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第38話「茜の賭け」
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「ねえもう一回!」
息を荒らげながらそう頼んでくる茜の膝は笑っていた。
「もう無理……。おかしくなる」
「そうは言っても私が誘えば相手してくれるよね?」
そう言いながら茜は色っぽく唇を重ねてくる。
「拒んでも俺が諦めるまでせがんでくるじゃん」
「折れてくれるって知ってるから」
そういたずらっ子の様に笑う茜に見とれていると、玄関の方からガチャガチャと鍵を弄る音が聞こえる。
まさか、ね。
慌てて時計を確認するが、予定の時間よりまだ一時間ほど余裕があった。
幻聴かとほっと胸を撫でおろしていると、ドアが何度かノックされた。
「ちょっと待ってて!」
慌ててそこらへんにあったシャツを茜に投げ渡すと、急いで適当な服に袖を通した。
なんで陽菜がと思いながら、どうにか出られる格好になるもその必要はなかったらしい。
陽菜はドア越しで話しかけてきた。
「いいよ出て来なくて。お母さん帰ってきたから、適当になったら顔見せに来てね。ちゃんと片付けてからでいいから。あとゴミ箱ここ置いておくから、捨てたら私の部屋に戻して置いて」
「あ、ああ。ありがと」
なんでゴミ箱?と思いながら茜の顔を見つめると「これじゃない?」とそこらへんに散らばっていたティッシュ等を指さした。
たしかにこれはまずいな……。
この部屋で寝てるって言ったら絶対ごみ箱もみられるだろうし、そのまま捨てておくわけにはいかなかった。
部屋の中にあるやばそうなゴミを一通り集めていると、苦笑交じりに茜が言った。
「気遣ってもらったのかな?」
「陽菜に?」
「そう、私が追い出されないようにって」
正直、陽菜の本心はわからなかった。
自分で拾ってきたくせに飼い主やめるとか言うし。
茜のことをどうでもいいと思っているのかと思えば、適度に気にするし。
少し顔を赤らめながらしてやったりと言う顔で茜は言ってきた。
「けどバレちゃってたね」
「バレてないよ」
「え、けどごみ箱って?」
「陽菜はゴミ箱としか言ってこなかったし、バレてないってことにしておけばいいの」
実際本気で気にしてたらタイミングとか気にせず文句言ってくるだろうしな。
「そっかー。換気終わったら行く?」
茜がそう言ってきたのでざっと部屋を見渡したが、もうやばそうなものは落ちていなかった。
強いて言えばシーツがぐちゃぐちゃなことぐらいだろうか。
まあ俺が布団で寝ていると言えばどうとでもなるか。
「そうだね、あんまり上に居ても不自然だし」
「じゃあ私ゴミ捨ててきちゃうから待ってて」
「ああ、ありがとう」
あとは茜の首輪外すだけか。
よかった最低限のことはできて。
「一時間前に帰ってくるのは勘弁してくれよ」
独りになったせいか、緊張の糸が切れ一気に疲労感が襲ってきた。
「マジで足腰が死ぬ」
ふくらはぎなどは特にマラソンでもした後のような独特な疲労感が溜まっていた。
正直一回椅子に座ったらいつも通りに立てる気がしないな。
まあ茜の手借りて起きればいいかとぐちゃぐちゃで汗などがしみついたシーツの上で大の字になると、「なにしてるの?」という声が聞こえてきた。
「疲れたから休憩中」
茜の声じゃないな。
陽菜か?
さすがにちょっと遅すぎたかな。
呼びに来てくれたのかとゆっくりと目を開ける。
そこに立っていたのは陽菜でも茜でもなかった。
「え、母さん?」
「ただいま!」
「おかえりなさい……」
慌てて起き上がると、母の肩越しになんども陽菜が頭を下げていた。
一応は止めようとしてくれたんだろうか。
あ、今ゴミ捨てに行ったしやばいものは何もないよな。
バレない様に見える範囲を探すが、特に問題になるようなものは転がっていなかった。
「今この部屋に二人で寝てるんだって?」
「そう、だね……」
じりじりと嫌な脂汗を流しながらなんとかそう答える。
「そう。狭いわね」
それだけ言うと陽菜を連れてどこかへ行ってしまった。
ずっと廊下で待っていたのか、「初めまして」と言う茜の声が聞こえてくる。
部屋に入ってくるなり、茜は耳打ちしてきた。
「ねえ今の人って?」
「俺の母さん……」
「達也のお母さんってあんな感じなんだ」
そう言いながら茜は急にやらかしたという顔をし始めた。
「どうした?」
「これ……」
茜の首には相変わらず赤い首輪が着いたままだった。
「やば……、外すの忘れた」
「ま、まあさっき何も言われなかったし平気じゃない?」
「平気、かな?」
お互いぎこちない笑顔で笑い合った。
「今から外すから大丈夫だよ」
茜はいつも通り首を上げると外してと促してくる。
それを無理やりポケットに詰めると、俺は言った。
「わかった、じゃあ行こうか……」
「待ってその前に」
なにを思ったのか、茜はドンと俺を壁に押さえつける。
「ねえバレるよ、茜」
「大丈夫だよ」
そう言うと、茜は半ば無理やりキスをしてきた。
「急になに?」
