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三章 降臨

超越した存在 最強の魔法

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「———さあ、王達に護衛の皆さん下がって」

ファシーノを先頭に五華のメンバーは横に広がり魔障壁を貼ってゆく
この5人は現在の選ばれし者セレツィオナートと同等と言っていいほどに強いだろう‥‥‥まあヴァルネラと俺が鍛えたからな。

今貼ってくれている魔障壁は先ほど貼っていた代物よりも格段に防御力があるだろう。なんせヴァルネラも一緒にいるからな。かの精霊女帝様をこんな風に使うのは如何なものかとエルフ達に睨まれそうだが勘弁してもらいたい

何より王達が素直に後ろに引いてくれた事には驚きだな。ヴァルネラや俺の魔力を間近で感じ悟った所だろうな。獣王の‥‥‥えっとなんて言ったけ‥‥ああ、獣王ストレニアもこんな感じだったな。

まあ、見物客がたくさんいて何よりだ。俺の実力を知って貰わなきゃな、そして数年は穏便に暮らそう。そう出なければ探りを入れられるだろうからな


「———もう少し練るか。一撃で仕留めるために‥‥」


◊◊◊


「———これがネロ様の本当の魔力ですか‥‥?」

「‥‥‥?まだ本気ではないわよ?さらに上が存在するの。ヴィーナスは初めて視るのよね」

「はい‥‥今の魔力でも魔障壁が押し潰されそうになるのに、これ以上が存在するなんて想像もできません‥‥」

———後方では何やら俺について話している様だが、そうか。ヴィーナスは俺の全力を視るのは初めてだったな

ならば、ここで存分に体験してもらおう。そして王や護衛達にもな‥‥‥!

後ろを振り返るまでもなく魔力の流れで皆の心身状態が伝わってくる。魔障壁に守られている者達はどういった心境なのだろう‥‥‥


「———体の底から押し潰されそうな強大すぎる魔力の流れ。体が震えて堪らないというのにまだ、上があると言うのか‥‥?」

「———ようやく信じたか、魔王よ。しかとその魔眼で見ておれ。奴の神髄を隅々までな」

「———奴は何処の種族なのだ?これほどの魔力を一個人が持っているなど‥‥我ら人族領で起きた事件は奴によるもので間違いないか‥‥」

「———これほどに強大な魔力とは‥‥ヴァルネラ様を召喚したこの者は一体何なのだっ」

「———皆さん少し落ち着きましょう。我々が焦ったところで邪魔なだけです。我々は一度敗北している身の上、それに強大な魔力から我々を守っている者達。あなた方は一体何を成そうとしているのです‥‥‥?」


———ほう、魔力で全身が押し潰される感覚が襲う中、問いかけてくるとは流石は天族長。この状況下では一番冷静に対応しているな。さて、この問いに誰が答えるのか。それは一番俺の事を知っている者

魔障壁を貼りながら黒髪が靡く俺が思う最強の女性

あとは頼んだぞ“ファシーノ”———


「———私達の目標も、道標も、生も、全ては彼と共にあるわ。彼の敵は私達の敵であり、彼の道を阻む愚か者は私達が始末する。そして私達が成すことはただ一つ。”バラトロ”の殲滅」

「———!?バラトロとあなた方は違うのですか!?なぜ我々を救ってくださるのです!?貴方達は何のですか‥‥」

「一つ、教えてあげましょう。私たちをバラトロなんかと一緒にしたら————タダじゃおかないわっ」


————ビクッ


「ふふ、そう怖がらないで。私達の邪魔をしなければ良いだけよ?邪魔をしなければね‥‥」


———天族長ミカエル。彼女は今ここで生まれて初めての恐怖を知ることになった

厄災の魔獣の攻撃さえも運命に従った行動であったため死を直面しても恐怖はしなかった。しかし、ファシーノの殺気を前に恐怖した。冷徹無表情な眼差しに全身が硬直し、額から汗が溢れ、背筋が凍る初めての現象を前に体が跳ねた。
神に最も近いと言われている種族の長が恐怖するなどあってはならない事実。死にたくないという感情を初めて体験した天族長は知ることとなる

怒らせてはいけない者がこの世に存在し、神などではなく身近に存在する者だということを

「あと、私達は———月下香《トゥべローザ》よ」


◊◊◊


「———なんて圧だっ!この距離でも凄まじい存在感、殺気、魔力の迸りが視える‥‥‥!魔獣ディザストロの攻撃を防ぐとは‥‥‥フハハッ!どうやら本物らしいな、我らの同胞バッコスを倒したのも真実か!ならば、次は外さない。いいや防ぎきれぬ程の攻撃をお見舞いしよう!やれっ!厄災の魔獣ディザストロ!今度こそ全てを消し炭にせよっ!」


————グオオォォオオオ!!!


