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第41話 我こそは試す者なり
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グレートマインクラブが振り回す巨大な鋏を、〈超集中〉状態の俺は危なげなく躱していく。
「〈メタルクラッシュ〉ッ!!」
そうして俺が引きつけている隙に、背後に回っていたゼタがハンマーを叩きつけた。
「アアアアアッ!?」
グレートマインクラブが消滅する。
後には〈ミスリル鉱〉が残された。
「よっしゃ、また落ちたぜ! こいつで七個目だ!」
グレートマインクラブ狩りを開始して、およそ二時間。
予想以上の早さで〈ミスリル鉱〉が手に入り、すでに目標の五個を上回る戦果となっていた。
「しかしまさか、テメェが盾役をこなせるとは思わなかったぜ」
感心とも呆れともとれる表情で、ゼタが言ってくる。
俺とゼタは、途中から盾役をスイッチするスタイルを取っていた。
〈超集中〉スキルの効果中は、俺がグレートマインクラブを引きつけ、その間にゼタが後ろから〈メタルクラッシュ〉を放ち、その後は通常攻撃でガンガン叩きまくる。
そして効果が切れると、今度はゼタが巨大ガニの猛攻を引き受け、俺は〈ファイアアロー〉を放つ。
〈超集中〉のクールタイムが終わると交代だ。
その間にちょうどゼタの〈メタルクラッシュ〉のクールタイムも終わっているので、再び巨大ガニにそれを叩き込む。
このスタイルを取ることで、非常に効率よく巨大ガニを狩ることができるようになったのだ。
「ますますテメェの天職が謎だぜ」
「万能職だって言ってるだろう」
「んな都合のいい天職があってたまるか!」
もちろんこの辺りの階層には、グレートマインクラブ以外の魔物も出没する。
高速移動と鎌攻撃が厄介なカマキリの魔物キラーマンティス、身体を硬化させることで防御力を上げたりこちらを拘束したりしてくる魔物セメントスライム、背中の大砲によって超遠距離から攻撃してくる亀の魔物キャノンタートルなど、中層と違って一筋縄ではいかない魔物が多い。
こいつらのレベルはだいたい60前後。
俺からすれば格上なので、少しずつレベルも上がってきている。
―――――――――
【レベル】53
―――――――――
その後、〈ミスリル鉱〉を十個手に入れたところで、地上へ戻ることになった。
ちょうど目標の二倍だ。
「思った以上に手に入ったな。テメェの頑張りに免じて、〈ミスリルの剣〉の作成料金は2000万ゴルドでいいぜ」
機嫌よさそうにゼタが言う。
2000万ゴルドなら手持ちの資金だけで賄うことができる。
「グルアアアアッ!!」
地上へと戻る途中、最下層まで続く穴の付近を通過していると、上の方から一体の魔物が降ってきた。
「っと、グリフォンか!」
グリフォンは鷲の上半身と獅子の下半身を持つ魔物だ。
この巨大な縦穴部分を縄張りとし、侵入者を見かけると獰猛に襲い掛かる。
断崖絶壁を利用しての階層間の移動を断念するのは、このグリフォンを始めとする飛行系の魔物が蠢いているせいだ。
「〈ブレイクインパクト〉!」
猛スピードで滑空し、躍りかかってきたグリフォンへ、ゼタが攻撃スキルをお見舞いする。
〈ブレイクインパクト〉は衝撃波を発生させて、周囲の魔物にまとめてダメージを与えるスキルだが、これにはもう一つ、衝撃波によって敵を吹き飛ばせるという大きな副次効果があった。
「~~~~ッ!?」
滑空攻撃がキャンセルされ、墜落して何度か地面を転がるグリフォン。
そこへすかさず俺が〈フリージング〉を放つ。
グリフォンの翼を『凍結』させることで、一時的に厄介な飛行能力を奪うことができた。
後は二人で猛攻を仕掛けて一気にHPを削り切る。
「はっ、短期間ながら悪くねぇ連携ができるようになってきたな」
「ああ、やはりリアルなコミュニケーションができるとかなり楽だ」
「リアル?」
「……こっちの話だ。それよりまた何か来たぞ」
宙に浮かびながら近づいてくる新手。
グリフォンと違って翼など生えていないが、飛行能力を有している魔物に違いない。
「いや待て……このダンジョンに、そんな魔物がいたか……?」
グリフォン以外にも、このダンジョンを貫通する巨大な縦穴には、飛行系の魔物がいくつか出現する。
しかし俺の記憶では、その中に翼を持たないタイプなどいなかったはずだ。
「なんだ、こいつは? 見たことねぇぞ?」
ゼタもまた見覚えがないようで、訝しそうに眉根を寄せている。
そいつはローブを身に纏っていた。
シルミアと一緒に倒した、あの隠しフィールドボスのダークウィザードと似た感じだが、それよりもはるかに嫌な感覚があった。
そもそも魔物……ではない?
