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006 新生活の始まり

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サイクロプスが死んでいることを確認し、ジョシュアはサイクロプスの皮膚を一部、ナイフで剥ぎ取った。「討伐依頼が出ていればこれで報酬がもらえるんですよ」とのことだった。

カーライル王国までの道中、俺は何度か出た魔物に精神感応テレパシーでの攻撃を試してみた。
その結果、ゴブリンやコボルト、リザードマンといった人型の魔物はサイクロプス同様、殺すこともできたし同士討ちをさせることや追い払うこともできた。ただし、殺せたのは1回で1体、同士討ちで2~3体が限度だった。追い払える数の上限はわからない。
また、キラージャッカルやコカトリスなど獣型の魔物は追い払うことはできたが同士討ちさせることや殺すことまではできなかった。

今後もう少し色々と試行錯誤してみる余地はあると思うが、たぶん対象の脳の情報処理能力が高ければ効果が大きく、低ければ効果が小さいということなのではないかと思う。
だとすると、昆虫型の魔物にはもっと効果が小さいんだろうし、ゴーストなどそもそも実体のない魔物には効果はないと思われる。実体があっても魔法障壁をかけられていたら遠隔では何もできないだろう。

それでもジョシュアは「いや充分すごいですよ!精神感応テレパシーの攻撃が効きそうな魔物の討伐クエストだったらメインアタッカーになれますよ!」と褒めてくれたし、「カーライルで討伐系クエスト出てたら一緒に行きましょう!」とまで言ってくれた。

素直に嬉しい。
嬉しいけど、でも俺はやっぱりそういう危ない仕事はイヤだ。怖いもん。

そういう方面で生計を立てるよりは、やはり王宮に仕事がないか打診をし、それが難しければ市中の商店で人集めのニーズがないか探すなどしながら、平穏に生きていける基盤を作りたい。

その上で、レミーがもし良ければ一緒に新しい通信魔導具を開発して、それを上手いこと民衆に流通させ、俺のせいだとバレない感じであのムカつくラノアール王国を困らせてやるのも面白いかもしれない。
まあ、もう他所の国になるのでちょっとどうでもよくなってきてもいるけど。
それでも今ボンヤリとアイデアのある新しい通信魔導具が完成して大ヒットしたら、きっと大金持ち。もう日々の暮らしのためにあくせく働かなくて済むし、誰かにこき使われるようなこともない。

ラノアール王国を出発して西に1週間と少し、なんだかんだで結局10日。ようやくカーライル王国に着くと、「しばらく俺らもこの街にいるんで、もし討伐系のクエストが出てたら連絡しますね!」と言うジョシュアたちと別れ、俺たちはまずは宿に荷物を預け、不動産屋に向かった。

俺は自宅を、レミーは自宅兼店舗を探す。

カーライル王国の城下町はラノアール王国よりも規模が大きく、人々にも活気があるように感じられた。
馬車が横並びで6台は通れそうな大きな道がまっすぐ街の中心を通り、その向こうに王宮が見える。
その道の両端には、なんだか高級そうな洋服屋や宝石屋やレストランなど大きめの商店が立ち並んでおり、脇道に入ると本屋や雑貨屋や骨董品屋といったややこじんまりとした商店が増える。
武器屋に防具屋、魔導具屋もある。

「魔導具屋、あるね」と俺が声をかけると、レミーは「うん」と呟き、歩みを止めないままではあるが、じっとその魔導具屋を見つめた。ライバル店が気になるのだろう。

不動産屋はすぐに見つかった。しかし少し困ったことになった。

隣国から移住してきた男女二人で不動産屋への来訪だ。当然そういうことだと不動産屋の女性店員も思ったのだろう。

「こちらの物件ですと、1階を店舗にできて2階が住居、お部屋もリビングの他に2部屋ありますのでお二人での生活にも便利ですよ」などと物件を案内されてしまった。

いや、僕たちつい先週会ったばかりで全然そういう関係じゃないんですよ。と俺が言う間もなく、「いいですね!ここにしましょう!」とレミーが身を乗り出した。

「いや、え?俺たち、一緒に住むの?」

レミーが目を丸くして俺を見る。

「え?イヤですか?」

「い、イヤ、じゃないけど」ていうか、そういう問題か?いいのか?と戸惑う俺に「イヤじゃないなら良いですね!」とレミーは物件の契約を進めてしまった。

いや、せめて下見くらいしてから決めようよ。
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