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第三幕 学生期
202.白銀のトニー様4 ❤︎
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ダンスの授業はレベルごとに5つのクラスに分かれている。前世からダンスを勉強しているアントニオと毎年『優』の成績をとっているカレンは1番上のレベル5のクラスに通う予定だ。
タイラとレオナルドクラスはレベル4のクラスを希望している。レオナルドが去年『良』の評価だったということもあるが、慣れない女性パートを交換して踊らなくてはいけないということで、基礎をやり直すことにしたのである。ちなみに、タイラは『優』の成績をとっている。
ダンスの授業は、慣れてきたら、いつでも上のクラスに移れるし、上級クラスが合わない時は、下級クラスに移ることもできる。タイラとレオナルドは上手く踊れそうならレベルを上げる気でいるのだ。
アントニオ達がレベル5のクラスに足を踏み入れると、先に来ていた学生達が一斉に注目した。
カレン王女が見たこともない美しい男子学生にエスコートされている。
女子学生は溜息を漏らし、男子学生は身分の高そうな学生に困惑した。
カレン王女は、焦茶のアントニオ・ジーンシャン様と組んだと聞いたけど、やっぱり嫌になってパートナーを変えたんだわ! あの素敵な方は一体誰なの?
銀髪ということは、王家の血筋をくむ者であるはず。
しかも、護衛騎士が2人も付き添っている。
アントニオは、レベル5のクラスに集まった学生を見て、髪色を変えてきたことを後悔していた。最上級のこのクラスには、身体能力の優れた漆黒の一族の男子学生が多く、女子学生も2人だけではあるが黒髪の学生がいる。
これなら地毛の焦茶の方が目立たないし、漆黒の髪色の学生は俺が茶髪でも気にしないだろう。女子学生は金髪の学生が多いが、漆黒の一族の男子学生をパートナーにする位だから、きっと見た目より、中身の実力を重視するタイプだ。かえって、銀髪に染めてくるような男は、ナンパでチャラい奴と思われ、嫌われてしまうかもしれない。
さっきから、凄く睨まれている気がするし、母上と同じ銀髪はやり過ぎだったかな? 王族特有の色だもんなぁ~、せめてジーンシャン家の色というか、父上と同じ金髪だったら、もうちょっと印象が良かったかもしれない? いや、でも、次回からは焦茶に戻ろうかな。
レベル5のクラスの先生は漆黒の一族のレセディ ・オチエン先生とカーチレ・オチエン先生だ。学生は40人20ペアと他のクラスよりも少ない人数だ。ペアのどちらかが去年の成績で『優』以上をとっていないとレベル5のクラスは履修出来ない。厳密にはルールとして決まってはいないが、暗黙の了解でそうなっているらしい。
今日は、初めてということもあり、ペアの実力をみるため1組ずつ音楽をかけて踊ることになった。魔道具の音響機器でも使うのかと思いきや、さすが貴族の学校! ピアニストさんがピアノでBGM(背景音楽)を生演奏してくれるようだ。
アントニオ
「生演奏なのですね! 凄いです!」
カレン
「どのクラスもピアニストがいるのですが、レベル5のクラスのピアニストが一番上手なのですよ。」
アントニオ
「それは、このクラスについていけるように頑張らないといけませんね! カレン様の足を引っ張らないように頑張ります。」
順番にダンスを踊っていく。どの学生も、とてもダンスが上手だ。特に、漆黒の一族同士のペア2組は、去年は『優』よりも上の評価である『秀』という成績をとっており、ほとんどプロみたいなダンスである。
アントニオは段々と不安になってきた。前世でもダンスを習っていたし、今世では2歳からダンスを習っているが、前世で習得したダンスはオペラの舞台でそれなりに見える程度のダンスだし、2歳から習っているダンスはバレエで、社交ダンスではないからだ。
もちろん、パーティーに参加した時に恥をかかない程度には、社交ダンスも勉強はしたが、パーティーでは難しいステップは踏まないのである。踊る相手もメアリーやジーンシャン城の身内ばかりであった。
もっと下のレベルのクラスを希望すればよかったかな? 今更、後悔しても遅い。背伸びをせずに、今は出来ることをきちんとやろう!
