上 下
205 / 249
第三幕 学生期

203.白銀のトニー様5 ❤︎

しおりを挟む
 授業が終わり、教室を後にするとタイラとレオナルドが迎えに来た。

タイラ
「トニー様! 大丈夫でした?」

アントニオ
「はい。レベル5でも問題ないとカーチレ先生に言って頂きました」

レオナルド
「ダンスのことは心配していないよ。そうじゃなくて、誰かにイジメられたりしなかったかきいてるんだ」

アントニオ
「大丈夫でした。カレン様も一緒ですし、楽しく授業を受けられました。そちらはどうでした?」

タイラ
「俺がイジメられるわけないだろ?」

アントニオ
「ふふ、そうですね。楽しくダンスが勉強出来ました?」

タイラ
「ま、まぁまぁだったかな? なぁ?」

レオナルド
「...まぁ」

 実は慣れない女性パートで散々だったが、2人ともプライドが邪魔して正直には答えなかった。

アントニオ
「タイラ様とレオもレベル5で一緒に勉強出来そうですか?」

タイラ
「そ、そうだな。考えておく」

レオナルド
「そのうちに」

リッカルド
「恐れながら! ちょっと違う意味でトニー様の防犯を強化した方が良いと思われますので、問題がないのでしたら、是非、レベル5のクラスを一緒に受講して頂いた方がよいと思います」

アントニオ
「違う意味?」

リッカルド
「今日は、その...ちょっと、お洒落をされ過ぎた様な気がします」

アントニオ
「あ、やはりそうですか? 少し華美にし過ぎて反感を買ってしまいました? 大して踊れない癖に、母上と同じ白銀の髪にしてきて生意気でしたよね? 次回からは焦茶のままで受けようと思います。レベル5のクラスは、漆黒の一族の方が多くいらっしゃったので、かえって地毛ではない銀髪は目立ってしまいましたので」

リッカルド
「トニー様には、そう感じられたのですか!? むしろ、女子生徒からストーカーされそうなレベルで、羨望の眼差しを向けられていましたが?」

アントニオ
「どうして、ジーンシャン家の身内は、すぐに、そういう勘違いをするのでしょうか? 実際には、私は嫌われているんですよ」

カレン
「そんなことありませんわ! とても、素敵ですのに!」

 お姫様に褒められて、アントニオは照れてフニャっと笑顔になる。そんな顔も可愛いとカレンは思った。

アントニオ
「有難うございます。でも、カレン様も血が繋がっているから、私の容姿の醜さが気にならないだけですよ」

 そう言って、今度は悲しそうな顔をした。そんなアントニオの姿もまた、女心をくすぐるものであった。

 表情がコロコロと変わるアントニオの魅力に、すっかり取り憑かれたカレンの目には、もはやレオナルドは映っていなかった。

 私がトニー様の側にいて、守って差し上げなくてわ!

カレン
「でも、ワタクシは、トニー様の魅力が広まり過ぎない方が嬉しいですわ。そのお陰でペアを組んで頂けましたもの!」

アントニオ
「嬉しいお言葉、有難うございます。」

 光り輝くような笑顔をアントニオから向けられ、カレンも嬉しかった。

 アントニオを気遣うカレンをみて、レオナルドはカレン王女に好感を持った。

 カレン様は、トニーのことを哀れんでいるのではなく、本当に好意をもってペアを組んでくれたようだ。女子学生の多くは髪の色や身分を気にして、計算高く近付いて来るから苦手だが、カレン様のような優しい方は好感が持てる。トニーのペアでなければ、ダンスのペアをお願いしたかった。

________

 王宮に帰ったカレンとタイラは、ジュン王太子やアンナ王太子妃、妹のエリカとディナーの席に着いた。

ジュン
「それで、その...どうだったんだね? ダンスの授業は?」

 前日のディナーは、カレンが大変不機嫌だったので、今日はカレンのご機嫌を損ねないように、ジュン王太子は恐る恐る尋ねる。

カレン
「トニー様って、本当に素晴らしいわ! 待ち合わせ場所にも、ワタクシを待たせないようにと早く来て下さっていたし! ワタクシに恥をかかせないようにと、お洒落をしてきて下さって、凄く格好良かったの! 教室へ移動するときもエスコートして下さって! お姫様扱いというのかしら? 実際に姫ですけど。ダンスもお上手で、一年生だというのにレベル5でも十分な腕前でしたの! タイラよりも王子様のようでしたわ!」

ジュン
「そうか! それは良かった!」

カレン
「本当に殿下がへタレだったお陰で、トニー様とペアが組めて幸運でしたわ!」

ジュン
「うっ...そうか」

カレン
「トニー様とペアを組まなかった女子達の後悔している顔といったら、大変に愉快でしたわ! 御自分の見る目の無さを大いに反省されたことでしょう!」

 タイラは、髪色が変わっただけで手のひらを返した様な態度をとる姉に、呆れていた。

タイラ
「自分だって、今日の朝まで交代しようとしていた癖に...」

 独り言のようにボソボソ呟く。

カレン
「タイラさん? 何か仰いました? トニー様やレオ様に余計なことを言わないで頂戴ね! お優しいトニー様が傷付いてしまわれるでしょう?」

 くそ! トニー様が傷付くから俺が言いつけられないことをいいことに、好き放題しやがって、姉上め!

