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王都騎士団
パーティー
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ダディエは、はぁーっと大きく溜息をついた。
今日何度目かわからない溜息に、侍女がピシャリと背中を打つ。
「いい加減腹を決めてくださいませ、ダディエ様」
侍女は、ダディエがまだ子どもの頃から身の回りの世話をしてくれていた者だ。
ダディエが騎士団に入ってからも、いつダディエが屋敷に戻ってもいいように部屋の管理をし、家からの使いを務め、商人を呼びつける手続きなんかもしてくれる、ダディエ付きの侍女だった。
「わかってはいるが……気が重い……」
「いつまでものらくらと逃げているからこういうことになるのですよ」
侍女は、「さっさと適当な格下令嬢と婚約しておけば良かったのに」と付け加える。
どちらが主かわからないくらい容赦がない。
「別に一生独身で良かったんだよ……『騎士として生涯国に忠誠を』とかでいいだろう?」
「王都騎士団程度では難しかったと思いますよ? せめて近衛騎士団くらいでないと」
「そこまで貴族くさいところじゃ意味がないんだよ……」
「お気持ちはわからなくもございませんが、ダディエ様は侯爵家のご子息ですから」
自覚が足りないのだと一蹴されてしまう。
「いずれにせよ、ジェリーニ家との縁談をお断りする術はございません。あちらの方が格上な上に、今回は旦那様が頼み込んで結んだ縁談なんですから」
自分が男色家だ、若い新人騎士を囲っている、という噂を払拭するためだけに組まれた縁談。
自分のツメの甘さが招いた結果とはいえ、その代償はとてつもなく大きい。
公爵家のフィーネ嬢とは、ほとんど会ったことがない。
ダディエは騎士団に入団して以降、王家主催のパーティーにしか出席していなかったし、フィーネ嬢も社交界に顔を出せるようになったのは二年前のことだ。
しかもダディエは女性に人気があり、パーティーに出れば多くの女性に囲まれてしまう。
公爵家令嬢とはいえ、小娘の入る余地などはなかった。
よって、ダディエはフィーネ嬢の顔もよく覚えてはいない。
姉である現王太子妃・ハーミアが美人なので、おそらくフィーネ嬢も美人なのだろうとは思うが、そういう問題でもない。
そもそも、王太子妃の実妹であるということが大きな問題だ。
公爵家な上に、王太子妃……いずれは皇后になる女性の実家。
侯爵家が公爵家に並べるほどの家柄であるとはいえ、ジェリーニ家は別格なのだ。
側室どころか、ちょっと他の女性と遊ぶということも難しくなるだろう。
王都騎士団に所属していることすら難しくなる可能性もある。
侍女の言うように、近衛騎士団レベルがふさわしいとされるからだ。
下手をすれば、騎士職ですらなくなってもおかしくはない。
王太子が王になれば、王の義弟。
望めば宰相クラスにもなれるのだから。
「よりによって、なんでジェリーニ家なんだ……」
「ちょうど成人を迎える婚約者のない女性なんて、そうそういらっしゃいませんもの。諦めてくださいな」
「はあぁぁぁぁぁ」
「ああもう、鬱陶しい! さあ、そろそろ参りますよ!」
侍女の前でどれだけ情けなく愚痴ろうとも、ダディエは侯爵家の子息だった。
馬車を降りてフィーネ嬢をエスコートに向かう様は、優雅で美しく、物語の王子様のようだ。
そういう所作が幼少期からの教育で叩き込まれているし、どう振る舞えば女性が落ちるのかもよくわかっていた。
最近はユリエルのことでいろいろと調子が狂っていたが、本来は女性と一夜限りの関係を楽しめる色男でもある。
いっそフィーネ嬢の方から婚約破棄にしてもらえれば良いのだが、かといって不遜な態度で家名に傷をつけるというわけにもいかないし。
