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097 消滅
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「ふ、その手には乗りませんよ」
神はそう言って右手の手刀を振りかざした。その瞬間。
「強化瞬間移動!」
シシリーが空間魔術で俺たちを神の背後へと移動させた。
神は手刀を振り抜いて前方に斬撃を放ってからこちらを振り返って姿を消す。
次の瞬間、シシリーの目の前に神があらわれ右手の手のひらから閃光を放つ。
「きゃあっ!」
轟音とともにシシリーが吹き飛ばされ地面を転がる。
<貴様っ!>
バーグルーラが飛ばされたシシリーと神の間に高速移動して衝撃波を放つがすでにそこに神はいない。
神はレミーの前にあらわれ、再び右手から閃光を放ち、レミーも吹き飛ばされる。
「レミー!」
俺の隣でそう叫んだシェリルの前に神があらわれ右手をかざしてシェリルを吹き飛ばす。
俺はその直後、左腕を伸ばして神の懐に飛び込む。
神の脇腹に俺の左手が飲み込まれる。
それを見て神はニヤリと口角を上げて言う。
「…ほう、エサが自分からその身を捧げるのですか」
神の身体の奥深くに左腕をねじ込んで俺もニヤリと微笑う。
「そうだよ…食いたきゃ食ってみろ!」
俺は神の体内から精神破壊を放つ。
「…っ!き、貴様………!!!」
神は身をよじって逃れようとするが、俺は魔力をさらに高めて神の身体を縛り付ける。
最大限に魔力を高めながら俺は全員に叫ぶ。
「みんな!今のうちに力を溜めろ!俺がこいつを抑えつけてる間に!!!」
俺は神の身体に魔力を流し込みながら、全員に思念共有をかける。
<急げ!早くしろ!>
<でもそれじゃティモシーが…!>
<いいから早く!!!>
後方で立ち上がったシェリルがうろたえているが、その横でシシリーが立ち上がり、胸の中央で両手を組んで強い輝きを放ち始める。
<アタシは消滅を放つよ!シェリルも早く力を溜めて!>
<でも、ティモシーが…!>
<俺のことはいいから!そんなに長くもたないぞ!>
レミーもよろめきながら立ち上がり、両手で抱えた魔導電磁誘導砲のレバーやボタンを素早く操作する。
キュイィィィィィィン…と音を立てながら魔導電磁誘導砲の砲身が強い光を放ち始める。
<魔導電磁誘導砲の最大出力を見せてやりますよ!シェリルさんも早く!>
<でも、でも………>
俺は神の身体に左腕を突っ込んだままシェリルを見て言った。
「シェリル、大丈夫。俺を信じてくれ」
シェリルは一筋の涙を流したが、すぐにそれを拭って頷いて詠唱を始めた。
両手から青い光を放ち、シェリルの身体からすべてを凍りつかせてしまいそうな冷たい風が吹き荒れた。
<約束よ…もう絶対に死なないで………!>
<…大丈夫、俺を信じろ!>
バーグルーラの喉の奥から青白い光が漏れ始め、ズゴゴゴゴゴゴ…と地響きが鳴り響く。
<いいか…全員で我の竜王滅殺砲にタイミングを合わせるのだ>
<はい!><わかったわ><オッケー!>
神は俺の魔力に抗いながら、俺の両肩を掴んだ。
「…その前に、あなたが完全に食い殺されたらどうなりますかね……!」
俺は神の体内に引き込まれないよう何とか踏ん張りながら、精神破壊の魔力をさらに爆発させる。
「うぐっ!!」
神が俺の魔力をくらって手の力がほんの少し緩んだ隙に、俺は後方へと飛び退く。左腕が付け根から千切れ、神の脇腹に刺さっている。そこに思念をさらに送り込む。
「黙って俺の左腕だけ食ってろ!!!」
「………っ!!!」
神は声を上げずに身悶える。
身体に深く刺さった俺の左腕と、先ほど吸収したユジカの一部が反応して体内から魔力が通っているのがわかる。しかし身体の自由を奪っているだけでダメージを与えているわけではない。
「言ったはずです…私の精神は果てしない無…。こんなもの、しょせんは時間稼ぎに過ぎませんよ…!」
だがそれでいいのだ。
俺の役割はそれで充分だ。
<みんな、準備はできたか!>
<我はいつでも良いぞ…>
<アタシも撃てるよ>
<私もです!>
<…私も、でも、その位置じゃ>
俺からやや近い左後方にバーグルーラ、右後方の遠くにシシリー、レミー、シェリルが並び立っている。そして俺の目の前には神。今4人が攻撃を放てば神の前に俺が直撃をくらうことになる。
