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第27話 みんなー!!!! はやく帰ってきてくれーっ!!!!
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俺の名はシシオ。
現在の族長シシオダスの長男として生まれ、将来は父の座を引き継ぐことを期待されている。
我々の村では、族長は世襲制ではない。
実力のある者が族長に選ばれる。
それは俺も例外ではなかったが、そうした厳しい競争に勝ち抜き、今や皆から次期族長を確実視されるまでに至っている。
父を見習って、俺は常に次期族長に相応しい態度や言動を取るよう努めているつもりだ。
だから今回、彼らのダンジョン攻略に同行するよう父から命じられたときも、嫌な顔一つせずに拝命した。
でも内心では本気で嫌だったよ!
だってあのダンジョン、マジでやべぇもん!
狩り慣れている魔物ではないということもあるが、村の精鋭たちが苦戦するような相手が大量に棲息しているのだ。
正直、もう二度と入りたくない。
「今さらだが、本当に行くつもりなのか? 今ならまだ引き返せるぞ?」
とはいえ、唯一の大人としてそんな態度を出すわけにもいかず。俺はちょっと迂遠な言い方で彼らを止めようとした。
「心配ないよ!」
こっちはめちゃくちゃ心配なのだが?
確かにこの子供たちは異常に強い。道中、すでに何度かダンジョンの魔物に遭遇したが、物ともしなかった。
しかしダンジョンの中と外では魔物の強さも数も違う。
それに迷路のような構造になっていて、時には罠もある。彼らは果たしてその辺りのことをちゃんと分かってるのだろうか? 元気だけじゃどうにもならないこともあるんだぞ?
「そ、そうか。……ライオ、お前も覚悟は大丈夫か?」
「うん、兄さん」
おいおい、ライオ! ちょっと前のお前だったら、「こわいよ、おにいちゃん! おれにはムリだよ~」って泣きついてきたはずだぞ?
あんなに泣き虫で自信のなかったお前はどこにいったんだ!?
しかもいつの間にか俺より強くなりやがってよぉ! さっきあの巨大クワガタの角を腕力だけで圧し折ったとき、思わず服従のポーズを取りそうになったじゃないか……。
俺の秘かな抵抗も虚しく、彼らは意気揚々とダンジョンへと入っていく。
仕方なく後を追った。
前回同様、いや、それ以上の数の魔物が侵入者を拒もうと襲い掛かってきた。
だが彼らはそれを物ともしなかった。
俺たちが苦戦させられた巨大カマキリの首を、一瞬で斬り飛ばしてしまったときはマジでぞっとした。思わず服従のポーズを(ry
やがて、忘れもしないあの場所へと辿り着く。
「……ここだ。前回ここで我々は全滅しかけ、そしてダンジョンの攻略を諦めることに決めたのだ」
マジで死にかけたもんね。
即座に撤退判断を下した俺はもっと褒められるべきだと思う。
「ここにいる魔物は今まで出てきた連中とはレベルが違う。注意しろよ。それと絶対、あの白いやつには触れるな」
不安のせいか、すごい早口になっている自覚がある。喉が湧いた……。
できればもう二度とあの魔物を見たくなかった。
だが再びあの悪夢が姿を現した。
巨大なクモだ。
蠢く八本の脚に、不気味に光る六個の目。その全長は五メートルにも達するだろう。
奴がこの空間中に張り巡らせた糸は、恐るべき強度と粘着力で捕えた獲物を容易には放さない。
思い出したくもないが、それは前回の戦いで体験済みだった。
しかもあんなにでかいくせに、奴の移動速度は尋常ではない。あの糸の上を滑るように走ってこちらに迫ってくるのだ。あのあと何度か夢に見たぜ……。
さらに奴は配下の子蜘蛛まで引き連れているときた。
ねぇ今からでも遅くないから、引き返さないか? 子供ばかりでここまで来たんだ。もう十分だって。この辺で断念したとしても何ら恥ずかしいことじゃない。ほら、あの人族の女もきっと心配していることだろう。早く帰って安心させてやったらどうだ?
……お願いだからもう帰ろうよ。
そんな俺の気持ちが通じたのか、現れた巨大クモと睨み合うだけで、彼らはまだ動こうとしない。
もしかしてあのクモが強敵だと感じ取ったのか?
