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三章 降臨

セレス

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(———ああ~実物で見るとやっぱりすごい人達です。なんですかあの魔法の数々は?さすがは選ばれし者セレツィオナートと言うことはありますね。本当に倒してしまったのではないでしょうか?)


———と言うことで、私デリカートは王達と一緒に魔王城の屋上で戦いの顛末を見守っていました

調停者《アルビト》の一人として潜入していた最中、まさかこのような事態になるなんて‥‥警戒は怠っていなかったけど、まさか本当に恐れていた事態が起きてしまった‥‥‥

幸いにしてまだ正体を気づかれていないけど、それも時間の問題‥‥‥
眠らせた一人がこのまま目を覚さなければ安泰だけど‥‥もし気づかれた時は気づかれたで情報は得たから十分でしょう

それよりも注目すべきはあの厄災の魔獣。選ばれし者セレツィオナートの、人類最高峰の魔法を全てもろに受け、倒してしまったのではないかと思う。大陸の中心に位置する湖と魔族帝国首都デモナートに挟まれている広大な森。その広大な森に巨大なクレーターができ、緑の失われた大地が広がる光景

この光景を生み出し、国の首都を丸々呑み込むほどの巨大なクレーターを引き起こした人物達は人の枠から外れ、超越している‥‥‥


(———どうやら降りてくるみたい。流石の厄災の魔獣とて、5人の超越した魔法を受けては消滅したのかもしれない)


浮遊魔法で空に飛んでいた5人(魔王ルシフェルと天族長ミカエルは翼を持っているため魔法ではない)は全力で魔法を放ったのか少し脱力しているように見えた


「———やったか?」

「———流石にあの威力の魔法をくらって生きているとは到底思えん」

「———ああ、同意見だ。我らの魔法を受けては消滅しているだろう」

「———厄災の魔獣とて妾達の魔法を持ってすればこのような結果よ」

「———さて、各国の首都の状況は。天族の同胞を向かわせてはいますが‥‥」

優雅に空から降りてくる5人の選ばれし者セレツィオナートは王や護衛達がいる魔王城の屋上に着地する
そして今までの光景を全て見ていた者達は改めて5人の超越した魔法を肌で実感し、軍人は頭の額が地につくほどに深く首を曲げ、5人に向けて跪いていた


「———流石は国の最終戦力であり、人類の希望です。よくやりましたディアナ」

「———パエーゼも久しぶりに全力を出しましたね‥‥‥」


『その程度で倒したつもりか?』」


突如、魔王城の空に現れた男は王達や護衛達を見下ろし微笑を浮かべていた
屋上にいる者達は一斉に声の聞こえた方向を向き、王達を守る体制に入る

「「「———っ!誰だ!」」」

「———選ばれし者セレツィオナートの5人。貴様らの魔法では到底殺せぬ。あまりにも脆弱で、哀れでならぬ。かつて世界を100年にも渡り、地上を火の海にしてきた厄災の魔獣はこの程度では死なん」

「———貴様は誰だ!?名を名乗れ。王達の上に佇むなど万死に値する」

魔王城の空に現れた男に怒りをぶつけ、言葉を投げるパエーゼ。男はパエーゼの言葉に反応し笑い上げると魔王城の屋上まで降り、堂々と語り出す


「ハハハハ!我らは”バラトロ”。神を引き摺り下ろす者たちだ。そして貴様らが相手した厄災の魔獣ディザストロ。あれを甦らせたのがこのオリュンポス十二神ディオ・クレアートが一人セレスであるっ!」


そして空から降りてきたセレスと名乗る男が話し終えると、エルフ軍の精霊王達が突如出現し身震いしだした。その様子は儘ならぬ事だと理解し‥‥‥


『こいつは悍しイ‥‥』『ああ、この魔力は一体』『ちょっと!これやばいはよ!』

「ちょっとどうしたのサラちゃん!」

「嬢ちゃん、大丈夫か!」

「ノームどうしたと言うのだ?」

「ウンディーネ。この男から感じるのか?」

『いいえ‥‥これはその男の後ろから感じるわ。とても悍ましく、気持ちが悪くなる』


———最後に話した水の精霊王ウンディーネの発言を聞いていたデリカート
事の顛末を終始見守っていたが、それも精霊王達の出現で騒がしくなりこの後の展開を考え始める


(———精霊王達が警戒する魔力。セレスの背後ということはクレーターが出来た森の方向ということになる。まさか5人の魔法を喰らって生きているなんて。ネロ様に報告しなくてわ‥‥‥)



——————グオオオォォォォォォォオオオ!!!



「「「———!?」」」

瞬間、巨大なクレータが出来た森から断末魔の咆哮が空を通り風に乗り世界に響き渡る———

「ま、まさか生きているというのか‥‥?」

「我らの魔法を喰らっておきながら‥‥」

「そんな馬鹿なっ!?ありえぬっ」

「国の首都を滅ぼす程の魔法だぞ!」

「これは、甘く見ていましたね」

「———ハハハハハハ!この程度で死ぬわけがないのだ!貴様ら諸共国を、世界をもう一度滅ぼしてくれようっ!」

選ばれし者セレツィオナートの5人は想定外の事態に驚くあまり、絶対に漏らすことのない声を震わした

あれ程の魔法を受け、生きているなどと誰もが思っていないかった事。最悪の事態が、さらに最悪な方向へと一変し場の空気は張り詰める

デリカートもまた状況を見据え、敬愛する人を待つのだった———
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