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第7話 むしろその方がありがたい
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「というわけだ。君はこの村いるべきではない。このままだと、死ぬまでこの男にこき使われ続けることになるだろう」
「そう、ですね……」
ミハイルの言葉に、ルイスは少し考えるように頷いてから、
「でも村長は、戦士になることができず、この村に戻ってきた俺を迎え入れてくれたんです。村の恥だからと俺を追い払おうと考える村人たちもいたそうなんですが、彼らを説得してくれて……。なので、俺は村長のことを恨んではいません。むしろ恩人だと思っています」
「ルイス……」
村長は縋るような目をルイスに向ける。
「ただ、やっぱり俺は戦士になりたい。農作業も好きですけど、戦士になるのは小さい頃からの憧れですから」
「……ルイス……」
「なのですいません、村長。俺はミハイルさんの言う通り、領都に行きます」
「ああ……そんな……」
村長はがっくりと項垂れた。
「ルイスがいなくなったら、一体どうやってこの農場を維持していけば……」
「これまで通り、地道に自分たちの力で農作業をしていくんだな」
ミハイルが突っ撥ねる。
だが単に労力を用意しただけでは、これまでのような収穫量は見込めないだろうと、村長は嘆く。
するとルイスが、
「気候を操るのは難しくても、作物は季節に応じて品種改良してあるので、今まで通り収穫時期をズラして育てていけると思いますよ。土壌も最高の状態にしてますし、俺がいなくてもそれなりに収穫できるはずです」
「それは本当か!?」
「はい。ちょっとだけ作物が小さくなるかもですけど」
「むしろその方がありがたい!」
王都にまで販路を広げるという計画は頓挫しそうだが、頑張ればどうにか現在の流通量を維持することはできるかもしれないと分かり、落胆から一転、村長は涙目で喜ぶ。
「ただ、作物が美味しいので、しょっちゅう魔物が来るんですよね」
「ダメではないか!?」
「なので念のため防壁を作っておきます」
「???」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
「っ!? の、農場を取り囲むように巨大な壁が……っ!?」
「こんなことまでできるのか!? というか、最初からそうしておけばよかったのでは……?」
驚くミハイルたちに、ルイスは言う。
「まぁ魔物は肥料にもなりますから。可能なら誘き寄せた方がいいんですよ」
やがて農場全体が分厚い防壁で覆われてしまった。
「こんな感じですね。ただ、さすがにワイバーンとか、空からの魔物には対応できないですし、乗り越えてくるような魔物もいると思いますので……」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
「こ、今度は何じゃ!?」
農場の各所に現れたのは、巨大な土の人形たちだった。
しかもスムーズな動きで農場内を歩き回っている。
「まさか、ゴーレム!?」
「はい。ワイバーンくらいだったら、彼らが撃退してくれるはずです」
唖然としながら、村長が言った。
「ルイス……やはりお前は、戦士になった方がいいようじゃな……」
ルイスは故郷の村を出発した。
途中まではミハイル一行と同じルートだったため、彼らの馬車に乗せてもらっての移動だった。
「冒険者ギルドにいる私の知り合いのことだが、名前はバルクという。私とは幼馴染でな。かつては騎士として活躍していたが、規律の厳しさに嫌気がさし、冒険者になった男だ。今は現役を退いて、サブギルドマスターをしている」
同じ馬車の車内で、向かい合わせに座ったミハイルが教えてくれる。
「この私の手紙を渡せば、君のために色々と尽力してくれるに違いない」
ルイスはその手紙を受け取った。
これがあれば、今度こそ戦士として活躍できるかもしれない。
大事そうに荷物の中へと仕舞うルイス。
それから代官の屋敷でミハイルと別れたが、そのまま領都まで馬車に乗っていって構わないと言われ、ルイスはその言葉に甘えることにした。
やがて馬車は領都へと辿り着く。
ルイスにとっては、十二年ぶり二度目の領都である。
「……またこの街に来ることになるなんてな」
「そう、ですね……」
ミハイルの言葉に、ルイスは少し考えるように頷いてから、
「でも村長は、戦士になることができず、この村に戻ってきた俺を迎え入れてくれたんです。村の恥だからと俺を追い払おうと考える村人たちもいたそうなんですが、彼らを説得してくれて……。なので、俺は村長のことを恨んではいません。むしろ恩人だと思っています」
「ルイス……」
村長は縋るような目をルイスに向ける。
「ただ、やっぱり俺は戦士になりたい。農作業も好きですけど、戦士になるのは小さい頃からの憧れですから」
「……ルイス……」
「なのですいません、村長。俺はミハイルさんの言う通り、領都に行きます」
「ああ……そんな……」
村長はがっくりと項垂れた。
「ルイスがいなくなったら、一体どうやってこの農場を維持していけば……」
「これまで通り、地道に自分たちの力で農作業をしていくんだな」
ミハイルが突っ撥ねる。
だが単に労力を用意しただけでは、これまでのような収穫量は見込めないだろうと、村長は嘆く。
するとルイスが、
「気候を操るのは難しくても、作物は季節に応じて品種改良してあるので、今まで通り収穫時期をズラして育てていけると思いますよ。土壌も最高の状態にしてますし、俺がいなくてもそれなりに収穫できるはずです」
「それは本当か!?」
「はい。ちょっとだけ作物が小さくなるかもですけど」
「むしろその方がありがたい!」
王都にまで販路を広げるという計画は頓挫しそうだが、頑張ればどうにか現在の流通量を維持することはできるかもしれないと分かり、落胆から一転、村長は涙目で喜ぶ。
「ただ、作物が美味しいので、しょっちゅう魔物が来るんですよね」
「ダメではないか!?」
「なので念のため防壁を作っておきます」
「???」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
「っ!? の、農場を取り囲むように巨大な壁が……っ!?」
「こんなことまでできるのか!? というか、最初からそうしておけばよかったのでは……?」
驚くミハイルたちに、ルイスは言う。
「まぁ魔物は肥料にもなりますから。可能なら誘き寄せた方がいいんですよ」
やがて農場全体が分厚い防壁で覆われてしまった。
「こんな感じですね。ただ、さすがにワイバーンとか、空からの魔物には対応できないですし、乗り越えてくるような魔物もいると思いますので……」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
「こ、今度は何じゃ!?」
農場の各所に現れたのは、巨大な土の人形たちだった。
しかもスムーズな動きで農場内を歩き回っている。
「まさか、ゴーレム!?」
「はい。ワイバーンくらいだったら、彼らが撃退してくれるはずです」
唖然としながら、村長が言った。
「ルイス……やはりお前は、戦士になった方がいいようじゃな……」
ルイスは故郷の村を出発した。
途中まではミハイル一行と同じルートだったため、彼らの馬車に乗せてもらっての移動だった。
「冒険者ギルドにいる私の知り合いのことだが、名前はバルクという。私とは幼馴染でな。かつては騎士として活躍していたが、規律の厳しさに嫌気がさし、冒険者になった男だ。今は現役を退いて、サブギルドマスターをしている」
同じ馬車の車内で、向かい合わせに座ったミハイルが教えてくれる。
「この私の手紙を渡せば、君のために色々と尽力してくれるに違いない」
ルイスはその手紙を受け取った。
これがあれば、今度こそ戦士として活躍できるかもしれない。
大事そうに荷物の中へと仕舞うルイス。
それから代官の屋敷でミハイルと別れたが、そのまま領都まで馬車に乗っていって構わないと言われ、ルイスはその言葉に甘えることにした。
やがて馬車は領都へと辿り着く。
ルイスにとっては、十二年ぶり二度目の領都である。
「……またこの街に来ることになるなんてな」
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