小さな女の子の話

桜花🌸

文字の大きさ
上 下
1 / 5

誰にも話したくない

しおりを挟む


   「ごめんなさい。ごめんなさいっ、、、。」

こぼれる大粒の涙。響く小さな声。急に泣き出した公爵
令嬢を会場にいる人は皆ただ戸惑いつつも静かに見守っ
ていた。

            ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「アリーナ、お前は私とフレアが親しくしていることに嫉妬し、聖女であるフレアを平民だからと虐めたな?」

大きく響く声で第一皇子、クリスはアリーナに問いかけをした。ここは夜のパーティ会場。多くの貴族が通う高等魔法学園のものが多く参加する伝統ある行事の一つだ。そんなパーティの雰囲気を、たった今大きな声が打ち破った。

「なんの事だか、、、。私にはよく分かりませんわ。」

急に問いかけられたアリーナは戸惑いながらも皇子を見上げた。その瞳には動揺の色がみえる。

「とぼけても無駄だ。痛い目を見たくなければ本当のことを潔く認めろ。」

皇子は静かにアリーナを睨みつけてそんなことを言う。その視線にアリーナは少し後退りをする。アリーナの白い額からじわりとわせが滲む。

「潔く認めろと言われても、、、私には一切身に覚えがないですもの。」

緊迫した空気と自分を睨みつける冷たい目線に、アリーナは手をぐっときつく握りしめた。アリーナの返事を聞いた皇子は呆れたように大きくため息をこぼす。

「認めないか、、、、。なら仕方がない。あれを持ってこい。」

そう言って皇子は使いのものに何か持ってくるよう命じる。アリーナはこれから自分が何をされるのか、不安に押しつぶされそうになっている心を落ち着けるため、静かに深呼吸をした。アリーナのそばにいつもいる取り巻きたちは遠くから訝しげに見ている。今、アリーナはたったと一人、何も出来ないままただ静かに佇んでいる。

「こちらを、、、」

すると先程何かを皇子に命じられた使いが、何か透明な液体の入った小さな瓶を差し出してきた。

「これは、、、?」

それを怪しげに睨みつつ、、、訝しみながらアリーナはそっと受け取る。

「それは王族専属の魔法術師に作らせた“本音を話してしまう薬”だ。アリーナ、それを飲め。」

それを聞いてアリーナは目を丸くする。

「なっ!そんなの飲めるわけないじゃないですかっ。第一、周りに話してはいけない重大な秘密でも話してしまったらどうするのですっ!?」

「それに関しては問題ない。あくまでお前は私の婚約者“候補”であったからな。万が一に備えて、国に関する重大な情報などは伝えられていない。それに、そういうものは魔法で周りに話さないよう鍵をかけられている。つまりお前が話すのは結局自分の気持ちだけだ。」

それとも何か飲めないやましいことでもあるのか?と皇子はバカにしたように笑う。アリーナはそんな皇子を少しだけ睨みつけた。

「人のプライベートに干渉するなんて、、、王族として間違っているでしょうっ。」

「仕方ないだろう?こうしないと貴様の冤罪は晴れないのだぞ?」

やましい事がないのなら早く飲め、と皇子はアリーナに小瓶を飲むよう急かす。それでもアリーナはまだ飲むことを躊躇っていた。しばらく沈黙が流れる。アリーナは飲むも飲めずにただただ小瓶を見つめている。

「どうした。早く飲まないとお前の冤罪は晴れないぞ?早く飲め。」

けれどアリーナは飲もうとしない。とうとう皇子は待ちわびたのか

「もういい。おい、アリーナにあの薬を飲ませろ。」

近くにいた数人の使いのものに命令した。するとサッと数人の使いのものは素早く行動し、「失礼します」と言ってアリーナの両手を掴み驚いて開けたアリーナの口の中にすっと薬を流し込んだ。さすが王族使いのものだけあって有能で動きも素早い。アリーナは思わずごくりと薬を飲み込んでしまった。皇子は静かにアリーナの様子を観察する。



すると、アリーナは急に泣き出した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

俺様幼馴染の溺愛包囲網

吉岡ミホ
恋愛
枚岡結衣子 (ひらおか ゆいこ) 25歳 養護教諭 世話焼きで断れない性格 無自覚癒やし系 長女 × 藤田亮平 (ふじた りょうへい) 25歳 研修医 俺様で人たらしで潔癖症 トラウマ持ち 末っ子 「お前、俺専用な!」 「結衣子、俺に食われろ」 「お前が俺のものだって、感じたい」 私たちって家が隣同士の幼馴染で…………セフレ⁇ この先、2人はどうなる? 俺様亮平と癒し系結衣子の、ほっこり・じんわり、心温まるラブコメディをお楽しみください! ※『ほっこりじんわり大賞』エントリー作品です。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件

こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。 だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。 好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。 これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。 ※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ

処理中です...