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022 パーティー

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「カンパ~イ!」

何度目の乾杯だろう。
俺たちは連れ立って、街の酒場に来ていた。
新たに一緒に暮らすことになったシシリー、バーグルーラ、シェリルの歓迎会だ。

「いやぁ~、それにしてもシェリルの顔を見た時は、俺ぁ生きた心地がしなかったよぉ」
「…ごめんなさいね、驚かせてしまって」
「いいんですよ!大体ビビりすぎなんですよ!ティモシーさんは!」
「そんなこと言ったって、殺されちゃうんじゃないかと思ったんだよぉ、俺は」
「そんなわけないでしょ!シェリルは優しい子だよ、アタシにはわかるんだから!」
「あら、ありがとう。そんなふうに言ってもらったのは初めてだわ」
「そうなの?そんなの心の声を聞けばわかるよ!だってシェリルって本当はね」

と言いかけたシシリーの口をシェリルがバッと塞いだ。
心の声を勝手にバラそうとしちゃいかんよそりゃ。誰にだって知られたくないことはある。

バーグルーラは酒場のテーブルの上に乗り、小さな前脚で器用にジョッキを掴み、大きく開けた口に一気に酒を流し込んだ。

<やはり1000年ぶりの酒は美味いな!>

体長10cmの黒い竜、たぶん周囲からは珍しい爬虫類くらいに見えてると思うけど、それでもそんな生物が人間のように酒を飲む。
なかなかあり得ない光景ではあるが、酔っ払いだらけのこの店じゃ、そんなことは誰も気に留めていないようだ。

そして俺たちのいるテーブルの向こう、店の中央のステージでは、マリア、エレン、バーバラの3姉妹の音楽団が愉快なメロディを奏で、歌い、踊っている。

俺たちが手を振ると、3人揃って色っぽいウインクを返してくれた。

ここはマリアたち3姉妹と初めて会った店だ。

店長がこちらのテーブルにやってきて俺に話しかける。

「改めて、この間はありがとうございました」
「ん?この間?」
「や、ほら、当店で、あそこの音楽団が絡まれていた時に助けて頂いて」
「ああ!そういえば!いやいや、お気になさらず!」

「それにしても」と、店長はマリアたち3姉妹のほうに視線を送る。

「あの娘たちもすっかりこの街の人気者になってしまいまして」
「へえ!いいことじゃないですか!」とレミー。
「ええ、それはそうなんですが、なかなか当店に来てもらえる回数も少なくなってしまいましてね」
「あぁ、なるほどね~」と俺。
「ええ、やっぱりあの娘たちがいるといないでは正直、売上も違いますからね」
「ホントにすっごく楽しい音楽よね!アタシも大好き!」
「確かに、なんだかお酒が進む音楽ね」

店長はマリアたち3姉妹を見ながら言った。

「ええ、ですのであの娘たちがいないと音楽がなくなって、少し寂しくなってしまうんですよね」

その言葉に俺は思い出す。
ラノアール王国に俺がいた時、毎日のようにメンテナンスしていた水晶。
あれを加工できれば。

「ねえ、レミー」
「はい?」
「音声の通信用の水晶ってあるじゃん」
「ああ、ありますね」
「あれ加工してさ、音楽を記録させる魔導具って、作れないかな?」

ん、ほうほう、なるほどなるほど…と、レミーは顎に手をやり斜め上を向いて考え込む。

「…うん、理論的にはできると思いますよ!」
「お、ホント!?そしたらさ、その魔導具にマリアたちの音楽を記録してさ、そしたらこのお店にもその魔導具を置いてもらえるし、他の酒場にも置いてもらえそうじゃん!」
「ですね!しかも酒場だけじゃなくて洋服屋とかの商店、さらには一般家庭にも売れるかもしれませんね!」
「おお!確かに!もしかしてそれで大儲けできちゃうんじゃないの!?」

ここでさらにレミーが乗ってくるかと思いきや、「う~ん、いや、ただ…」と、また何か難しい顔をして考え込む。

「問題がひとつありまして、必要な素材になりそうなピグナタイトっていう鉱物が、このところ全然入ってこないんですよね。本当にたま~に、流れてはくるんですけど」

う~む。仕入れの問題か…と俺が悩んでいると、バーグルーラが口を挟んだ。

<ピグナタイトならドワーフの鉱山にあるだろう。奴らと直接話をつければ問題ないはずだ>

バーグルーラの精神感応テレパシーの声を聞いて、「しゃ、喋った!?」と驚く店長に、「小型の竜!小型の竜なんですけど悪さはしませんので!」と俺が宥めすかしているとレミーがガタッと立ち上がった。

「行きましょう!ドワーフの鉱山に!」

「わあ!いいね!面白そう!」と手を叩いてはしゃぐシシリー。

「え!待って待って!だってドワーフの鉱山って、ここから1ヶ月くらいかかるでしょ!無理だよ俺!死んじゃうよ俺!弱いもん!」

そう抗議する俺にシェリルが呟いた。

「…私が、守りゅわ」

噛んだ。
噛んだが、その力強い心意気を受けてレミーがまくし立てる。

「そうですよ!前衛にシェリルさんにバーグルーラさん、中衛が私で後衛にティモシーさんとシシリーさん!充分な戦力のパーティーですよ!行きましょう!」

え~、また危ないとこ行くの~?やだぁ…と、またしてもゴネる俺は「行きましょう行きましょう!」「楽しそうだね!」<久方ぶりの旅になるな>「必じゅ、必ず守るわ」などと数の力で押し切られ、ドワーフ鉱山への旅立ちが決まってしまった。
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