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魔女の仕事
アピ宛の手紙
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カーテンの隙間から差し込まれた光によってアピは目覚める。彼女の日常は決まっている。起きたらまず外の井戸の水で顔を洗って軽く運動をする。そして魔力を溜める為なのか、切り株の上にあぐらをかき瞑想をする。
その隙にリヴが暗器をいくつも放ってアピの命を奪おうとした。しかし、その暗器は彼女に当たる直前で不自然に止まり、力無く地面へと落ちた。
アピはゆっくりと目を開けると、立ち上がって大きく伸びをした。
「うーん! 今日も良い訓練をした!!」
「……俺の暗殺を訓練代わりにするな」
「朝の運動みたいなもんだよな!」
何度か軽く跳んでから、アピは何事もなかったかのように家の中へと入っていった。
リヴは落ちている暗器を全て拾うと、ため息を吐いて切り株に座り込んだ。
普段は頭の弱い少女なのに危機察知能力が凄まじく、こちらが動こうものならすぐに警戒をする。これが今まで暗殺者に狙われて得た力なのだろうか。
(……そういえば、アピはいつから暗殺者に狙われているんだ?)
一人の魔女にここまで手こずるなどなかなかない。アピを暗殺して欲しいと依頼したのは一体どんな人物なのか。ホークは仲介役だが、暗殺者に依頼者の情報は流さない決まりになっている。
アピはどの魔女よりも強く、戦い慣れている。あの強さには何か秘密があるのだろうか――と考えている途中に、ドアが勢いよく開かれてリヴはそちらの方へ顔を向けた。
そこには自信満々な表情のアピが立っており、彼女の後ろにはびしょ濡れのシーツが水滴を垂らしながらふよふよと浮いていた。
「おい、そんなずぶ濡れのシーツが乾くわけがないだろうが。洗濯も俺がやるって言っただろう。手出しをするな」
風呂場で洗って来てロクに絞らずに持って来たのだろう。びしょ濡れになっている床を見て顔をしかめるリヴに、アピはむうと頬を膨らませる。
「私だって日常やるって言っているだろうー!! お前の教え方が悪いから出来ないんだ!!」
「お前の頭が弱いせいだろう」
「むー!! お前、前から思っていたけど失礼だぞ失礼!! 女にモテないだろう!!」
「それなりに」
「すこーし顔が良いくらいでいい気になるなよ小僧!!」
アピがギャアギャアと喚いている間に、リヴはシーツを綺麗に畳んで片手で器用に絞ってから物干し竿にかけた。空を見上げると太陽は雲によって隠されている。もしかしたら午後に雨が降りそうだ。
アピのシーツだし良いか、と思って家の中に入ると朝食の準備に取り掛かる。料理の最中にアピがそろりと手を出して来たので、軽く叩いてつまみ食いを回避した。
パンにジャムを塗り、目玉焼きを作って葉物野菜を添える。そしてコップに白い液体を注いで食卓に出すと、アピの顔が渋くなる。
「牛乳は嫌いだ」
「好き嫌いするな。食物、飲み物全てに感謝して平らげろ。残したら一生料理作らないからな」
そう言うとアピはぐぐ、と唸ってから牛乳をちびちびと飲み始めた。一緒に暮らして大分経ったが、ようやく彼女の弱点が一つ分かった。――だが、牛乳が苦手だと知って何になるのか。
(牛乳一気飲みさせたらショック死するかな)
そんなくだらない思考を振り払い、リヴは席に着くと「いただきます」と言って自分のパンを食べ始めた。それを見たアピはハッとしてから「イタダキマス」と言って食事を再開する。
マナーはまだまだだが、少しは気を使うようになって来たようだ。二人向かい合って黙々と食べてから、先に食べ終わったリヴが食器を片付ける。その様子を見てアピは慌てたようにパンを一気に頬張った。
「リフ。ふぉれも片付けて」
「口の中に食物がある時に喋るな」
「む!? むぐぐー!!」
「言わんこっちゃない」
喉に詰まったらしいアピが胸を叩いて苦しそうにするが、リヴは助けもせず皿を片付ける。暗殺者がターゲットの手助けをするわけがない。そのまま死ぬなら万々歳だ。
しかし、アピはそんな事で死ぬわけはなく、大きな塊をごくりと呑み込むと、ほうと安堵のため息を漏らした。
「おい! 死にそうなんだから助けろよ!!」
「俺は暗殺者だ。ターゲットが死にそうになっているのに助ける馬鹿が何処にいる?」
「何だと!? お前は私の奴隷だろう!!」
「買い出しに行ってくる。お前は大人しくしていろ小娘」
