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26.三人の兄弟
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食事を終えて三人は宿へ戻ると各々好きなように時間を過ごしていた。
ルリールは剣を磨き、
シュビルはスマホで誰かとやり取りしている。
奏人は、ただただ迷っていた。
本当に自分の後ろの方の処女がシュビルによって奪われて良いのかどうか。
もちろん元の世界に戻ったからといってお尻でセックスするなんて考えていないのだが
やはりだからといって友人に自分のはじめてを奪われるなんて、良いのだろうか、と。
「奏人」
悩む奏人にシュビルが話しかける。
びくっとしてシュビルの方を見ると、こっちへこいと手招きしている。
奏人はシュビルの方へ近寄るとルリールもそれに気が付き、とことことシュビルに近づいた。
「これ、アルさんとエル」
シュビルが指さすスマホの画面には、アルとエルの姿が映し出されていた。
「テレビ電話?」
「・・・?なんだそれ。これはこっちの世界でいう遠隔通信っていうんだけど、この機械で遠くの人とも話せるんだよ」
おそらく元の世界でいうテレビ電話のことと同じであろう。
奏人はそれ以上は何も言わず、スマホの画面を見つめた。
エルがにこにこと手を振り、アルもこちらを見ながら笑っている。
シュビルも手を振り返し、奏人の肩をだいてグイっと自分の方へ寄せた。
「ほら!奏人だ」
「あ~!奏人お兄ちゃん!そっちの人は?」
エルが指さすのは、ルリールだ。
「僕はルリールだよ~!明日は僕も会いに行くからねー」
ルリールがへらっと笑って手を振ると、エルはわーいと喜びながら後ろのベッドの方へ走って行った。
「あっ!エル!そっちはナルが寝てるから静かに行けって!」
アルが注意すると、エルはぴたっと止まって、それからそろり、とベッドに近づいた。
「そこにナルさんが?」
奏人はいうと、アルは頷いてスマホを持ち上げたのか画面ががくっと動いた。
「ナルです。今は寝ていますが、普段はもう少し元気にしているんですよ」
そう言って映し出されたのは、病的なまでに白い肌をして、頬もこけてしまった一人の男性だった。
奏人はびっくりし、思わず少し目を伏せる。
シュビルはじっとナルを見つめ、ルリールは少しだけうつむいた。
「ゾンビみたいでしょう。自分でもよく言ってるんで気にしないでください」
アルはそう言って笑うとナルの髪をそっと撫でた。
「医者には、この辺りの治癒魔法使いではもうどうにもならないって。遠くにいけばいい医者がいるそうですが、なにしろお金もなくて」
「僕のフェロモンがあれば、ナルさんは治るんですよね」
はじめに口を開いたのは奏人だった。
「ええ。文献にはそう書かれていましたし、以前この町の総合病院で診察してもらったときにも医者からそう教わりました」
奏人は息を吸い込み、しっかりとアルの目を見た。
「僕が、必ず治しますから」
「ありがとう、奏人さん」
アルは涙を流しながらそう答えた。
ルリールは剣を磨き、
シュビルはスマホで誰かとやり取りしている。
奏人は、ただただ迷っていた。
本当に自分の後ろの方の処女がシュビルによって奪われて良いのかどうか。
もちろん元の世界に戻ったからといってお尻でセックスするなんて考えていないのだが
やはりだからといって友人に自分のはじめてを奪われるなんて、良いのだろうか、と。
「奏人」
悩む奏人にシュビルが話しかける。
びくっとしてシュビルの方を見ると、こっちへこいと手招きしている。
奏人はシュビルの方へ近寄るとルリールもそれに気が付き、とことことシュビルに近づいた。
「これ、アルさんとエル」
シュビルが指さすスマホの画面には、アルとエルの姿が映し出されていた。
「テレビ電話?」
「・・・?なんだそれ。これはこっちの世界でいう遠隔通信っていうんだけど、この機械で遠くの人とも話せるんだよ」
おそらく元の世界でいうテレビ電話のことと同じであろう。
奏人はそれ以上は何も言わず、スマホの画面を見つめた。
エルがにこにこと手を振り、アルもこちらを見ながら笑っている。
シュビルも手を振り返し、奏人の肩をだいてグイっと自分の方へ寄せた。
「ほら!奏人だ」
「あ~!奏人お兄ちゃん!そっちの人は?」
エルが指さすのは、ルリールだ。
「僕はルリールだよ~!明日は僕も会いに行くからねー」
ルリールがへらっと笑って手を振ると、エルはわーいと喜びながら後ろのベッドの方へ走って行った。
「あっ!エル!そっちはナルが寝てるから静かに行けって!」
アルが注意すると、エルはぴたっと止まって、それからそろり、とベッドに近づいた。
「そこにナルさんが?」
奏人はいうと、アルは頷いてスマホを持ち上げたのか画面ががくっと動いた。
「ナルです。今は寝ていますが、普段はもう少し元気にしているんですよ」
そう言って映し出されたのは、病的なまでに白い肌をして、頬もこけてしまった一人の男性だった。
奏人はびっくりし、思わず少し目を伏せる。
シュビルはじっとナルを見つめ、ルリールは少しだけうつむいた。
「ゾンビみたいでしょう。自分でもよく言ってるんで気にしないでください」
アルはそう言って笑うとナルの髪をそっと撫でた。
「医者には、この辺りの治癒魔法使いではもうどうにもならないって。遠くにいけばいい医者がいるそうですが、なにしろお金もなくて」
「僕のフェロモンがあれば、ナルさんは治るんですよね」
はじめに口を開いたのは奏人だった。
「ええ。文献にはそう書かれていましたし、以前この町の総合病院で診察してもらったときにも医者からそう教わりました」
奏人は息を吸い込み、しっかりとアルの目を見た。
「僕が、必ず治しますから」
「ありがとう、奏人さん」
アルは涙を流しながらそう答えた。
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