堕天の皇帝

key

文字の大きさ
上 下
5 / 164
無人島編

救援物資。

しおりを挟む
 まだ結衣は落ち着かない様子だった。
そういう俺も落ち着いてはおらず、
今日の夜はなかなか寝付けなかった。
そんな時、

「今日、15時にこの島の真ん中に
 救援物資を落とすよ。
 もうひとつ落とすだろうけど、
 それは頑張って探してね~」

 救援物資か、確かにもう飯が
尽きてるからな。ちょうどよかった。
結衣はまだ寝ている。
今はだいたい9時くらいだろうか。
とりあえず、結衣を起こさないとな。
「結衣~起きてくれ~」
俺は彼女の体を揺らす。
「ん?翔太?おはよう」
「あぁおはよう」
結衣は何かを思い出すかのように、
気が動転し始めた。
俺は結衣を抱きしめる。
結衣は過呼吸になりながらも、
なんとか落ち着こうとしていた。

「結衣、ごめんな。」
「翔太は謝る必要は無いよ。」
なんとか息の詰まった声が返ってきた。
だが、彼女はやはり苦しそうだ。
頭を撫でて、落ち着かせる。
結衣は昔から頭を撫でると落ち着く。
「結衣、聞いてほしいことがある。」
「ん?なに?」
涙ぐみながら返事が返ってくる。
「今日、救援物資があるみたいなんだ。
 だから、俺一人で取りに行ってくるよ。」
「そんなの危ないよ!!」
「俺は数十分で必ず帰ってくる。
 信じて待っていてくれないか?」
結衣は考えている。
多分、俺を一人で行かせたくないのだろう。
そう思った俺は、結衣が口を動かすよりも
先に俺から話す。
「結衣はここに隠れといてくれ。
 どんなことになったとしても
 俺は必ずここに帰ってくる。」
「わかったわ。
 その代わり絶対に帰ってきてね」
「俺がお前との約束を
 守らないわけがないだろ?」
そう話していると時間は過ぎる。

俺は地面に木の棒を突き刺す。
だいたい2時だな。
そろそろ移動しよう。
「結衣、いってきます」
「ふふっ、いってらっしゃい
 絶対に絶対に帰ってきてね。」
俺は何も入っていないカバンと
M9ベレッタ、そしてナイフ1本を持って
島の中心へと向かうのだった。

ーー30分経過。
多分この辺が中心なんだろう。
謎の街があった。
もともとここは人が住んでいたのだろう。
そんなことを考えながら、
廃墟と化した街を進む。

「バタバタバタバタ、、、」
俺の上空にヘリコプターが止まった。
そこから何かがパラシュートともに
落ちてくる。
どうやら運良く俺の近くに落ちるそうだ。
だが、あの高さだいたいの落下速度からして
あと2分はかかるだろう。
その間に他の生存者が来るかもしれない。
とりあえず、俺は身を隠す。
そうすると1人知らない人が来た。

ーーベレッタの射程内だ。

俺はベレッタの先に空のペットボトルを
括りつける。
こうすることによって1発だけ銃声が消える。
チャンスは1度きり、、、
「殺るしかない。
 二度と結衣を悲しませないために。
 そして、結衣に生きてもらうために!」
俺は引き金を絞る。
見事に相手の腹に銃弾が当たる。
相手は動けなくなった。
その間に俺は距離を詰め、相手の物資と
救援物資を拾い、その場を直ぐに去った。
その時に俺は相手を見ることは無かった。
そして少し遅れて、
「齋藤 カレンさんが死にました。
 だんだんと人数が少なくなったね。
 みんな頑張って生きてね~」

 なんとか逃げ切ることが出来た。
「オェェェェ」
俺は罪悪感で吐いた。
気分が悪すぎる。
初めて人を殺した。
だが、俺はこんなことを結衣にさせたのか。
結衣への罪悪感も積もった。

 俺は結衣のもとへと帰ってきた。
「翔太!!大丈夫なの?」
「あぁ大丈夫だよ。」
結衣は察しの良い奴だ。
俺の表情を読み取り、
俺が殺したと察しただろう。
だが、結衣がそのことを
口に出すことは無かった。
「とりあえず、翔太は水を飲みなさい。」と
言われ、水の入ったペットボトルが渡された
「おぉ、さんきゅな」
俺の中にはカレンという少女の名前が
頭の中に反響し続けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

年増公爵令嬢は、皇太子に早く婚約破棄されたい

富士とまと
恋愛
公爵令嬢15歳。皇太子10歳。 どう考えても、釣り合いが取れません。ダンスを踊っても、姉と弟にしか見えない。皇太子が成人するころには、私はとっくに適齢期を過ぎたただの年増になってます。そんなころに婚約破棄されるくらいなら、今すぐに婚約破棄してっ! *短篇10本ノック3本目です*

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

剣を交えて

嘘月善人
青春
中学のときの出来事により部活に入ることを戸惑っている者、剣道未経験者、身体の故障を抱えながら挑む者、様々な思いを抱えながら、それでも目標に向かって突き進んでいく。 これはそんな羽木高校の剣道部員たちによる青春物語。

転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~

桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。 両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。 しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。 幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。

あれ?気づいたら俺を追放したSランクパーティーが崩壊してて、逆に温かく迎え入れてくれたAランクパーティーがSランクに昇格していたんだが?

taki210
ファンタジー
「アルト。今日限りでお前をこのパーティーから追放する」 「理由は?」 「お前が役立たずだからだ」 「…そうか。そんな風に思ってたんだな」 「あとそれから、もうお前の装備は全部売ってあるから」 「な…っ!外道が!!」 「はっはっはっ。その顔が見たかったんだ。これでしばらくは遊んで暮らせるぜ」 ある日、役立たずの烙印を押されてSランクパーティーを追放された支援職のアルト。 そんな彼は、実力を認められ、実力派のAランクパーティーに加入することになる。 「ご、500メートル先まで索敵できる探知魔法とか聞いたことないんだけど!?」 「何だこの支援魔法…!?体が嘘のように軽い…!!」 「魔法強化と物理耐性の両方を同時に付与するの!?」 「こいつを追放したSランクパーティーはバカなんじゃないのか…?」 アルトの支援職としての埒外の優秀さに驚くメンバーたち。 だが、アルトはずっとそれが当然だと思っていたために、彼らが何に驚いているのか全く気づかないのだった。 「え?俺、何かおかしなことしたか?これぐらい普通だよな…?」

異世界体験テーマパーク:アリウェルランド

とうもろこし
ファンタジー
日本にオープンした新テーマパーク、アリウェルランド。 ここでは来園した者は異世界の住人に扮して、まるで異世界転移したような体験が満喫できるという。 テーマパーク内では異世界人を象徴する異種族達がキャストとして働き、雰囲気は異世界の街そのもの。 キャストである異種族は特殊メイクであるとは思えぬほどのリアルさ。 来園したお客は冒険者になって実際に魔獣を狩る、冒険者活動と称される体験が最大にして唯一のアトラクション。 アトラクションに登場する魔獣は実際に生きているように動き、冒険者に扮したお客は魔法すらも使う事が可能となる。 転移・転生なんてしなくても異世界に行ける。 それがアリウェルランド。 ただ、本当にここは異世界と何も繋がりがないのだろうか? ※なろうでも掲載中 10万字程度までの短編です。

余寒

二色燕𠀋
歴史・時代
時は明治─ 残党は何を思い馳せるのか。 ※改稿したものをKindleする予定ですが、進まないので一時公開中

不思議な男の子

千夜 すう
恋愛
とても短い。片想いになった話です。 設定は初々しい高校1年生

処理中です...