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第三幕 学生期
124.持久走4
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三つ目の青い札の通過順は以下の通りになった。
①アントニオ・ジーンシャン
②エーリク・ハッキネン
③ディーデリック・バース
④クリスタ・ヒューゲル
⑤ルーカス・ミラー
⑥マーク・ホワイトリー
⑦ユーリ・ブラウエル
⑧ラドミール・ベナーク
⑨フィオナ・グリーンウェル
⑩リアナ・ジャニエス
三つ目のポイントを過ぎた頃、護衛騎士の2人は、少しずつアントニオに引き離されつつあった。
リッカルド
『全然ペースが落ちないどころか、加速していないか? やっぱり、トニー様は化け物だ!』
リッカルドは、氷魔法で体温を下げながらなんとかついていく。
ヴィクトー
『このままだと置いていかれる! 使いたくなかったが、致し方あるまい。』
火の魔法で空気抵抗を減らして走りやすくする。
しかし、この魔法は同時に、周りの空気を少しだけ温めてしまう。
ヴィクトー
『どっちの方が、体力を奪わずに走れるのか、まるでわからない。』
ヴィクトーが額に汗して走っていると、突然、周りの空気が涼しくなった。
ヴィクトーが横を向くとリッカルドがニヤっと笑顔を向ける。
氷魔法でリッカルドがヴィクトーを助けたのだ。
ヴィクトー
「何故、手助けを?」
リッカルド
「ジーンシャンの魔導騎士は、より困難な任務を確実に遂行するために助け合うのが基本なんだ。それに...このままじゃ、1人で護衛することになりそうだからな!」
ヴィクトー
「フッ...お前、思ったよりも使えるじゃないか!」
リッカルド
「ロッシ(リッカルドの姓)様、有難う! って言ってくれて構わないけど?」
ヴィクトーは答えずにそっぽを向いた。
だが、次の瞬間、空気抵抗が減りリッカルドは走りやすくなった。
ヴィクトーが火魔法の気流変化でリッカルドの走行をサポートしたのだ。
リッカルド
「何だこれ!? めっちゃ走りやすい!」
ヴィクトー
「ルナール(ヴィクトーの姓)様、有難う! と言ってもいいぞ。」
リッカルド
「無事に任務が完了したらな!」
2人は同時にニヤっとして、それからは無言で走り続けた。
__________
ルーカスが走っていると、背の高い女子生徒の後ろ姿を発見した。
お? あれは、確かグレーザー伯爵領のクリスタ・ヒューゲル。私と同じように騎士の家出身だったはず。
ショートヘアで活発そうな女子って可愛いよな...。グレーザー領の子ってお洒落だし。クリスタも、スカーフの巻き方をループノットにしてて他の子と違う。
リアナ嬢のように小柄で脚が短いのに、スカートの丈を短くして懸命に脚を長く見せようとしているのも可愛いんだけど、やっぱ、スカートが長いままでもスラッと伸びた長い脚が見えるって良いんだよな。クリスタはカッコ可愛いっていうか...。
まぁ、可愛いからって、順位を譲ったりしないけどね。もうちょっとで、抜けそうだ。
ルーカスがクリスタに並ぶ。
クリスタは、ルーカスに並ばれて、嫌な汗をかいていた。
これ以上抜かれたらまずいのに! 王立学校ってこんなに皆優秀なの!? 1番を取るどころか、魔力も攻撃魔法も下位になってしまった。おまけに持久走でも低い評価だったら、ハンス様に顔向け出来ないわ!
残った僅かな魔力を使って風魔法を発動させる。
前方の気流を押しのけて自分の背中を押すように気流を作る。
これで、振り切ってやる!
