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更科灰音

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第25話:衝撃の事実

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食器を洗い終わるころにはお風呂も沸いた。花子を連れて脱衣所に行く。
左手が使えない花子が服を脱ぐのを手伝いながら自分も裸になる。
身体のあちこちにある虐待のあざが痛々しい。
そして、どうしても目がいってしまう。ん?おっぱい大きい。もしかすると?
「佳乃!来て来て!」
すでに外で全裸待機していた佳乃が洗面所に入ってくる。
「お嬢様どうしました?」
おもむろに佳乃の胸を掴む。そして今度は花子の胸を掴む。やっぱり・・・
「花子の方がおっぱい大きい」
佳乃の目が自分の胸と花子の胸を交互に見る。そして全裸のまま洗面所を出る。
再び戻ってきた佳乃の手にはメジャーが握られている。
「この際はっきりさせましょう!」
まずは佳乃。82センチ。次に花子。80センチ。
佳乃が花子を睨んで鼻で笑う。
「佳乃の方が大きいのかな?」
花子があたしの胸をつつく。
「マスター。トップだけじゃない。アンダーも測る」
カップ数はトップとアンダーの差だもんね。
佳乃は69センチ。Bカップだ。花子は64センチ。Cカップだ。
「トップで勝ってるのにカップ数で負けるとはなんという屈辱!」
佳乃がガックリとうなだれている。
うなだれたままあたしの胸のサイズを測る。
「お嬢様はトップ64のアンダー56でAAカップですね」
そりゃあ、ダントツで小さいよね?ふくらみとも言えないし。
佳乃、あたしを見て自信回復してもむなしいと思うよ。
でも弾力は全然違うよ。肉まんと大福くらい違う。
佳乃は腹筋も割れてるしスタイルいいと思うよ。
「佳乃は腹筋割れてるしウエストくびれてるしカッコいいよ!」
佳乃が満面の笑みを浮かべて花子のおなかを撫でる。
「確かに山田はプニッとしてますね」
花子は全体的にふわっと柔らかい。佳乃は全身引き締まっている。
花子があたしの胸やおなかを触る。佳乃や自分と比較する。
「マスターは吸血鬼だから参考にならない」
その設定はまだ続いていたのか。どうしたら吸血鬼じゃないって理解してくれるんだろう。
花子のギプスが濡れないように佳乃がビニール袋にくるんでいる。
医者も濡らすなって言ってたし、今はとりあえずこれしか方法がない。

最後の一枚を脱ぐ。花子は生えてなかった。花子の年齢だと生えているのが普通。
剃っているのか天然なのかツルツルだった。あたしと一緒だ。
佳乃は薄っすらと生えている。佳乃の年齢で薄っすらだとこれ以上は生えないと思う。
すると佳乃が自分の毛を摘んでいる。自分だけ生えているのを気にしてるのだろうか?
別に気にしなくてもいいのに、それが普通なんだし・・・
ただ、我が家限定で言えば少数派かつ1人だけ仲間はずれではあるけど・・・

今日は佳乃は花子の身体を洗っている。左手が使えないんだ、身体を洗うのも一苦労だろう。
しばらくは佳乃には花子のお世話を頼もう。自分の身体は自分で洗う。それが普通なんだけどね。
それほど広くない湯船に無理やり3人で入る。佳乃にあたしが寄りかかるのはいつものことだけど、
今日は向かいに花子が座っている。おっぱいって浮くんだね。

さすがに3人で入るとお湯が半分くらい溢れたし、とにかく狭い。
後頭部に枕のように佳乃のおっぱいがあって、目の前には花子のおっぱいが浮いている。
なんというか目のやり場に困る。女性同士だから気にしなくてもいいのかもしれないけど、
中身はいまだにオッサンが残っている。だいぶオッサン成分は薄くなったかもしれないけど・・・
佳乃と一緒にお風呂に入っても背中に佳乃がいるわけで、
直接は目に入らない。しかし、今は花子のが目の前にある。別な意味でのぼせそうだ。
のぼせる前に出ることにしよう。バスタオルで身体を拭いてドライヤーで髪を乾かす。
佳乃が花子の髪を乾かしてあげている。身体も拭いてあげていた。

「花子のことは妹だと思って接しなさい」
花子のポジションを決めてあげる。
中学生だからメイドとして雇うというのも問題だ。
「妹。スバラシイ響きですね」
佳乃が恍惚とした顔をしている。
「愛でてもいいし、食べてもいい」
佳乃の場合両方同じ意味に聞こえる。
そのせいで、花子の頭を撫でている姿も違ったものに見えてしまう。

花子はよく理解していないのかまんざらでもなさそうな顔をしている。
パジャマに着替えて寝室に移動する。私のは猫の着ぐるみパジャマだ。
佳乃がどこからか見つけてきた物だ。どこに売ってたのコレ?
シングルベッドに3人で無理やり寝る。でも、花子骨折してるし大丈夫かな?
早めに引っ越しとか考えないと。もう人数増えないよね?
こうして奇妙な3人暮らしが始まった。

でも、あたしが元のオッサンのままだったら決して出会わなかっただろう。
この身体になったから日々の家事に支障をきたし、家政婦を雇おうと思った。
その結果、佳乃と出会った。
オッサンのままなら家政婦は必要なかった。
もしくは、金銭的に余裕がなければ全部自分でどうにかしていただろう。
そうすると佳乃は路頭に迷っていたかもしれない。

花子だってオッサンをストーカーはしなかっただろう。
メイドを連れて歩いている銀髪の女の子だったから興味を引いたわけだ。
ブサメンでアラサーのオッサンは視界に入りもしないだろう。
その場合はいまだに虐待におびえながら暮らしていただろう。

そう考えるとこのために転生したのかもしれない。
でも、佳乃や花子の別の選択肢を奪ってしまったのかもしれない。
しかし、それは今更考えても仕方のないこと。
佳乃にしろ花子にしろ、いずれはあたしのもとを去っていくだろう。
あたしの身体が成長すれば、いずれ家事は自分で全部できるようになる。
いや、この体がリーゼロッテなら、設定上成長阻害の呪いがあるから成長しないか・・・
そうでなかったとしても、佳乃や花子だって結婚するかもしれない。
だからいつあたしのもとを去ってもいい。それは彼女たちが選んだ人生なのだから。

今のこの生活は一時の夢なんだ。本来のあたしの人生じゃない。
この体はゲームの世界のキャラが実体化したもの。本来はあり得ない夢のような状態・・・
夢はいつか覚めるもの。時間は戻らない。
だから、せめて今だけはこの夢におぼれていたい。それが許される限り。
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