Lara

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Regained Memories

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ある日、むっすーとした雰囲気を纏わせて綺麗な人が昼食を持ってやって来た。

ガチャン、と荒々しくトレイを置く様子から苛ついているのがわかる。
ハァとため息をつきながら僕の隣に、すぐ横に座る。あれから僕が自分から食べなくなったからだ。一回意地を張って、というか食べなくていいから張ってはいないのだが、食べずに次のご飯の時間になるまで置いておいたら彼が折れたのだ。

だから食べる時は僕の隣に座って僕にあーんをしてくるようになった。

「昼飯を食べたら、やってほしいことがあるんだと。あー!むっかつく!」
「…………」

ガシガシと頭を掻き乱す。どうしたんだろうか、こんなに怒って。
ばっ、と顔を上げて言う。

「前のように人殺しをやらせろって言うんだ!!おかしいだろ!」

気を許したのか以前よりも荒くなった口調で叫ぶ。その目には心配の色を宿らせて僕を見つめる。

彼は幼いと言える僕に人を殺させたくないらしい。

一般社会ならそんなことは当たり前だと、殺人は忌避されることだと言われていることだが、ここの場合そんなことを言う人はこの青年ぐらいしかいない。
むしろ、ここの大人はそのような行為を推奨する人たちばかりだろう。

そういう人が集まっているのだから。

だからこそ彼が何故ここで教団の一人として上の命令を従順に従っているのかがわからない。何故、何故、何故、唯一興味を引くものだからその疑問に頭が埋まる。

「あー、ったく……とにかく、食うぞ」
「…………」

どうせやるしかないのに。逃げることなんて、そんな力を持たない僕にはできないのに。神なんて言われ崇め奉られているが、実態は彼らの言うことを聞くことしかできないお人形だ。この教団の人たちは欲に眩み、その独りよがりな考えで僕に引っ付き絡まっている糸を操っている。

差し出された食べ物に口を開けて食べる。食べるものは全てとは言わないができるだけ白か赤色のものを使って作られている。
この体になってお腹が空くこともなく、それがあるせいで美味しいが食べたいと想えなくなった食事。食べたくないとは言わないが、せめて白と赤以外の食べ物を食べたい。血の色を思い出して元から無い食欲もさらに萎えてしまう。

「……今日はいつになく食べないな。よし、今日は止めてもらうことにするか」
「…………」

僕の様子に嬉々として止める算段をつけているが、無理だろう。それに今日やらなくても明日、明後日…………と要求されることになるだろう。
僕は首を振って不満げな表情を作る彼が持っているものを食べる。


それに、僕はもう人を殺すことに忌避の感情はないのだ。


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