ショートショート

十夜目、親父の本棚

　親父が他界し、一周忌が過ぎた。

　今日は離れの親父の書斎の片付けだ。
はじめて入る親父の書斎は、落ち着いた雰囲気だった。
さすが、頑固一徹の無口な男、まさに昭和の男だ。

　ふと、本棚に目がいった。この本棚、なんかおかしい。
もしかして、動くのか・・・・重かった。
むきになって、本を取り出し、動かそうとした
・・・・・・動かなかった。
「はふぅ～」と大きなため息をついて、座り込んだ。
座り込んだところに、スィッチがあった。
こんなところに、スィッチって、もしかして・・・・・・
本棚が動き出して、部屋が出てきた。
あぜん、ぼうぜん、秘密部屋って・・・・・・・親父のヤツ

当然のように入る
鞭、ロープ、三角木馬、磔・・・・・・・
ＳＭ部屋だった、あんな無骨そうな顔してＳＭって、人は見かけによらない。
スケベ親父だったんだな。攻め好きなのかよ、親父（ニヤリ）
でも、親父の人間味のある部分を知れて、少しうれしいけどな。

　部屋の隅にテレビとビデオデッキが置いてあった。
ビデオデッキ懐かしいわ。あれ、これって、もしかして・・・・・・・・
好奇心を抑えられず、ビデオデッキのスィッチを入れる。
縄で縛られた親父が映った。
ビックリした。
・・・・・親父、そっちなんかい！
親父、マゾ（攻められる方）だったんかい！
大声で、つっこんだ！

　びっくりしていたら、女性が出てきた。
お袋じゃない・・・・・誰だ？
この人は、俺の小学校の時の家庭教師の先生だ、俺の初恋の人だ。
「ガーーーーン、大ショック」
あこがれの人のボンテージ姿を見て、なぜか、すごく失恋した気分になった。

不思議な気分のまま、股間を見るとボッキしていた。
おぉぉ、今日も息子は元気だ。タナトスよりエロスだよ、エロス。俺は大きくうなづいた。