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第三幕 学生期
232.ローダンセの手紙 ❤︎
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手紙にはピンクのローダンセの押し花が添えられている。
『親愛なる姫君カレン様
姿だけでなく、心まで美しい姫君様。貴女は、焦茶で醜い私に対しても、優しく接して下さった素晴らしい方です。ダンスパートナーを決めなくてはいけなかった、あの日、私は誰からも疎まれ、敬遠されていました。貴女だけが私を受け入れて、パートナーになって下さった。貴女だけが嫌われ者の私に救いの手を差し伸べて下さったのです。
国を憂い、民の幸福を願い、望まない結婚であるのにも関わらず、貴女は、また私を受け入れようとして下さっている。ですが、心配はいりません。今度は私が貴女をお救い致します。
軍事協定が結ばれれば、貴女を苦しめる、貴女が望まない結婚を回避することが出来ます。ですから、どうか、この軍事協定に賛同して下さい。
優しい貴女は、それでも私を哀れに思って、ジュン殿下のご提案された婚姻を受け入れようとして下さるかもしれません。ですが、私にはまだ、貴女にお伝え出来ていない秘密があるのです。
何故、ジーンシャン家に生まれながら、私が焦茶なのか、きっと不思議に思われていた事と思われます。母メアリーの不義を噂する者達も世間にはいるようですが、私は紛れもなく父グリエルモの子であります。ですが、私は焦茶で生まれました。
それは、私が呪われているからなのです。そして、この呪いは、我が子にも現れる可能性があるのです。この呪いは元々、魔王を倒した際に母メアリーが受けた呪いだからです。もし、私と結婚し、呪われた子供が生まれたら、貴女はきっと苦しむでしょう。
だからどうか、私に同情して、私を受け入れるような事はしないで下さい。貴女まで生贄になる必要はありません。私のことを思って下さるなら、どうか、貴女を幸せにする事ができる、心優しい男と結婚して下さい。貴女の幸せ、笑顔こそが私の願いなのです。
貴女にローダンセの花を贈ります。乾燥させても色褪せない、この花には『変わらぬ思い』、『終わりのない友情』という花言葉があります。ローダンセのように変わらない友情を貴女に捧げます。
アントニオ・ジーンシャン』
カレンの瞳から大粒の涙がポロポロと溢れた。その雫が頬をつたい、手紙を握る手の袖を濡らした。
ジュン王太子
「トニー様は何と?」
カレン
「トニー様はワタクシを愛しているのだわ!」
タイラ
「はっ?」
カレン
「ワタクシを愛して下さっているから、ワタクシとは結婚出来ないとおっしゃっているのよ!」
エリカ
「嘘を言わないで!? 結婚を断られたのに愛されている訳ないじゃない! フラれて頭でもおかしくなったんじゃないの!?」
カレン
「おかしくなんかなっていません! この手紙にトニー様のお気持ちがはっきりと書かれているのよ! 仕方がないから手紙を見せてあげるわ!」
エリカは手紙を受け取り読み始めた。そして『不義を噂する者達』という言葉に目がとまった。
私と同じだ! トニー様は、私と同じだったのだわ! 髪色の所為で蔑まれ、苦しんでいたのね! いえ、もしかしたら、私よりももっと苦しんでいた?
私は、銀髪に生まれなかった所為で心ない人々に、苦しめられてきた。そんな私を苦しめる人々を憎んで、薄汚い人間だと軽蔑してきたのに...私もトニー様に同じことを!?
トニー様は、私と仲良くしようと、沢山のお心遣いをして下さっていたのに、私は冷たく接してしまった! それに、この手紙は、お姉様に対する愛情で溢れている! トニー様はお姉様を愛しているんだわ! それなのに、トニー様はお姉様の幸せのために、愛を諦めたんだ! 何て優しい人! 私は何にも知らないで、こんな優しい人を傷付けて、いい気になっていたというの!? 自分が、とても恥ずかしい。
エリカの瞳からも大粒の涙が溢れ出した。
ジュン王太子
「え、エリカまで!? 何が書いてあるんだ!」
ジュン王太子は慌てて手紙を受け取り、手紙を広げた。タイラとヒロヤ国王も後ろから覗き込む。
一文、一文、読み進めるうちに、胸の奥に熱いものが込み上げてくる。
私達がなす術もなく時を過ごしている間、トニー様は、魔王に立ち向かうことを考えていらっしゃったのだ。魔王封印の呪いが子孫に移る可能性を考え、カレンを政略結婚の生贄にしてはいけないとまで考えて下さった。それでも両家の仲が保たれるようにと、考え抜いて、軍事協定をご提案されたのだ。そして、ご自身の力で魔王との決着にケリをつけようとなさっている。何と賢く、尊いお方なのだ! やはり、トニー様は本物の天使だ! 神の遣わした御使であらせられるのだ!
