1 / 34
第一話 俺、異世界でダンジョンになる
しおりを挟む
ここはどこだ?
何も見えない。何も聞こえない。外界の刺激の一切がない。
あるのは自分の身体の感覚だけ。
だけどその感覚がちょっとおかしい。
手がない。足もない。
それどころか頭も胴体もない。
あるのはただの空洞。
全長十五メートルくらいの、ただ真っ直ぐ伸びる穴。
何だこれは。
どういうことだ?
俺は一体、どうなってしまったんだ?
俺の名前は山本武。
地方都市暮らしの会社員で、二十九歳独身。
中肉中背運動神経普通。
容姿も普通だが地味というか影が薄いせいで、よくバレンタインデーの日には俺だけ女子社員達から義理チョコを忘れられる。
義理なのに。むしろ義理だからか。ふざけんな。こっちは義理でも期待して待ってるんだよ(泣)。
ごほん。
話が逸れた。
うん、どうやら記憶は失われていないようだ。
だが直近の出来事がなかなか思い出せない。
確か――
そうだ。
俺は、死んだんだ。
連勤と度重なる残業で疲れ、夜中の帰宅途中にふらふらと横断歩道を渡っていたところを車にはねられてしまったのだ。
もしかすると赤信号だったのかもしれない。
それに気付かないくらい、俺は疲弊していたのだ。
明らかな過労死だ。会社を訴えたい。
まぁ死んでしまった以上、もう俺には何もできないのだが。
そして――変な女に会った。
自分は女神だなどと自称する、ちょっと頭のおかしい、けれど無茶苦茶美人の女。
彼女が言うには、俺は別の世界で生まれ変わるのだという。
確か、魂の数のバランスを取るためとかなんとか……。
あまりに荒唐無稽な話だったため、適当に相槌を打って聞いていたのだが……。
まさか、あれは本当のことだったのか。
彼女によれば、基本的に人間は人間に生まれ変わるのだという。
ただし低確率で亜人に、そしてごくごく稀に魔族や魔物になる可能性もあると。
今の俺の現状を鑑みるに、どうやら人間という訳ではなさそうだ。
だとしたら一体、何に生まれ変わってしまったというのだろうか。
そのとき、その俺の疑問に応えるかのように、頭の中に文字が浮かび上がってきた。
ステータス
名前:ヤマモトタケル
種族:ダンジョン
レベル:1
腕力:0 体力:0 器用:0 敏捷:0 魔力:9 運:7
スキル:〈迷宮拡張〉〈魔物生成〉
……
…………
………………は?
俺はしばしの間、呆けてしまっていた。
脳内に文字が浮かぶという現象にも突っ込むべきなのだろうが、今はそれ以上に、
俺、もしかしてダンジョンに生まれ変わっちまったのか!?
ちょっと落ち着こう。
よし、深呼吸だ。
すぅはぁすぅはぁ……って、口が無いからできやしない。
そうだった。
さっきも言った通り、俺は今、ただの穴になってしまっているのだった。
つまりはこれがダンジョンってことか……。
ていうか、種族がダンジョンってどういうことよ?
ダンジョンって生き物じゃないだろ。
まぁそれを言ったら、ただの穴がこうして思考していること自体、意味不明なんだが……。
ともかく。
俺はどうやらダンジョンに転生してしまったらしかった。
何も見えない。何も聞こえない。外界の刺激の一切がない。
あるのは自分の身体の感覚だけ。
だけどその感覚がちょっとおかしい。
手がない。足もない。
それどころか頭も胴体もない。
あるのはただの空洞。
全長十五メートルくらいの、ただ真っ直ぐ伸びる穴。
何だこれは。
どういうことだ?
俺は一体、どうなってしまったんだ?
俺の名前は山本武。
地方都市暮らしの会社員で、二十九歳独身。
中肉中背運動神経普通。
容姿も普通だが地味というか影が薄いせいで、よくバレンタインデーの日には俺だけ女子社員達から義理チョコを忘れられる。
義理なのに。むしろ義理だからか。ふざけんな。こっちは義理でも期待して待ってるんだよ(泣)。
ごほん。
話が逸れた。
うん、どうやら記憶は失われていないようだ。
だが直近の出来事がなかなか思い出せない。
確か――
そうだ。
俺は、死んだんだ。
連勤と度重なる残業で疲れ、夜中の帰宅途中にふらふらと横断歩道を渡っていたところを車にはねられてしまったのだ。
もしかすると赤信号だったのかもしれない。
それに気付かないくらい、俺は疲弊していたのだ。
明らかな過労死だ。会社を訴えたい。
まぁ死んでしまった以上、もう俺には何もできないのだが。
そして――変な女に会った。
自分は女神だなどと自称する、ちょっと頭のおかしい、けれど無茶苦茶美人の女。
彼女が言うには、俺は別の世界で生まれ変わるのだという。
確か、魂の数のバランスを取るためとかなんとか……。
あまりに荒唐無稽な話だったため、適当に相槌を打って聞いていたのだが……。
まさか、あれは本当のことだったのか。
彼女によれば、基本的に人間は人間に生まれ変わるのだという。
ただし低確率で亜人に、そしてごくごく稀に魔族や魔物になる可能性もあると。
今の俺の現状を鑑みるに、どうやら人間という訳ではなさそうだ。
だとしたら一体、何に生まれ変わってしまったというのだろうか。
そのとき、その俺の疑問に応えるかのように、頭の中に文字が浮かび上がってきた。
ステータス
名前:ヤマモトタケル
種族:ダンジョン
レベル:1
腕力:0 体力:0 器用:0 敏捷:0 魔力:9 運:7
スキル:〈迷宮拡張〉〈魔物生成〉
……
…………
………………は?
俺はしばしの間、呆けてしまっていた。
脳内に文字が浮かぶという現象にも突っ込むべきなのだろうが、今はそれ以上に、
俺、もしかしてダンジョンに生まれ変わっちまったのか!?
ちょっと落ち着こう。
よし、深呼吸だ。
すぅはぁすぅはぁ……って、口が無いからできやしない。
そうだった。
さっきも言った通り、俺は今、ただの穴になってしまっているのだった。
つまりはこれがダンジョンってことか……。
ていうか、種族がダンジョンってどういうことよ?
ダンジョンって生き物じゃないだろ。
まぁそれを言ったら、ただの穴がこうして思考していること自体、意味不明なんだが……。
ともかく。
俺はどうやらダンジョンに転生してしまったらしかった。
1
お気に入りに追加
207
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
神様との賭けに勝ったので異世界で無双したいと思います。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。
突然足元に魔法陣が現れる。
そして、気付けば神様が異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
もっとスキルが欲しいと欲をかいた悠斗は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―――
※チートな主人公が異世界無双する話です。小説家になろう、ノベルバの方にも投稿しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)
SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。
しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。
相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。
そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。
無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる