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平民街の猫事情(2)
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(味があるって言うのかな……。人に飼われることに慣れた無警戒全力甘え猫はもちろんかわいいけれど、野良猫特有のこの野性味あふれる図太い感じもたまらないのよね……!)
「どれどれ……。おおー! 大きな猫ですねっ。この子は大人ですか? 何ていうか、ふてぶてしさが魅力的ですね! かわいい~」
ソマリに続いてブチ猫を目にしたコラットは、目を輝かせる。猫に対してソマリとほぼ同じ感覚を持っている彼女は、早速野良猫に魅了されているようだった。
(一見、野良猫に見えるけれどもしかしたら誰かがかわいがっているのかも……。そうだとしたら勝手に離宮に連れて行くのはまずいわよね。家族がいない猫ちゃんならすぐさま連れて行きたいけれど!)
などと、ソマリが考えていたら。
「お嬢様方、もしかして猫がお好きなのですか?」
ブチ猫がいる四輪車の持ち主らしい青年が、ふたりに話しかけていた。ふたりとも猫に夢中になりすぎて、今まで彼のことなど目に入っていなかったのだ。
四輪車の上には骨付き肉や肉を挟んだパンなどが数個並べられている。出張販売を行っていた肉屋の青年といったところだろう。
彼は整った面立ちをしているが、細い目をさらに細めて柔和な笑みを浮かべていた。人当たりの良さそうな好青年だった。
「ええ、私もコラットも猫ちゃんが大好きなの。実はこの国に移住しに来たばかりなのですが、街を歩き回っても猫ちゃんが全然見当たらなくて捜していたところで。そうして今やっと、このワゴンの下にいる猫ちゃんを見つけたのよ」
当然、ソマリは自身の身分を明かさずに状況を説明した。王太子の婚約者などと言おうものなら、青年は恐縮して世間話もままならないだろう。
すると青年は真剣な面持ちになって口を開いた。
「なるほど……。引っ越してきたばかりならご存じなくても無理はないですが、この国の平民街には猫に対して少し特殊な事情がありましてね」
「特殊な事情……?」
コラットも全く心当たりがないようで首を捻った。
「もしよければ、その特殊な事情についてお聞かせ願えないかしら」
「はい、構いませんが……。……!」
ソマリの申し出をふたつ返事で受けてくれた青年だったが、何かにハッとしたような顔をしたかと思えば、口を噤んでしまった。
どうしたのだろうとソマリが思っていると、すぐそばをサイベリアン王国の衛兵が歩いていた。治安維持のための、見回りの職務中だろう。そう珍しい存在でもないが。
(衛兵に聞かれてはまずい話題ということかしら)
青年は声を潜めてソマリとコラットにこう提案した。
「ちょうどほとんど肉も売れてしまったところなので、よろしければ私のお店の中でお話しませんか? 猫好きなら、この街の猫事情については知っておかなければなりませんからね」
王太子の婚約者として見知らぬ人間の、しかも男性の自宅に足を踏み入れるのはよくないことだろう。
しかし、何より猫に人生を捧げている自分は、絶対に彼の話を聞かなければならない。これは最優先事項である。
それに付き添いとしてコラットもいるし、身の危険があるとは考えづらい。
「ええ、ぜひお願いします」
そういうわけで、ソマリはコラットと共に青年の店に向かうこととなった。
「どれどれ……。おおー! 大きな猫ですねっ。この子は大人ですか? 何ていうか、ふてぶてしさが魅力的ですね! かわいい~」
ソマリに続いてブチ猫を目にしたコラットは、目を輝かせる。猫に対してソマリとほぼ同じ感覚を持っている彼女は、早速野良猫に魅了されているようだった。
(一見、野良猫に見えるけれどもしかしたら誰かがかわいがっているのかも……。そうだとしたら勝手に離宮に連れて行くのはまずいわよね。家族がいない猫ちゃんならすぐさま連れて行きたいけれど!)
などと、ソマリが考えていたら。
「お嬢様方、もしかして猫がお好きなのですか?」
ブチ猫がいる四輪車の持ち主らしい青年が、ふたりに話しかけていた。ふたりとも猫に夢中になりすぎて、今まで彼のことなど目に入っていなかったのだ。
四輪車の上には骨付き肉や肉を挟んだパンなどが数個並べられている。出張販売を行っていた肉屋の青年といったところだろう。
彼は整った面立ちをしているが、細い目をさらに細めて柔和な笑みを浮かべていた。人当たりの良さそうな好青年だった。
「ええ、私もコラットも猫ちゃんが大好きなの。実はこの国に移住しに来たばかりなのですが、街を歩き回っても猫ちゃんが全然見当たらなくて捜していたところで。そうして今やっと、このワゴンの下にいる猫ちゃんを見つけたのよ」
当然、ソマリは自身の身分を明かさずに状況を説明した。王太子の婚約者などと言おうものなら、青年は恐縮して世間話もままならないだろう。
すると青年は真剣な面持ちになって口を開いた。
「なるほど……。引っ越してきたばかりならご存じなくても無理はないですが、この国の平民街には猫に対して少し特殊な事情がありましてね」
「特殊な事情……?」
コラットも全く心当たりがないようで首を捻った。
「もしよければ、その特殊な事情についてお聞かせ願えないかしら」
「はい、構いませんが……。……!」
ソマリの申し出をふたつ返事で受けてくれた青年だったが、何かにハッとしたような顔をしたかと思えば、口を噤んでしまった。
どうしたのだろうとソマリが思っていると、すぐそばをサイベリアン王国の衛兵が歩いていた。治安維持のための、見回りの職務中だろう。そう珍しい存在でもないが。
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「ちょうどほとんど肉も売れてしまったところなので、よろしければ私のお店の中でお話しませんか? 猫好きなら、この街の猫事情については知っておかなければなりませんからね」
王太子の婚約者として見知らぬ人間の、しかも男性の自宅に足を踏み入れるのはよくないことだろう。
しかし、何より猫に人生を捧げている自分は、絶対に彼の話を聞かなければならない。これは最優先事項である。
それに付き添いとしてコラットもいるし、身の危険があるとは考えづらい。
「ええ、ぜひお願いします」
そういうわけで、ソマリはコラットと共に青年の店に向かうこととなった。
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