「聞けよ!! この小僧小僧小僧―!!」
リヴは騒ぐアピを無視していつものように買い出しへと出かけた。
リヴは暗殺者であるが、コミュニケーション能力も長けている。最初はアピの家に居候する男として町民に警戒をされていたが、少し会話しただけで彼らの信頼を得る事が出来た。元々礼儀正しく他者を敬える男なので、狙わなくてもこれくらいの人間関係は築ける。
畑に行けば、作業中の若い男がリヴに向かって手を振った。
「リヴさん! これから買い出しか?」
「ええ。やたら食べる奴がいるので食糧がすぐに尽きてしまいましてね」
「ははは。アピさんって大食いなのか。リヴさんも大変だなあ」
町民達にはアピとの関係を雇われ料理人という事にしてある。魔女と一緒にいるので、リヴも人外かと思う者達もいたが、彼の様子を見て人間だと信じる者の方が多い。
町民からいくつか野菜をもらい、商店街へと歩を進める。穏やかそうな町民達の様子を見るに、最近アピとティールはやって来ていないようだ。
商店街へ行き、食品を扱う店に寄る今では顔馴染みになった男店主と軽く挨拶を交わし、食材を購入する。
「最近随分と買い込むようになったな。嬢ちゃんは食べ盛りか」
「魔女は食事を摂らなくても良いんですがね。満腹になる事もないようで本当に困っていますよ……」
「余程兄ちゃんの料理が美味いんだなあ。俺もご馳走になりたいくらいだ」
金を渡し、食材をバッグに詰め込んで店を後にする。荷物を左肩に抱えてから、ちらりと自分の腕を見る。
(右腕も少しだけ治ったようだな)
以前は少し動かすだけで痛みが起きたが、それが和らいだような気がする。リヴの傷は肩から肘にかけて切り傷があり、縫合されている。日常生活に支障はないが、武器を強く握れないので暗殺には致命的な傷だ。
大事を見て左手を主に使っていたが、そろそろ右手で家事をしても良いかもしれない。両手が使えるようになれば料理の幅も広げる事が出来る――と考えてリヴはハッとする。
(……って、何俺はこの生活に慣れているんだ)
優先すべきは暗殺だ。右腕が使えるようになれば、暗殺のレベルが格段に上がる。アピの料理の事など考えなくても良いのだ。
リヴは服の中に隠されたそれを確認してから表情を険しくさせる。
(これには準備がいる……それまでの辛抱だ)
**
「んむむむ……」
家へと戻ってみれば、アピは難しそうな表情で切り株に腰掛けていた。何やら紙とにらめっこをしている。
無視をしようかと思ったが、何を見ているのか気になったので覗き込んでみる。
「どうしたアピ」
「あ、いや、その……手紙を貰ってな」
何故かしどろもどろなアピを不審に思ったが、手紙を反対に持っているのを見てすぐに分かった。
「……もしかして読めないのか?」
「ぐ!! ……いつもはティールに読んでもらっているんだが……あいつ見当たらなくて」
教育を受けていないアピが文字を読めないのは当然か。――ティールが読める事は意外だが。
「俺が読んでやろうか」
「え!! ……うーん……仕方がない。読んでくれ」
アピは悩んだ素振りを見せたが、渋々手紙を寄越した。
リヴは受け取ると、細く神経質に書かれている文章を読んだ。
「至急お願いしたい依頼がある。いつもの場所で。メラニー」
「そ、そう書いてあるのか」
「ああ。……メラニーってお前の仲間か?」
「ん!? い、いや! そういうのじゃない!! え、えっと。あ!! 私用があるんだった!! お前はここで待っていろよな!! じゃあ!!」
アピは大袈裟なくらいに慌てた様子を見せると、リヴから手紙をひったくって走り出した。
いつもならアピの行動には干渉しないようにしているのだが、彼女の動揺っぷりが気になり、後をつける事にした。
その隙にリヴが暗器をいくつも放ってアピの命を奪おうとした。しかし、その暗器は彼女に当たる直前で不自然に止まり、力無く地面へと落ちた。
アピはゆっくりと目を開けると、立ち上がって大きく伸びをした。
「うーん! 今日も良い訓練をした!!」
「……俺の暗殺を訓練代わりにするな」
「朝の運動みたいなもんだよな!」
何度か軽く跳んでから、アピは何事もなかったかのように家の中へと入っていった。
リヴは落ちている暗器を全て拾うと、ため息を吐いて切り株に座り込んだ。
普段は頭の弱い少女なのに危機察知能力が凄まじく、こちらが動こうものならすぐに警戒をする。これが今まで暗殺者に狙われて得た力なのだろうか。
(……そういえば、アピはいつから暗殺者に狙われているんだ?)
