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第25話 お手柔らかにお願いしますね
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「おめでとうございます、ルイスさん! 試験合格です! これから冒険者としてぜひ頑張ってください!」
エリザが上手くやってくれたようで、試験の翌日、冒険者ギルドに赴くと、合格を言い渡された。
「あ、申し遅れました! 私はギルド職員のフィネと言います! 今回、ルイスさんの教育係に任命されました! まだ新人で、色々と至らないところもあると思いますが、頑張りますのでよろしくお願いします!」
フィネと名乗った女性職員は、新人らしく初々しい印象で、はきはきと喋る子だった。
年齢はまだ二十歳くらいだろうか。
「こちらこそ、よろしくな」
「(わっ、優しそうな人でよかったです! 冒険者さんって怖そうな人が多いですから……)」
「……?」
「ええと、ルイスさんは未経験ということですので、冒険者ランクはEから……あれ? 変ですね? Cランクになっています……? すいません、間違っているかもしれませんので、確認してきます!」
慌てて窓口の奥に引っ込んでいくフィネ。
しばらくすると戻ってきた。
「すいません! どうやらCランクで合っているみたいです! こっちの未経験者というのが間違っていたみたいです! 年齢を考えたら当然ですよね! でも、じゃあ何で試験を……?」
例外的なことが重なり過ぎて、困惑しているようだ。
「と、とにかく、ルイスさんはCランクからのスタートです! ただ、冒険者として活動されるのは初めてですので、依頼を受けられる前に、簡単な講習を受けていただきますね! 講師は私がやります! ……お、お手柔らかにお願いしますね?」
そうしてルイスは、新人職員のフィネから、冒険者として活動していくための最低限の知識を学ぶことに。
冒険者ギルドの歴史や現状から始まり、依頼の受け方や冒険者ランクの仕組み、この街の周辺に棲息する魔物のこと、そして禁止事項など。
そもそもミハイルに教えてもらうまで、冒険者ギルドのこと自体を知らなかったルイスにとっては、非常にありがたい講習だった。
冒険者ギルドには、これらを束ねている『冒険者ギルド協会』というものがあるそうだ。
ただ、各都市に存在するギルドは独立性が強く、それゆえギルドごとに少しずつ運営方針などが異なっているらしい。
「国の法律とかも違いますから! でも、全ギルドに共通していることもあるんです!」
例えば、ある冒険者ギルドに所属する冒険者は、他のギルドでもサービスを受けることができるという。
さらに冒険者ランクもすべてのギルドで共通だ。
「ですのでルイスさんは、どこの街の冒険者ギルドに行ってもCランクなんです! その分、どこのギルドも昇格にはかなり慎重で、厳しい試験を課しているところが多いですよ!」
実力的に乏しい冒険者を昇格させてしまうと、そのギルドの評判を下げることになるからだという。
「お渡しした冒険者証も、すべてのギルドで使えます! 万一紛失しちゃうと、それを作ったギルド、ルイスさんの場合はこの街のギルドでしか再発行できないので、絶対に失くさないようにしてくださいね! あと、再発行には二万ゴールドが必要になっちゃいます!」
講習はだいたい二時間ほどだった。
それが終わると、今度はステータス測定を行うということで、建物の地下に設けられた訓練場へ。
「測定するのは全部で六つの能力です! 攻撃力、防御力、敏捷力、体力、そして魔力です!」
ルイスは訓練場の一角に用意された人形の前に誘導される。
かなり大きな人形で、見ただけでは材質が分からないが、それなりの重量がありそうだ。
「まずは攻撃力からです! 攻撃力の測定方法は至って簡単! 指定した武器で、この人形を全力で攻撃してもらうだけです!」
「指定した武器?」
「はい! 剣士系なら木剣、魔法使い系なら木製のメイス、といった感じです! どれもこちらで用意した者を使っていただきます! あっ、でも、ルイスさんは過去に例がない天職ですし、相応しい武器が……」
「別に素手でもいいのか?」
「構いませんが、少し低く出ちゃいますよ?」
「少しくらい仕方ないだろう。本気でやっていいのか?」
「はい! 全力でお願いします!」
「分かった。せーのっ」
