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第十七話 NM生成その2

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ステータス
 名前:ヤマモトタケル
 種族:ダンジョンの一部(迷宮主)
 レベル:20
 腕力:101 体力:103 器用:108 敏捷:112 魔力:214 運:56
 スキル:〈迷宮拡張+9〉〈魔物生成+9〉〈武器生成+7〉〈食糧生成+6〉〈罠作成+5〉〈宝箱作成+5〉〈鑑定+4〉〈念話+4〉〈NM生成+3〉〈戦場形成+1〉〈迷宮主生成+3〉


『コボルドの巣穴』の魔石を吸収し、俺はレベルアップした。
 ちなみにダンジョン本体のステータスは、これから魔力と運以外の数値を0にしたものと一緒だ。
 魔力が格段に上がっているのは、恐らくレベルアップの効果というより、魔石を吸収したお陰だろう。

『コボルドの巣穴』のフィールドがそのまま俺の一部になった上に、そこにいたコボルドたちも俺の配下になった。
 それだけでなく、今まで魔物生成を使ってもゴブリンやオーガなどの鬼系の魔物しか生まれなかったのが、コボルドやウェアウルフなどの狼系の魔物を生成できるようになっていた。
 上手く連携させることができれば、戦い方の幅が広がるかもしれない。



〈NM生成+3〉に段階が上がったことで、俺は二人目のネームドモンスターが生成できないか、試してみることにした。
 言葉を話すことができ、色々な意見をくれるミオの存在は正直かなり助かっている。
 彼女みたいな仲間の数を増やるなら願ってもないことだ。
 まぁ、ネームドモンスターが必ず高い知能を持っているのかは分からないし、ミオのケースが例外だっただけかもしれないが。

 それにしても、まさかあそこまで知人と瓜二つの少女が生成されるとは思わなかったよな。
 どうやら俺の記憶を頼りに再現されているらしく、つまりはそれだけ俺が神宮寺のことを脳内に強く刻んでいたということになる。
 性格は全然違うのだが……。
 本人に知られたら幻滅されるだろうな……異世界だし、そんな可能性はまずないだろうけど。

 しかし、俺のイメージ次第では前世のアイドルとかも生成できちゃうということか……。
 けど、あんまりはっきりと覚えている子はいない。
 可愛いなぁと思える子はそこそこいた気がするけど、ファンになろうと思ったりすることは別になかったしな。
 仕事が忙しかったのもあるが……。

「マスター、また女の子を生成するつもりですか?」

 俺がそんなことを考えていると、ミオが俺の心中を読んだかのように訊いてきた。

「い、いやっ、今度は見た目からしてもっと狂暴そうなモンスターにするつもりだ……!」

「そうですか」

 頷くミオだが、動揺する俺の誤魔化しなんて、きっと完璧に見透かされていることだろう。
 怖い。

 気を取り直して、俺はイメージする。
 狂暴と言うと、やっぱドラゴンとかかな?
 悪魔でもいいかもしれない。
 巨人……だと、今のダンジョンでは狭すぎるか。

 そうそう。
 狂暴で思い出したけど、前世の俺の上司。
 あれは本当に狂暴だった。
 まぁ狂暴っていうか、実際に暴力を振るったりする訳じゃないんだが。
 いや、言葉は暴力だったな。


『そんなこと私、指示してないわよね? 私が言ったことすら完璧にできないのに、なんでそれ以上のことをしようと思うの? 言っておくけど、あなたの独創性になんて、まっっったく期待してないから』

『だめ。やり直し。なにこれ? 小学生が作ったレポートかと思ったわよ。うちの甥っ子の方がまだマシなもの出してきそうなんだけど』


 ……思い出すだけで腹が立つし胃が痛くなってくる。

 高坂凜子。
 社長令嬢ということもあって、俺より五歳も年下の24歳なのに、すでに課長だった。
 見た目こそハッとするような美人なのだが、三日も一緒に仕事をすれば顔も見たくなくなることだろう。

 って、何で今、あいつのこと思い出しちまったんだ?
 やばいっ、このままじゃ……

 そのときダンジョンの壁から頭部らしきものが生えてきた。
 新たなネームドモンスターが生まれてしまったのだ。

 俺は頭を抱えた。
 やってしまった。

 生成されたそのモンスターは、高坂凜子とまったく同じ姿をしていた。







「詰問。マスター、見た目からして狂暴そうなモンスターにするという先ほどの発言はいかに?」

「お、俺にとっては見た目からして狂暴なんだよ!」

 心なしかジト目を向けてくるミオに、俺はそんな言い訳をすることしかできない。

「はぁ、ほんと、どこからどう見ても高坂課長だよな…………ん、これは……?」

 よく見ると、耳の位置がおかしかった。
 側頭部ではなく、もっと上の位置に付いているのである。
 しかも、ふさふさの毛に覆われていて――

「獣耳、だと……?」

 さらにはお尻に尻尾が生えている。
 あの狂暴な女上司に、獣耳と尻尾……?
 おいおい一体何の冗談だよと思いながら〈鑑定+4〉を使ってみると、


ステータス
 名前:リンコ
 種族:人狼族
 レベル:18
 腕力:83 体力:84 器用:79 敏捷:95 魔力:63 運:41
 スキル:〈体術+6〉〈狩り+5〉〈咆哮+3〉


「人狼族……」

 そのとき高坂課長――いや、一応、リンコと呼んだ方がいいのか――が、ゆっくりと目を開いた。
 俺と目が合う。
 ひぃっ、怒られる!(←もはや条件反射)

 だが彼女は、俺の知る上司であれば絶対にあり得ないことなのだが、屈託のない笑顔でこう言ったのだった。

「ご主人さまっ、だいすきーっ!」

「へ……?」
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