クリスタが前に出て走り出すと、ルーカスはぴったり後ろをついてくる。
クリスタ
「ちょっと! 何でくっついて来るのよ!」
ルーカス
「だって、走りやすいから。」
クリスタ
「離れなさいよ!」
ルーカス
「いいじゃん。仲良くしようよ! 同じ伯爵家に使える騎士爵家じゃないか!」
クリスタ
「ふざけんな!」
クリスタは回し蹴りを繰り出したが、ルーカスは素早く避けた。
ルーカス
「やめろよ! 無駄な体力を使っていたら、他の奴にも追いつかれるぞ!」
クリスタ
「くそぅ!」
クリスタには、他に策がなく、そのまま走り続けるしか出来なかった。
その間、ルーカスはクリスタのすぐ後ろを走り、風魔法の恩恵を享受した。
しばらくするとクリスタの魔力は尽きて、風魔法を維持出来なくなった。
クリスタ
「もう、だめ!」
ルーカス
「あぁ~あ、もう、終わっちゃったか。じゃ、今まで有難うな!」
ルーカスは、クリスタを追い越していった。
クリスタ
「何てやつだ! 覚えてろ!」
ルーカス
「心配しなくても、可愛い女の子は忘れないよ~!」
遠ざかるルーカスから、調子のいい言葉が返ってきて、クリスタは赤面した。
クリスタ
「はぁ~!? 待ちやがれ! クソ男!」
__________
学校の正門で待っていたスラッカリー先生は驚いていた。
1番最後に出発したはずのアントニオが、1番最初に帰って来たからである。
アントニオ
「ただ今、戻りました!」
アントニオは、汗をかいてはいるが、さほど息が上がる事もなく涼しい顔をしている。
だが、護衛騎士の2人は今にも死にそうな顔をしている。
スラッカリー
「45秒遅れでスタートされたから...285.2秒!?帯刀しているのに!?」
こんな驚異的なスピードは、勇者グリエルモ以来である。
スラッカリー
「札は?」
スラッカリーは一瞬、アントニオがコースを間違えたのではないかと疑った。
アントニオ
「はい。ここに3枚!」
そんな馬鹿な!? アントニオ様はグリエルモ 様のように風魔法を使ったり出来ないはず...
スラッカリー
「あの、護衛の方達...風魔法などでサポートしたりしましたか? 手を貸されては、困るのですけど...」
ヴィクトー
「そんなことするか! 魔法でトニー様をサポートしたら、俺達が置いて行かれてしまう!」
ヴィクトーは息を切らしながら怒鳴った。
スラッカリー
「そうですか...」
アントニオ
「あの、喉が渇いたのですが、教室に飲み物を取りにいってもよろしいでしょうか? まだ、皆様が戻って来られるまでに、時間がありますよね?」
スラッカリー
「も、もちろんです。」
アントニオ
「すぐに、取って来ます!」
そう言って、アントニオが駆け出すので、護衛騎士の2人は乱れた息のまま、慌てて後を追った。
トニー様の護衛は大変だ!! 並大抵の騎士では務まらない!
①アントニオ・ジーンシャン
②エーリク・ハッキネン
③ディーデリック・バース
④クリスタ・ヒューゲル
⑤ルーカス・ミラー
⑥マーク・ホワイトリー
⑦ユーリ・ブラウエル
⑧ラドミール・ベナーク
⑨フィオナ・グリーンウェル
⑩リアナ・ジャニエス
三つ目のポイントを過ぎた頃、護衛騎士の2人は、少しずつアントニオに引き離されつつあった。
リッカルド
『全然ペースが落ちないどころか、加速していないか? やっぱり、トニー様は化け物だ!』
リッカルドは、氷魔法で体温を下げながらなんとかついていく。
ヴィクトー
『このままだと置いていかれる! 使いたくなかったが、致し方あるまい。』
火の魔法で空気抵抗を減らして走りやすくする。
しかし、この魔法は同時に、周りの空気を少しだけ温めてしまう。
ヴィクトー
『どっちの方が、体力を奪わずに走れるのか、まるでわからない。』
ヴィクトーが額に汗して走っていると、突然、周りの空気が涼しくなった。
ヴィクトーが横を向くとリッカルドがニヤっと笑顔を向ける。
氷魔法でリッカルドがヴィクトーを助けたのだ。
ヴィクトー
「何故、手助けを?」
リッカルド
「ジーンシャンの魔導騎士は、より困難な任務を確実に遂行するために助け合うのが基本なんだ。それに...このままじゃ、1人で護衛することになりそうだからな!」
ヴィクトー
「フッ...お前、思ったよりも使えるじゃないか!」
リッカルド
「ロッシ(リッカルドの姓)様、有難う! って言ってくれて構わないけど?」
ヴィクトーは答えずにそっぽを向いた。
だが、次の瞬間、空気抵抗が減りリッカルドは走りやすくなった。
ヴィクトーが火魔法の気流変化でリッカルドの走行をサポートしたのだ。
リッカルド
「何だこれ!? めっちゃ走りやすい!」
ヴィクトー
「ルナール(ヴィクトーの姓)様、有難う! と言ってもいいぞ。」
リッカルド
「無事に任務が完了したらな!」
2人は同時にニヤっとして、それからは無言で走り続けた。
__________
ルーカスが走っていると、背の高い女子生徒の後ろ姿を発見した。
お? あれは、確かグレーザー伯爵領のクリスタ・ヒューゲル。私と同じように騎士の家出身だったはず。
ショートヘアで活発そうな女子って可愛いよな...。グレーザー領の子ってお洒落だし。クリスタも、スカーフの巻き方をループノットにしてて他の子と違う。
リアナ嬢のように小柄で脚が短いのに、スカートの丈を短くして懸命に脚を長く見せようとしているのも可愛いんだけど、やっぱ、スカートが長いままでもスラッと伸びた長い脚が見えるって良いんだよな。クリスタはカッコ可愛いっていうか...。
まぁ、可愛いからって、順位を譲ったりしないけどね。もうちょっとで、抜けそうだ。
ルーカスがクリスタに並ぶ。
クリスタは、ルーカスに並ばれて、嫌な汗をかいていた。
これ以上抜かれたらまずいのに! 王立学校ってこんなに皆優秀なの!? 1番を取るどころか、魔力も攻撃魔法も下位になってしまった。おまけに持久走でも低い評価だったら、ハンス様に顔向け出来ないわ!