「フハハハハッ!さあ、我らの時が来たっ!今一度この世に“楽園”を!神を引き摺り下ろそうぞっ!」

そして再び厄災の魔獣は攻撃の体勢に入る。今度は地上からではなく、空高くに飛び出し天からの咆哮を繰り出そうとする。天高くに羽ばたく龍。その上空から繰り出される攻撃はすなわち地上を火の海にした最強最悪の代物

人類の歴史から消すことのできぬ忌まわしき産物


———伝説の龍の咆哮———


「さあ、やれっ———」


———ん?あの龍、空高くに飛び立ちやがって。未だに空は黒い雲で覆われているで視認ができるのは救い。空高くに飛んでどうする気だ‥‥まさか撃ち下ろすなんて‥‥‥いや、絶対にそうだな。これは

「なるほどな、見下ろすのか。なんと傲慢な奴だ厄災の魔獣!いいだろう、どちらが頂きに相応しいか勝負といこうっ!」


———リミット解放———


「「「———!!!」」」

「こっこれがネロ様の魔力!?魔障壁は持つのでしょうか?!」

「ヴィーナスっ!持たせるのが私達にできる最大限の事よ!そして彼の魔法はここからよっ」


———そう、俺の魔法はここからだ。解放した魔力を創造するまでただの副産物に過ぎないのだからな———————来い 



———ラ・ヴェラ・オスカリタ———



———巻き起こる黒い魔力の嵐 

———風が水がそして大地までもが俺の体に魔力を渡してくれる

———まるで一つとなっているように、

———黒い魔力は魔族帝国を覆うほどに膨張し尽くす


「これが魔力‥‥‥我らと同じ可視化できる魔力ヴィズアリタだと?! そんな馬鹿なことがあるかっ!これはそんな代物ではないっ!」

「さらに超越した存在にだけ許された代物。天族が最も恐れる力‥‥これはこの魔力は”神に匹敵する力”!」


———そして魔族帝国を覆う黒い魔力が俺を中心に集約しある形が創造されていく。真黒でいてかつ、黒よりも更に奥深しい闇の彩色。魔力が揺ら揺らと漏れだし、まるで黒煙の様にも捉えられるそれは”黒剣”の様な代物


「———妾は獣族国で起きた時に奴の魔法この目で見て身震いした。この世に、これ程の悍ましく繊細で濃密な魔力があったのだと。そして妾達は見てしまった‥‥その姿を‥‥あれは紛れもない‥‥‥」

「———なんなのだ?獣王ストレニア教えてくれ」

「‥‥‥パエーゼよ。そして皆にも言う。あれは‥‥‥死を司る存在と妾は思いそしてこう呼んだのだ———冥界の王と」

「「「冥界の王‥‥‥」」」


———俺は目の前に創造した宙に浮いている黒剣を右腕で掴み取る。この掴み取る仕草は実に3度目だ。1回目はファシーノを助けるため、2回目はエルディートを救うためにと‥‥そして今回は世界を人類を救うためにと‥‥‥ 

徐々にスケールが大きくなるが何かを救うという根本は変わらない。役3年ぶりだがまた魔力が増している。俺が成長していくごとにこいつも凄みが増しているな相棒


————グオオオォォォオオ!!!


「‥‥龍の咆哮か。ではこちらも取っておきを魅せてやる龍よ。もう一度眠りにつく覚悟はいいな?蘇らぬように無にしてやろう———神とやらによろしくな」


———万物の根元を全て無に

———存在や価値も無意味 

———そこに存在せず

———存在しないと言う概念すら存在しない魔法

———それは



———虚無《イヌラ》———



この魔法は掲げた黒剣から放出される一振りの斬撃

黒い魔力は高密度に圧縮され一線の黒い斬撃を産む

その黒い斬撃は天まで昇り詰め、空高くに飛ぶ龍に迫る

それはまるで黒い魔力対光の咆哮

たった一瞬の出来事

光が闇に呑まれる

どちらが悪かは定かではない。負けた方が悪である

黒い斬撃は光を呑み込み速度は衰えず龍に迫る

しかし、龍は動かない

———なぜなら


「「「———なんてことだっ」」」


黒い斬撃は龍を斬り裂き、黒く覆われた天にまで突き進む

全ての生物は震撼するだろう。そしてこの光景を見た人々は語りつぐ


「「「———馬鹿な!!」」」


この世界を二つに隔てる黒い斬撃は黒く覆われた空に光を灯し、厄災の象徴である龍を斬った

人々の記憶に刻み込まれた光景。体の奥深くに刻み込まれた魔法

厄災をも退ける最強の力を宿し。最強の配下達を手懐ける者

それは神に匹敵する力。全てを無に帰す魔力


「———有言実行だっ」
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