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九十九ひろひろ

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九夜目、写真

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 本棚の本を整理していたら、写真が出てきた。
昔の彼女の写真だ。

 あの頃の僕は若かった、そしてバカだった。
美人の彼女に夢中だった。

 彼女は「演歌歌手のたまご」だった。
大阪時代はテレビやラジオに出演していたらしい。
東京は厳しい街、怖い街って言っていた。
着物を姿で歌っている彼女を見て、こんな美人が彼女なんて奇跡だって思った。

 ささいなことで喧嘩した。喧嘩なんて普通だと思っていた僕は「仲直りしよう」って言った。
「喧嘩するなんて、もう無理」って彼女は言った。
「今まで、ずっと我慢してきた、色々我慢してきた、Hも好きじゃないのに我慢していた。もう限界」
彼女は頑なだった、そのまま別れることになった。
半同棲のような1年間が終わった。

 1週間後、知らない男と歩いている彼女をみた、幸せそうだった。
僕は涙が止まらなかった。このまま死にたいって思った。
食事がのどを通らなかった、僕はどんどん痩せて行った。
でも、死ななかった、死ぬ度胸も無い弱い男だった。

 今でも僕はバカでかっこ悪い男だ、あの頃から全く成長していない。
彼女の横で笑っている僕は幸せそうだ、うらやましい。写真に嫉妬した。
「チッ」と舌打ちして写真を元に戻した、過去を捨てれない自分にうんざりした。
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