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第二章

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 エミリアは王宮住まいとなった。結婚・恋愛相談所は弟に任せ、妃候補として、教育を受ける事になったからである。

 教育があるレベル以上に達するまで、女王の列席する晩餐会には出席出来ない。

 同じ城に住んでいるのに、フリードリヒはエミリアにしばらく会えない日々が続いていた。

 そんなある日、フリードリヒが城内を歩いていると、若い女性が大声で話している声が聞こえる。

 エミリーが騒いでいるのか?

 フリードリヒは、声のしたダイニングを覗く。

 しかし、そこには作業途中の下女しかいない。

 サボっていた下女は決まり悪そうに、急いで作業を再開する。

 フリードリヒは小さく溜息を吐いた。


 また、ある日、フリードリヒは廊下を曲がる金髪の女性の後ろ姿を見た。

 エミリーか?

 走って追いかけたが、追いついてみたら別の女性だった。

 フリードリヒは溜息を吐いた。


 たまには会いに行ってみるか?

 フリードリヒはエミリアの部屋を訪ねたが不在だった。

 大きな溜息を吐く。


 最近は何故だか溜息が止まらない。

 色々なことを我慢して、色々と努力しているのに、自分が本当に欲しいものは全部、兄であるヴィルヘルムが持っている。

 王位、世界で一番優れた女性、優秀で忠実な臣下。

 私の方が努力しているのに...

 あぁ、そうか! それでエミリーに会いたいんだ! あのおかしな女は、私よりも努力して、私よりも苦労しているのに、私よりも欲しいものが手に入らない。

 エミリーに会いたいな。

 会えばきっと、自分はエミリーよりも幸福な人間であると、自分を慰める事ができる。

________


 妃試験の日。

 フリードリヒはいつもよりも念入りに髪をブラッシングし、歯を磨いてから、試験会場に足を踏み入れた。

 閲覧席には、自分の他に、女王、王太子夫妻、第一王子夫妻、議会のメンバーが並ぶ。

「昨日行われたエミリア嬢の筆記試験の結果ですが、外国語、計算、歴史、法律、すべての項目が満点でした」

 試験官が発表すると、閲覧席にどよめきが起こる。

 フリードリヒはフッと笑った。

 学園で首席の特待生というのは本当だったらしい。

「本日は実技試験でございます。まずは、入場の挨拶から」

 エミリアは同じ年くらいの騎士にエスコートされ試験会場に入場した。

 いつも適当にまとめられている髪がキッチリとアップスタイルになっており、着ているドレスも上等なものだ。エミリアの財産では買えないような大きな宝石のネックレスとイヤリングを身につけている。それに、化粧もしているようだった。

 誰に貰ったんだ? 豪華に着飾って、まるで別人みたいだし、なんだか、違和感がある。しかも、まるで淑女のように大人しい。
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