ダンス教師であるレセディとカーチレは、カレン王女が連れてきた謎のパートナーに注目していた。
履修登録ではカレン王女と組んでいるのは、ジーンシャン家のアントニオ様のはずだ。白銀の髪は王族の血をひく証。そして、スカイブルーの瞳はジーンシャン家の血をひく証だ。そんな人物はアントニオ・ジーンシャン以外には存在しないはずだが、アントニオ様は焦茶のはず! しかし、よく見ると、顔は勇者グリエルモ様に似ている。やはり、あの学生はアントニオ様なのか!?あの学生は一体誰なんだ?
他の学生は皆、ペアでもバラバラに教室の中央に歩み出て、男性が手を広げてペアの女子を呼び寄せて、ダンスを踊る体勢を組む。そうなって、始めてペアを組んでいる相手の学生に触れる。
だが、謎の学生は教室に入る前から、ペアであるカレン王女に腕を貸してエスコートをしてきていた。順番が来て教室の中央に移動する際も、物語の主人公が恋するヒロインにするように、カレン王女を丁重にエスコートした。
その所作のエレガントなこと!
レセディは大事にエスコートされたカレン王女が羨ましいと思った。プロのダンサーでも、中々、そんな風にはエスコートしてもらえないものだ。カレン王女も夢見心地でペアの相手を見つめる。
ダンスの体勢をとるために、1度、お互いの体を離す。そのひとときの別れすら、名残り惜しそうに振る舞う。
これから、バレエの舞台が始まるかのような、ドキドキ感に、先生も学生達も胸を躍らせた。
音楽が始まった。
謎の学生は恭(うやうや)しくお辞儀をすると、ただ手を広げるのではなく、手をカレン王女の方へ真っ直ぐと差し出した。
アントニオが、前世で王子役を歌ったときに習得した、愛するヒロインの手を取るための決めポーズだ。
カレンがそっとアントニオの手に、自分の手を重ねると、アントニオはゆっくりとカレンを抱き寄せた。
見つめ合ったまま接近する美男美女の2人に、ギャラリーの多くが興奮して悶えた。
とうとうペアが密着すると、何とも言えない上品な色気が漂う。
ダンスが始まった。
難しいステップは踏んでいないが、その姿勢やリズム感は抜群である。
ひとつひとつの動作が洗練されており、美しい。
何よりも容姿が美しい! 美し過ぎると言って良いほどに!
それに、ダンスを踊ることを心から楽しんでいるようで、他の学生のように必死な顔ではなく、時折笑顔が見える。そして、時折、ギャラリーにも目線を送ってアピールするものだから、女子学生達は謎の学生に夢中になった。
目のあった学生は誰もが、彼こそが自分の運命の相手だと誤解した。ダンスが終わる頃には、クラスの女子のほとんどが謎の学生に恋をしていたのである。
そうとは知らないアントニオは、教室が変な雰囲気になっているので心配になった。
やっぱり、ダンスのレベルが合わないって思われたかな?
男性教師のカーチレ先生に近付き、質問する。
アントニオ
「私のダンスはどうでしたでしょうか? こちらのクラスでも、皆様の足を引っ張らずに勉強出来そうでしょうか?」
カーチレ
「それだけ基本が出来ていらっしゃれば、問題ありません。ところで、その...カレン様のパートナーで履修登録されているのは、アントニオ・ジーンシャン様だと伺ったのですが...」
貴方様はどなたなのでしょうか?
アントニオ
「そうです! 私がアントニオ・ジーンシャンで御座います。私の名前を覚えて下さって光栄で御座います」
学生達はどよめいた。
入学式や、先週のダンスパートナー選びで見かけた際は、アントニオ様は確かに焦茶だったからだ。
アントニオ
「カレン様! このクラスで勉強しても大丈夫だそうです!」
カレン
「良かったですわ!」
アントニオ
「1年目からレベル5のクラスで習えるだなんて、カレン様のお陰です!」
カレン
「トニー様のお役に立てて光栄ですわ!」
カレンは授業中ずっと、アントニオの側に寄り添って、他の女子が近付かないように牽制した。
トニー様が焦茶のときは見向きもしないどころか、避けるようにしていたのに、今さら恋に落ちて近付こうとしても、遅いわよ!
