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第7話「茜の食事」
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「ねえ、何してるの?」
茜にキスされている間中、リビングからゆっくりと歩いてくる陽菜の足音が頭に響く。
どうにか離れようと少し頭を振るが、しっりかりと押さえられ、全くと言っていいほど動かない。
もういっそ、このまま見られてしまってもいいのかもしれない。
溶解しきった脳みそでそんなことを考えていると、満足したのかようやく唇が離れた。
コンマ数秒遅れてリビングにつながるドアのノブがゆっくりと動き始める。
そのギギギという音で急に現実に引き戻され、慌てて叫ぶ。
「ごめん待ってて! 今すぐ行くから!」
「……、わかったよ」
少し考えたかのようにゆっくりとドアノブが元の位置に戻ると、ドアから遠ざかる足音が聞こえた。
「あーあー、行っちゃったね達也」
残念そうにそう言うと満面の笑みでつづけた。
「バレたらもっとドキドキできたのに」
「見られたら猫になるんじゃないのか?」
陽菜を目の前にした、びくびくと怯える彼女を思いだす。
「あっちの方が人かもよ?」
そう意味ありげに笑うと、リビングのドアを開ける。
リビングに足を踏み入れた瞬間、先ほどの妖艶で積極的な雰囲気は一気に消え失せ、びくびくとした猫のような雰囲気を纏っていた。
「遅い! なにしてたか知らないけど、遅れるならお兄ちゃんの分はもう作らないよ」
「ごめん、もう遅れない」
説明できないことをしていた上、待たせたのが事実な以上、何も言わずただ頭を下げることしかできなかった。
「まあいいや、早く食べよう」
そういわれてテーブルを見ると、”二人分”の食事が用意されていた。
そしてフローリングの上にはなにか見たことない白い粉が掛かったシーチキンのようなものが鉢に入り置かれている。
「これは、一体……」
「こっちは私たち二人のごはん、これは茜ちゃんの」
「これでも栄養バランスとか考えたんだからね」などと言っているが、茜用と言われたものはどう見ても人が食べるものではなかった。
「なあ陽菜、さすがに食事ぐらいは茜も座って食べさせないか?」
どうせ手は使わせてもらえないんだろうし、床が汚れることや、食事中にそんな惨めな姿の彼女を見ると考えると、どうしても食欲が沸く気がしなかった。
せめて食事くらいは人らしく食べさせてあげてほしい。
「お兄ちゃん料理の約束覚えてる?」
「ああ、分担するって決めた時に約束したやつだろ?」
陽菜がある程度大きくなった時、家事の分担とその際のルールを決めた。
「料理は確か、相手の作ったものに文句は言わない、要らない場合はあらかじめ言う、片付けまで含めて料理、じゃなかったか?」
「よかったちゃんと覚えてて、なら何も文句はないよね?」
「いやだけど――」
不満を言おうとしたが、それはすぐに遮られた。
「ならこれからお兄ちゃんがごはん作って、それなら私も文句は言わない!」
あんな約束をしてしまった以上、茜のもちゃんと作れと文句を言うことはできない。
いや言ったところで大した効果があるとは思えない。
なら解決策はそれしか無いだろう。
「わかった……今日以降は全部俺が作るよ……」
「私も必要なら手伝うから言って」
裾を軽く引っ張り気を引くと、茜はそう言ってきた。
「ありがと」
「あーなんか私が拾ってきたのに、お兄ちゃんに取られちゃうな~」
このやり取りを見ていた陽菜は皮肉たっぷりの口調でそう言ってきた。
取られるって……、ちゃんと人として扱えばこんなことしないわ。
「おいそんな言い方」
「だって実際そうでしょ、発情期の半ノラみたいなことしてるくせに」
そう言いながら自分の右鎖骨の上を辺りを指で何度か叩く。
そこはさっきキスマークを付けた位置とちょうど一致していた。
「まあいいよ、茜ちゃんがそういうのだってのは拾った時からわかってたし。もういいから早く食べよう」
