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三章 月光の花魁

獣族国ベスティア

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走ること半日、空はすっかり夜になり星が見えて来た

俺たち四人は獣族国ベスティアへ向かっている

そしてただいま山脈を登っているとこだ

魔獣を倒し、険しい山脈の頂上に着くと周りは山ばかりの土地が広がっていた
なんと言うか山が円状に広がり、山脈の麓は巨大なクレーターのようになっている。そしてその麓には超巨大な国家が形成されていた

———そうここが獣族国ベスティア

ここは鉱山が採掘されるため山脈の至るところに採掘跡がある
また国家の中心に、堂々たる巨大な城が佇んでいるのがこの距離でも確認できる
城を中心に街が広がり、産業区、商業区、裕福層、非裕福層なども見てわかる程にスケールが巨大で城以外にも巨大な建造物が沢山見える

なぜここまではっきり分かり、見えるのか
それは巨大だけの話ではない 

————明るいからだ

祭りごとでも嗜んでいるのかと思ってしまう程に明るい

そして極めつけて明るい区域が見えるがそれは後ほどわかるだろう

「———凄いな。とても夜という雰囲気がしない」

俺が感想を述べると三人も同意して首を縦にふる

「エルフ大国とはまた違った美しさがあるわね」

「夜がこんなにも綺麗だなんて‥‥」

「年月が経ったものだ‥‥」

一人だけ年寄りが混ざっているがあえて突っ込まない
女性に年紛いの事を聞いてはならないと言われた事があるからな

(それにしても城壁がないとは‥‥)

周りを見れば山脈に一帯を囲まれているせいか城壁が見当たらない
いや、山脈が城壁なのだろう

(ある意味、宣戦布告という奴か)

獣族国に住う所謂『獣人』は魔法で身体を強化して己の肉体で闘うと言われている。剣などの武器を使う事は獣人にとって弱者とみなされてしまうからだ

それほどに己の身体を鍛えあげ拳で殴り、蹴り合うのが獣人の戦闘方法だ

そして俺が思った宣戦布告とは、攻められるものなら攻めてみろ武器などに頼る弱者に負けるわけがないという意味だ

(これは傲慢なのだろうか‥‥いや絶対的な自信か)

それより早く街へ行き宿を探さないとな、野宿ではなくベッドの上で寝たいものだ。三人に号令をかけ山を降りることにしよう

そして一時間程で麓に到着し、目の前に検問が現れる

「俺、身分を証明できる物はないがどうするか。みんなは何か持っているか?」

三人に問い掛けるが三人とも首を横に振る
こうなったら強行突破か眠らせるかだな

そんな物騒な考えをしながら検問所まできた俺たちは門を潜ろうとする

「おい!そこの者たち止まれ!」

‥‥‥やはり通してくれないようだ。こうなれば使いたくないが眠ってもらおう
俺が魔法を発動しようとする瞬間、警備兵の一人が問いかけて来た

「お前たち見慣れない格好だが‥‥‥他国から来たのか?もし”獣武祭”に出場するのなら速く宿を取る事だ。夜は騒がしくなるからな」


なんと止められはしたが、こんなタイミング良いとは‥‥‥逆に怖いな、何かに導かれていそうだ‥‥‥ここは話を合わせよう

「———ああ、そうなんだ、出場するため遥々来たんだが夜になってしまってね速く宿を取り休みたい」

俺が警備兵と話を合わせると警備兵はすんなりと通してくれた
帰りぎわに『獣武祭の受付は朝9時からだ』と言っておりとても親切な警備兵だった

「という事ですんなりと入れてしまったわけだが、宿を探すか」

「「「賛成~~!」」」

三人とも息ピッタリで返事をする
端から見ると親子みたいだな、ヴァルネラが母親で俺たちは子供か

宿街を散策していると、『フラゴラ』というモダンな宿があったので入ってみる

中に入ると一階は食堂と酒場を兼ねている、二階から宿泊用になっており内装のデザインも綺麗で凝っている

奥に受付があるので奥へと進んでいく

「———いらっしゃいませ、お客様。宿泊ですか?」

猫耳の可愛い受付嬢が出迎えてくれる
さすがは獣人、破壊力がある‥‥

気を取られながらも俺はしっかりと対応する

「はい。四人部屋をお願いします」

「かしこまりました。 四人部屋になりますと一泊のお値段がこちらになります」

受付嬢が提示した金額は4万と、そこそこ高い
そんな俺の意思を掴み取ったのか受付嬢が付け加える

「こちらは夕食、朝食込みのお値段となっておりますので、ご了承ください」

なるほど、そういうことか。俺は四万を懐からだして受付に渡す

「———はい。丁度お預かりしました。こちらがお部屋の鍵となっております。 夕食の方は注文し放題ですのでよろしくお願いします」

「分かりました。お風呂はどうなっていますか?」

「お風呂のほうは男女別です。右の階段を上がり突き当たりです」

受付嬢からお風呂の経路を聞いたところでお礼する

受付嬢から鍵を貰い、階段を上がっていく。 
俺たちの部屋は最上階の5階だ

俺が子供とわかってもしっかりと対応してくれた。この宿は当たりだな

「ねえ?注文し放題って言っていたわよね?それにお風呂」

「はい。私もしっかりと聞きました」

「我も聞いていたぞ」

後ろを歩いている女子三人組は何やら楽しそうに話している
注文し放題という言葉に目をキラキラしていたな
野営の事を思い返すととんでもない量だった気がするのは気のせいだろうか

後お風呂は最高だな。ほとんど水浴びだったから暖かい湯に浸かりたい

そんな事を考えていると部屋の前に着いた
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