一人の魔女にここまで手こずるなどなかなかない。アピを暗殺して欲しいと依頼したのは一体どんな人物なのか。ホークは仲介役だが、暗殺者に依頼者の情報は流さない決まりになっている。
アピはどの魔女よりも強く、戦い慣れている。あの強さには何か秘密があるのだろうか――と考えている途中に、ドアが勢いよく開かれてリヴはそちらの方へ顔を向けた。
そこには自信満々な表情のアピが立っており、彼女の後ろにはびしょ濡れのシーツが水滴を垂らしながらふよふよと浮いていた。
「おい、そんなずぶ濡れのシーツが乾くわけがないだろうが。洗濯も俺がやるって言っただろう。手出しをするな」
風呂場で洗って来てロクに絞らずに持って来たのだろう。びしょ濡れになっている床を見て顔をしかめるリヴに、アピはむうと頬を膨らませる。
「私だって日常やるって言っているだろうー!! お前の教え方が悪いから出来ないんだ!!」
「お前の頭が弱いせいだろう」
「むー!! お前、前から思っていたけど失礼だぞ失礼!! 女にモテないだろう!!」
「それなりに」
「すこーし顔が良いくらいでいい気になるなよ小僧!!」
アピがギャアギャアと喚いている間に、リヴはシーツを綺麗に畳んで片手で器用に絞ってから物干し竿にかけた。空を見上げると太陽は雲によって隠されている。もしかしたら午後に雨が降りそうだ。
アピのシーツだし良いか、と思って家の中に入ると朝食の準備に取り掛かる。料理の最中にアピがそろりと手を出して来たので、軽く叩いてつまみ食いを回避した。
パンにジャムを塗り、目玉焼きを作って葉物野菜を添える。そしてコップに白い液体を注いで食卓に出すと、アピの顔が渋くなる。
「牛乳は嫌いだ」
「好き嫌いするな。食物、飲み物全てに感謝して平らげろ。残したら一生料理作らないからな」
そう言うとアピはぐぐ、と唸ってから牛乳をちびちびと飲み始めた。一緒に暮らして大分経ったが、ようやく彼女の弱点が一つ分かった。――だが、牛乳が苦手だと知って何になるのか。
(牛乳一気飲みさせたらショック死するかな)
そんなくだらない思考を振り払い、リヴは席に着くと「いただきます」と言って自分のパンを食べ始めた。それを見たアピはハッとしてから「イタダキマス」と言って食事を再開する。
マナーはまだまだだが、少しは気を使うようになって来たようだ。二人向かい合って黙々と食べてから、先に食べ終わったリヴが食器を片付ける。その様子を見てアピは慌てたようにパンを一気に頬張った。
「リフ。ふぉれも片付けて」
「口の中に食物がある時に喋るな」
「む!? むぐぐー!!」
「言わんこっちゃない」
喉に詰まったらしいアピが胸を叩いて苦しそうにするが、リヴは助けもせず皿を片付ける。暗殺者がターゲットの手助けをするわけがない。そのまま死ぬなら万々歳だ。
しかし、アピはそんな事で死ぬわけはなく、大きな塊をごくりと呑み込むと、ほうと安堵のため息を漏らした。
「おい! 死にそうなんだから助けろよ!!」
「俺は暗殺者だ。ターゲットが死にそうになっているのに助ける馬鹿が何処にいる?」
「何だと!? お前は私の奴隷だろう!!」
「買い出しに行ってくる。お前は大人しくしていろ小娘」
「聞けよ!! この小僧小僧小僧―!!」
リヴは騒ぐアピを無視していつものように買い出しへと出かけた。
リヴは暗殺者であるが、コミュニケーション能力も長けている。最初はアピの家に居候する男として町民に警戒をされていたが、少し会話しただけで彼らの信頼を得る事が出来た。元々礼儀正しく他者を敬える男なので、狙わなくてもこれくらいの人間関係は築ける。
