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第二章

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 その翌日。

 エミリアが王太子妃の部屋に勤務しに行くと、フリードリヒがやって来ていた。

「こんな朝からどうしたのですか?」

 やっぱり婚約破棄かしら?

 フリードリヒは仮面のような笑顔で黙って立っている。

 王太子妃がエミリアに話しかける。

「今晩、特別な晩餐がありますから、今日は通常勤務ではなく、その準備をして頂きます」

「食事の準備ですね! 任せて下さい! こう見えて料理も結構自信が...」

「料理ではありません。フリードリヒ、あとは自分でして頂戴」

「はい」

 フリードリヒにエスコートされ、エミリアは大広間へと案内された。

 式典が行われたり、舞踏会が行われたりする大きな部屋だが、今日は、商人達が持ち込んだ服飾品が所狭しと並べられていた。

「どうすればいいの?」

「ここから、今晩着る服を選んで下さい」

「マジで!? 靴とかアクセサリーも選んでいいの?」

「はい」

「やったぁ~! 有難う!」

 エミリアは喜んで品物に目を通す。

「あ、あのさ、どれも値札がないんだけど?」

「気にせず選んで下さい」

「おぉ! どれを借りでもいいんだ?」

「いえ...」

「え!? ダメなのがあるの!?」

「借りるのではなくて、購入します」

「嘘でしょ!? 値札がないのよ!? あとで法外に請求されたらどうするの!?」

「ここは王宮ですよ? 法外に請求したら逮捕されますから、商人はそんな馬鹿なことはしません」

「そうなんだ? でも、普通の貴族の御令嬢ならそういう買い方もあるんだろうけど、私はあんまりお金がないから、値段が知りたいんだけど」

「私が買いますから、エミリーは値段を知る必要がないです」

「ウッソ! マジでラッキー!」

 本当は全然ラッキーじゃない。だって、これってつまり、最後の晩餐で手切金のかわりって事でしょ?

 沢山、慰謝料ふんだくってやるんだから!

 エミリアは宝石商の前にやってきた。

 とにかく、高いやつよ!

 エミリアは1番大きなダイヤのネックレスとイヤリングを指差した。

「これがいいな!」

 振り返ってフリードリヒの顔色を伺うと、フリードリヒは眉間に皺を寄せていた。

 欲張り過ぎたかしら?

「ダメですかぁ~?」

「いえ...好きなのを選んでいいです」

 フリードリヒはそう言いつつも、別のネックレスを手に取り、エミリアにあててくる。

 イエローダイヤとブルーサファイアのネックレスで、エミリアの髪や瞳の色にもよく合う。確かに、さっきの大粒ダイヤのネックレスよりも似合っているかもしれない。

「これと、揃いのイヤリングとブレスレットも頼む。もちろん、ダイヤのセットも一緒に」

「かしこまりました! お買い上げ有難うございます!」

 商人は嬉々として商品を包む。

 その間にフリードリヒは隣の宝石商の商品も眺め始めた。

 エミリアは混乱した。

 え!? こいつ、何を企んでるの!?

 ついつい、商品ではなくフリードリヒを睨む。

「パールは嫌いですか?」

「はい?」

「好きでなくても必要な時もあるので、買っておいた方がいいですよ」

「あ、そう?」

 庶民と王族の生活を一緒にするなよ! と思ったけど、買ってくれるなら買ってもらおう。

「じゃあ、これ」

 エミリアが大粒のジャラジャラしたネックレスを指差すと、フリードリヒは明らかに嫌そうな顔をした。
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