そうしてルイスは、人形を命一杯、殴りつけたのだった。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
エリザが上手くやってくれたようで、試験の翌日、冒険者ギルドに赴くと、合格を言い渡された。
「あ、申し遅れました! 私はギルド職員のフィネと言います! 今回、ルイスさんの教育係に任命されました! まだ新人で、色々と至らないところもあると思いますが、頑張りますのでよろしくお願いします!」
フィネと名乗った女性職員は、新人らしく初々しい印象で、はきはきと喋る子だった。
年齢はまだ二十歳くらいだろうか。
「こちらこそ、よろしくな」
「(わっ、優しそうな人でよかったです! 冒険者さんって怖そうな人が多いですから……)」
「……?」
「ええと、ルイスさんは未経験ということですので、冒険者ランクはEから……あれ? 変ですね? Cランクになっています……? すいません、間違っているかもしれませんので、確認してきます!」
慌てて窓口の奥に引っ込んでいくフィネ。
しばらくすると戻ってきた。
「すいません! どうやらCランクで合っているみたいです! こっちの未経験者というのが間違っていたみたいです! 年齢を考えたら当然ですよね! でも、じゃあ何で試験を……?」
例外的なことが重なり過ぎて、困惑しているようだ。
「と、とにかく、ルイスさんはCランクからのスタートです! ただ、冒険者として活動されるのは初めてですので、依頼を受けられる前に、簡単な講習を受けていただきますね! 講師は私がやります! ……お、お手柔らかにお願いしますね?」
そうしてルイスは、新人職員のフィネから、冒険者として活動していくための最低限の知識を学ぶことに。
冒険者ギルドの歴史や現状から始まり、依頼の受け方や冒険者ランクの仕組み、この街の周辺に棲息する魔物のこと、そして禁止事項など。
そもそもミハイルに教えてもらうまで、冒険者ギルドのこと自体を知らなかったルイスにとっては、非常にありがたい講習だった。
冒険者ギルドには、これらを束ねている『冒険者ギルド協会』というものがあるそうだ。
ただ、各都市に存在するギルドは独立性が強く、それゆえギルドごとに少しずつ運営方針などが異なっているらしい。
「国の法律とかも違いますから! でも、全ギルドに共通していることもあるんです!」
例えば、ある冒険者ギルドに所属する冒険者は、他のギルドでもサービスを受けることができるという。
さらに冒険者ランクもすべてのギルドで共通だ。
「ですのでルイスさんは、どこの街の冒険者ギルドに行ってもCランクなんです! その分、どこのギルドも昇格にはかなり慎重で、厳しい試験を課しているところが多いですよ!」
実力的に乏しい冒険者を昇格させてしまうと、そのギルドの評判を下げることになるからだという。
「お渡しした冒険者証も、すべてのギルドで使えます! 万一紛失しちゃうと、それを作ったギルド、ルイスさんの場合はこの街のギルドでしか再発行できないので、絶対に失くさないようにしてくださいね! あと、再発行には二万ゴールドが必要になっちゃいます!」
講習はだいたい二時間ほどだった。
それが終わると、今度はステータス測定を行うということで、建物の地下に設けられた訓練場へ。
「測定するのは全部で六つの能力です! 攻撃力、防御力、敏捷力、体力、そして魔力です!」
ルイスは訓練場の一角に用意された人形の前に誘導される。
かなり大きな人形で、見ただけでは材質が分からないが、それなりの重量がありそうだ。
「まずは攻撃力からです! 攻撃力の測定方法は至って簡単! 指定した武器で、この人形を全力で攻撃してもらうだけです!」
「指定した武器?」
「はい! 剣士系なら木剣、魔法使い系なら木製のメイス、といった感じです! どれもこちらで用意した者を使っていただきます! あっ、でも、ルイスさんは過去に例がない天職ですし、相応しい武器が……」
「別に素手でもいいのか?」
「構いませんが、少し低く出ちゃいますよ?」
「少しくらい仕方ないだろう。本気でやっていいのか?」
「はい! 全力でお願いします!」
「分かった。せーのっ」
そうしてルイスは、人形を命一杯、殴りつけたのだった。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
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