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誰にも話したくない
しおりを挟む「ごめんなさい。ごめんなさいっ、、、。」
こぼれる大粒の涙。響く小さな声。急に泣き出した公爵
令嬢を会場にいる人は皆ただ戸惑いつつも静かに見守っ
ていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「アリーナ、お前は私とフレアが親しくしていることに嫉妬し、聖女であるフレアを平民だからと虐めたな?」
大きく響く声で第一皇子、クリスはアリーナに問いかけをした。ここは夜のパーティ会場。多くの貴族が通う高等魔法学園のものが多く参加する伝統ある行事の一つだ。そんなパーティの雰囲気を、たった今大きな声が打ち破った。
「なんの事だか、、、。私にはよく分かりませんわ。」
急に問いかけられたアリーナは戸惑いながらも皇子を見上げた。その瞳には動揺の色がみえる。
「とぼけても無駄だ。痛い目を見たくなければ本当のことを潔く認めろ。」
皇子は静かにアリーナを睨みつけてそんなことを言う。その視線にアリーナは少し後退りをする。アリーナの白い額からじわりとわせが滲む。
「潔く認めろと言われても、、、私には一切身に覚えがないですもの。」
緊迫した空気と自分を睨みつける冷たい目線に、アリーナは手をぐっときつく握りしめた。アリーナの返事を聞いた皇子は呆れたように大きくため息をこぼす。
「認めないか、、、、。なら仕方がない。あれを持ってこい。」
そう言って皇子は使いのものに何か持ってくるよう命じる。アリーナはこれから自分が何をされるのか、不安に押しつぶされそうになっている心を落ち着けるため、静かに深呼吸をした。アリーナのそばにいつもいる取り巻きたちは遠くから訝しげに見ている。今、アリーナはたったと一人、何も出来ないままただ静かに佇んでいる。
「こちらを、、、」
すると先程何かを皇子に命じられた使いが、何か透明な液体の入った小さな瓶を差し出してきた。
「これは、、、?」
それを怪しげに睨みつつ、、、訝しみながらアリーナはそっと受け取る。
「それは王族専属の魔法術師に作らせた“本音を話してしまう薬”だ。アリーナ、それを飲め。」
それを聞いてアリーナは目を丸くする。
「なっ!そんなの飲めるわけないじゃないですかっ。第一、周りに話してはいけない重大な秘密でも話してしまったらどうするのですっ!?」
「それに関しては問題ない。あくまでお前は私の婚約者“候補”であったからな。万が一に備えて、国に関する重大な情報などは伝えられていない。それに、そういうものは魔法で周りに話さないよう鍵をかけられている。つまりお前が話すのは結局自分の気持ちだけだ。」
それとも何か飲めないやましいことでもあるのか?と皇子はバカにしたように笑う。アリーナはそんな皇子を少しだけ睨みつけた。
「人のプライベートに干渉するなんて、、、王族として間違っているでしょうっ。」
「仕方ないだろう?こうしないと貴様の冤罪は晴れないのだぞ?」
やましい事がないのなら早く飲め、と皇子はアリーナに小瓶を飲むよう急かす。それでもアリーナはまだ飲むことを躊躇っていた。しばらく沈黙が流れる。アリーナは飲むも飲めずにただただ小瓶を見つめている。
「どうした。早く飲まないとお前の冤罪は晴れないぞ?早く飲め。」
けれどアリーナは飲もうとしない。とうとう皇子は待ちわびたのか
「もういい。おい、アリーナにあの薬を飲ませろ。」
近くにいた数人の使いのものに命令した。するとサッと数人の使いのものは素早く行動し、「失礼します」と言ってアリーナの両手を掴み驚いて開けたアリーナの口の中にすっと薬を流し込んだ。さすが王族使いのものだけあって有能で動きも素早い。アリーナは思わずごくりと薬を飲み込んでしまった。皇子は静かにアリーナの様子を観察する。
すると、アリーナは急に泣き出した。
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