Lara

文字の大きさ
上 下
213 / 280
れっつとらい星光祭!

10

しおりを挟む
俺はそれに何も声を上げれずに見ているだけだった。

そんなことはわかっているとでも言うように枢機卿は俺に手を伸ばして髪を撫ぜる。

「この金髪さぁ、鬘だよねぇ?染まるわけないしぃ。あとそれもカラーコンタクトでしょぉー?」

そう言って顔をゆっくりと近づけてくる。俺は寒くて凍えてぴくりとも動くことができない。

「「「「「…………!?」」」」」
「んっ…………くちゅ、っ……」
「ッ…………は、あっ…んぁ…」

口を塞がれて中に割り込んでくる柔らかいものと送り込まれる。俺は嫌なのに、寒くて動けない。更には中にまで冷気が入ってきた。寒い。つばを飲み込めずに口の端から垂れてくる。

「んっ…………」
「……………ぁ」

十分な力が入り終わった後、枢機卿は外に出ていき、唇と唇の間に橋が渡って落ちた。俺は何も見ることが・・・・・・・できない・・・・。それどころじゃなかった。寒い、寒い、寒い。俺がどんどん・・・・・・なくなっていく・・・・・・・。表情すらも保てない。

「ん、ふふ…久しぶりの献上ですぅー神具がないので直接になりましたがぁ、貴方様が限界そうでしたのできんきゅうたいおうーってやつですよぉ」
「椿…!律!椿から離れろ!」
「どうしたんですかぁ?キスしたぐらいでぇ、お前たちもやってきたじゃないですかぁーあ、もしかして、嫉妬ってやつぅ?」

何か言ってる。枢機卿の気持ち悪い口調が頭に入り込んでくる。この口調、どこかで聞いたことがある。もしかして…………

「あのと、きの、こども…?」
「っ!そうですよぉ!覚えててくださったんですねぇ!俺が本当に小さい頃だったのにぃ!」

ああ、十年くらいは前だったから思い出すのが遅かった。確かにあったことがある。子供、しかも男らしくない口調で、そのときは司教だったが、まあそれでも子供がその地位についているのもおかしいくらいなんだがな。

「しゅ、っせ、したんだな」
「そうなんですぅーあの時貴方様にお会いして、その姿とお心に触れさせてもらった時から高かった信仰心も上限突破してしまいましてぇ、上り詰めたんですよぉ」

頑張りましたぁと嗤って俺の髪を撫ぜ続ける。

「ねぇ」

ふと、枢機卿は呟いた。

「これ、もういいですよねぇ?」

俺に聴いているのに返答も待たずにピンを外して鬘をとった。降りてくる白髪はくはつ、それはさっきまで俺が眺めていた月に照らされて光を反射する。

「つ、ばき…?」

わんこが一歩後ずさる。

「つっつんって、血狂い、だったの……?」

双子兄が目を見開いてそう零した。

みられ、ちゃった。

それでも枢機卿は会長たちなんてどうでもいいとでも言うように俺の露わに白髪を優しく繊細なものを触れるように撫ぜる。寒い、な。

「ああ、これ、これこれこれぇ!!!!!!この高貴なる白!ああ、素晴らしい、白が、貴方様に一番似合うんですよぉ。なのにそれを隠すようにぃ黒ばっかりでぇ…どんなに俺が悔しい思いをしたかわかってますぅー?」

冷気が強まる。寒い。

「でも、もう終わりですぅー貴方様は限界になったぁ。それがタイムリミット、いくら貴方様でもこれ以上のお遊びは許されませぇん」

「ですが」

にっこりと笑みを深める。寒い。

「さっきの献上で幾ばくか伸ばしましたぁ。これで最後の最後ですぅ。その範囲以内でご自由に帰って来てくださいねぇー?俺たちはいつまでもお待ちしてるからぁ」

俺の唇にもう一度接吻をしてから離れると

「ほらほらぁ、大司祭もいくよぉ」
「枢機卿、僕のことは狂犬と呼んでください。あの方につけてもらった名なのです」
「いいなぁー俺もほしぃなぁ、羨ましーぃー」
「こればっかりはあげませんからね!それでは貴方様『我らが神に忠誠を』」
「いつまでもあの場所でお待ちしてますぅ、『我らが神に誓いを』」

そう二人が言った途端、白い神官服を纏った子たちが現れた。暗い中で月光を反射して白く光る。いつのまにいたんだ。
あれ、生徒の子だよな…………ああ、いるに決まってるか、二人がいたんだし。
冷気が増える、俺はもう何も感じなかった。

「「「「「「『世界に祝福を』」」」」」」

そう言って去っていった。暗闇の中に。

俺は何も見ずに見送った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

望んだことをしてあげただけなのに、妹が烈火のごとく怒り出したのですが

mios
恋愛
妹ロザリアの傍若無人振りに遂に堪忍袋の緒が切れたシスティーナ。淑女はお休みにして、妹が望んだことをして差し上げましたら……なのに、どうして怒っているの?