だが4人の最強の攻撃なら俺の精神体など木っ端微塵に消し飛ばして神をも撃ち砕くだろう。
そして俺の精神体は神をその場に縛り付けるのに精一杯で、両脚を動かして移動する力も残っていない。
「ふふ…虫けらの分際でこの神と一緒に死のうとでも言うつもりですか」
「誰がそんなこと言うか。死ぬのはお前1人だ、神様気取りの馬鹿野郎め」
神は身体の底から怒りを噴き出させて俺の精神破壊を押し返していく。
「身のほどを知れっ!下等生物がっ!!!」
神は俺の魔力に抗って右手をかざす。
それを見て俺は叫ぶ。
「精神操作!」
俺は神に放っていた最大限の精神破壊の一部を変換し、神がかざした右手を操作する。
俺を殺さない程度のパワーで閃光を放たせ、俺の身体を後方に吹き飛ばさせる。シェリル、レミー、シシリーのいるほうへ。
<みんな今だ!やれ!!!>
俺は強烈な衝撃を受けて空中を滑りながら、全員に合図を送る。
「最大出力!魔導電磁誘導砲!!!」
「消滅!!!」
「冥界氷嵐!!!」
<竜王滅殺砲!!!>
俺がシェリルとレミーの間の地面にズシャッ!と背中から着地した瞬間、4人からそれぞれ強烈な閃光と轟音と衝撃が放たれた。
「虫けらどもめぇっ!!!!!」
神は叫びながら光の壁を展開したが、俺はそこに思念を送る。狙いは脇腹に刺さったままの俺の左腕。それが一気に魔力を放出し、光の壁が霧散した。
「なっ!!!」
神がうろたえたその瞬間、バーグルーラ、シシリー、レミー、シェリルの放った最強の攻撃が直撃する。
「ぐわあぁぁぁあぁああぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁっ!!!!!!!」
視界が完全に白く染まり何も見えなくなり、神の断末魔のあと何の音も聞こえなくなる。しかし俺は思念を捉えて4人の攻撃をくらった神が体内から魔力を絞り出して何とかその衝撃を押し返そうとしていることを把握している。そこに俺はさらに魔力を放つ。
「とどめだ!精神操作!!!」
神は俺の魔力を受けて自分を守る魔力を逆流させ、身体の内側に4人の最強の攻撃を引き込んだ。
「あああああぁあぁぁぁああぁあぁぁぁぁあぁあぁあああぁぁぁぁぁっ!!!!!」
神は真っ白い閃光の中、金色の光の粒になって飛び散って消えた。
神はそう言って右手の手刀を振りかざした。その瞬間。
「強化瞬間移動!」
シシリーが空間魔術で俺たちを神の背後へと移動させた。
神は手刀を振り抜いて前方に斬撃を放ってからこちらを振り返って姿を消す。
次の瞬間、シシリーの目の前に神があらわれ右手の手のひらから閃光を放つ。
「きゃあっ!」
轟音とともにシシリーが吹き飛ばされ地面を転がる。
<貴様っ!>
バーグルーラが飛ばされたシシリーと神の間に高速移動して衝撃波を放つがすでにそこに神はいない。
神はレミーの前にあらわれ、再び右手から閃光を放ち、レミーも吹き飛ばされる。
「レミー!」
俺の隣でそう叫んだシェリルの前に神があらわれ右手をかざしてシェリルを吹き飛ばす。
俺はその直後、左腕を伸ばして神の懐に飛び込む。
神の脇腹に俺の左手が飲み込まれる。
それを見て神はニヤリと口角を上げて言う。
「…ほう、エサが自分からその身を捧げるのですか」
神の身体の奥深くに左腕をねじ込んで俺もニヤリと微笑う。
「そうだよ…食いたきゃ食ってみろ!」
俺は神の体内から精神破壊を放つ。
「…っ!き、貴様………!!!」
神は身をよじって逃れようとするが、俺は魔力をさらに高めて神の身体を縛り付ける。
最大限に魔力を高めながら俺は全員に叫ぶ。
「みんな!今のうちに力を溜めろ!俺がこいつを抑えつけてる間に!!!」
俺は神の身体に魔力を流し込みながら、全員に思念共有をかける。
<急げ!早くしろ!>
<でもそれじゃティモシーが…!>
<いいから早く!!!>
後方で立ち上がったシェリルがうろたえているが、その横でシシリーが立ち上がり、胸の中央で両手を組んで強い輝きを放ち始める。
<アタシは消滅を放つよ!シェリルも早く力を溜めて!>
<でも、ティモシーが…!>
<俺のことはいいから!そんなに長くもたないぞ!>
レミーもよろめきながら立ち上がり、両手で抱えた魔導電磁誘導砲のレバーやボタンを素早く操作する。
キュイィィィィィィン…と音を立てながら魔導電磁誘導砲の砲身が強い光を放ち始める。
<魔導電磁誘導砲の最大出力を見せてやりますよ!シェリルさんも早く!>
