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九月四日 3
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「「…………」」
<さあな、自分で考えろ『𝓓𝓸𝓵𝓵』>
海人と顔を見合わせてさっき会長に言われたことを思い出す。会長は既にここにいない。帰る、と言って生徒会室に戻っていった。
じりじりと熱い陽光が木の葉の隙間から入り込んできて僕を熱する。
「「考える……」」
そもそも僕は彼の言っていた通り人形だ。自分で考えることなんて不要とばかりに教育されてきた。今はこうして命令されたことに対して遂行できるように思考をするがそれ以外のことに関してはそのことに思考を割かない。
僕がここに来る前に与えられた役目は一つ。
『そうだな……天真爛漫に、他のやつと違和感のないようにそんな風に見えるように過ごしておけ』
そんな、曖昧なもの。明るくて元気、純粋で無邪気、そんな風に演技をしろということだ。
純真で心の中が素直に表れていること。無邪気でこだわることがないこと。調べてみたけどそんな感じだった。心の中が素直に表れていることなんて役目とは正反対のものだ。
それが僕に課せられた命令。だからここまでの行動も全てそれだけの為にやっていた。
そこで新たに与えられた命令が自分で考えること。それこそ『𝓓𝓸𝓵𝓵』と呼ばれた僕とは正反対のもの。
ただ、実際に今までもそうだった。だからどの命令も自分がやるものとは反対なのではないか。そうやって矛盾の中を過ごしてきた。
「「無垢」」
果たして僕は無垢なのだろうか。それとも無垢、こういうことなのだろうか。自分から行動しない、何も感じずただ言われたことをやる、だからこそ何物にも染まっていない。それは白ではない、黒でもない。透明だから色がつかない。
無垢は長所、しかしここでは短所。一体どういうことなのだろうか、そんなこと一回も考えたこともなかったからよくわからない。
「「考える……」」
話は変わるが考えるとは何だろうか。
思考してるのは考えていると言える。
しかし考えてはいるが、考えてはいない。ただ思ったことを頭の中で垂れ流しているだけ。
命令を果たすのに思考は必要だ。だが人形に考えるというものは不要である。考えてしまったら人形ではなくなるのだから。
ということは、今は考えているから、人形にはなれない、ということなのだろうか。
「「わからないね、陽人」」
生まれながらに同一の存在であり相方である海人と顔を見合わせる。同じ動き、同じ言葉。そして同じ考えに辿り着いたのだろう、僕と差異は見られなかった。
違う思考で違う言葉で違う行動で……そんなことをした時はあっただろうか。
身長も同じ体重も同じ見た目も同じテストの点数も同じ運動能力も同じ。
違うものがあるのかすらわからない。
僕は陽人?それとも海人?
よく自分ですらわからなくなってしまう。自分を生んだ女も命令をしてくる男も僕が陽人なのか海人なのか判別できていない。
この学園に来るまでは、いなかった。
今では会長と副会長は見分けることができるし、会計と書記は申し訳なさそうにできないと言っていたが最近になってくると結構な確率で僕を見分けることができた。と言っても僕自身もどちらかわからなくなる時があるけど
『『じゃーん、どっちが陽人でどっちが海人でしょう!』』
『あ、こっちが……海人かな?で、こっちが陽人』
『『……あれ、どっちだったっけ?回ってるうちに僕もわかんなくなっちゃった』』
『も~なんで本人がわからないのぉ~』
『今回は金星が合ってるぞ。お前が海人で、お前が陽人だ。自分で忘れるな阿呆』
『あ~よかった、合ってた~!もぉ~駄目だよぉ!自分でも覚えてなきゃ!』
こんな風に会長や副会長だって当ててくれる。僕でさえわからないのにどうして会長や副会長がわかるのだろうか。
考えろ
そう言われたから僕は考えてみる。
<さあな、自分で考えろ『𝓓𝓸𝓵𝓵』>
海人と顔を見合わせてさっき会長に言われたことを思い出す。会長は既にここにいない。帰る、と言って生徒会室に戻っていった。
じりじりと熱い陽光が木の葉の隙間から入り込んできて僕を熱する。
「「考える……」」
そもそも僕は彼の言っていた通り人形だ。自分で考えることなんて不要とばかりに教育されてきた。今はこうして命令されたことに対して遂行できるように思考をするがそれ以外のことに関してはそのことに思考を割かない。
僕がここに来る前に与えられた役目は一つ。
『そうだな……天真爛漫に、他のやつと違和感のないようにそんな風に見えるように過ごしておけ』
そんな、曖昧なもの。明るくて元気、純粋で無邪気、そんな風に演技をしろということだ。
純真で心の中が素直に表れていること。無邪気でこだわることがないこと。調べてみたけどそんな感じだった。心の中が素直に表れていることなんて役目とは正反対のものだ。
それが僕に課せられた命令。だからここまでの行動も全てそれだけの為にやっていた。
そこで新たに与えられた命令が自分で考えること。それこそ『𝓓𝓸𝓵𝓵』と呼ばれた僕とは正反対のもの。
ただ、実際に今までもそうだった。だからどの命令も自分がやるものとは反対なのではないか。そうやって矛盾の中を過ごしてきた。
「「無垢」」
果たして僕は無垢なのだろうか。それとも無垢、こういうことなのだろうか。自分から行動しない、何も感じずただ言われたことをやる、だからこそ何物にも染まっていない。それは白ではない、黒でもない。透明だから色がつかない。
無垢は長所、しかしここでは短所。一体どういうことなのだろうか、そんなこと一回も考えたこともなかったからよくわからない。
「「考える……」」
話は変わるが考えるとは何だろうか。
思考してるのは考えていると言える。
しかし考えてはいるが、考えてはいない。ただ思ったことを頭の中で垂れ流しているだけ。
命令を果たすのに思考は必要だ。だが人形に考えるというものは不要である。考えてしまったら人形ではなくなるのだから。
ということは、今は考えているから、人形にはなれない、ということなのだろうか。
「「わからないね、陽人」」
生まれながらに同一の存在であり相方である海人と顔を見合わせる。同じ動き、同じ言葉。そして同じ考えに辿り着いたのだろう、僕と差異は見られなかった。
違う思考で違う言葉で違う行動で……そんなことをした時はあっただろうか。
身長も同じ体重も同じ見た目も同じテストの点数も同じ運動能力も同じ。
違うものがあるのかすらわからない。
僕は陽人?それとも海人?
よく自分ですらわからなくなってしまう。自分を生んだ女も命令をしてくる男も僕が陽人なのか海人なのか判別できていない。
この学園に来るまでは、いなかった。
今では会長と副会長は見分けることができるし、会計と書記は申し訳なさそうにできないと言っていたが最近になってくると結構な確率で僕を見分けることができた。と言っても僕自身もどちらかわからなくなる時があるけど
『『じゃーん、どっちが陽人でどっちが海人でしょう!』』
『あ、こっちが……海人かな?で、こっちが陽人』
『『……あれ、どっちだったっけ?回ってるうちに僕もわかんなくなっちゃった』』
『も~なんで本人がわからないのぉ~』
『今回は金星が合ってるぞ。お前が海人で、お前が陽人だ。自分で忘れるな阿呆』
『あ~よかった、合ってた~!もぉ~駄目だよぉ!自分でも覚えてなきゃ!』
こんな風に会長や副会長だって当ててくれる。僕でさえわからないのにどうして会長や副会長がわかるのだろうか。
考えろ
そう言われたから僕は考えてみる。
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