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第二章 人間の国で
第三十話 魔王カテイナ VS 最後の番犬
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かろうじて見えた。
白い電光みたいなものが尻尾? をウィンズにたたきつけた。
俺たちの後ろにウィンズが吹っ飛んでいく。
クラウディアにもディノーにも見えていない。
つ、次は、おれ、俺の番……こ、怖い。いかに俺の体を強化しても基本能力が足らない。
俺が震えている間にウルフキングが速やかに命を刈ろうとする。
動けないウィンズを前足で固定して口を開く。
遺言を言う暇さえ与えない。
命がなくなる前にウルフキングを止めると宣言したが、この状況じゃ無理だ。
ディノーが破れかぶれで突撃していなかったらウィンズは死んでいただろう。
「うわぁああ、師匠! 師匠!」
ディノーの全力の火球がウルフキングの顔面に飛ぶ。……だが、避けるのすらおっくうと言わんばかりに顔に当てさせてから、鼻息で吹き流す。
お返しにディノーに振り向いて短く吠える。それだけでディノーの体が傾いて倒れる。
強力な音を叩きつけられて気絶させられた。
次はクラウディアが俺の手をギュッと握って、前へ出る。
震える手に銀貨を握って、振りかぶった時にはディノーと同じように音が直撃した。
クラウディアのダメージが二倍になって俺に伝わらない。
クラウディアが完全に気絶して痛みをダメージとして認識できなかったのだろう。
ウルフキングがぷいっとウィンズに向き直る。本人は気絶していて戦えないのは明白だ。
俺が出なければいけない。今、ここで、魔王城一階フロア最強を目の前にしてだ。
のどがカラカラだ。絞り出せるものが何もない。
良くぞディノーは、たとえ破れかぶれでも前に出た。あんな勇気、……蛮勇なんてもの俺は持っていない。五歳児始まって以来、史上最高の知性が逃げることが正しいとおびえている。
だが、俺は、俺は次期魔界王なのだ。世界最強の男になるのだ。たった一回の敗北とて許されるモノでない。
ウルフキングが大口を開いた。
俺の中の意思を絞り出す。約束をしたんだ。死ぬ前に止めるって。
「ま、まて」
ようやく、ようやく絞り出せた。
それでウルフキングが視線をこちらに向けた。それだけで意識がどっかに行ってしまいそうだ。
おびえる俺から視線を戻して無視されそうになる。
これに少しだけムカつく。そうだこの際、徹底的にムカつかせてもらう。
俺は次期魔界王なのだ。雑魚の、配下の分際で無視は許さない。
「待てよ! ウルフキング」
ようやく弾みがつけられた。そうだ俺は怒らなければならない。この俺を無視なんて重罪なのだ。
言えることは今、全て言う。この俺のプライドが逃げることを許さない。
「次は俺だぞ! 俺の番だぞ! ちょっとだけ“とどめ”を待てよ! 俺がお前をぶちのめしてやるからな!」
ウルフキングが自分の下の男を見ている。不意に顔を上げて、体ごと俺に向き直った。
”ガッフウ”っと、鼻息みたいな返事をしている。
「ちょっと待ってろ。俺の全力を見せてやるからな!」
全力で魔力を全身に回す。筋力のアップ、骨の硬質化、神経の反応速度アップ……全身を全霊でだ。
全身が悲鳴を上げている。だが、ここで魔力の高まりを止めてはウルフキングに全く歯が立たない。
骨の太さが足らなければもっと大きく、筋力を支える腕の長さが足りなければもっと伸ばし、神経がそれで切れるなら、回復魔法も叩き込んで治して伸ばし、治して伸ばしを繰り返す。
体を成長痛が襲う。それを無理やり麻痺の魔法で止める。
「が、っはあぁあああ!」
苦しい。息を止めて全力疾走するよりも苦しい。
でも、それでも、ここで負けるなんてことより遥かにマシだ!