<でも、でも………>
俺は神の身体に左腕を突っ込んだままシェリルを見て言った。
「シェリル、大丈夫。俺を信じてくれ」
シェリルは一筋の涙を流したが、すぐにそれを拭って頷いて詠唱を始めた。
両手から青い光を放ち、シェリルの身体からすべてを凍りつかせてしまいそうな冷たい風が吹き荒れた。
<約束よ…もう絶対に死なないで………!>
<…大丈夫、俺を信じろ!>
バーグルーラの喉の奥から青白い光が漏れ始め、ズゴゴゴゴゴゴ…と地響きが鳴り響く。
<いいか…全員で我の竜王滅殺砲にタイミングを合わせるのだ>
<はい!><わかったわ><オッケー!>
神は俺の魔力に抗いながら、俺の両肩を掴んだ。
「…その前に、あなたが完全に食い殺されたらどうなりますかね……!」
俺は神の体内に引き込まれないよう何とか踏ん張りながら、精神破壊の魔力をさらに爆発させる。
「うぐっ!!」
神が俺の魔力をくらって手の力がほんの少し緩んだ隙に、俺は後方へと飛び退く。左腕が付け根から千切れ、神の脇腹に刺さっている。そこに思念をさらに送り込む。
「黙って俺の左腕だけ食ってろ!!!」
「………っ!!!」
神は声を上げずに身悶える。
身体に深く刺さった俺の左腕と、先ほど吸収したユジカの一部が反応して体内から魔力が通っているのがわかる。しかし身体の自由を奪っているだけでダメージを与えているわけではない。
「言ったはずです…私の精神は果てしない無…。こんなもの、しょせんは時間稼ぎに過ぎませんよ…!」
だがそれでいいのだ。
俺の役割はそれで充分だ。
<みんな、準備はできたか!>
<我はいつでも良いぞ…>
<アタシも撃てるよ>
<私もです!>
<…私も、でも、その位置じゃ>
俺からやや近い左後方にバーグルーラ、右後方の遠くにシシリー、レミー、シェリルが並び立っている。そして俺の目の前には神。今4人が攻撃を放てば神の前に俺が直撃をくらうことになる。
だが4人の最強の攻撃なら俺の精神体など木っ端微塵に消し飛ばして神をも撃ち砕くだろう。
そして俺の精神体は神をその場に縛り付けるのに精一杯で、両脚を動かして移動する力も残っていない。
「ふふ…虫けらの分際でこの神と一緒に死のうとでも言うつもりですか」
「誰がそんなこと言うか。死ぬのはお前1人だ、神様気取りの馬鹿野郎め」
神は身体の底から怒りを噴き出させて俺の精神破壊を押し返していく。
「身のほどを知れっ!下等生物がっ!!!」
神は俺の魔力に抗って右手をかざす。
それを見て俺は叫ぶ。
「精神操作!」
俺は神に放っていた最大限の精神破壊の一部を変換し、神がかざした右手を操作する。
俺を殺さない程度のパワーで閃光を放たせ、俺の身体を後方に吹き飛ばさせる。シェリル、レミー、シシリーのいるほうへ。
<みんな今だ!やれ!!!>
俺は強烈な衝撃を受けて空中を滑りながら、全員に合図を送る。
「最大出力!魔導電磁誘導砲!!!」
「消滅!!!」
「冥界氷嵐!!!」
<竜王滅殺砲!!!>
俺がシェリルとレミーの間の地面にズシャッ!と背中から着地した瞬間、4人からそれぞれ強烈な閃光と轟音と衝撃が放たれた。
「虫けらどもめぇっ!!!!!」
神は叫びながら光の壁を展開したが、俺はそこに思念を送る。狙いは脇腹に刺さったままの俺の左腕。それが一気に魔力を放出し、光の壁が霧散した。
「なっ!!!」
神がうろたえたその瞬間、バーグルーラ、シシリー、レミー、シェリルの放った最強の攻撃が直撃する。
「ぐわあぁぁぁあぁああぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁっ!!!!!!!」
視界が完全に白く染まり何も見えなくなり、神の断末魔のあと何の音も聞こえなくなる。しかし俺は思念を捉えて4人の攻撃をくらった神が体内から魔力を絞り出して何とかその衝撃を押し返そうとしていることを把握している。そこに俺はさらに魔力を放つ。
「とどめだ!精神操作!!!」
神は俺の魔力を受けて自分を守る魔力を逆流させ、身体の内側に4人の最強の攻撃を引き込んだ。
「あああああぁあぁぁぁああぁあぁぁぁぁあぁあぁあああぁぁぁぁぁっ!!!!!」
神は真っ白い閃光の中、金色の光の粒になって飛び散って消えた。
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