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第三幕 学生期
179.アルベルト邸で朝食
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翌日、ディーデリックは貰った服で自分なりにコーディネートして着てみた。
昨日のうちに、サイズの合うレオナルドのお下がりを、召使い達がディーデリックの泊まる客間に運んでくれていたのだ。
昨晩、シックな装いを褒められて嬉しかったので、今日も、上下黒のジュストコール(長いジャケット)とキュロット、白いブラウスに白いベストというシンプルなコーディネートだ。
皆は、私の選んだ服装をどう思うだろう? また、カッコイイと褒めてくれるだろうか?
昨日は暗い気持ちになる事もあったが、これだけ上質な衣装を数々多く頂いて、お洒落を楽しみ、豪華な食事会に参加するという事は、凄く贅沢な事である。きっと、一般庶民には縁のない事だ。
そう思うと自然と顔がほころんだ。
寮の部屋に帰宅するまでの、僅かな時間を楽しもう。
帰宅のために、テキパキと荷物を鞄に詰めていくが、この幸せな時間が終わってしまうのが、とても残念に感じた。
ディーデリックが服を、どうやって持って帰ろうか思案していると、召使いがやって来る。
昨日とは、また別の召使いだ。
召使い
「朝食の準備が出来ました。」
ディーデリックが、衣装を鞄に詰めようとしているのを見て、召使いは慌てて止めた。
召使い
「衣装がシワになってしまいますから、そのままハンガーに掛けておいて下さい。我々が後ほど、馬車で寮のお部屋にお運びしますから!」
ディーデリック
「あ、有難うございます。」
召使いは衣装をディーデリックから受け取るとクローゼットのハンガーに掛けなおした。
その召使いの案内でダイニングに向かうと、すでに、皆が待っている。
ディーデリックは焦った。
自分よりも高位の人を待たせるなんてとんでもない事だ!
ディーデリック
「おはようございます。遅れて申し訳ありません。」
グリエルモ
「おはよう。遅れてなんかいないよ。大丈夫。ジーンシャンでは、お客様を待たせない事が礼儀なんだ。私達より早く来て貰っては困るんだよ。」
ディーデリック
「そうですか。よかった。」
ディーデリックはホッとする。
それと、同時に皆の服装が気になった。
アントニオは、オリーブグリーンのプールポワンに鈍い金とオレンジのキュロットを着ており、豪華なのに、どこか肩の力が抜けている服装である。
レオナルドは、白いブラウスにベージュのズボンのみという軽装だが、それでも、とてもカッコイイ。
エドアルドも白いブラウスに黒いズボンのみだ。
ディーデリックは、少し自分が気張った格好をしてきてしまって気恥ずかしくなった。
カリーナは、レオナルドやエドアルドを見てからディーデリックへと視線を移し、ジッと見つめた。
ディーデリックがしどろもどろになっていると、カリーナは微笑んだ。
笑ったカリーナは、本物の天使ようである。
オデット
「まぁ、ちゃんと正装して来て下さったのですね。今日も素敵ですわ。御免なさいね、息子達が無作法で。お客様がいらしているのにジャケットも着てこないなんて、恥ずかしいわ。」
ディーデリック
「いえ。」
メアリー
「お洒落がお好きだなんて、やっぱりトニーのお友達なのね。」
褒められ慣れていないディーデリックは、真っ赤になりながらも、とてもご機嫌になった。
テーブルには、朝食だというのに、スープにサラダ、肉料理、木の実やドライフルーツの入ったシリアル、ヨーグルト、生クリームの乗ったベリープティング等数多くの料理が並ぶ。
昨日は、あまり気持ちに余裕がなくて、味が分かりにくかったが、今日は、少し慣れたこともあって、味がよく分かった。
どれも美味しくて、頬っぺたが落ちそうだったが、特にベリープティングは絶品だった。
残さずに食べると、ヤンが少しガッカリしたのが分かった。きっと、自分が残したら、また、貰いたかったのだろう。
ここには自分を責める人はいないし、労働させられることもない。髪の色を笑う人もいない。それどころか、沢山褒めてくれるし、皆が親切だ。
帰りたくないな。もっと、こうしていられたらいいのに。
グリエルモ
「学校がお休みの間、トニーは家庭教師に来てもらって勉強するけど、ディックはどう過ごします? もし、よかったら、しばらく滞在して、トニーと一緒に勉強しませんか? ヤンやレオも、そうするよ。」
ディーデリック
「家庭教師ですか?」
ディーデリックは特待生である。もしも、試験で悪い結果が出てしまったら、特待生としての特権は解除され、学費を収めるか、学校を辞めるかを選ばなくてはいけない。だから、学校が休みになって、授業がない間も遊んではいられないのだ。
王立学校に通う貴族の子女は、こういう時も家庭教師と勉強するのか!? このまま 、休みが続けば、勉強で遅れをとってしまう!
