白と黒

更科灰音

文字の大きさ
上 下
40 / 73

第40話:車を注文する

しおりを挟む
店員を捕まえて質問攻めにする。
「まずはお飲み物を」
席に案内されて飲み物を勧められる。
あたしはコーヒーを、佳乃はミルクティー、花子はオレンジジュースを注文する。

「まずは安全装備について説明して」
店員さんが一通りの説明をする。
誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能などなど。
そこまで色々やってくれるならさっさと自動運転になってくれれば良いのに。
全方位カメラはすごく便利そうだ。
「ナビは付いているのでしょうか?」
佳乃はナビが気になるらしい。
残念ながらナビは標準では付いていないそうだ。しかし、逆に考えれば自分の好きなナビをつけることが出来る。
「スマホの充電は出来る?」
シガーソケットがあれば充電は出来ると思う。
「こちらはオプションでUSBポートを追加できます」
なんと、USBから直接充電できるのか。最近は便利だ。
暗くなったらライトをつけてくれるし、前の車が発進したら教えてくれるし、
どれも今の車には無い装備だ。
そして、おそらく男のままだったらこんな車は選ばなかっただろうし、
そもそも2台目の車を買う必要も無かった。人生分からないもんだ。

「車自体はこれでいいとして色はどんな色があるの?」
店員がパンフレットの色見本のページを開いて説明する。
緑、赤、白、ベージュ、ピンク。選択肢はそれほど多くはない。
あたしの名前的に白を選択するべきなのかな?
「どの色がいい?」
花子はピンクを指さす。佳乃はピンクを指さそうとしてあたしの顔を見る。
そして、白を指さした。明らかに空気を読んだ感じだ。
「お嬢様が運転するのですからやはり白でないと!」
花子もハッとして白を指さし直す。

「これの白を一台お願い。オプションはどんなのがあるの?」
店員が一つ一つ説明してくれる。それを都度いる・いらないで決めていく。
ナビとドライブレコーダーは必須。
ETCは要るかなぁ?高速に乗る予定は特にないんだけど。
悩んでいると佳乃が肩を突いた。口パクで何かを訴えている。
お・ん・え・ん?
ああ、温泉か。温泉に連れて行く約束をした。じゃあ、必要だ。
それとボディーのコーティング。これは新車時に頼まないと!

思い出して再び展示車に戻る。今度は運転席に座ってみる。
ハンドル、アクセル、ブレーキ、届かないことはない。
しかし、その状態では前が見えづらい。店員に頼んで調整してもらう。
シートやペダルの位置ハンドルの高さなどを調整してもらってようやくどうにか運転ができそう。
当たり前だけど、あたしのサイズに調整した状態では佳乃では窮屈すぎて運転できない。

「確認することは一応全部終わったから注文処理を進めて」
免許証を取り出しながら店員に話しかける。
店員もあたしが買うとは思ってなかったのか驚いて免許証を3回くらい確認していた。
「免許証のコピーをお取りしますのでしばらくお待ちください」
ようやく落ち着きを取り戻したのか、テキパキと業務を遂行する。

いくつかの書類に必要事項を記入していく。その中の一つがローンの申込書があった。
「ねえ、ローンじゃないとだめなの?カードは使えないの?」
クレジットカードで普通に一括で支払える金額。わざわざ分割にする必要もない。
「クレジットカードの分割払いでしょうか?」
ああ、そうか。一括で購入すると思ってないわけだ。
あたしのカードに限度額はない。
「いいえ、一括よ?」
再び店員が驚いた顔をする。

「その前に印鑑証明と実印が必要になります。本日お持ちでしょうか?」
持ってる。この前マンションの契約するときに必要書類を取りに行ったのを思い出し、
今回はあらかじめ必要書類を用意した。
佳乃が印鑑証明や車庫証明を店員に渡す。
あたしが必要な箇所に印鑑を押す。
一通りの手続きが終わった。

しかし、自動車というものは買ったからすぐに持って帰れるものじゃない。
基本はセミオーダーメイドになっている。
自動車本体は大量生産しているけど、メーカーオプションやディーラーオプションを取り付ける必要がある。
その後にナンバーを取得したりと手続きが色々ある。らしい。

「ナンバーはいくつにしますか?」
そうか、希望の番号が選べるんだっけ?
真白にしても小姫にしても、良い語呂合わせが思いつかない。
今乗っている車は型式番号がF430だったから、そのまま430にした。
そして、今買おうとしている車は普通に名前で呼ばれる車だからその方法も使えない。
そうすると何かの日付とか?誕生日は9月23日だから923とか?
もしくはこの身体に転生した日の11月1日で1101とか?

「そうね、404にしましょう」
あれ?勝手に台詞が・・・
もしかして、これは神様の決定事項?404ってNot foundか・・・
あたしは本来この世界には存在しないってことね。
まあ、半分以上はリーゼロッテだからね。あながち間違っていない。
「お嬢様、私の誕生日でよろしいのですか?」
え?どういうこと?4月4日ってこと?
「偶然よ。ただ頭に思い浮かんだ数字を言っただけ」
もしかして佳乃も存在しないってこと?さすがにそれはないか。

「404でよろしいでしょうか?」
どうせほかの番号には出来ないようだし、もうどうでもいいや。
「それで手続きを進めてください」
そのまま各種手続きはつつがなく進んでいき、その日の作業は終了。
納車されるまでは2週間ほどかかるらしい。すぐに欲しいのに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?

あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」 結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。 それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。 不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました) ※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。 ※小説家になろうにも掲載しております

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...