レベル5クラスの学生はほとんど、最初からペアが決まっており、パートナー選びの際にレオナルドやタイラを希望していた女子学生は僅かだった。だが、カレンは、自分以外の女子は敵だと言わんばかりに、闇のオーラを放って威嚇したのであった。もちろん、アントニオに気付かれない程度に。
タイラとレオナルドクラスはレベル4のクラスを希望している。レオナルドが去年『良』の評価だったということもあるが、慣れない女性パートを交換して踊らなくてはいけないということで、基礎をやり直すことにしたのである。ちなみに、タイラは『優』の成績をとっている。
ダンスの授業は、慣れてきたら、いつでも上のクラスに移れるし、上級クラスが合わない時は、下級クラスに移ることもできる。タイラとレオナルドは上手く踊れそうならレベルを上げる気でいるのだ。
アントニオ達がレベル5のクラスに足を踏み入れると、先に来ていた学生達が一斉に注目した。
カレン王女が見たこともない美しい男子学生にエスコートされている。
女子学生は溜息を漏らし、男子学生は身分の高そうな学生に困惑した。
カレン王女は、焦茶のアントニオ・ジーンシャン様と組んだと聞いたけど、やっぱり嫌になってパートナーを変えたんだわ! あの素敵な方は一体誰なの?
銀髪ということは、王家の血筋をくむ者であるはず。
しかも、護衛騎士が2人も付き添っている。
アントニオは、レベル5のクラスに集まった学生を見て、髪色を変えてきたことを後悔していた。最上級のこのクラスには、身体能力の優れた漆黒の一族の男子学生が多く、女子学生も2人だけではあるが黒髪の学生がいる。
これなら地毛の焦茶の方が目立たないし、漆黒の髪色の学生は俺が茶髪でも気にしないだろう。女子学生は金髪の学生が多いが、漆黒の一族の男子学生をパートナーにする位だから、きっと見た目より、中身の実力を重視するタイプだ。かえって、銀髪に染めてくるような男は、ナンパでチャラい奴と思われ、嫌われてしまうかもしれない。
さっきから、凄く睨まれている気がするし、母上と同じ銀髪はやり過ぎだったかな? 王族特有の色だもんなぁ~、せめてジーンシャン家の色というか、父上と同じ金髪だったら、もうちょっと印象が良かったかもしれない? いや、でも、次回からは焦茶に戻ろうかな。
レベル5のクラスの先生は漆黒の一族のレセディ ・オチエン先生とカーチレ・オチエン先生だ。学生は40人20ペアと他のクラスよりも少ない人数だ。ペアのどちらかが去年の成績で『優』以上をとっていないとレベル5のクラスは履修出来ない。厳密にはルールとして決まってはいないが、暗黙の了解でそうなっているらしい。
今日は、初めてということもあり、ペアの実力をみるため1組ずつ音楽をかけて踊ることになった。魔道具の音響機器でも使うのかと思いきや、さすが貴族の学校! ピアニストさんがピアノでBGM(背景音楽)を生演奏してくれるようだ。
アントニオ
「生演奏なのですね! 凄いです!」
カレン
「どのクラスもピアニストがいるのですが、レベル5のクラスのピアニストが一番上手なのですよ。」
アントニオ
「それは、このクラスについていけるように頑張らないといけませんね! カレン様の足を引っ張らないように頑張ります。」
順番にダンスを踊っていく。どの学生も、とてもダンスが上手だ。特に、漆黒の一族同士のペア2組は、去年は『優』よりも上の評価である『秀』という成績をとっており、ほとんどプロみたいなダンスである。
アントニオは段々と不安になってきた。前世でもダンスを習っていたし、今世では2歳からダンスを習っているが、前世で習得したダンスはオペラの舞台でそれなりに見える程度のダンスだし、2歳から習っているダンスはバレエで、社交ダンスではないからだ。
もちろん、パーティーに参加した時に恥をかかない程度には、社交ダンスも勉強はしたが、パーティーでは難しいステップは踏まないのである。踊る相手もメアリーやジーンシャン城の身内ばかりであった。
もっと下のレベルのクラスを希望すればよかったかな? 今更、後悔しても遅い。背伸びをせずに、今は出来ることをきちんとやろう!