通常数年という時間をかけて成長するところをわずかに数十秒で行う。
俺の理想は決まっている。世界で一番えらくなるのだ。史上最強に強くなるのだ。そしてすべての者からたたえられるのだ。
そのためにもこんなところで、たかが部下の一匹に後れを取ることなど許されないのだ!
夢中で体に魔力を叩き込む。俺は魔王の直系だ。どんなに無理をしようが無理にはならない。
「がっ、っはっは、ふっ……ふぅ」
今、枷をつけられてからずっと思うままに使えなかった魔力をすべて体に叩き込んだ。使うに使えず蓄積されていた魔力を全部体に使い切った。……腕が伸びたような気がする。あ~、少しウルフキングが縮んだような……背が伸びたのかな。
すっと立ち上がったところでフランシスカが顔を真っ赤にして走ってきて布を渡してきた。
今まで着ていた服はぼろきれみたいになっている。まあ、俺がみっともない格好って言うのがフランシスカは我慢できなかったんだろう。俺を直視できずに耳まで赤くして顔を伏せている。
布を手にとって体に巻き付ける。「少し離れてみていろ」とフランシスカを遠ざける。
ウルフキングが俺を見て、魔力の使用が終わり、準備完了を確認して前に進み出る。
それを「待て」と制して、少し離れたところを指さす。
自分で自分がどう変わったか把握できてない。ただ全力で強さを願っただけなのだ。
但し、背が高くなったせいか、ウルフキングが怖くない。
ゆっくり歩いて指さしたところに向かう。
歩幅が大きくなったことが実感できる。
途中にあった農業用の用水路でちらりと自分の姿を盗み見た。かなり身長が伸びている。
髪の毛は伸びてないが、これは魔力を回さなかったからだろう。大きい体を操るために頭も体と同じように成長している。
軽くこぶしを振った。
今までにない音がする。初めて空気が重いという感覚が襲う。
しっかり動かないと空気にまとわりつかれて失速する。
”グルルルルル!”
ウルフキングが俺の動きを見てうなりを上げた。喉を鳴らしながら笑っているようだ。
俺が立ち止まったのにウルフキングが無視してさらに距離を空ける。
首を振ってついて来いと言っているようだ。
最初に取った距離の倍を移動してようやくウルフキングが止まった。
”ガウッ、グルル、ガウッ!”
「始めるぞ」と言わんばかりにウルフキングが構える。
両足を開いて、腹に力を入れる。そして俺も脇を締めて構えた。
右だな。
ウルフキングの動きが見える。合図もなしに動いた相手の動きがわかる。さっきみたいに白い何かじゃなくて姿がちゃんと見える。だが速い! この体でも反応が追い付いただけだ。
かがんで、身をひねったところで尻尾が直撃する。
くそっ、連撃か! 吹っ飛ばされた体を立て直す。
一蹴りでウルフキングの元へ、相手も驚いたようだが、一息に懐に飛び込めて俺も驚いた。
数舜遅れてアッパーカットをお見舞いする。しかし、拳はあいつに触れなかった。
俺の拳圧を利用してウルフキングが距離を取る。
”グルル、グル、グルルルル”
ウルフキングの奴、楽しんでいやがる。この俺を使って遊んでいやがる。……やってくれるなあ!
俺も笑った。お前の方がおもちゃだ。この俺のな!
今の攻防で大体、どのくらい俺の能力が伸びたかがわかった。
ウルフキングの打撃なら致命傷にならない。スピードはまだ上げられる。おそらく互角だ。後は攻撃力……たのむから一発当たった程度で死ぬなよ?