畑に行けば、作業中の若い男がリヴに向かって手を振った。
「リヴさん! これから買い出しか?」
「ええ。やたら食べる奴がいるので食糧がすぐに尽きてしまいましてね」
「ははは。アピさんって大食いなのか。リヴさんも大変だなあ」
町民達にはアピとの関係を雇われ料理人という事にしてある。魔女と一緒にいるので、リヴも人外かと思う者達もいたが、彼の様子を見て人間だと信じる者の方が多い。
町民からいくつか野菜をもらい、商店街へと歩を進める。穏やかそうな町民達の様子を見るに、最近アピとティールはやって来ていないようだ。
商店街へ行き、食品を扱う店に寄る今では顔馴染みになった男店主と軽く挨拶を交わし、食材を購入する。
「最近随分と買い込むようになったな。嬢ちゃんは食べ盛りか」
「魔女は食事を摂らなくても良いんですがね。満腹になる事もないようで本当に困っていますよ……」
「余程兄ちゃんの料理が美味いんだなあ。俺もご馳走になりたいくらいだ」
金を渡し、食材をバッグに詰め込んで店を後にする。荷物を左肩に抱えてから、ちらりと自分の腕を見る。
(右腕も少しだけ治ったようだな)
以前は少し動かすだけで痛みが起きたが、それが和らいだような気がする。リヴの傷は肩から肘にかけて切り傷があり、縫合されている。日常生活に支障はないが、武器を強く握れないので暗殺には致命的な傷だ。
大事を見て左手を主に使っていたが、そろそろ右手で家事をしても良いかもしれない。両手が使えるようになれば料理の幅も広げる事が出来る――と考えてリヴはハッとする。
(……って、何俺はこの生活に慣れているんだ)
優先すべきは暗殺だ。右腕が使えるようになれば、暗殺のレベルが格段に上がる。アピの料理の事など考えなくても良いのだ。
リヴは服の中に隠されたそれを確認してから表情を険しくさせる。
(これには準備がいる……それまでの辛抱だ)
**
「んむむむ……」
家へと戻ってみれば、アピは難しそうな表情で切り株に腰掛けていた。何やら紙とにらめっこをしている。
無視をしようかと思ったが、何を見ているのか気になったので覗き込んでみる。
「どうしたアピ」
「あ、いや、その……手紙を貰ってな」
何故かしどろもどろなアピを不審に思ったが、手紙を反対に持っているのを見てすぐに分かった。
「……もしかして読めないのか?」
「ぐ!! ……いつもはティールに読んでもらっているんだが……あいつ見当たらなくて」
教育を受けていないアピが文字を読めないのは当然か。――ティールが読める事は意外だが。
「俺が読んでやろうか」
「え!! ……うーん……仕方がない。読んでくれ」
アピは悩んだ素振りを見せたが、渋々手紙を寄越した。
リヴは受け取ると、細く神経質に書かれている文章を読んだ。
「至急お願いしたい依頼がある。いつもの場所で。メラニー」
「そ、そう書いてあるのか」
「ああ。……メラニーってお前の仲間か?」
「ん!? い、いや! そういうのじゃない!! え、えっと。あ!! 私用があるんだった!! お前はここで待っていろよな!! じゃあ!!」
アピは大袈裟なくらいに慌てた様子を見せると、リヴから手紙をひったくって走り出した。
いつもならアピの行動には干渉しないようにしているのだが、彼女の動揺っぷりが気になり、後をつける事にした。
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