ディーデリック
「是非! お願いします!」
グリエルモ
「もちろんだよ!」
ディーデリックは、勉強出来ることに安心するとともに、アルベルト邸での生活が継続される事を喜んだ。
昨日のうちに、サイズの合うレオナルドのお下がりを、召使い達がディーデリックの泊まる客間に運んでくれていたのだ。
昨晩、シックな装いを褒められて嬉しかったので、今日も、上下黒のジュストコール(長いジャケット)とキュロット、白いブラウスに白いベストというシンプルなコーディネートだ。
皆は、私の選んだ服装をどう思うだろう? また、カッコイイと褒めてくれるだろうか?
昨日は暗い気持ちになる事もあったが、これだけ上質な衣装を数々多く頂いて、お洒落を楽しみ、豪華な食事会に参加するという事は、凄く贅沢な事である。きっと、一般庶民には縁のない事だ。
そう思うと自然と顔がほころんだ。
寮の部屋に帰宅するまでの、僅かな時間を楽しもう。
帰宅のために、テキパキと荷物を鞄に詰めていくが、この幸せな時間が終わってしまうのが、とても残念に感じた。
ディーデリックが服を、どうやって持って帰ろうか思案していると、召使いがやって来る。
昨日とは、また別の召使いだ。
召使い
「朝食の準備が出来ました。」
ディーデリックが、衣装を鞄に詰めようとしているのを見て、召使いは慌てて止めた。
召使い
「衣装がシワになってしまいますから、そのままハンガーに掛けておいて下さい。我々が後ほど、馬車で寮のお部屋にお運びしますから!」
ディーデリック
「あ、有難うございます。」
召使いは衣装をディーデリックから受け取るとクローゼットのハンガーに掛けなおした。
その召使いの案内でダイニングに向かうと、すでに、皆が待っている。
ディーデリックは焦った。
自分よりも高位の人を待たせるなんてとんでもない事だ!
ディーデリック
「おはようございます。遅れて申し訳ありません。」
グリエルモ
「おはよう。遅れてなんかいないよ。大丈夫。ジーンシャンでは、お客様を待たせない事が礼儀なんだ。私達より早く来て貰っては困るんだよ。」
ディーデリック
「そうですか。よかった。」
ディーデリックはホッとする。
それと、同時に皆の服装が気になった。
アントニオは、オリーブグリーンのプールポワンに鈍い金とオレンジのキュロットを着ており、豪華なのに、どこか肩の力が抜けている服装である。
レオナルドは、白いブラウスにベージュのズボンのみという軽装だが、それでも、とてもカッコイイ。
エドアルドも白いブラウスに黒いズボンのみだ。
ディーデリックは、少し自分が気張った格好をしてきてしまって気恥ずかしくなった。
カリーナは、レオナルドやエドアルドを見てからディーデリックへと視線を移し、ジッと見つめた。
ディーデリックがしどろもどろになっていると、カリーナは微笑んだ。
笑ったカリーナは、本物の天使ようである。
オデット
「まぁ、ちゃんと正装して来て下さったのですね。今日も素敵ですわ。御免なさいね、息子達が無作法で。お客様がいらしているのにジャケットも着てこないなんて、恥ずかしいわ。」
ディーデリック
「いえ。」
メアリー
「お洒落がお好きだなんて、やっぱりトニーのお友達なのね。」
褒められ慣れていないディーデリックは、真っ赤になりながらも、とてもご機嫌になった。
テーブルには、朝食だというのに、スープにサラダ、肉料理、木の実やドライフルーツの入ったシリアル、ヨーグルト、生クリームの乗ったベリープティング等数多くの料理が並ぶ。
昨日は、あまり気持ちに余裕がなくて、味が分かりにくかったが、今日は、少し慣れたこともあって、味がよく分かった。
どれも美味しくて、頬っぺたが落ちそうだったが、特にベリープティングは絶品だった。
残さずに食べると、ヤンが少しガッカリしたのが分かった。きっと、自分が残したら、また、貰いたかったのだろう。
ここには自分を責める人はいないし、労働させられることもない。髪の色を笑う人もいない。それどころか、沢山褒めてくれるし、皆が親切だ。
帰りたくないな。もっと、こうしていられたらいいのに。
グリエルモ
「学校がお休みの間、トニーは家庭教師に来てもらって勉強するけど、ディックはどう過ごします? もし、よかったら、しばらく滞在して、トニーと一緒に勉強しませんか? ヤンやレオも、そうするよ。」
ディーデリック
「家庭教師ですか?」
ディーデリックは特待生である。もしも、試験で悪い結果が出てしまったら、特待生としての特権は解除され、学費を収めるか、学校を辞めるかを選ばなくてはいけない。だから、学校が休みになって、授業がない間も遊んではいられないのだ。
王立学校に通う貴族の子女は、こういう時も家庭教師と勉強するのか!? このまま 、休みが続けば、勉強で遅れをとってしまう!
ディーデリック
「是非! お願いします!」
グリエルモ
「もちろんだよ!」
ディーデリックは、勉強出来ることに安心するとともに、アルベルト邸での生活が継続される事を喜んだ。
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