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005 旅路
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「ティモシーさんは、通信魔術師なんでしたっけ?」
馬車の中の俺に、剣士のジョシュアが話しかける。
「そうだよ。王宮で働いてたんだけどね、クビになっちゃってさ」
「え、それは」
「でもまあ、なっちゃったもんは仕方ないよ」
少し気まずそうなジョシュアを助けるがごとく、白魔術師のフローレンスが話題を変える。
「えと、通信魔術の他には何か魔術は使えるんですか?」
少し悩んでから俺は答える。
「いや、使えないことはないんだけどね、どれも基礎的なものしか覚えてなくて」
「へえ~、でも通信魔術ってすごい魔力を消費するんですよね?」
「まあ、そうだね」
「だったら他の魔術も簡単にできちゃうんじゃないですかぁ?」
「う~ん、それがそうもいかなくてね」
確かに学生時代には黒魔術や白魔術、それに召喚魔術も一通りかじってはみた。
魔力量が足りないということはなかったのだが、なぜか術式がうまく自分に馴染まないというか、中級以上の魔術の覚えが良くなかったのだ。
それで通信魔術一本に絞って王宮でこき使われることになってしまった。
「でも、この道中は俺らがしっかりサポートするから安心してくださいね!」
ジョシュアがニカッと笑う。白い歯が光ったような気がした。
ラノアール王国を発って3日間は、いたって順調な旅路だった。
何度かゴブリンやコボルトといったEランク程度までの魔物が出たが、そこはジョシュアたちが見事な連携で倒していった。
やはりこの辺りは比較的安全なエリアなんだろう。
馬車の中で「なんか、つまんないですね」とレミーが口を尖らせる。
「え?なんで?」
「だって、せっかくラノアールの外に出たのに、あんまり冒険!って感じがしないんですもん」
「でも安全でいいじゃん」
「え~、よくないですよ!もっとすっごいモンスターとか出ればいいのに!」
「やだよ、そんなの」
そういう不謹慎なことを話していたせいだと思う。
ドシン、ともズシン、とも聞こえる大きな地響きが近付いてきた。
「ヤバい!引き返せ!」
外からジョシュアの大きな叫び。
御者が何とか馬車を方向転換しようとするが馬は前足を上げて言うことを聞かない。
馬車から覗くと、前方の森の中から巨体がバキバキバキと森の木々を分け入って街道に出てきた。一つ目の巨人、サイクロプスだ。
その一つ目と目が合ってしまい、こちらに近付いてくる。
馬車の方向転換は間に合いそうもない。
「まずは私が時間を稼ぎます!」
『大地の精霊よ、我が身に力を宿し奇跡を起こせ…地岩捕縛!』
黒魔術師のマグノリアが詠唱し、黒魔術を発動。サイクロプスの足元の地面が隆起し、サイクロプスの脚に絡みつく。
しかしサイクロプスは何事もなかったかのように絡んだ岩石を弾き飛ばし、こちらに踏み出す。
「くそっ!なんでこんなところにAランクが!」
ジョシュアが剣を構えるが、相手は10メートルにも届こうかという巨体。剣で何とかなるものなのか。
ジョシュアが剣を振り抜き、剣閃が衝撃波となる。
サイクロプスの緑色の皮膚にギィン!という金属音が鳴り響くも、お構いなしにこちらへ突っ込んでくる。馬車が巨体の影に覆われる。
「どうしよどうしよどうしよ!ねえティモシーさんどうしよ!」とレミーが俺の服を掴む。
こうなったらダメ元だ。
馬車から身を乗り出したままサイクロプスの目を見て魔力を集中させる。
コイツの脳に最大限の爆音と大量のジャンク情報を送り込んでやる。
「精神感応!」
バアアアアアあアあアアアあァァァァァあぁッぁぁッ!と、サイクロプスが大声を上げて頭を抱え、のけぞって後ろに倒れる。ズドン!という大きな音と地響きのあとに砂ぼこりが巻き上がり、ジョシュアたち4人がこちらを振り返る。
「え?」
俺も同じく「え?」と声を出してジョシュアたちを見る。
レミーは俺の服を掴んだまま固まっている。
「…今の、ティモシーさん?」
「うん、まあ、たぶん」
ジョシュアたちが口々に「ウソだろ!?」「精神感応にあんな効果があったなんて…」「いやいや、あり得ないって!」「しかも無詠唱でしたよね」などとまくし立てる。