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

好きな人が乳首フェチのド変態だったので、乳を吸わせる権利と引き換えに童貞を頂きました。

スイセイ
BL
「先輩の乳首は、俺の理想の乳首なんです。」 イケメン童貞乳首フェチ変態へたれ後輩攻め(27)×男前包容力ツンデレデレデレちょろ先輩受け(29)の、タイトル以外の内容は何も無いアホエロコメディ話です。前中後編で完結済み。エロ突入は中編から、本番描写は後編からです。乳首責め・ハート喘ぎ・攻めへの甘やかしプレイ・攻めの喘ぎ・軽めの淫語などの描写を含みます。 2023.02.11 バレンタイン特別編を更新しました。

にゃんとワンダフルDAYS

月芝
児童書・童話
仲のいい友達と遊んだ帰り道。 小学五年生の音苗和香は気になるクラスの男子と急接近したもので、ドキドキ。 頬を赤らめながら家へと向かっていたら、不意に胸が苦しくなって…… ついにはめまいがして、クラクラへたり込んでしまう。 で、気づいたときには、なぜだかネコの姿になっていた! 「にゃんにゃこれーっ!」 パニックを起こす和香、なのに母や祖母は「あらまぁ」「おやおや」 この異常事態を平然と受け入れていた。 ヒロインの身に起きた奇天烈な現象。 明かさられる一族の秘密。 御所さまなる存在。 猫になったり、動物たちと交流したり、妖しいアレに絡まれたり。 ときにはピンチにも見舞われ、あわやな場面も! でもそんな和香の前に颯爽とあらわれるヒーロー。 白いシェパード――ホワイトナイトさまも登場したりして。 ひょんなことから人とネコ、二つの世界を行ったり来たり。 和香の周囲では様々な騒動が巻き起こる。 メルヘンチックだけれども現実はそう甘くない!? 少女のちょっと不思議な冒険譚、ここに開幕です。

悪役令嬢だってヒロインになりたい!

あんのみ(庵野みかさ)
恋愛
「どうして、あたしが悪役令嬢なのよ……」 学園の医務室のベッドで目を覚ました公爵令嬢マーガレット。 彼女は、ここが女子高生だった前世でハマった乙女ゲームの世界であることに気がついた。 しかも、ヒロインが攻略対象に選んだのは、マーガレットの婚約者であるランバート王子。 それはつまり、自分が悪役令嬢となり、半年後の卒業パーティーで婚約破棄されてしまうということ……。 そんなの絶対にイヤ! あたしだって、ヒロインになって王子様と恋がしたい! だって、王子様は前世で心の恋人だった人。 今は口もきかない仲だけど、せっかく婚約者なんだもん、ヒロインに代わって彼の恋を勝ち取りたい! 前世を思い出したおかげでまともな性格になったし、ゲームの知識もあるし、きっと楽勝のはず。 さあ、手伝ってくれる協力者を選んで、王子攻略作戦をはじめるわ! 悪役令嬢マーガレットの奮闘がはじまる―― 前向きに頑張る女の子の、恋と救済の物語。 アイコンは、Picrewの「五百式立ち絵メーカー」でつくりました。 https://picrew.me/share?cd=iM6uXO7Vpz #Picrew #五百式立ち絵メーカー

TS百合の王道パターン

氷室ゆうり
恋愛
この頃急にはやり始めたTS百合。ツイッターでトレンド入りしたそうですね。そんなわけで急遽作ってみました!ショートショートですがこれぞまさしくTS百合!流行に乗っかってもっともっとtsfの性癖に皆様を誘導していきたいと思っております! そんなわけで、今回もr18です。 それでは!

自称悪逆非道な令嬢はバッドエンド回避のために今日も手紙を出す

ツカノ
恋愛
私の婚約者は、どうかしている。 突然「婚約破棄の季節ですわね」と言い出した美少女だけれども自称悪逆非道なご令嬢と美形だけれどもつっこみ属性持ちの残念な婚約者が、婚約破棄や姉妹格差やピンクブロンドの少女たちについてお茶会をしながら、ゆるゆるお喋りしたりバッドエンド回避の為の手紙を書いて出したりしているだけのはなし。 たぶん、おそらく。

人まぐわい

ポレロ
ファンタジー
「人に産まれるためには、前世との人の関わりが必要なの」 そう言った白いあくま様の微笑みは、やけに綺麗だった。 人が死んでしまったら、どこに向かうのか。 地獄 それとも 天国 それとも… 白いあくま様と名前のない人間の形をした僕が繰り広げる、生と死をめぐるハナシ。 作者から一言 超不定期連載です。よろしくお願いします。

処理中です...