残った僅かな魔力を使って風魔法を発動させる。
前方の気流を押しのけて自分の背中を押すように気流を作る。
これで、振り切ってやる!
クリスタが前に出て走り出すと、ルーカスはぴったり後ろをついてくる。
クリスタ
「ちょっと! 何でくっついて来るのよ!」
ルーカス
「だって、走りやすいから。」
クリスタ
「離れなさいよ!」
ルーカス
「いいじゃん。仲良くしようよ! 同じ伯爵家に使える騎士爵家じゃないか!」
クリスタ
「ふざけんな!」
クリスタは回し蹴りを繰り出したが、ルーカスは素早く避けた。
ルーカス
「やめろよ! 無駄な体力を使っていたら、他の奴にも追いつかれるぞ!」
クリスタ
「くそぅ!」
クリスタには、他に策がなく、そのまま走り続けるしか出来なかった。
その間、ルーカスはクリスタのすぐ後ろを走り、風魔法の恩恵を享受した。
しばらくするとクリスタの魔力は尽きて、風魔法を維持出来なくなった。
クリスタ
「もう、だめ!」
ルーカス
「あぁ~あ、もう、終わっちゃったか。じゃ、今まで有難うな!」
ルーカスは、クリスタを追い越していった。
クリスタ
「何てやつだ! 覚えてろ!」
ルーカス
「心配しなくても、可愛い女の子は忘れないよ~!」
遠ざかるルーカスから、調子のいい言葉が返ってきて、クリスタは赤面した。
クリスタ
「はぁ~!? 待ちやがれ! クソ男!」
__________
学校の正門で待っていたスラッカリー先生は驚いていた。
1番最後に出発したはずのアントニオが、1番最初に帰って来たからである。
アントニオ
「ただ今、戻りました!」
アントニオは、汗をかいてはいるが、さほど息が上がる事もなく涼しい顔をしている。
だが、護衛騎士の2人は今にも死にそうな顔をしている。
スラッカリー
「45秒遅れでスタートされたから...285.2秒!?帯刀しているのに!?」
こんな驚異的なスピードは、勇者グリエルモ以来である。
スラッカリー
「札は?」
スラッカリーは一瞬、アントニオがコースを間違えたのではないかと疑った。
アントニオ
「はい。ここに3枚!」
そんな馬鹿な!? アントニオ様はグリエルモ 様のように風魔法を使ったり出来ないはず...
スラッカリー
「あの、護衛の方達...風魔法などでサポートしたりしましたか? 手を貸されては、困るのですけど...」
ヴィクトー
「そんなことするか! 魔法でトニー様をサポートしたら、俺達が置いて行かれてしまう!」
ヴィクトーは息を切らしながら怒鳴った。
スラッカリー
「そうですか...」
アントニオ
「あの、喉が渇いたのですが、教室に飲み物を取りにいってもよろしいでしょうか? まだ、皆様が戻って来られるまでに、時間がありますよね?」
スラッカリー
「も、もちろんです。」
アントニオ
「すぐに、取って来ます!」
そう言って、アントニオが駆け出すので、護衛騎士の2人は乱れた息のまま、慌てて後を追った。
トニー様の護衛は大変だ!! 並大抵の騎士では務まらない!
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