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第45話:ギルドの受付嬢

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「とりあえず、このメッセージを見てください」
安藤から問題のメッセージが転送されてきた。

リーゼロッテ:「たっけて」

うーん、あたしじゃない・・・
でも、リーゼロッテっぽい。
まさかとは思うけど、向こうの世界からの救助信号?
じゃあ、この身体は?リーゼロッテはここに居るんじゃないの?
もう、なんていうか嫌な予感しかしない。
あたし以外にもリーゼロッテが居る?複製されてる?
そうだ、そもそも自分の居る世界を守るためにあたしのところに来たんだ。
その時点で守るべき世界に自分が居ないはず。
どういうこと?やっぱりリーゼロッテは複数居るのか・・・

「安藤、今どこに居るの?これから会えない?」
とりあえずどういう経路で通信が来ているのか確認したい。
「それが今出かけてる最中で、服を買おうかと思ってEndlessDreamに向かっている・・・」
なんという偶然!
「今あたしもEndlessDreamに居るからそのままお店に来て!」
これで安藤と合流出来る。
詳しくは合流してからにしよう。今考えても意味がない。

「マスター、電話はお仕事だった?」
ああ、安藤からだったから仕事だと思ったのね?
「安藤がここに来るんだって、それと何か相談事があるみたい」
あとどれくらいでここにつくのか知らないけど、それまでは花子の服を見ていよう。

「先輩!あなたの安藤が駆け付けましたよ!」
いきなり安藤に抱き着かれた。
え?まだ10分くらいしか経ってないよね?空間転移してきた!?
「駅前から電話をかけてたんですよぅ。電車の中は電話出来ないじゃないですか・・・」
ああ、なるほど。確かに最寄りの駅からなら徒歩で10分ほどだったような?

「あら?もしかして黒音ちゃんの服を買いに来てたの?」
安藤が花子の周りをくるくる回って観察している。
「その色だとミロンに雰囲気が似てるわね」
今の花子はピンク色の髪の毛だ。
我ながらこのピンクのはいい出来な気がする。
これは買うことにしよう。あと花子が選んだ金色も。

「じゃあ、花子が選んだ金色のと、私が選んだピンクのを1着づつお願い」
ジャージのお姉さんにオーダーする。
「今日着て帰りますか?」
今日はこれからリーゼロッテの調査をしないといけなくなったから・・・
「家に送って。代金は先に払っておくから」
ジャージのお姉さんもニコニコだ。
「こちらは1着98000円ですが・・・」
あら?意外とお高いのね。佳乃のメイド服の倍じゃない。私の猫ワンピの3倍だ。
まあ、買ってあげるって約束したし。
ジャージのお姉さんにカードを渡す。
「いつも通り一括で?」
もちろん!

「そうそう、安藤も服を買いに来たのよね?」
ちなみに安藤の服装はユニクロで売ってるような感じの服だ。
「ギルドの受付嬢の服とか、冒険者風の服とか出来ないかと思って・・・」
え?
革鎧とか?さすがに甲冑とかはこの店じゃ無理だと思うよ?
「違いますよぅ、駆け出しのスカウトが着るみたいなやつですよぅ」
ああ、シャーリーがケンカを売られるために着てたようなやつだね。
もしかして安藤がコスプレするの?
「日常的にコスプレ状態な先輩に言われたくないっす」
ゴメン、何も言い返せない・・・

「安藤さん、受付嬢の服だけどこれでいいかしら?」
ジャージのお姉さんが服を持ってやってきた。
「ああ、美蘭さん」
めいらん?ジャージのお姉さんってそんな名前だったのか・・・
「メイド服ともウェイトレスの服とも違うのよね・・・」
美蘭さんから服を受け取った安藤が試着室から出てきた。
なるほど。
安藤の周りをぐるぐる回って確認。確かにそれっぽい。
「グレイスの着てた服がベースなんですよぅ」

グレイスはギルドをやめて私の専属メイドだったんだけど、それは知らないのかな?
「え?メイド?グレイスが先輩の?」
正確にはリーゼロッテのね。その時はさらに若返って14歳だったのよ?
そう言えば、メイド服以外にはセーラー服も着てたわね・・・
「メイド服にセーラー服・・・」
メイド服はともかく、セーラー服は安藤にはちょっと厳しいかな?

「なんで、そんなことに・・・」
ああ、開発が終わってからの話だから知らないか。
私だって最近になって、夢の中でその時のリーゼロッテの記憶とかが流れてきて知ったんだし。
「私がログインしてた時は受付嬢だったのに・・・やめられない設定だったはずなのに・・・」
これから確認してみればいいじゃない。
リーゼロッテから救助信号が来たんでしょ?
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