アンナ王太子妃
「カレン、そんなにトニー様を気に入ったの? でも、焦茶なのでしょう?」

カレン
「普段は焦茶くらいじゃないと、女性が寄ってきて大変だから、焦茶でいいのですわ。ここぞという時だけ、お洒落して下されば!」

アンナ王太子妃
「そうなのですか? トニー様はそんなに格好が宜しいの?」

タイラ
「それはもう! めちゃくちゃ格好良いです!」

カレン
「勇者様と聖女様の良いところを足したみたいに格好いいわ!」

ジュン
「トニー様のかっこよさは、見た目だけではない。むしろ、その中身にある!」

エリカ
「そんなに格好良いのですか!?」

カレン
「えぇ! それはもう!」

エリカ
「では、私が結婚したいわ!」

「「「「え!?」」」」

エリカ
「だって、私も、もう10歳ですもの! 婚約者がいてもおかしくない歳でしょう?」

カレン
「え? で、でも、トニー様は私のダンスパートナーですし...」

エリカ
「お姉様は、ただのダンスパートナーでしょう? それにトニー様は12歳なのだから、17歳のお姉様が結婚相手では、お可哀想よ! 結婚相手は、若い方がいいに決まっていますわ!」

カレン
「な、なんですって!?」

エリカ
「ねぇ、殿下! トニー様が王都に残られるような理由が欲しいと仰っていたでしょう? 私と結婚すればいいと思いませんか?」

ジュン
「た、確かに!?」

カレン
「そ、そんな! 反対です!」

エリカ
「どうして?」

カレン
「結婚は年上からと決まっています!」

エリカ
「お姉様が婚約するのを待っていたら、私は行き遅れてしまいます! そんなに言うなら、さっさと隣国の王子と結婚して下さいませ!」

カレン
「いやよ! あんな茶髪の不細工!」

エリカ
「そんなことを言ったらトニー様も焦茶なのでしょう?」

カレン
「エリカはトニー様に会ったこともないのに、勝手なことを言わないで!」

アンナ王太子妃
「まぁ、まぁ、落ち着いて! そんなに素敵な方なら、私もお会いしたいし、1度、お茶会にお呼びしましょう? ジーンシャン家には13歳のレオナルド様も10歳のエドアルド様もいらっしゃいますし、皆様美男でいらっしゃるのでしょう? ジーンシャン家の皆様をお呼びしてお茶会という名のお見合いをしましょう! 殿下、宜しいでしょう? ジーンシャン家とより強い結びつきが出来るのは好ましいことですし!」

ジュン
「そうだな、陛下に相談してみよう」

タイラ
「えぇ~~!?」

 タイラは、姉妹達の毒牙から、どうすればトニー様を守ることが出来るのか、思い悩む事となった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉ 攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。 私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。 美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~! 【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避 【2章】王国発展・vs.ヒロイン 【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。 ※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。 ※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差) ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/ Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/ ※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。

妹を見捨てた私 ~魅了の力を持っていた可愛い妹は愛されていたのでしょうか?~

紗綺
ファンタジー
何故妹ばかり愛されるの? その答えは私の10歳の誕生日に判明した。 誕生日パーティで私の婚約者候補の一人が妹に魅了されてしまったことでわかった妹の能力。 『魅了の力』 無自覚のその力で周囲の人間を魅了していた。 お父様お母様が妹を溺愛していたのも魅了の力に一因があったと。 魅了の力を制御できない妹は魔法省の管理下に置かれることが決まり、私は祖母の実家に引き取られることになった。 新しい家族はとても優しく、私は妹と比べられることのない穏やかな日々を得ていた。 ―――妹のことを忘れて。 私が嫁いだ頃、妹の噂が流れてきた。 魅了の力を制御できるようになり、制限つきだが自由を得た。 しかし実家は没落し、頼る者もなく娼婦になったと。 なぜこれまであの子へ連絡ひとつしなかったのかと、後悔と罪悪感が私を襲う。 それでもこの安寧を捨てられない私はただ祈るしかできない。 どうかあの子が救われますようにと。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

七瀬美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

処理中です...