Lara

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Regained Memories

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ここ白の祝福に来てから三年経った。僕は今年で十ニ歳になる。本来ならば小学六年生であるはずだった。正確な日数はわからない。季節が三順しただけ。

「おはよう、由貴」
「………おはよ、う」

あれから少しずつ彼の前でだけ話すようになった。彼に僕の本当の名前も教えてその名前で呼んでくれるようになった。

食事を取り、社へ行く。今日もまた最低限の力だけ受け取って戻る。今では自我の薄さに加えて、彼ら白の祝福の望むような人形の考えも持つようになった。

そのことに恐怖を感じていない自分が怖い。

ふとした瞬間に人を斬りたくなった。血をその包まれた皮の内側から引き出したくてしょうがなくなった。刺して、切って、温かい血を浴びて、芳醇な香りを吸って浴びて…………って、駄目だ。こうやって考えるだけでもそういう思考に嵌まっていってしまう。

手を見下ろすと一瞬赤く染まっているように見える。赤い。

浴室に備え付けられている大きな姿見を見ると頭から赤い液体を被った少年が現れる。僕だ。一回瞬きをすると何もない真っ白な僕がいた。頬が吊り上がる。これは幻視でも何でもない、僕が実際に笑っていただけだ。

すぐに笑みを消す。こんな笑い方、したくなかった。

桶に溜まった水を頭から被る。それは冬の酷く冷えた水だったが常日頃から寒さに晒されている僕はその水程度の冷たさでさらに冷たく感じることはなかった。

逆に人を斬っている時は凄く熱い。寒いか熱い、そのどちらかしかない。適温など、普段では感じ取れないのだ。今は全部が冷たく感じる。

浴室を出て体を拭き、服を着て部屋に戻る。

「出たか」
「…………」

出迎えたのは彼。僕の名前は伝えたが、彼の名前は教えてくれなかった。そんなに知られたくないのだろうか、僕には、わからない。

僕はソファーに座る。すると、彼が隣に座ってきて頭を撫ぜてきた。

「うわっ、冷たいじゃねぇか…また水を浴びてきたのか?ちゃんとお湯を浴びてこいって毎回言ってるよな?」
「……冷たいのは、元からだし…お湯を浴びてもすぐ冷たくなる、から変わらない」
「そういうことじゃねーっつってんの!ったくこの反抗期が!」

そう言ってわしゃわしゃと僕の頭を撫ぜてくる。反抗期…………たしか、親とかの言うことを聞かないでイライラしているっていうやつだっけ……?僕もずっとここにいるから偶にわからない言葉があったりする。そういう場合は彼に聞いて教えてもらったりするんだけど、その時物悲しげに見られるのはどうしてだろう。

でも僕が反抗期…………イライラはしてないし、でも僕って反抗期なのかな……?

頭を撫ぜられ続けながら思った。


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