「…そんなこと言ったって、俺だってこんな使い方したことなかったんだもん」
サイクロプスはピクリとも動かない。
馬車の中の俺に、剣士のジョシュアが話しかける。
「そうだよ。王宮で働いてたんだけどね、クビになっちゃってさ」
「え、それは」
「でもまあ、なっちゃったもんは仕方ないよ」
少し気まずそうなジョシュアを助けるがごとく、白魔術師のフローレンスが話題を変える。
「えと、通信魔術の他には何か魔術は使えるんですか?」
少し悩んでから俺は答える。
「いや、使えないことはないんだけどね、どれも基礎的なものしか覚えてなくて」
「へえ~、でも通信魔術ってすごい魔力を消費するんですよね?」
「まあ、そうだね」
「だったら他の魔術も簡単にできちゃうんじゃないですかぁ?」
「う~ん、それがそうもいかなくてね」
確かに学生時代には黒魔術や白魔術、それに召喚魔術も一通りかじってはみた。
魔力量が足りないということはなかったのだが、なぜか術式がうまく自分に馴染まないというか、中級以上の魔術の覚えが良くなかったのだ。
それで通信魔術一本に絞って王宮でこき使われることになってしまった。
「でも、この道中は俺らがしっかりサポートするから安心してくださいね!」
ジョシュアがニカッと笑う。白い歯が光ったような気がした。
ラノアール王国を発って3日間は、いたって順調な旅路だった。
何度かゴブリンやコボルトといったEランク程度までの魔物が出たが、そこはジョシュアたちが見事な連携で倒していった。
やはりこの辺りは比較的安全なエリアなんだろう。
馬車の中で「なんか、つまんないですね」とレミーが口を尖らせる。
「え?なんで?」
「だって、せっかくラノアールの外に出たのに、あんまり冒険!って感じがしないんですもん」
「でも安全でいいじゃん」
「え~、よくないですよ!もっとすっごいモンスターとか出ればいいのに!」
「やだよ、そんなの」
そういう不謹慎なことを話していたせいだと思う。
ドシン、ともズシン、とも聞こえる大きな地響きが近付いてきた。
「ヤバい!引き返せ!」
外からジョシュアの大きな叫び。
御者が何とか馬車を方向転換しようとするが馬は前足を上げて言うことを聞かない。
馬車から覗くと、前方の森の中から巨体がバキバキバキと森の木々を分け入って街道に出てきた。一つ目の巨人、サイクロプスだ。
その一つ目と目が合ってしまい、こちらに近付いてくる。
馬車の方向転換は間に合いそうもない。
「まずは私が時間を稼ぎます!」
『大地の精霊よ、我が身に力を宿し奇跡を起こせ…地岩捕縛!』
黒魔術師のマグノリアが詠唱し、黒魔術を発動。サイクロプスの足元の地面が隆起し、サイクロプスの脚に絡みつく。
しかしサイクロプスは何事もなかったかのように絡んだ岩石を弾き飛ばし、こちらに踏み出す。
「くそっ!なんでこんなところにAランクが!」
ジョシュアが剣を構えるが、相手は10メートルにも届こうかという巨体。剣で何とかなるものなのか。
ジョシュアが剣を振り抜き、剣閃が衝撃波となる。
サイクロプスの緑色の皮膚にギィン!という金属音が鳴り響くも、お構いなしにこちらへ突っ込んでくる。馬車が巨体の影に覆われる。
「どうしよどうしよどうしよ!ねえティモシーさんどうしよ!」とレミーが俺の服を掴む。
こうなったらダメ元だ。
馬車から身を乗り出したままサイクロプスの目を見て魔力を集中させる。
コイツの脳に最大限の爆音と大量のジャンク情報を送り込んでやる。
「精神感応!」
バアアアアアあアあアアアあァァァァァあぁッぁぁッ!と、サイクロプスが大声を上げて頭を抱え、のけぞって後ろに倒れる。ズドン!という大きな音と地響きのあとに砂ぼこりが巻き上がり、ジョシュアたち4人がこちらを振り返る。
「え?」
俺も同じく「え?」と声を出してジョシュアたちを見る。
レミーは俺の服を掴んだまま固まっている。
「…今の、ティモシーさん?」
「うん、まあ、たぶん」
ジョシュアたちが口々に「ウソだろ!?」「精神感応にあんな効果があったなんて…」「いやいや、あり得ないって!」「しかも無詠唱でしたよね」などとまくし立てる。
「…そんなこと言ったって、俺だってこんな使い方したことなかったんだもん」
サイクロプスはピクリとも動かない。
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