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第三幕 学生期
86.マナー相談会
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夕食の準備が整って食事の席に着く。人払いがされており、ヒロヤ国王とジュン王太子、タイラ王子、ヤン、そしてアントニオだけの晩餐がはじまった。
ジュン王太子
「それで、ご相談事はマナーのことでしたよね? どんなマナーについてお教えすればよいでしょうか? 遠慮せずに仰って下さいね。」
王家の皆様は笑顔でアントニオを見つめている。
アントニオ
「今まで、ジーンシャン領の屋敷では、皆が私の事を知っていましたし、城内では、そういう身分差によるマナーがあまり無かったので、非常に戸惑っているのです。
身分によって話し掛ける順番があるなど、存じ上げなかったのですが、学生の皆様は身分の上下を髪の色で判断されているらしく、私に話し掛けて下さる方もいらっしゃって、どう返事したらいいものか......」
ヒロヤ国王
「......。」
ヒロヤ国王の顔から笑顔が消えて、ヒロヤ国王はジュン王太子に目線を送る。その視線を受けてジュン王太子は頷いた。
ジュン王太子
「なるほど。本当に、そう言ったマナーについて、ご存知ないのですね? 分かりました。タイラ、お前の勉強の復習にも丁度いい。身分下の者が話し掛けて来たらどうするか。タイラ、答えなさい。」
タイラ
「緊急の要件かどうかを確認する。明らかに違う場合は、一切答えない。」
ジュン王太子
「それは何故か?」
タイラ
「緊急の要件の時にはマナーなど言っていたら損害が出てしまうからです。また、緊急でない場合に、返事をしてしまったら、相手よりも身分下であると肯定することになるからです。」
アントニオ
「あ...」
どうだったかな? と思って、思わず声が漏れる。
ジュン王太子
「もしかして、返事をされてしまったのですか?」
アントニオ
「えっと...あまり、はっきりと覚えていないのですが、多分...一度だけ。」
ジュン王太子
「それで、どんな会話のやり取りを?」
アントニオ
「......。」
あ、これは不味い。
ヒロヤ国王
「誰に、何と言われたのだ?」
アントニオ
「......。」
下手に口を滑らすと、あの子達は不敬罪などに問われるかもしれない。王家は、秩序を守り、世の混沌を防ごうとするだろう。だが、対応を間違えたのは自分である。子供達の未来を守らなくてはいけない!
アントニオ
「少し...ぶつかった時に、挨拶した程度です。互いに名乗りませんでしたので、誰かは分かりません。同じ寮生ですし、後日、自分から話し掛けて名乗り、訂正致します。それで良いでしょうか?」
ヒロヤ国王
「そうか...分かった。それで良い。」
陛下は、ジュン殿下にやはり目で合図を送り、ジュン殿下もそれに頷いた。
アントニオ
「あの......出来れば、このことは母上には内緒にして頂けますか?」
すると陛下は笑って承諾してくれた。
ヒロヤ国王
「もちろんだ! メアリーは姉上の娘だからな。厳しいのであろう?」
アントニオ
「いえ...でも、ある意味そうかも? しれません。」
タイラ
「ある意味とは?」
アントニオ
「飛竜でジーンシャン領から学校に通いなさいと申しておりましたので...」
タイラ
「ゲッ!」
ヒロヤ国王
「それは、思っていた以上に厳しいな。」
どうやら、陛下達は、飛竜の訓練のために、そう言ったと思ったようだ。実際は、超絶過保護から出た言動であったのだが、恥ずかしいので、あえて訂正しないでおこうとアントニオは思った。
アントニオ
「マナーの話に戻させて頂きますが、こちらから話しかけたとき、返事がない場合や緊急の有無を尋ねられた場合は、相手は自分の方が高位であると思っているということになるのですね?」
ジュン王太子
「そんな事があったのですか?」
アントニオ
「いえ、ありませんが念のため。」
ジュン王太子
「初めての相手に話し掛ける場合は、先ず名乗り、身分を相手に伝えます。紹介者がいる場合でも、同じです。トニー様が名乗られたら、誰も無視することは出来ません。それは、心配されなくてもいいと思いますが...万が一、返事がなかった場合はどうするか。タイラ!」
タイラ
「聞こえていなかった可能性があるため、もう一度名乗ります。大きな声で!」
ジュン王太子
「それでも、返事がない場合は、どうする?」
タイラ
「不敬罪なので、護衛に連行させます。」
ジュン王太子
「その時の注意事項は?」
タイラ
「こちらに敵意を持っている場合があるため、距離をとって油断せず、護衛が取り押さえるまで、目線をそらしてはいけません。」
ジュン王太子
「では、護衛がいない場合はどうする?」
タイラ
「自分でやっつけるか、その場から直ぐに離脱して護衛を呼びます。」
ジュン王太子
「相手が強くて勝てない上に、逃してくれない場合は?」
タイラ
「え!? えっと...そもそも、護衛なしで出歩きませんし...」
ジュン王太子
「タイラ...ミス・ウェリントンに補習をお願いしておこう。」
タイラ
「そんな!」
ジュン王太子
「そんな! じゃない! 命に関わることだ。ちゃんと学びなさい!」
アントニオ
「どうするのが正解なのですか?」
ジュン王太子
「そういう相手は、大抵暗殺者です。大声で助けを呼んだり、金銭で交渉したり、臨機応変に対処するしかありません。」
アントニオ
「相手が複数人の不良ということはないのですか?」
ジュン王太子
「不敬罪は、いわば反逆罪に近い重い罪になります。ちょっと注意される位では済みません。よくて多額の賠償金、下手をすれば死刑です。王立学校に、そんな事も分からないような者は入れないと思いますが?」
アントニオ
「相手が複数人でこちらが1人の場合は、証人がいませんので、こちらが嘘を付いていると主張されたりしませんか?」
ジュン王太子
「トニー様の仰ることは絶対です! そんな事を言う者は処分しますので、必ず、ご報告下さい。」
あ、そうなるのか。自分が信じてもらえるのは嬉しいが、いきなり相手が重い罪で処分されるとなると、簡単にはご報告出来そうにない。
アントニオ
「...はい。有難うございます。」
ジュン殿下はニコニコと微笑んでこちらを見ているが、細められた水色の瞳が、氷のように冷たく感じられた。
優しい方だと思っていたけれど、本当は物凄く怖い人なのかもしれないと、アントニオは思った。
アントニオ
「では、こちらが名乗ろうとした際に、相手が急いでいるなどして、聞いて貰えなかったり、反応出来なかった場合は、どうでしょうか?」
ジュン王太子
「タイラ!」
タイラ
「相手の事情を考慮して、場を改めます」
アントニオ
「例えば、それが、急いでいるという理由ではなくて、身分下だと勘違いされていて、話を聞いてもらえなかった場合はどうでしょうか?」
ジュン王太子
「...なるほど。それがお聞きになりたかったのですね?」
瞳だけでなく、声までが冷たい音となって発せられた。
あ、やっぱり怖い人だ。
アントニオとしては、卑下されたことに気付かれないように、大分遠回しに聞いたつもりであったが、ジュン殿下は、そんな気遣いにすら気が付いてしまったようだ。
アントニオは観念して、コクっと頷いた。
ジュン王太子
「こんな難しい問題は、マナーの試験では出ませんが、タイラ、お前ならどうする?」
タイラ
「えぇ!? 大声で怒鳴って、名乗るとか?」
ジュン王太子
「ヤン、君ならどうする?」
ヤン
「相手をぶっ飛ばす...とかでしょうか?」
ジュン王太子
「トニー様は、どうお考えですか?」
アントニオ
「その時にどうにかするのは諦めて、身分が明白な友人に取りなしてもらって、勘違いを解きたいです。」
ジュン王太子
「そうですか。トニー様がそのようにされたいのでしたら、それで良いでしょう。明日、私が一緒に学校に伺います。」
タイラとヤンは、同時に「え?!」と声をあげて驚いた。
つまりそれは実際に、アントニオが身分下と勘違いされて、酷い扱いを受けているので、友人である王太子が取りなす、ということを意味していた。
アントニオは少し俯いて「有難うございます。」とだけ答えた。
若いタイラとヤンが気が付かなかったアントニオの小さな救援信号を、ジュン王太子は見逃さなかったのだ。
タイラとヤンは、そんな自分の至らなさに、悔しい気持ちでいっぱいになり、同時に、頼ってくれなかったアントニオに、恨めしい目線を送るのであった。