ゲームが現実化したこの世界に来てから、未知の魔物に遭遇したことなど一度もない。
「となると人間? あるいは……」
俺の直感が警鐘を鳴らす。
得体のしれないこの謎の生き物から、今すぐ逃げた方がよいのではないか。
そんなことを考えていると、
「我こそは試す者なり」
「「喋った!?」」
「汝――ライズ=アルベール」
「……俺?」
「試練を越えよ」
次の瞬間だった。
謎のローブ男の姿が掻き消えたかと思うと、俺は背後から猛烈な風を浴び、吹き飛ばされていた。
「は?」
いつの間に移動したのか、怪しいローブ男は俺の背後にいた。
しかもどうやら何らかの魔法を発動したらしい。
気づけば俺は最下層まで突き抜けた穴の上まで吹っ飛ばされ、そのまま地下深くまで自由落下。
「うおおおおおおおおおおおおっ!?」
ゼタの「ライズっ!?」という声が、遥か頭上から降りてきた。
「〈メタルクラッシュ〉ッ!!」
そうして俺が引きつけている隙に、背後に回っていたゼタがハンマーを叩きつけた。
「アアアアアッ!?」
グレートマインクラブが消滅する。
後には〈ミスリル鉱〉が残された。
「よっしゃ、また落ちたぜ! こいつで七個目だ!」
グレートマインクラブ狩りを開始して、およそ二時間。
予想以上の早さで〈ミスリル鉱〉が手に入り、すでに目標の五個を上回る戦果となっていた。
「しかしまさか、テメェが盾役をこなせるとは思わなかったぜ」
感心とも呆れともとれる表情で、ゼタが言ってくる。
俺とゼタは、途中から盾役をスイッチするスタイルを取っていた。
〈超集中〉スキルの効果中は、俺がグレートマインクラブを引きつけ、その間にゼタが後ろから〈メタルクラッシュ〉を放ち、その後は通常攻撃でガンガン叩きまくる。
そして効果が切れると、今度はゼタが巨大ガニの猛攻を引き受け、俺は〈ファイアアロー〉を放つ。
〈超集中〉のクールタイムが終わると交代だ。
その間にちょうどゼタの〈メタルクラッシュ〉のクールタイムも終わっているので、再び巨大ガニにそれを叩き込む。
このスタイルを取ることで、非常に効率よく巨大ガニを狩ることができるようになったのだ。
「ますますテメェの天職が謎だぜ」
「万能職だって言ってるだろう」
「んな都合のいい天職があってたまるか!」
もちろんこの辺りの階層には、グレートマインクラブ以外の魔物も出没する。
高速移動と鎌攻撃が厄介なカマキリの魔物キラーマンティス、身体を硬化させることで防御力を上げたりこちらを拘束したりしてくる魔物セメントスライム、背中の大砲によって超遠距離から攻撃してくる亀の魔物キャノンタートルなど、中層と違って一筋縄ではいかない魔物が多い。
こいつらのレベルはだいたい60前後。
俺からすれば格上なので、少しずつレベルも上がってきている。
―――――――――
【レベル】53
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その後、〈ミスリル鉱〉を十個手に入れたところで、地上へ戻ることになった。
ちょうど目標の二倍だ。
「思った以上に手に入ったな。テメェの頑張りに免じて、〈ミスリルの剣〉の作成料金は2000万ゴルドでいいぜ」
