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第28話 睡眠レタスだ
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「やめておけよ」
巨漢の前に立ちはだかるルイス。
店内がざわついた。
「やめた方がいいのはお前だっ! 相手は冒険者だぞ!?」
「一般人が敵うはずねぇ! 殺されるぞ!」
その作業着姿から、どうやらルイスのことをただの一般人だと思っているようだ。
「どきやがれっ! さもねぇと、てめぇもぶち殺すぞ!?」
一方、完全に頭に血が上っている巨漢は、ルイスの注意に耳を貸すはずもなかった。
そのまま太い拳を振り上げると、ルイス目がけて豪快に殴りかかってくる。
「おっと」
ぱしっ。
その拳を軽く手で払うルイス。
すると巨漢は拳を逸らされ、そのまま勢いよく回転。
「は?」
本人も何が起こったのか分からないままに、ぐるぐる二回くらいその場で回って、最後はよろめいて床にひっくり返った。
「「「え?」」」
予想さえしていなかった光景に、店内にいた客たちがそろって唖然とする。
「い、今、何が起こったんだ?」
「分からん……ボーマンが回転して、転んだ……?」
「ぶふっ、あいつ、酔ってやがるから、自分でバランス崩して転んだんだろうぜ!」
「なんだ、そういうことか!」
ルイスが拳を払ったのが見えなかったようで、ボーマンが自滅したと勘違いする客たち。
一方、酔っぱらっている張本人もまた、そう思ってしまったらしい。
「いてて……くそっ、てめぇのせいで、足を滑らせちまったじゃねぇかよ!?」
「足が滑った?」
ルイスからしたら何のことか理解できなかった。
「今度こそ、ぶっ殺してやる……っ!」
身体を起こした巨漢は、背中に提げていた斧を手に取り、躍りかかってくる。
「おいおい、武器まで使うなんて、酔ってるからって許されることじゃないだろ」
ルイスはそう嘆息しつつ、直径一メートルほどの巨大なカボチャを取り出した。
「「「何だ、あれは!?」」」
「カボチャだ」
「「「カボチャ!? しかもどこから出てきた!?」」」
客たちが思わずツッコむ中、巨漢が斧を思い切り振り下ろしてきた。
「んなもので、オレの斧を防げるとでも思ってんのか……っ! 死ねぇっ!」
ルイスはそれをカボチャでガード。
その場にいた誰もがカボチャごとルイスの身体が両断される展開を予想していたが、しかし斧の刃は数センチほどめり込んだだけで、途中であっさり停止してしまった。
「「「マジで受け止めた!?」」」
「盾にも使えるよう、硬く作ったカボチャだからな」
「「「そんなカボチャ聞いたことない!」」」
巨漢は「ば、ばかな」と呻きながらも、すぐさま斧を振り上げる。
するとカボチャも一緒に付いてきた。
「なっ……」
カボチャ付きの斧を手にする巨漢の光景が滑稽だったのか、思わず吹き出す者たちがいた。
「ぶふっ……斧が、ハンマーみたいに……」
「お、おい、聞こえるぞ」
しかし巨漢は周りの嘲笑を聞き咎めるどころではなかった。
「何だ、この重さは……っ!? うおっ……」
斧と一体になったカボチャの予想外の重量にふら付き、後ろのカウンターに腰をぶつけてしまう。
もはや斧を手にしてはいられず、床に置かざるを得なかった。
「ボーマンが持ってられねぇとか、あのカボチャ、そんなに重たいのか……?」
「けど、さっきあいつは片手で持っていたが……」
ボーマンは慌てて斧からカボチャを外そうとするも、意外としっかり刺さっているようで、まったく抜けない。
「くそっ……何なんだよ、このカボチャは!?」
ルイスは斧を使えなくなったボーマンに近づいていくと、何を思ったか、またしてもどこからともなくレタスを取り出し、
「えい」
「むぐっ!?」
無理やりその口の中へと放り込んだ。
「っ!? 何しやが……って、うまあああああああああいっ!? もぐもぐもぐっ!」
あまりの美味しさに、思わず咀嚼して呑み込んでしまう巨漢。
次の瞬間、その目が虚ろになったかと思うと、
「あれ、なんか……急激に……眠気が…………ぐご~」
鼾を掻いて眠ってしまった。
「「「何を食べさせた!?」」」
「睡眠レタスだ」
