上 下
48 / 73
第二章

48

しおりを挟む
「あの令嬢も、この令嬢も、クリスチナ様より、身分が低く、頭が悪く、人格も劣っている。財産があっても自分のために使い散財する。洒落た会話の一つも出来ないお子様ばかり。何一つとしてクリスチナ様より優れていない」

「クリスチナ様より優れている女性がいいと?」

「その通りです! 結婚相手は世界で一番の女性でないと! そうでなければ、一生の誓いなど出来ないですよね?」

「うっわ、本気で言ってます?」

「エミリアさんは違うのですか? 2番とか、3番の相手と結婚して、後から1番の相手と出会ったら、浮気しませんか?」

「まぁ、そうですけど...これは大変な仕事だわ」

 エミリアは腕を組んで考える。

「見た目は? 美しさで勝っていればいい?」

「兄上はクリスチナ様の事を不細工だと言っていましたが、私はクリスチナ様ほど美しい方はいないと思うのです。冷たい目で見下してるのかと思っていたら、ふとした瞬間に慈愛に満ちた表情を浮かべる。天使のように清らかであり、悪魔のように妖艶であり、善行をなす者には救いを与え、悪行をなす者には反省を促す。最後の日に現れる神のように神々しい!」

「ふ、ふ~ん...それって、もしかしてクリスチナ様のことが...」

「邪推しないで下さいね? 私は兄上の妃よりも優れた妃と結婚したいだけですから」

「あ、そうですか...」

「どうですか? クリスチナ様より優れている女性は見つけられそうですか?」

 エミリアは呆れた。

 この馬鹿王子、私に報酬を払う気ないわね!? 何の後ろ盾もない平民だと思って、ストレス発散のために呼び出しやがって!

「公女よりも身分が上って、王子の親戚くらいしかいないじゃん! 公爵より金持ちってのも無理でしょ!? クリスチナ様よりも賢い女!? 私くらいじゃない!?」

「お仕事、辞退されますか?」

「契約書交わしたんだからやるわよ! でも...本当は、誰とも結婚したくないのに、親に結婚しろって言われて、探すふりだけしたいとか、そういう感じだったりします?」

 クリスチナ様が好きで、誰とも結婚出来ないとか? 

「いや? 本気で探している」

 本当は真実の愛を求めてるとか?

 そんなんだったら協力してあげないこともない。前金だけもらってトンズラしてもいいんだけどね!

「全部が1番っていうのは難しいと思うのですけど~、フリッツ王子を1番愛してくれる女性を探すっていうのはどうです?」

「愛なんて不確かなものが分かるのですか?」

「こう見えて、私ってば優秀なんですぅ~!」

「へぇ~? そうなんですね?」

「ちょっと何よ! 私のこと馬鹿にしてるの!? でも、私には、と~ってもいい案があるんです!」

「どんな案なのですか?」

「それを教えるかわりに、前金を支払って下さいね!」

「分かりました。でも、つまらない案しか出なかったら詐欺で罰金を再び払って頂くことになりなすからね?」

「くっ...分かってるわよ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

【完結】婚約前に巻き戻ったので婚約回避を目指します~もう一度やり直すなんて、私にはもう無理です~

佐倉えび
恋愛
リリアンナは夫のジルベールの浮気や子どもとの不仲、うまくいかない結婚生活に限界を感じ疲れ果てていた。そんなある日、ジルベールに首を絞められ、気が付けば婚約直前の日まで時が巻き戻っていた……!! 結婚しても誰も幸せになれないのだから、今度は婚約を回避しよう! 幼馴染のふたりが巻き戻りをきっかけにやり直すお話です。 小説家になろう様でも掲載しています。

何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします

天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。 側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。 それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

【完結】夫もメイドも嘘ばかり

横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。 サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。 そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。 夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

処理中です...