「カハッ、ハハハハハハハハハ!」
今度は全力で踏み込む。真正面から鼻を狙っての拳が空を切る。
ウルフキングは低くした姿勢からの体当たり。
そのまま頭でかち上げを食らう。させるかと相手の頭の毛を無造作につかんで吹き飛ばしを耐える。
今度は俺の番、思いっきり引っ張ってぶん投げようとする。
なんかすげえ皮が伸びやがる。手間取っている間に胴をかまれて逆にぶん投げられた。
「くそっ、ウルフキング! 甘噛みしたな!?」
ウルフキングに思いっきり手加減された。胴体を噛みつかれたら切断はないものの致命的なダメージのはずだ。それをしないで首を振ってぶん投げただけ。
誰がどう見ても、俺に対して手加減したと、この俺を馬鹿にしたと言い切れる態度だ。
怒髪天をつく。
俺が遊ぶんだ!!! お前が楽しんでどうする!!!
姿勢を低くして、殴り、と見せかけて全身で体当たりだ。
体当たりは成功し、ウルフキングをあお向けに倒す。
そのまま子供の喧嘩みたいに馬乗りで相手を叩いた。
数発いいのが入った後、ウルフキングが思いっきり吠えた。
声をのけぞってかわす隙にウルフキングが体を回転させて距離を取る。
”ガルルルルルル!”
俺に対してウルフキングがキレた。ふふん、だがな、目を細めて、牙を見せた程度、怖くもなんともないぞ!
今まで見たことの無いほど、ウルフキングが姿勢を低くする。これはおそらく、狼の狩猟技術だ。意思で、技術で、魔法で、ようやく全部を使って全力を出す気のようだ。
背筋がぞくぞくする。但し、前の恐怖とは違う。これは期待感だ。勝利の予感と言ってもいい。俺の体は今、乗りに乗っている。相手が全力を出す。それを俺が余裕でぶっ飛ばす。クラウディアでも味わった至福のひとときが近づいてくる。
早く、速く、激突したい。魔王だからじゃない。男だから強さの証明が欲しいのだ。俺がお前よりも強いっていう、強者の証が欲しい!
次の激突でそれが手に入る。そう思うと待ち遠しい! もう、待ちきれない!
気持ちがはやって踏み込んでしまう。それを隙としてウルフキングが突っ込んでくる。
俺たちは互いに自分たちだけに気を取られていた。
白い電光みたいなものが尻尾? をウィンズにたたきつけた。
俺たちの後ろにウィンズが吹っ飛んでいく。
クラウディアにもディノーにも見えていない。
つ、次は、おれ、俺の番……こ、怖い。いかに俺の体を強化しても基本能力が足らない。
俺が震えている間にウルフキングが速やかに命を刈ろうとする。
動けないウィンズを前足で固定して口を開く。
遺言を言う暇さえ与えない。
命がなくなる前にウルフキングを止めると宣言したが、この状況じゃ無理だ。
ディノーが破れかぶれで突撃していなかったらウィンズは死んでいただろう。
「うわぁああ、師匠! 師匠!」
ディノーの全力の火球がウルフキングの顔面に飛ぶ。……だが、避けるのすらおっくうと言わんばかりに顔に当てさせてから、鼻息で吹き流す。
お返しにディノーに振り向いて短く吠える。それだけでディノーの体が傾いて倒れる。
強力な音を叩きつけられて気絶させられた。
次はクラウディアが俺の手をギュッと握って、前へ出る。
震える手に銀貨を握って、振りかぶった時にはディノーと同じように音が直撃した。
クラウディアのダメージが二倍になって俺に伝わらない。
クラウディアが完全に気絶して痛みをダメージとして認識できなかったのだろう。
ウルフキングがぷいっとウィンズに向き直る。本人は気絶していて戦えないのは明白だ。
俺が出なければいけない。今、ここで、魔王城一階フロア最強を目の前にしてだ。
のどがカラカラだ。絞り出せるものが何もない。
良くぞディノーは、たとえ破れかぶれでも前に出た。あんな勇気、……蛮勇なんてもの俺は持っていない。五歳児始まって以来、史上最高の知性が逃げることが正しいとおびえている。
だが、俺は、俺は次期魔界王なのだ。世界最強の男になるのだ。たった一回の敗北とて許されるモノでない。
ウルフキングが大口を開いた。
俺の中の意思を絞り出す。約束をしたんだ。死ぬ前に止めるって。
「ま、まて」
ようやく、ようやく絞り出せた。
それでウルフキングが視線をこちらに向けた。それだけで意識がどっかに行ってしまいそうだ。
おびえる俺から視線を戻して無視されそうになる。
これに少しだけムカつく。そうだこの際、徹底的にムカつかせてもらう。
俺は次期魔界王なのだ。雑魚の、配下の分際で無視は許さない。
「待てよ! ウルフキング」
ようやく弾みがつけられた。そうだ俺は怒らなければならない。この俺を無視なんて重罪なのだ。
言えることは今、全て言う。この俺のプライドが逃げることを許さない。
「次は俺だぞ! 俺の番だぞ! ちょっとだけ“とどめ”を待てよ! 俺がお前をぶちのめしてやるからな!」
ウルフキングが自分の下の男を見ている。不意に顔を上げて、体ごと俺に向き直った。
”ガッフウ”っと、鼻息みたいな返事をしている。
「ちょっと待ってろ。俺の全力を見せてやるからな!」
全力で魔力を全身に回す。筋力のアップ、骨の硬質化、神経の反応速度アップ……全身を全霊でだ。
全身が悲鳴を上げている。だが、ここで魔力の高まりを止めてはウルフキングに全く歯が立たない。
骨の太さが足らなければもっと大きく、筋力を支える腕の長さが足りなければもっと伸ばし、神経がそれで切れるなら、回復魔法も叩き込んで治して伸ばし、治して伸ばしを繰り返す。
体を成長痛が襲う。それを無理やり麻痺の魔法で止める。
「が、っはあぁあああ!」
苦しい。息を止めて全力疾走するよりも苦しい。
でも、それでも、ここで負けるなんてことより遥かにマシだ!
通常数年という時間をかけて成長するところをわずかに数十秒で行う。
俺の理想は決まっている。世界で一番えらくなるのだ。史上最強に強くなるのだ。そしてすべての者からたたえられるのだ。
そのためにもこんなところで、たかが部下の一匹に後れを取ることなど許されないのだ!
夢中で体に魔力を叩き込む。俺は魔王の直系だ。どんなに無理をしようが無理にはならない。
「がっ、っはっは、ふっ……ふぅ」
今、枷をつけられてからずっと思うままに使えなかった魔力をすべて体に叩き込んだ。使うに使えず蓄積されていた魔力を全部体に使い切った。……腕が伸びたような気がする。あ~、少しウルフキングが縮んだような……背が伸びたのかな。
すっと立ち上がったところでフランシスカが顔を真っ赤にして走ってきて布を渡してきた。
今まで着ていた服はぼろきれみたいになっている。まあ、俺がみっともない格好って言うのがフランシスカは我慢できなかったんだろう。俺を直視できずに耳まで赤くして顔を伏せている。
布を手にとって体に巻き付ける。「少し離れてみていろ」とフランシスカを遠ざける。
ウルフキングが俺を見て、魔力の使用が終わり、準備完了を確認して前に進み出る。
それを「待て」と制して、少し離れたところを指さす。
自分で自分がどう変わったか把握できてない。ただ全力で強さを願っただけなのだ。
但し、背が高くなったせいか、ウルフキングが怖くない。
ゆっくり歩いて指さしたところに向かう。
歩幅が大きくなったことが実感できる。
途中にあった農業用の用水路でちらりと自分の姿を盗み見た。かなり身長が伸びている。
髪の毛は伸びてないが、これは魔力を回さなかったからだろう。大きい体を操るために頭も体と同じように成長している。
軽くこぶしを振った。
今までにない音がする。初めて空気が重いという感覚が襲う。
しっかり動かないと空気にまとわりつかれて失速する。
”グルルルルル!”