機嫌よさそうにゼタが言う。
2000万ゴルドなら手持ちの資金だけで賄うことができる。
「グルアアアアッ!!」
地上へと戻る途中、最下層まで続く穴の付近を通過していると、上の方から一体の魔物が降ってきた。
「っと、グリフォンか!」
グリフォンは鷲の上半身と獅子の下半身を持つ魔物だ。
この巨大な縦穴部分を縄張りとし、侵入者を見かけると獰猛に襲い掛かる。
断崖絶壁を利用しての階層間の移動を断念するのは、このグリフォンを始めとする飛行系の魔物が蠢いているせいだ。
「〈ブレイクインパクト〉!」
猛スピードで滑空し、躍りかかってきたグリフォンへ、ゼタが攻撃スキルをお見舞いする。
〈ブレイクインパクト〉は衝撃波を発生させて、周囲の魔物にまとめてダメージを与えるスキルだが、これにはもう一つ、衝撃波によって敵を吹き飛ばせるという大きな副次効果があった。
「~~~~ッ!?」
滑空攻撃がキャンセルされ、墜落して何度か地面を転がるグリフォン。
そこへすかさず俺が〈フリージング〉を放つ。
グリフォンの翼を『凍結』させることで、一時的に厄介な飛行能力を奪うことができた。
後は二人で猛攻を仕掛けて一気にHPを削り切る。
「はっ、短期間ながら悪くねぇ連携ができるようになってきたな」
「ああ、やはりリアルなコミュニケーションができるとかなり楽だ」
「リアル?」
「……こっちの話だ。それよりまた何か来たぞ」
宙に浮かびながら近づいてくる新手。
グリフォンと違って翼など生えていないが、飛行能力を有している魔物に違いない。
「いや待て……このダンジョンに、そんな魔物がいたか……?」
グリフォン以外にも、このダンジョンを貫通する巨大な縦穴には、飛行系の魔物がいくつか出現する。
しかし俺の記憶では、その中に翼を持たないタイプなどいなかったはずだ。
「なんだ、こいつは? 見たことねぇぞ?」
ゼタもまた見覚えがないようで、訝しそうに眉根を寄せている。
そいつはローブを身に纏っていた。
シルミアと一緒に倒した、あの隠しフィールドボスのダークウィザードと似た感じだが、それよりもはるかに嫌な感覚があった。
そもそも魔物……ではない?
ゲームが現実化したこの世界に来てから、未知の魔物に遭遇したことなど一度もない。
「となると人間? あるいは……」
俺の直感が警鐘を鳴らす。
得体のしれないこの謎の生き物から、今すぐ逃げた方がよいのではないか。
そんなことを考えていると、
「我こそは試す者なり」
「「喋った!?」」
「汝――ライズ=アルベール」
「……俺?」
「試練を越えよ」
次の瞬間だった。
謎のローブ男の姿が掻き消えたかと思うと、俺は背後から猛烈な風を浴び、吹き飛ばされていた。
「は?」
いつの間に移動したのか、怪しいローブ男は俺の背後にいた。
しかもどうやら何らかの魔法を発動したらしい。
気づけば俺は最下層まで突き抜けた穴の上まで吹っ飛ばされ、そのまま地下深くまで自由落下。
「うおおおおおおおおおおおおっ!?」
ゼタの「ライズっ!?」という声が、遥か頭上から降りてきた。
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