あの大きさだし、そりゃ感じるだろう。
これならもうひと押しすれば回れ右してくれるかも?
「どうだ? さすのお前たちもここを突破するのは難しいだろう? あの糸に捕らわれたら最後、奴らの餌だ。しかも間違いなく生きたまま食われるぞ?」
ちょっと脅してみた。誰だって生きたまま食われるのは嫌なはずだ。
「レオナ、いける?」
「うん! 任せて!」
やっぱ行く気かよ!
マジで死んでも知らんぞ!? 俺はちゃんと何度も忠告したからな!
……倒しやがったよ。
また服従のポーズをしてしまいそうになりながら、俺は呆然と目の前の光景を見詰めていた。
あちこちに巡らされていた糸はすべて焼失し、地面には巨大グモたちの残骸が転がっている。
最初に放った炎で糸をすべて焼き切り、相手の地の利を完全に奪った上で、立て直される前に一気加勢に攻めて圧倒的優位に立つと、そのままの勢いで殲滅してしまったのだ。
確かに彼らには魔法というアドバンテージがあった。
だがそれも、あの糸の弱点を瞬時に見抜く眼力ゆえのものだ。
俺たちだって、魔法は使えないが、その気になれば糸に火をつけて焼き尽くすこともできただろう。
しかしそれに思い至ることができず、結果があの情けない撤退だ。
「どうしたの? いくよ?」
「え? あ、ああ」
声を掛けられ、ハッと我に返る。
今の戦いなど大したものではないと言わんばかりに、すでに彼らは先へと進もうとしていた。
お、置いていかないでくれ!
認めたくはないが、この中で一番弱いのは間違いなく俺だからな……。
慌てて彼らの後に追いつくと、俺は人族の少年に訊ねる。
「一つ、質問があるのだが」
「? なに?」
「その歳でなぜそんなに強い? 一体どこでそんな力を身に着けたのだ?」
「森にきてからかな?」
「……それがいつのことか訊いてもいいか?」
「一年ちょっと前くらい?」
い、一年だと!?
「最初はホーンラビットも倒せなかったよ?」
「なんだと!?」
「わたしも! ろうそくくらいの火しか出せなかった!」
少女の方が言う。
魔法のことについてはよく分からない。だがこの二人の言うことが真実ならば、あり得ない成長を遂げたことは間違いない。
ライオたちといい、一体どうなっているんだ? 才能に乏しく、足手まといだとして村から追い出された連中が、伝説の進化を遂げてしまうなど、どう考えてもおかしい。
あの小さな村に何か秘密があるのか?
「あ、サオリお姉ちゃんと出会ったのは同じときだよ!」
「お姉ちゃんがいるとね、力がわいてくる感じがする!」
まさか、あの女性が……?
ごく普通の人族の女性だとばかり思っていた。
もちろん魔物を引き連れている時点で普通ではないのだが、それ以上でも以下でもないと。
だがもし、何か他にも特別な力があるとすれば……。
◇ ◇ ◇
「まだかな……? まだかな……? ちょっと遅くない? もうそろそろ帰ってきてもいいころだよね……? まさか何かあったとか……? こ、こうしてはいられない! すぐに助けに行かないと……!」
「クルルルー(おちついて)」
「キィキィ(おちついて)」
リューとシャルに窘められた。
だって心配なんだもん!
レオルくんたちが出発して、そろそろ丸二日が経とうとしている。
ここからダンジョンの入り口まで行くのに半日ちょっと。往復だと丸一日。
攻略にどれくらいかかるか分からないけど、ニャー族の人たちの話からするに一日で終わるなんてことはなさそうだ。
もちろん休憩なども考慮すれば、まだ全然慌てるような時間じゃない。
そう頭では分かっていても、気が気ではなかった。
「こんなことならやっぱり付いていくべきだったか……」
「クルルルー(それはだめ)」
「キィキィ(ぜったいだめ)」
何でだよぉ!
くそう、こんなことなら一緒に戦闘系のチートも貰っておくんだった!
あの女神さんあんま深く考えてないタイプ(失礼)だったし、要求すればくれたかもしれないのに!
とそのとき、外から聞き慣れた声が。
「「「お姉ちゃーん! ただいまーっ!」」」
帰ってきたぁぁぁぁぁっ!