「おまじないだよ。偽の恋人だってばれないといいね」
そう言う茜の顔は小悪魔のように見えた。
息を荒らげながらそう頼んでくる茜の膝は笑っていた。
「もう無理……。おかしくなる」
「そうは言っても私が誘えば相手してくれるよね?」
そう言いながら茜は色っぽく唇を重ねてくる。
「拒んでも俺が諦めるまでせがんでくるじゃん」
「折れてくれるって知ってるから」
そういたずらっ子の様に笑う茜に見とれていると、玄関の方からガチャガチャと鍵を弄る音が聞こえる。
まさか、ね。
慌てて時計を確認するが、予定の時間よりまだ一時間ほど余裕があった。
幻聴かとほっと胸を撫でおろしていると、ドアが何度かノックされた。
「ちょっと待ってて!」
慌ててそこらへんにあったシャツを茜に投げ渡すと、急いで適当な服に袖を通した。
なんで陽菜がと思いながら、どうにか出られる格好になるもその必要はなかったらしい。
陽菜はドア越しで話しかけてきた。
「いいよ出て来なくて。お母さん帰ってきたから、適当になったら顔見せに来てね。ちゃんと片付けてからでいいから。あとゴミ箱ここ置いておくから、捨てたら私の部屋に戻して置いて」
「あ、ああ。ありがと」
なんでゴミ箱?と思いながら茜の顔を見つめると「これじゃない?」とそこらへんに散らばっていたティッシュ等を指さした。
たしかにこれはまずいな……。
この部屋で寝てるって言ったら絶対ごみ箱もみられるだろうし、そのまま捨てておくわけにはいかなかった。
部屋の中にあるやばそうなゴミを一通り集めていると、苦笑交じりに茜が言った。
「気遣ってもらったのかな?」
「陽菜に?」
「そう、私が追い出されないようにって」
正直、陽菜の本心はわからなかった。
自分で拾ってきたくせに飼い主やめるとか言うし。
茜のことをどうでもいいと思っているのかと思えば、適度に気にするし。
少し顔を赤らめながらしてやったりと言う顔で茜は言ってきた。
「けどバレちゃってたね」
「バレてないよ」
「え、けどごみ箱って?」
「陽菜はゴミ箱としか言ってこなかったし、バレてないってことにしておけばいいの」
実際本気で気にしてたらタイミングとか気にせず文句言ってくるだろうしな。
「そっかー。換気終わったら行く?」
茜がそう言ってきたのでざっと部屋を見渡したが、もうやばそうなものは落ちていなかった。
強いて言えばシーツがぐちゃぐちゃなことぐらいだろうか。
まあ俺が布団で寝ていると言えばどうとでもなるか。
「そうだね、あんまり上に居ても不自然だし」
「じゃあ私ゴミ捨ててきちゃうから待ってて」
「ああ、ありがとう」
あとは茜の首輪外すだけか。
よかった最低限のことはできて。
「一時間前に帰ってくるのは勘弁してくれよ」
独りになったせいか、緊張の糸が切れ一気に疲労感が襲ってきた。
「マジで足腰が死ぬ」
ふくらはぎなどは特にマラソンでもした後のような独特な疲労感が溜まっていた。
正直一回椅子に座ったらいつも通りに立てる気がしないな。
まあ茜の手借りて起きればいいかとぐちゃぐちゃで汗などがしみついたシーツの上で大の字になると、「なにしてるの?」という声が聞こえてきた。
「疲れたから休憩中」
茜の声じゃないな。
陽菜か?
さすがにちょっと遅すぎたかな。
呼びに来てくれたのかとゆっくりと目を開ける。
そこに立っていたのは陽菜でも茜でもなかった。
「え、母さん?」
「ただいま!」
「おかえりなさい……」
慌てて起き上がると、母の肩越しになんども陽菜が頭を下げていた。
一応は止めようとしてくれたんだろうか。
あ、今ゴミ捨てに行ったしやばいものは何もないよな。
バレない様に見える範囲を探すが、特に問題になるようなものは転がっていなかった。
「今この部屋に二人で寝てるんだって?」
「そう、だね……」
じりじりと嫌な脂汗を流しながらなんとかそう答える。
「そう。狭いわね」
それだけ言うと陽菜を連れてどこかへ行ってしまった。
ずっと廊下で待っていたのか、「初めまして」と言う茜の声が聞こえてくる。
部屋に入ってくるなり、茜は耳打ちしてきた。
「ねえ今の人って?」
「俺の母さん……」
「達也のお母さんってあんな感じなんだ」
そう言いながら茜は急にやらかしたという顔をし始めた。
「どうした?」
「これ……」
茜の首には相変わらず赤い首輪が着いたままだった。
「やば……、外すの忘れた」
「ま、まあさっき何も言われなかったし平気じゃない?」
「平気、かな?」
お互いぎこちない笑顔で笑い合った。
「今から外すから大丈夫だよ」
茜はいつも通り首を上げると外してと促してくる。
それを無理やりポケットに詰めると、俺は言った。
「わかった、じゃあ行こうか……」
「待ってその前に」
なにを思ったのか、茜はドンと俺を壁に押さえつける。
「ねえバレるよ、茜」
「大丈夫だよ」
そう言うと、茜は半ば無理やりキスをしてきた。
「急になに?」
「おまじないだよ。偽の恋人だってばれないといいね」
そう言う茜の顔は小悪魔のように見えた。
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