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第二章

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「あの令嬢も、この令嬢も、クリスチナ様より、身分が低く、頭が悪く、人格も劣っている。財産があっても自分のために使い散財する。洒落た会話の一つも出来ないお子様ばかり。何一つとしてクリスチナ様より優れていない」

「クリスチナ様より優れている女性がいいと?」

「その通りです! 結婚相手は世界で一番の女性でないと! そうでなければ、一生の誓いなど出来ないですよね?」

「うっわ、本気で言ってます?」

「エミリアさんは違うのですか? 2番とか、3番の相手と結婚して、後から1番の相手と出会ったら、浮気しませんか?」

「まぁ、そうですけど...これは大変な仕事だわ」

 エミリアは腕を組んで考える。

「見た目は? 美しさで勝っていればいい?」

「兄上はクリスチナ様の事を不細工だと言っていましたが、私はクリスチナ様ほど美しい方はいないと思うのです。冷たい目で見下してるのかと思っていたら、ふとした瞬間に慈愛に満ちた表情を浮かべる。天使のように清らかであり、悪魔のように妖艶であり、善行をなす者には救いを与え、悪行をなす者には反省を促す。最後の日に現れる神のように神々しい!」

「ふ、ふ~ん...それって、もしかしてクリスチナ様のことが...」

「邪推しないで下さいね? 私は兄上の妃よりも優れた妃と結婚したいだけですから」

「あ、そうですか...」

「どうですか? クリスチナ様より優れている女性は見つけられそうですか?」

 エミリアは呆れた。

 この馬鹿王子、私に報酬を払う気ないわね!? 何の後ろ盾もない平民だと思って、ストレス発散のために呼び出しやがって!

「公女よりも身分が上って、王子の親戚くらいしかいないじゃん! 公爵より金持ちってのも無理でしょ!? クリスチナ様よりも賢い女!? 私くらいじゃない!?」

「お仕事、辞退されますか?」

「契約書交わしたんだからやるわよ! でも...本当は、誰とも結婚したくないのに、親に結婚しろって言われて、探すふりだけしたいとか、そういう感じだったりします?」

 クリスチナ様が好きで、誰とも結婚出来ないとか? 

「いや? 本気で探している」

 本当は真実の愛を求めてるとか?

 そんなんだったら協力してあげないこともない。前金だけもらってトンズラしてもいいんだけどね!

「全部が1番っていうのは難しいと思うのですけど~、フリッツ王子を1番愛してくれる女性を探すっていうのはどうです?」

「愛なんて不確かなものが分かるのですか?」

「こう見えて、私ってば優秀なんですぅ~!」

「へぇ~? そうなんですね?」

「ちょっと何よ! 私のこと馬鹿にしてるの!? でも、私には、と~ってもいい案があるんです!」

「どんな案なのですか?」

「それを教えるかわりに、前金を支払って下さいね!」

「分かりました。でも、つまらない案しか出なかったら詐欺で罰金を再び払って頂くことになりなすからね?」

「くっ...分かってるわよ!」
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