ジュン王太子は、明日、学校を訪問する旨を、学長と寮の管理人の両方へ伝えるように、配下に指示し、「とくに、寮にいる学生には出迎えをするように指示しろ」と付け加えた。
学校に同行するために、明日の公務を休むらしい。アントニオは申し訳ない気持ちになった。
ジュン王太子
「それで、ご相談事はマナーのことでしたよね? どんなマナーについてお教えすればよいでしょうか? 遠慮せずに仰って下さいね。」
王家の皆様は笑顔でアントニオを見つめている。
アントニオ
「今まで、ジーンシャン領の屋敷では、皆が私の事を知っていましたし、城内では、そういう身分差によるマナーがあまり無かったので、非常に戸惑っているのです。
身分によって話し掛ける順番があるなど、存じ上げなかったのですが、学生の皆様は身分の上下を髪の色で判断されているらしく、私に話し掛けて下さる方もいらっしゃって、どう返事したらいいものか......」
ヒロヤ国王
「......。」
ヒロヤ国王の顔から笑顔が消えて、ヒロヤ国王はジュン王太子に目線を送る。その視線を受けてジュン王太子は頷いた。
ジュン王太子
「なるほど。本当に、そう言ったマナーについて、ご存知ないのですね? 分かりました。タイラ、お前の勉強の復習にも丁度いい。身分下の者が話し掛けて来たらどうするか。タイラ、答えなさい。」
タイラ
「緊急の要件かどうかを確認する。明らかに違う場合は、一切答えない。」
ジュン王太子
「それは何故か?」
タイラ
「緊急の要件の時にはマナーなど言っていたら損害が出てしまうからです。また、緊急でない場合に、返事をしてしまったら、相手よりも身分下であると肯定することになるからです。」
アントニオ
「あ...」
どうだったかな? と思って、思わず声が漏れる。
ジュン王太子
「もしかして、返事をされてしまったのですか?」
アントニオ
「えっと...あまり、はっきりと覚えていないのですが、多分...一度だけ。」
ジュン王太子
「それで、どんな会話のやり取りを?」
アントニオ
「......。」
あ、これは不味い。
ヒロヤ国王
「誰に、何と言われたのだ?」
アントニオ
「......。」
下手に口を滑らすと、あの子達は不敬罪などに問われるかもしれない。王家は、秩序を守り、世の混沌を防ごうとするだろう。だが、対応を間違えたのは自分である。子供達の未来を守らなくてはいけない!
アントニオ
「少し...ぶつかった時に、挨拶した程度です。互いに名乗りませんでしたので、誰かは分かりません。同じ寮生ですし、後日、自分から話し掛けて名乗り、訂正致します。それで良いでしょうか?」
ヒロヤ国王
「そうか...分かった。それで良い。」
陛下は、ジュン殿下にやはり目で合図を送り、ジュン殿下もそれに頷いた。
アントニオ
「あの......出来れば、このことは母上には内緒にして頂けますか?」
すると陛下は笑って承諾してくれた。
ヒロヤ国王
「もちろんだ! メアリーは姉上の娘だからな。厳しいのであろう?」
アントニオ
「いえ...でも、ある意味そうかも? しれません。」
タイラ
「ある意味とは?」
アントニオ
「飛竜でジーンシャン領から学校に通いなさいと申しておりましたので...」
タイラ
「ゲッ!」
ヒロヤ国王
「それは、思っていた以上に厳しいな。」
どうやら、陛下達は、飛竜の訓練のために、そう言ったと思ったようだ。実際は、超絶過保護から出た言動であったのだが、恥ずかしいので、あえて訂正しないでおこうとアントニオは思った。
アントニオ
「マナーの話に戻させて頂きますが、こちらから話しかけたとき、返事がない場合や緊急の有無を尋ねられた場合は、相手は自分の方が高位であると思っているということになるのですね?」
ジュン王太子
「そんな事があったのですか?」
アントニオ
「いえ、ありませんが念のため。」
ジュン王太子
「初めての相手に話し掛ける場合は、先ず名乗り、身分を相手に伝えます。紹介者がいる場合でも、同じです。トニー様が名乗られたら、誰も無視することは出来ません。それは、心配されなくてもいいと思いますが...万が一、返事がなかった場合はどうするか。タイラ!」
タイラ
「聞こえていなかった可能性があるため、もう一度名乗ります。大きな声で!」
ジュン王太子
「それでも、返事がない場合は、どうする?」
タイラ
「不敬罪なので、護衛に連行させます。」
ジュン王太子
「その時の注意事項は?」
タイラ
「こちらに敵意を持っている場合があるため、距離をとって油断せず、護衛が取り押さえるまで、目線をそらしてはいけません。」
ジュン王太子
「では、護衛がいない場合はどうする?」
タイラ
「自分でやっつけるか、その場から直ぐに離脱して護衛を呼びます。」
ジュン王太子
「相手が強くて勝てない上に、逃してくれない場合は?」
タイラ
「え!? えっと...そもそも、護衛なしで出歩きませんし...」
ジュン王太子
「タイラ...ミス・ウェリントンに補習をお願いしておこう。」
タイラ
「そんな!」
ジュン王太子
「そんな! じゃない! 命に関わることだ。ちゃんと学びなさい!」
アントニオ
「どうするのが正解なのですか?」
ジュン王太子
「そういう相手は、大抵暗殺者です。大声で助けを呼んだり、金銭で交渉したり、臨機応変に対処するしかありません。」
アントニオ
「相手が複数人の不良ということはないのですか?」
ジュン王太子
「不敬罪は、いわば反逆罪に近い重い罪になります。ちょっと注意される位では済みません。よくて多額の賠償金、下手をすれば死刑です。王立学校に、そんな事も分からないような者は入れないと思いますが?」
アントニオ
「相手が複数人でこちらが1人の場合は、証人がいませんので、こちらが嘘を付いていると主張されたりしませんか?」
ジュン王太子
「トニー様の仰ることは絶対です! そんな事を言う者は処分しますので、必ず、ご報告下さい。」
あ、そうなるのか。自分が信じてもらえるのは嬉しいが、いきなり相手が重い罪で処分されるとなると、簡単にはご報告出来そうにない。
アントニオ
「...はい。有難うございます。」
ジュン殿下はニコニコと微笑んでこちらを見ているが、細められた水色の瞳が、氷のように冷たく感じられた。
優しい方だと思っていたけれど、本当は物凄く怖い人なのかもしれないと、アントニオは思った。
アントニオ
「では、こちらが名乗ろうとした際に、相手が急いでいるなどして、聞いて貰えなかったり、反応出来なかった場合は、どうでしょうか?」
ジュン王太子
「タイラ!」
タイラ
「相手の事情を考慮して、場を改めます」
アントニオ
「例えば、それが、急いでいるという理由ではなくて、身分下だと勘違いされていて、話を聞いてもらえなかった場合はどうでしょうか?」
ジュン王太子
「...なるほど。それがお聞きになりたかったのですね?」
瞳だけでなく、声までが冷たい音となって発せられた。
あ、やっぱり怖い人だ。
アントニオとしては、卑下されたことに気付かれないように、大分遠回しに聞いたつもりであったが、ジュン殿下は、そんな気遣いにすら気が付いてしまったようだ。
アントニオは観念して、コクっと頷いた。
ジュン王太子
「こんな難しい問題は、マナーの試験では出ませんが、タイラ、お前ならどうする?」
タイラ
「えぇ!? 大声で怒鳴って、名乗るとか?」
ジュン王太子
「ヤン、君ならどうする?」
ヤン
「相手をぶっ飛ばす...とかでしょうか?」
ジュン王太子
「トニー様は、どうお考えですか?」
アントニオ
「その時にどうにかするのは諦めて、身分が明白な友人に取りなしてもらって、勘違いを解きたいです。」
ジュン王太子
「そうですか。トニー様がそのようにされたいのでしたら、それで良いでしょう。明日、私が一緒に学校に伺います。」
タイラとヤンは、同時に「え?!」と声をあげて驚いた。
つまりそれは実際に、アントニオが身分下と勘違いされて、酷い扱いを受けているので、友人である王太子が取りなす、ということを意味していた。
アントニオは少し俯いて「有難うございます。」とだけ答えた。
若いタイラとヤンが気が付かなかったアントニオの小さな救援信号を、ジュン王太子は見逃さなかったのだ。
タイラとヤンは、そんな自分の至らなさに、悔しい気持ちでいっぱいになり、同時に、頼ってくれなかったアントニオに、恨めしい目線を送るのであった。
ジュン王太子は、明日、学校を訪問する旨を、学長と寮の管理人の両方へ伝えるように、配下に指示し、「とくに、寮にいる学生には出迎えをするように指示しろ」と付け加えた。
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