「「「睡眠レタス!?」」」
その名の通り、睡眠を促す効果を持ったレタスである。
巨漢の前に立ちはだかるルイス。
店内がざわついた。
「やめた方がいいのはお前だっ! 相手は冒険者だぞ!?」
「一般人が敵うはずねぇ! 殺されるぞ!」
その作業着姿から、どうやらルイスのことをただの一般人だと思っているようだ。
「どきやがれっ! さもねぇと、てめぇもぶち殺すぞ!?」
一方、完全に頭に血が上っている巨漢は、ルイスの注意に耳を貸すはずもなかった。
そのまま太い拳を振り上げると、ルイス目がけて豪快に殴りかかってくる。
「おっと」
ぱしっ。
その拳を軽く手で払うルイス。
すると巨漢は拳を逸らされ、そのまま勢いよく回転。
「は?」
本人も何が起こったのか分からないままに、ぐるぐる二回くらいその場で回って、最後はよろめいて床にひっくり返った。
「「「え?」」」
予想さえしていなかった光景に、店内にいた客たちがそろって唖然とする。
「い、今、何が起こったんだ?」
「分からん……ボーマンが回転して、転んだ……?」
「ぶふっ、あいつ、酔ってやがるから、自分でバランス崩して転んだんだろうぜ!」
「なんだ、そういうことか!」
ルイスが拳を払ったのが見えなかったようで、ボーマンが自滅したと勘違いする客たち。
一方、酔っぱらっている張本人もまた、そう思ってしまったらしい。
「いてて……くそっ、てめぇのせいで、足を滑らせちまったじゃねぇかよ!?」
「足が滑った?」
ルイスからしたら何のことか理解できなかった。
「今度こそ、ぶっ殺してやる……っ!」
身体を起こした巨漢は、背中に提げていた斧を手に取り、躍りかかってくる。
「おいおい、武器まで使うなんて、酔ってるからって許されることじゃないだろ」
ルイスはそう嘆息しつつ、直径一メートルほどの巨大なカボチャを取り出した。
「「「何だ、あれは!?」」」
「カボチャだ」
「「「カボチャ!? しかもどこから出てきた!?」」」
客たちが思わずツッコむ中、巨漢が斧を思い切り振り下ろしてきた。
「んなもので、オレの斧を防げるとでも思ってんのか……っ! 死ねぇっ!」
ルイスはそれをカボチャでガード。
その場にいた誰もがカボチャごとルイスの身体が両断される展開を予想していたが、しかし斧の刃は数センチほどめり込んだだけで、途中であっさり停止してしまった。
「「「マジで受け止めた!?」」」
「盾にも使えるよう、硬く作ったカボチャだからな」
「「「そんなカボチャ聞いたことない!」」」
巨漢は「ば、ばかな」と呻きながらも、すぐさま斧を振り上げる。
するとカボチャも一緒に付いてきた。
「なっ……」
カボチャ付きの斧を手にする巨漢の光景が滑稽だったのか、思わず吹き出す者たちがいた。
「ぶふっ……斧が、ハンマーみたいに……」
「お、おい、聞こえるぞ」
しかし巨漢は周りの嘲笑を聞き咎めるどころではなかった。
「何だ、この重さは……っ!? うおっ……」
斧と一体になったカボチャの予想外の重量にふら付き、後ろのカウンターに腰をぶつけてしまう。
もはや斧を手にしてはいられず、床に置かざるを得なかった。
「ボーマンが持ってられねぇとか、あのカボチャ、そんなに重たいのか……?」
「けど、さっきあいつは片手で持っていたが……」
ボーマンは慌てて斧からカボチャを外そうとするも、意外としっかり刺さっているようで、まったく抜けない。
「くそっ……何なんだよ、このカボチャは!?」
ルイスは斧を使えなくなったボーマンに近づいていくと、何を思ったか、またしてもどこからともなくレタスを取り出し、
「えい」
「むぐっ!?」
無理やりその口の中へと放り込んだ。
「っ!? 何しやが……って、うまあああああああああいっ!? もぐもぐもぐっ!」
あまりの美味しさに、思わず咀嚼して呑み込んでしまう巨漢。
次の瞬間、その目が虚ろになったかと思うと、
「あれ、なんか……急激に……眠気が…………ぐご~」
鼾を掻いて眠ってしまった。
「「「何を食べさせた!?」」」
「睡眠レタスだ」
「「「睡眠レタス!?」」」
その名の通り、睡眠を促す効果を持ったレタスである。
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