ウルフキングが俺の動きを見てうなりを上げた。喉を鳴らしながら笑っているようだ。
俺が立ち止まったのにウルフキングが無視してさらに距離を空ける。
首を振ってついて来いと言っているようだ。
最初に取った距離の倍を移動してようやくウルフキングが止まった。
”ガウッ、グルル、ガウッ!”
「始めるぞ」と言わんばかりにウルフキングが構える。
両足を開いて、腹に力を入れる。そして俺も脇を締めて構えた。
右だな。
ウルフキングの動きが見える。合図もなしに動いた相手の動きがわかる。さっきみたいに白い何かじゃなくて姿がちゃんと見える。だが速い! この体でも反応が追い付いただけだ。
かがんで、身をひねったところで尻尾が直撃する。
くそっ、連撃か! 吹っ飛ばされた体を立て直す。
一蹴りでウルフキングの元へ、相手も驚いたようだが、一息に懐に飛び込めて俺も驚いた。
数舜遅れてアッパーカットをお見舞いする。しかし、拳はあいつに触れなかった。
俺の拳圧を利用してウルフキングが距離を取る。
”グルル、グル、グルルルル”
ウルフキングの奴、楽しんでいやがる。この俺を使って遊んでいやがる。……やってくれるなあ!
俺も笑った。お前の方がおもちゃだ。この俺のな!
今の攻防で大体、どのくらい俺の能力が伸びたかがわかった。
ウルフキングの打撃なら致命傷にならない。スピードはまだ上げられる。おそらく互角だ。後は攻撃力……たのむから一発当たった程度で死ぬなよ?
「カハッ、ハハハハハハハハハ!」
今度は全力で踏み込む。真正面から鼻を狙っての拳が空を切る。
ウルフキングは低くした姿勢からの体当たり。
そのまま頭でかち上げを食らう。させるかと相手の頭の毛を無造作につかんで吹き飛ばしを耐える。
今度は俺の番、思いっきり引っ張ってぶん投げようとする。
なんかすげえ皮が伸びやがる。手間取っている間に胴をかまれて逆にぶん投げられた。
「くそっ、ウルフキング! 甘噛みしたな!?」
ウルフキングに思いっきり手加減された。胴体を噛みつかれたら切断はないものの致命的なダメージのはずだ。それをしないで首を振ってぶん投げただけ。
誰がどう見ても、俺に対して手加減したと、この俺を馬鹿にしたと言い切れる態度だ。
怒髪天をつく。
俺が遊ぶんだ!!! お前が楽しんでどうする!!!
姿勢を低くして、殴り、と見せかけて全身で体当たりだ。
体当たりは成功し、ウルフキングをあお向けに倒す。
そのまま子供の喧嘩みたいに馬乗りで相手を叩いた。
数発いいのが入った後、ウルフキングが思いっきり吠えた。
声をのけぞってかわす隙にウルフキングが体を回転させて距離を取る。
”ガルルルルルル!”
俺に対してウルフキングがキレた。ふふん、だがな、目を細めて、牙を見せた程度、怖くもなんともないぞ!
今まで見たことの無いほど、ウルフキングが姿勢を低くする。これはおそらく、狼の狩猟技術だ。意思で、技術で、魔法で、ようやく全部を使って全力を出す気のようだ。
背筋がぞくぞくする。但し、前の恐怖とは違う。これは期待感だ。勝利の予感と言ってもいい。俺の体は今、乗りに乗っている。相手が全力を出す。それを俺が余裕でぶっ飛ばす。クラウディアでも味わった至福のひとときが近づいてくる。
早く、速く、激突したい。魔王だからじゃない。男だから強さの証明が欲しいのだ。俺がお前よりも強いっていう、強者の証が欲しい!
次の激突でそれが手に入る。そう思うと待ち遠しい! もう、待ちきれない!
気持ちがはやって踏み込んでしまう。それを隙としてウルフキングが突っ込んでくる。
俺たちは互いに自分たちだけに気を取られていた。
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