ダンス教師であるレセディとカーチレは、カレン王女が連れてきた謎のパートナーに注目していた。
履修登録ではカレン王女と組んでいるのは、ジーンシャン家のアントニオ様のはずだ。白銀の髪は王族の血をひく証。そして、スカイブルーの瞳はジーンシャン家の血をひく証だ。そんな人物はアントニオ・ジーンシャン以外には存在しないはずだが、アントニオ様は焦茶のはず! しかし、よく見ると、顔は勇者グリエルモ様に似ている。やはり、あの学生はアントニオ様なのか!?あの学生は一体誰なんだ?
他の学生は皆、ペアでもバラバラに教室の中央に歩み出て、男性が手を広げてペアの女子を呼び寄せて、ダンスを踊る体勢を組む。そうなって、始めてペアを組んでいる相手の学生に触れる。
だが、謎の学生は教室に入る前から、ペアであるカレン王女に腕を貸してエスコートをしてきていた。順番が来て教室の中央に移動する際も、物語の主人公が恋するヒロインにするように、カレン王女を丁重にエスコートした。
その所作のエレガントなこと!
レセディは大事にエスコートされたカレン王女が羨ましいと思った。プロのダンサーでも、中々、そんな風にはエスコートしてもらえないものだ。カレン王女も夢見心地でペアの相手を見つめる。
ダンスの体勢をとるために、1度、お互いの体を離す。そのひとときの別れすら、名残り惜しそうに振る舞う。
これから、バレエの舞台が始まるかのような、ドキドキ感に、先生も学生達も胸を躍らせた。
音楽が始まった。
謎の学生は恭(うやうや)しくお辞儀をすると、ただ手を広げるのではなく、手をカレン王女の方へ真っ直ぐと差し出した。
アントニオが、前世で王子役を歌ったときに習得した、愛するヒロインの手を取るための決めポーズだ。
カレンがそっとアントニオの手に、自分の手を重ねると、アントニオはゆっくりとカレンを抱き寄せた。
見つめ合ったまま接近する美男美女の2人に、ギャラリーの多くが興奮して悶えた。
とうとうペアが密着すると、何とも言えない上品な色気が漂う。
ダンスが始まった。
難しいステップは踏んでいないが、その姿勢やリズム感は抜群である。
ひとつひとつの動作が洗練されており、美しい。
何よりも容姿が美しい! 美し過ぎると言って良いほどに!
それに、ダンスを踊ることを心から楽しんでいるようで、他の学生のように必死な顔ではなく、時折笑顔が見える。そして、時折、ギャラリーにも目線を送ってアピールするものだから、女子学生達は謎の学生に夢中になった。
目のあった学生は誰もが、彼こそが自分の運命の相手だと誤解した。ダンスが終わる頃には、クラスの女子のほとんどが謎の学生に恋をしていたのである。
そうとは知らないアントニオは、教室が変な雰囲気になっているので心配になった。
やっぱり、ダンスのレベルが合わないって思われたかな?
男性教師のカーチレ先生に近付き、質問する。
アントニオ
「私のダンスはどうでしたでしょうか? こちらのクラスでも、皆様の足を引っ張らずに勉強出来そうでしょうか?」
カーチレ
「それだけ基本が出来ていらっしゃれば、問題ありません。ところで、その...カレン様のパートナーで履修登録されているのは、アントニオ・ジーンシャン様だと伺ったのですが...」
貴方様はどなたなのでしょうか?
アントニオ
「そうです! 私がアントニオ・ジーンシャンで御座います。私の名前を覚えて下さって光栄で御座います」
学生達はどよめいた。
入学式や、先週のダンスパートナー選びで見かけた際は、アントニオ様は確かに焦茶だったからだ。
アントニオ
「カレン様! このクラスで勉強しても大丈夫だそうです!」
カレン
「良かったですわ!」
アントニオ
「1年目からレベル5のクラスで習えるだなんて、カレン様のお陰です!」
カレン
「トニー様のお役に立てて光栄ですわ!」
カレンは授業中ずっと、アントニオの側に寄り添って、他の女子が近付かないように牽制した。
トニー様が焦茶のときは見向きもしないどころか、避けるようにしていたのに、今さら恋に落ちて近付こうとしても、遅いわよ!
レベル5クラスの学生はほとんど、最初からペアが決まっており、パートナー選びの際にレオナルドやタイラを希望していた女子学生は僅かだった。だが、カレンは、自分以外の女子は敵だと言わんばかりに、闇のオーラを放って威嚇したのであった。もちろん、アントニオに気付かれない程度に。
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