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第三幕 学生期
130.マナーの授業5
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ミス・ウェリントンは、アントニオが座った席に気が付き困惑していた。
ウェリントン
「ミスター・ジーンシャン、男爵家のお二人とお知り合いになられたのですか?」
アントニオ
「いいえ、まだです。」
ウェリントン
「でしたら、その席は座ってはいけません。社交界では、秩序を重んじます。ミスター・ジーンシャン程の地位をお持ちの方は、特に、何処に座り、誰と、何を喋るのか、社交界の秩序を崩さないように、常に配慮する必要があります。」
アントニオ
「申し訳ありません。マナーの教科書にも載っておりませんでしたし、ジーンシャン領では、そのようなしきたりがないもので、存じ上げませんでした。」
アントニオが席を立つと、男爵家の2人はガッカリした。
ウェリントン
「えぇ、そうですね。マナーの教本は大貴族用には作られておりませんから。それに、ジーンシャン領は身分よりも実力を重んじる土地柄ですものね。
このクラスの中に、ミスター・ジーンシャンがお知り合いになられたクラスメイトはおりますか?」
アントニオ
「はい。ディック...バース(ディーデリック)様とホワイトリー(マーク)様、ベナーク(ラドミール )様とミラー(ルーカス)様です。」
ウェリントン
「左様でございますか、それでしたら、奥のテーブルにお座り下さい。」
ミス・ウェリントンに案内されアントニオは奥のテーブルへと移動する。
護衛の二人も移動した。
アントニオが空いている席に座ろうとすると、ミス・ウェリントンは再びアントニオを制止した。
ウェリントン
「その席はダメです。1番上座に座らなくてはいけません。ミスター・ベナーク(ラドミール)、席をお譲りして。ミスター・ミラー(ルーカス)はミスター・ベナークに席を譲って空いている手前の席へ移動して下さい。」
ラドミール
「はい。」
ラドミールが立ち上がり上座をアントニオに譲った。
アントニオ
「有難うございます。」
ラドミール
「いえ、当然のことです。」
ラドミールは、アントニオが世間知らずだっただけだと分かり、満足して席についた。
ルーカスはよく分かっていなかったが、ラドミールの真似をして胸をはって席についた。
ラドミール
「お前はテーブルを移動しなくていいのか?」
ルーカス
「私はラドミール様の従者ですから!」
ラドミール
「遠慮などしなくていいんだぞ?」
ルーカス
「遠慮などしていません!」
ラドミール
「いや、むしろ、遠慮しろと言うべきか?」
ルーカス
「アントニオ様、私も同席して構いませんよね?」
アントニオ
「もちろんです。」
ルーカス
「有難うございます! あぁ~、何てお優しいんだ! 誰かさんと違って! やっぱり将来はジーンシャン魔導騎士団に入ろうかな?」
ラドミール
「お前じゃ無理だろ。」
ルーカス
「そんなことありませんよね? アントニオ様!」
アントニオ
「はい。試験に通ればどなたでも入れますよ。」
ラドミールは爆笑した。
アントニオが首を傾げていると、ラドミールが補足した。
ラドミール
「ルーカスは魔力が110しかないと自己紹介したのをお忘れですか?」
アントニオ
「いえ、覚えております。」
アントニオは、今度は逆方向に首を傾げた。
ラドミール
「ジーンシャン魔導騎士団の最低合格ラインの魔力200に達するには、人生をやり直さないといけませんよ。」
ルーカス
「でも、アントニオ様のご推薦があれば入れるのでしょう?」
アントニオ
「あ、それは申し訳ありません。絶対実力主義の軍隊ですので、試験に合格して頂かないと...」
ルーカス
「やっぱり、アントニオ様もお優しくなかった!」
アントニオ
「申し訳ありません。魔力が200以上ないとユニコーンに乗れず危険な目にあいますので、たとえ私が推薦して魔導騎士団に入られても、すぐに解雇されてしまうと思われます。ですが、憲兵にならなれますよ! お給料はだいぶ違うと思いますけど...」
ルーカス
「世の中は厳しい...仕方がないので、ラドミール 様の従者を続けさせて頂きます。」
ラドミール
「俺もお前のような従者じゃなくて、アントニオ様の騎士をされているような従者がいいなぁ。」
ルーカス
「ご機嫌を直して下さいよ!」
授業開始の鐘の音が鳴る。
ウェリントン
「さて、授業の時間になりました。ミスター・ハッキネン(エーリク)は体調不良でお休みと連絡を受けておりますので、今日は、これで全員です。」
アントニオは、エーリクが回復して授業に出てきたら、真っ先に謝ろうと思っていたので、大変落ち込んだ。まさか、マナーの授業に出られない程だなんて!
