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 考えをめぐらし窓の外に目をやると、警備兵(蝶)が元気に庭を飛んでいるのが目に入ってきた。

 それでクリスチナは、ふと、ヴィルヘルムがブカブカな学生服を着ていた時の事を思い出した。

 あの日も、庭で警備兵が飛んでいた。

『学生服のサイズがあっていないようですが、作り直しさせなかったのですか?』

 クリスチナは、そう尋ねた。

『私は男で成長が早いから、このくらいで丁度いいのだ。すぐにピッタリになる』

 殿下の言葉通り、制服は3ヵ月でピッタリになり、翌年にはもう着られないサイズになっていた。

 そうだ! 殿下のように予測すればいい。


「皆様、ワタクシの思慮が足りなかった所為で、混乱を招き、申し訳ありません。ですが、どうか、今一度、お力をお貸し下さい」

「こちらこそ、公女様の前で騒ぎ申し訳ありません」

「大変失礼致しました! もちろん、何なりとお申し付けください!」

「では、ダイエットチームの皆様はワタクシがここまでなら痩せると思われるサイズを予測して頂けますか? 服飾チームの皆様はそのサイズをもとにドレスを縫って下さい。ワタクシは予測のサイズまで懸命に努力させて頂きます」

「正確に出すのは難しいと思われますが、過去のデータから大体のサイズを予測することは出来るかもしれません」

「私達も御指示の通りに縫わせて頂きます」

「皆様、有難うございます。一流の皆様の経験が頼りです。力を合わせて頑張りましょう」

 再び、チームの皆に笑顔が戻り、クリスチナはホッと一息ついた。

____________

 王宮でも、ボンヤリと庭を眺める男がいた。

 第一王子ヴィルヘルムである。

「今日は警備兵のやつ、サボっているな...」

「何を言っているのか分からないけど、そんなことより、どうしてくれるのですか!? 私はヴィルと結婚出来ると思ったから、就活もしなかったし、故郷にも結婚するから帰りませんって言っちゃったのよ!? それなのに、詐欺罪で罰金を金貨100枚も払えとか言われちゃって、庶民にそんな大金が払える訳ないでしょ!?」

 抗議しているのはエミリアである。

「約束通り助けたじゃないか。罰金で済んで良かったと思うべきだ。悪意のない勘違いとはいえ、王子との婚約を詐称した罪なんて、本来なら実刑で懲役がかせられるんだぞ? 宰相まで侮辱しちゃって。友人だから私が取りなしてやったんだ。有り難く思えよ。そもそも、何で私と結婚出来ると思ったんだ? 私は子供の頃からクリスチナと婚約しているんだぞ? どいつも、こいつも、私を浮気性のダメ王子だと思いやがって! まぁ...ダメ王子なのは当たっているかもしれないが...」

「ヴィルはダメ王子なんかじゃないわ! 私は素敵な王子様だって思ってるのよ?」

「そうか」

「そうか...じゃなくて! クリスチナ様とは、婚約を白紙に戻されたのでしょ? つまりは、今なら私と婚約してもいいはず!」

「エミリアは、本音が言い合える数少ない友人ではあるし、一緒に過ごすのは楽しいが、ただそれだけなんだよな」

「クリスチナ様なんて、友達ですらないのでしょう? 議会が勝手に決めた相手だし!」

「クリスチナは議会が決めた相手じゃないぞ? むしろ、王家の血が濃いんじゃないかと、最初は反対されたんだ」
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