そう言って座るように言ってきたが、その日の夕飯は日常の光景の中に猫がいる異様なものだった。
茜にキスされている間中、リビングからゆっくりと歩いてくる陽菜の足音が頭に響く。
どうにか離れようと少し頭を振るが、しっりかりと押さえられ、全くと言っていいほど動かない。
もういっそ、このまま見られてしまってもいいのかもしれない。
溶解しきった脳みそでそんなことを考えていると、満足したのかようやく唇が離れた。
コンマ数秒遅れてリビングにつながるドアのノブがゆっくりと動き始める。
そのギギギという音で急に現実に引き戻され、慌てて叫ぶ。
「ごめん待ってて! 今すぐ行くから!」
「……、わかったよ」
少し考えたかのようにゆっくりとドアノブが元の位置に戻ると、ドアから遠ざかる足音が聞こえた。
「あーあー、行っちゃったね達也」
残念そうにそう言うと満面の笑みでつづけた。
「バレたらもっとドキドキできたのに」
「見られたら猫になるんじゃないのか?」
陽菜を目の前にした、びくびくと怯える彼女を思いだす。
「あっちの方が人かもよ?」
そう意味ありげに笑うと、リビングのドアを開ける。
リビングに足を踏み入れた瞬間、先ほどの妖艶で積極的な雰囲気は一気に消え失せ、びくびくとした猫のような雰囲気を纏っていた。
「遅い! なにしてたか知らないけど、遅れるならお兄ちゃんの分はもう作らないよ」
「ごめん、もう遅れない」
説明できないことをしていた上、待たせたのが事実な以上、何も言わずただ頭を下げることしかできなかった。
「まあいいや、早く食べよう」
そういわれてテーブルを見ると、”二人分”の食事が用意されていた。
そしてフローリングの上にはなにか見たことない白い粉が掛かったシーチキンのようなものが鉢に入り置かれている。
「これは、一体……」
「こっちは私たち二人のごはん、これは茜ちゃんの」
「これでも栄養バランスとか考えたんだからね」などと言っているが、茜用と言われたものはどう見ても人が食べるものではなかった。
「なあ陽菜、さすがに食事ぐらいは茜も座って食べさせないか?」
どうせ手は使わせてもらえないんだろうし、床が汚れることや、食事中にそんな惨めな姿の彼女を見ると考えると、どうしても食欲が沸く気がしなかった。
せめて食事くらいは人らしく食べさせてあげてほしい。
「お兄ちゃん料理の約束覚えてる?」
「ああ、分担するって決めた時に約束したやつだろ?」
陽菜がある程度大きくなった時、家事の分担とその際のルールを決めた。
「料理は確か、相手の作ったものに文句は言わない、要らない場合はあらかじめ言う、片付けまで含めて料理、じゃなかったか?」
「よかったちゃんと覚えてて、なら何も文句はないよね?」
「いやだけど――」
不満を言おうとしたが、それはすぐに遮られた。
「ならこれからお兄ちゃんがごはん作って、それなら私も文句は言わない!」
あんな約束をしてしまった以上、茜のもちゃんと作れと文句を言うことはできない。
いや言ったところで大した効果があるとは思えない。
なら解決策はそれしか無いだろう。
「わかった……今日以降は全部俺が作るよ……」
「私も必要なら手伝うから言って」
裾を軽く引っ張り気を引くと、茜はそう言ってきた。
「ありがと」
「あーなんか私が拾ってきたのに、お兄ちゃんに取られちゃうな~」
このやり取りを見ていた陽菜は皮肉たっぷりの口調でそう言ってきた。
取られるって……、ちゃんと人として扱えばこんなことしないわ。
「おいそんな言い方」
「だって実際そうでしょ、発情期の半ノラみたいなことしてるくせに」
そう言いながら自分の右鎖骨の上を辺りを指で何度か叩く。
そこはさっきキスマークを付けた位置とちょうど一致していた。
「まあいいよ、茜ちゃんがそういうのだってのは拾った時からわかってたし。もういいから早く食べよう」
そう言って座るように言ってきたが、その日の夕飯は日常の光景の中に猫がいる異様なものだった。
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