いつもバルドやリンは平気な様子でアントニオの歌を聴いていたから、大して本気でもない魅了の歌が、そんなに影響を及ぼすとは思っていなかったのだ。
ウェリントン
「私の授業では、教科書を読むような授業は致しません。王立学校の生徒である皆様は当然、マナーの本はすでに読んでいらっしゃることでしょうから。
ですから、この社交室の中を、実際の社交界パーティーだと思って、振舞って頂こうと思います。気になる事があれば、その都度、私から注意をさせて頂きます。
そして、私のことはミス・ウェリントンとお呼び下さい。皆様も、お互いに敬称をつけて呼び合いましょう。すでに仲が良い方同士もいらっしゃるかもしれませんが、この時間は砕けた喋り方をしないように心掛けて下さい。
社交界に14歳でデビューした時に、丁寧な言葉を喋れず、話し相手や友人の名前に正しい敬称をつけて呼べないのであれば、皆様の名誉は地に堕ちるでしょう。
それでは、授業を始めさせて頂きたいと思います。」
学生達は背筋を伸ばし、手足を揃えた。
ウェリントン
「ミスター・ジーンシャン、男爵家のお二人とお知り合いになられたのですか?」
アントニオ
「いいえ、まだです。」
ウェリントン
「でしたら、その席は座ってはいけません。社交界では、秩序を重んじます。ミスター・ジーンシャン程の地位をお持ちの方は、特に、何処に座り、誰と、何を喋るのか、社交界の秩序を崩さないように、常に配慮する必要があります。」
アントニオ
「申し訳ありません。マナーの教科書にも載っておりませんでしたし、ジーンシャン領では、そのようなしきたりがないもので、存じ上げませんでした。」
アントニオが席を立つと、男爵家の2人はガッカリした。
ウェリントン
「えぇ、そうですね。マナーの教本は大貴族用には作られておりませんから。それに、ジーンシャン領は身分よりも実力を重んじる土地柄ですものね。
このクラスの中に、ミスター・ジーンシャンがお知り合いになられたクラスメイトはおりますか?」
アントニオ
「はい。ディック...バース(ディーデリック)様とホワイトリー(マーク)様、ベナーク(ラドミール )様とミラー(ルーカス)様です。」
ウェリントン
「左様でございますか、それでしたら、奥のテーブルにお座り下さい。」
ミス・ウェリントンに案内されアントニオは奥のテーブルへと移動する。
護衛の二人も移動した。
アントニオが空いている席に座ろうとすると、ミス・ウェリントンは再びアントニオを制止した。
ウェリントン
「その席はダメです。1番上座に座らなくてはいけません。ミスター・ベナーク(ラドミール)、席をお譲りして。ミスター・ミラー(ルーカス)はミスター・ベナークに席を譲って空いている手前の席へ移動して下さい。」
ラドミール
「はい。」
ラドミールが立ち上がり上座をアントニオに譲った。
アントニオ
「有難うございます。」
ラドミール
「いえ、当然のことです。」
ラドミールは、アントニオが世間知らずだっただけだと分かり、満足して席についた。
ルーカスはよく分かっていなかったが、ラドミールの真似をして胸をはって席についた。
ラドミール
「お前はテーブルを移動しなくていいのか?」
ルーカス
「私はラドミール様の従者ですから!」
ラドミール
「遠慮などしなくていいんだぞ?」
ルーカス
「遠慮などしていません!」
ラドミール
「いや、むしろ、遠慮しろと言うべきか?」
ルーカス
「アントニオ様、私も同席して構いませんよね?」
アントニオ
「もちろんです。」
ルーカス
「有難うございます! あぁ~、何てお優しいんだ! 誰かさんと違って! やっぱり将来はジーンシャン魔導騎士団に入ろうかな?」
ラドミール
「お前じゃ無理だろ。」
ルーカス
「そんなことありませんよね? アントニオ様!」
アントニオ
「はい。試験に通ればどなたでも入れますよ。」
ラドミールは爆笑した。
アントニオが首を傾げていると、ラドミールが補足した。
ラドミール
「ルーカスは魔力が110しかないと自己紹介したのをお忘れですか?」
アントニオ
「いえ、覚えております。」
アントニオは、今度は逆方向に首を傾げた。
ラドミール
「ジーンシャン魔導騎士団の最低合格ラインの魔力200に達するには、人生をやり直さないといけませんよ。」
ルーカス
「でも、アントニオ様のご推薦があれば入れるのでしょう?」
アントニオ
「あ、それは申し訳ありません。絶対実力主義の軍隊ですので、試験に合格して頂かないと...」
ルーカス
「やっぱり、アントニオ様もお優しくなかった!」
アントニオ
「申し訳ありません。魔力が200以上ないとユニコーンに乗れず危険な目にあいますので、たとえ私が推薦して魔導騎士団に入られても、すぐに解雇されてしまうと思われます。ですが、憲兵にならなれますよ! お給料はだいぶ違うと思いますけど...」
ルーカス
「世の中は厳しい...仕方がないので、ラドミール 様の従者を続けさせて頂きます。」
ラドミール
「俺もお前のような従者じゃなくて、アントニオ様の騎士をされているような従者がいいなぁ。」
ルーカス
「ご機嫌を直して下さいよ!」
授業開始の鐘の音が鳴る。
ウェリントン
「さて、授業の時間になりました。ミスター・ハッキネン(エーリク)は体調不良でお休みと連絡を受けておりますので、今日は、これで全員です。」
アントニオは、エーリクが回復して授業に出てきたら、真っ先に謝ろうと思っていたので、大変落ち込んだ。まさか、マナーの授業に出られない程だなんて!
いつもバルドやリンは平気な様子でアントニオの歌を聴いていたから、大して本気でもない魅了の歌が、そんなに影響を及ぼすとは思っていなかったのだ。
ウェリントン
「私の授業では、教科書を読むような授業は致しません。王立学校の生徒である皆様は当然、マナーの本はすでに読んでいらっしゃることでしょうから。
ですから、この社交室の中を、実際の社交界パーティーだと思って、振舞って頂こうと思います。気になる事があれば、その都度、私から注意をさせて頂きます。
そして、私のことはミス・ウェリントンとお呼び下さい。皆様も、お互いに敬称をつけて呼び合いましょう。すでに仲が良い方同士もいらっしゃるかもしれませんが、この時間は砕けた喋り方をしないように心掛けて下さい。
社交界に14歳でデビューした時に、丁寧な言葉を喋れず、話し相手や友人の名前に正しい敬称をつけて呼べないのであれば、皆様の名誉は地に堕ちるでしょう。
それでは、授業を始めさせて頂きたいと思います。」
学生達は背筋を伸ばし、手足を揃えた。
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