涙をぐっと堪え、胸に決意を抱いた。その場にいた皆が同じ思いだった。
ジュン、タイラ、ヒロヤ
「「「トニー様の(魔王封印の)呪いを解き、(信者として)生涯お仕えする!」」」
カレン、エリカ
「「トニー様の(焦茶になる)呪いを解き、(結婚して)生涯お仕えするわ!」」
かくして、連合魔導騎士団の発足が受諾されることとなった。魔王を倒すために作られることとなった、この魔導騎士団が、実は魔王自身とプラスアルファの龍人によって考案されたということは、アントニオの秘密である。
『親愛なる姫君カレン様
姿だけでなく、心まで美しい姫君様。貴女は、焦茶で醜い私に対しても、優しく接して下さった素晴らしい方です。ダンスパートナーを決めなくてはいけなかった、あの日、私は誰からも疎まれ、敬遠されていました。貴女だけが私を受け入れて、パートナーになって下さった。貴女だけが嫌われ者の私に救いの手を差し伸べて下さったのです。
国を憂い、民の幸福を願い、望まない結婚であるのにも関わらず、貴女は、また私を受け入れようとして下さっている。ですが、心配はいりません。今度は私が貴女をお救い致します。
軍事協定が結ばれれば、貴女を苦しめる、貴女が望まない結婚を回避することが出来ます。ですから、どうか、この軍事協定に賛同して下さい。
優しい貴女は、それでも私を哀れに思って、ジュン殿下のご提案された婚姻を受け入れようとして下さるかもしれません。ですが、私にはまだ、貴女にお伝え出来ていない秘密があるのです。
何故、ジーンシャン家に生まれながら、私が焦茶なのか、きっと不思議に思われていた事と思われます。母メアリーの不義を噂する者達も世間にはいるようですが、私は紛れもなく父グリエルモの子であります。ですが、私は焦茶で生まれました。
それは、私が呪われているからなのです。そして、この呪いは、我が子にも現れる可能性があるのです。この呪いは元々、魔王を倒した際に母メアリーが受けた呪いだからです。もし、私と結婚し、呪われた子供が生まれたら、貴女はきっと苦しむでしょう。
だからどうか、私に同情して、私を受け入れるような事はしないで下さい。貴女まで生贄になる必要はありません。私のことを思って下さるなら、どうか、貴女を幸せにする事ができる、心優しい男と結婚して下さい。貴女の幸せ、笑顔こそが私の願いなのです。
貴女にローダンセの花を贈ります。乾燥させても色褪せない、この花には『変わらぬ思い』、『終わりのない友情』という花言葉があります。ローダンセのように変わらない友情を貴女に捧げます。
アントニオ・ジーンシャン』
カレンの瞳から大粒の涙がポロポロと溢れた。その雫が頬をつたい、手紙を握る手の袖を濡らした。
ジュン王太子
「トニー様は何と?」
カレン
「トニー様はワタクシを愛しているのだわ!」
タイラ
「はっ?」
カレン
「ワタクシを愛して下さっているから、ワタクシとは結婚出来ないとおっしゃっているのよ!」
エリカ
「嘘を言わないで!? 結婚を断られたのに愛されている訳ないじゃない! フラれて頭でもおかしくなったんじゃないの!?」
カレン
「おかしくなんかなっていません! この手紙にトニー様のお気持ちがはっきりと書かれているのよ! 仕方がないから手紙を見せてあげるわ!」
エリカは手紙を受け取り読み始めた。そして『不義を噂する者達』という言葉に目がとまった。
私と同じだ! トニー様は、私と同じだったのだわ! 髪色の所為で蔑まれ、苦しんでいたのね! いえ、もしかしたら、私よりももっと苦しんでいた?
私は、銀髪に生まれなかった所為で心ない人々に、苦しめられてきた。そんな私を苦しめる人々を憎んで、薄汚い人間だと軽蔑してきたのに...私もトニー様に同じことを!?
トニー様は、私と仲良くしようと、沢山のお心遣いをして下さっていたのに、私は冷たく接してしまった! それに、この手紙は、お姉様に対する愛情で溢れている! トニー様はお姉様を愛しているんだわ! それなのに、トニー様はお姉様の幸せのために、愛を諦めたんだ! 何て優しい人! 私は何にも知らないで、こんな優しい人を傷付けて、いい気になっていたというの!? 自分が、とても恥ずかしい。
エリカの瞳からも大粒の涙が溢れ出した。
ジュン王太子
「え、エリカまで!? 何が書いてあるんだ!」
ジュン王太子は慌てて手紙を受け取り、手紙を広げた。タイラとヒロヤ国王も後ろから覗き込む。
一文、一文、読み進めるうちに、胸の奥に熱いものが込み上げてくる。
私達がなす術もなく時を過ごしている間、トニー様は、魔王に立ち向かうことを考えていらっしゃったのだ。魔王封印の呪いが子孫に移る可能性を考え、カレンを政略結婚の生贄にしてはいけないとまで考えて下さった。それでも両家の仲が保たれるようにと、考え抜いて、軍事協定をご提案されたのだ。そして、ご自身の力で魔王との決着にケリをつけようとなさっている。何と賢く、尊いお方なのだ! やはり、トニー様は本物の天使だ! 神の遣わした御使であらせられるのだ!
涙をぐっと堪え、胸に決意を抱いた。その場にいた皆が同じ思いだった。
ジュン、タイラ、ヒロヤ
「「「トニー様の(魔王封印の)呪いを解き、(信者として)生涯お仕えする!」」」
カレン、エリカ
「「トニー様の(焦茶になる)呪いを解き、(結婚して)生涯お仕えするわ!」」
かくして、連合魔導騎士団の発足が受諾されることとなった。魔王を倒すために作られることとなった、この魔導騎士団が、実は魔王自身とプラスアルファの龍人によって考案されたということは、アントニオの秘密である。
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