現在の族長シシオダスの長男として生まれ、将来は父の座を引き継ぐことを期待されている。
我々の村では、族長は世襲制ではない。
実力のある者が族長に選ばれる。
それは俺も例外ではなかったが、そうした厳しい競争に勝ち抜き、今や皆から次期族長を確実視されるまでに至っている。
父を見習って、俺は常に次期族長に相応しい態度や言動を取るよう努めているつもりだ。
だから今回、彼らのダンジョン攻略に同行するよう父から命じられたときも、嫌な顔一つせずに拝命した。
でも内心では本気で嫌だったよ!
だってあのダンジョン、マジでやべぇもん!
狩り慣れている魔物ではないということもあるが、村の精鋭たちが苦戦するような相手が大量に棲息しているのだ。
正直、もう二度と入りたくない。
「今さらだが、本当に行くつもりなのか? 今ならまだ引き返せるぞ?」
とはいえ、唯一の大人としてそんな態度を出すわけにもいかず。俺はちょっと迂遠な言い方で彼らを止めようとした。
「心配ないよ!」
こっちはめちゃくちゃ心配なのだが?
確かにこの子供たちは異常に強い。道中、すでに何度かダンジョンの魔物に遭遇したが、物ともしなかった。
しかしダンジョンの中と外では魔物の強さも数も違う。
それに迷路のような構造になっていて、時には罠もある。彼らは果たしてその辺りのことをちゃんと分かってるのだろうか? 元気だけじゃどうにもならないこともあるんだぞ?
「そ、そうか。……ライオ、お前も覚悟は大丈夫か?」
「うん、兄さん」
おいおい、ライオ! ちょっと前のお前だったら、「こわいよ、おにいちゃん! おれにはムリだよ~」って泣きついてきたはずだぞ?
あんなに泣き虫で自信のなかったお前はどこにいったんだ!?
しかもいつの間にか俺より強くなりやがってよぉ! さっきあの巨大クワガタの角を腕力だけで圧し折ったとき、思わず服従のポーズを取りそうになったじゃないか……。
俺の秘かな抵抗も虚しく、彼らは意気揚々とダンジョンへと入っていく。
仕方なく後を追った。
前回同様、いや、それ以上の数の魔物が侵入者を拒もうと襲い掛かってきた。
だが彼らはそれを物ともしなかった。
俺たちが苦戦させられた巨大カマキリの首を、一瞬で斬り飛ばしてしまったときはマジでぞっとした。思わず服従のポーズを(ry
やがて、忘れもしないあの場所へと辿り着く。
「……ここだ。前回ここで我々は全滅しかけ、そしてダンジョンの攻略を諦めることに決めたのだ」
マジで死にかけたもんね。
即座に撤退判断を下した俺はもっと褒められるべきだと思う。
「ここにいる魔物は今まで出てきた連中とはレベルが違う。注意しろよ。それと絶対、あの白いやつには触れるな」
不安のせいか、すごい早口になっている自覚がある。喉が湧いた……。
できればもう二度とあの魔物を見たくなかった。
だが再びあの悪夢が姿を現した。
巨大なクモだ。
蠢く八本の脚に、不気味に光る六個の目。その全長は五メートルにも達するだろう。
奴がこの空間中に張り巡らせた糸は、恐るべき強度と粘着力で捕えた獲物を容易には放さない。
思い出したくもないが、それは前回の戦いで体験済みだった。
しかもあんなにでかいくせに、奴の移動速度は尋常ではない。あの糸の上を滑るように走ってこちらに迫ってくるのだ。あのあと何度か夢に見たぜ……。
さらに奴は配下の子蜘蛛まで引き連れているときた。
ねぇ今からでも遅くないから、引き返さないか? 子供ばかりでここまで来たんだ。もう十分だって。この辺で断念したとしても何ら恥ずかしいことじゃない。ほら、あの人族の女もきっと心配していることだろう。早く帰って安心させてやったらどうだ?
……お願いだからもう帰ろうよ。
そんな俺の気持ちが通じたのか、現れた巨大クモと睨み合うだけで、彼らはまだ動こうとしない。
もしかしてあのクモが強敵だと感じ取ったのか?
あの大きさだし、そりゃ感じるだろう。
これならもうひと押しすれば回れ右してくれるかも?
「どうだ? さすのお前たちもここを突破するのは難しいだろう? あの糸に捕らわれたら最後、奴らの餌だ。しかも間違いなく生きたまま食われるぞ?」
ちょっと脅してみた。誰だって生きたまま食われるのは嫌なはずだ。
「レオナ、いける?」
「うん! 任せて!」
やっぱ行く気かよ!
マジで死んでも知らんぞ!? 俺はちゃんと何度も忠告したからな!
……倒しやがったよ。
また服従のポーズをしてしまいそうになりながら、俺は呆然と目の前の光景を見詰めていた。
あちこちに巡らされていた糸はすべて焼失し、地面には巨大グモたちの残骸が転がっている。
最初に放った炎で糸をすべて焼き切り、相手の地の利を完全に奪った上で、立て直される前に一気加勢に攻めて圧倒的優位に立つと、そのままの勢いで殲滅してしまったのだ。
確かに彼らには魔法というアドバンテージがあった。
だがそれも、あの糸の弱点を瞬時に見抜く眼力ゆえのものだ。
俺たちだって、魔法は使えないが、その気になれば糸に火をつけて焼き尽くすこともできただろう。
しかしそれに思い至ることができず、結果があの情けない撤退だ。
「どうしたの? いくよ?」
「え? あ、ああ」
声を掛けられ、ハッと我に返る。
今の戦いなど大したものではないと言わんばかりに、すでに彼らは先へと進もうとしていた。
お、置いていかないでくれ!
認めたくはないが、この中で一番弱いのは間違いなく俺だからな……。
慌てて彼らの後に追いつくと、俺は人族の少年に訊ねる。
「一つ、質問があるのだが」
「? なに?」
「その歳でなぜそんなに強い? 一体どこでそんな力を身に着けたのだ?」
「森にきてからかな?」
「……それがいつのことか訊いてもいいか?」
「一年ちょっと前くらい?」
い、一年だと!?
「最初はホーンラビットも倒せなかったよ?」
「なんだと!?」
「わたしも! ろうそくくらいの火しか出せなかった!」
少女の方が言う。
魔法のことについてはよく分からない。だがこの二人の言うことが真実ならば、あり得ない成長を遂げたことは間違いない。
ライオたちといい、一体どうなっているんだ? 才能に乏しく、足手まといだとして村から追い出された連中が、伝説の進化を遂げてしまうなど、どう考えてもおかしい。
あの小さな村に何か秘密があるのか?
「あ、サオリお姉ちゃんと出会ったのは同じときだよ!」
「お姉ちゃんがいるとね、力がわいてくる感じがする!」
まさか、あの女性が……?
ごく普通の人族の女性だとばかり思っていた。
もちろん魔物を引き連れている時点で普通ではないのだが、それ以上でも以下でもないと。
だがもし、何か他にも特別な力があるとすれば……。
◇ ◇ ◇
「まだかな……? まだかな……? ちょっと遅くない? もうそろそろ帰ってきてもいいころだよね……? まさか何かあったとか……? こ、こうしてはいられない! すぐに助けに行かないと……!」
「クルルルー(おちついて)」
「キィキィ(おちついて)」
リューとシャルに窘められた。
だって心配なんだもん!
レオルくんたちが出発して、そろそろ丸二日が経とうとしている。
ここからダンジョンの入り口まで行くのに半日ちょっと。往復だと丸一日。
攻略にどれくらいかかるか分からないけど、ニャー族の人たちの話からするに一日で終わるなんてことはなさそうだ。
もちろん休憩なども考慮すれば、まだ全然慌てるような時間じゃない。
そう頭では分かっていても、気が気ではなかった。
「こんなことならやっぱり付いていくべきだったか……」
「クルルルー(それはだめ)」
「キィキィ(ぜったいだめ)」
何でだよぉ!
くそう、こんなことなら一緒に戦闘系のチートも貰っておくんだった!
あの女神さんあんま深く考えてないタイプ(失礼)だったし、要求すればくれたかもしれないのに!
とそのとき、外から聞き慣れた声が。
「「「お姉ちゃーん! ただいまーっ!」」」
帰ってきたぁぁぁぁぁっ!
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