「フィーネ様、お迎えにあがりました。ダディエ・ミルボーです」
片膝を着き、フィーネに頭を垂れて手を差し出す。
「……どうか、フィーとお呼びくださいませ、ダディエ様」
「では、私のことはダディ、と」
「ええ、ダディ」
フィーネ嬢は、差し出されたダディエの手にそっと自分の手を重ねた。
ダディエは顔を上げ、フィーネ嬢の手にキスを落とす。
「ではフィー、参りましょう」
一連の優美なやりとりに、フィーネ嬢の侍女らからは甘い溜息が漏れた。
馬車で二人きりになってから、ようやくダディエはフィーネ嬢の顔をまともに見た。
姉に負けず、フィーネ嬢はやはり美しい。
少し年より幼く見える愛らしい顔に、けれど不釣り合いなほど胸元は豊かで、締め上げたウエストは細い。
これが伯爵令嬢くらいならどれだけ良かったか。
「……フィーネ様、この度は父の勝手で申し訳ございません」
「フィーとお呼びください、ダディ。私たち、『以前からの許嫁』なのでしょう?」
フィーネ嬢は、事情も設定もきちんと理解されていた。
成人を待っていただけで、両家の間では以前から結婚を予定していた関係だということになっている。
「……ええ、そうですね、フィー」
「そんな顔をなさらないでくださいませ。私は、お相手が貴方で嬉しいですわ。……何度かお見かけして、お慕いしておりましたの。ですから、お父様からお話をいただいて、夢じゃないかと思ったくらいですのよ」
少し頬を上気させて話すフィーネ嬢は、より幼く、可愛いらしく見えた。
どうやら、嘘ではなさそうだ。
フィーネ嬢からの破談は望めそうにない。
いい加減、腹を括らなければ。
「……私も夢のようですよ、フィー」
ダディエは、美しい顔で微笑んだ。
ちょうどその頃、ユリエルは目を覚ました。
(ん……ここ、は……?)
まだ頭がぼうっとする。
(あれ……? 腕が……動かな、い……?)
額に手を当てようとして、自分の手が動かないことを認識する。
「お、こいつ起きたぜ」
(誰……?)
声を出そうとするが、声が出ない。
ユリエルはベッドの上に寝かされて、両腕を後ろ手に縛られていた。
口には猿轡がされていて、シャツのボタンは外されている。
部屋には二人の男がいて、一人は椅子に座って酒を飲んでいるが、一人はユリエルに覆い被さるようにしてニヤニヤと下卑た笑みを浮かべている。
「じゃあ、俺も愉しませてもらうかね」
飲んでいた男もユリエルに近づいてきた。
ユリエルの上にいた男が壁側に少し寄る。
そして、二人同時にユリエルの乳首を舐め始めた。
(んんっ!)
びくん、と身体が跳ねる。
意識のない時にも、すでに刺激されていたのだろう。身体は既に甘い反応を見せていた。
(やだ……逃げなきゃ……)
そう思うのに、まだうまく力が入らない。
たった今まで意識がなかったほど酩酊していたのだから無理もなかった。
「んんっ、むぅ、んぐぅ、……」
「やっぱ、意識ある方が反応がいいな」
「そろそろこっちもいただくかね」
一気に下を脱がされる。
力の入らない脚をバタつかせるが、手で掴まれ、そのまま持ち上げられてしまう。
「おい、こいつの脚持っとけ」
一人が言うと、もう一人が腹の上に跨って足首をがっしりと掴んだ。
「うお、いいケツしてんじゃん」
脚を持ち上げられているので、仰向けなのに穴まで丸見えだった。
(や……だ……)
「イイもん喰わせてやるよ」
そういうと、何かとろりとしたものを穴に垂らした。
指でぐちゅぐちゅと中にも塗り込む。
(なに……? なんか熱い……?)
塗られた辺りが、なんだか熱を帯びたような気がする。
その熱い辺りを指で擦られると、腰が揺れた。
「イイだろ? こいつは製菓に使うウイスキーシロップなんだが、アルコール度数が高くてキクんだよ」
言いながらも、ぐちょぐちょと中を掻き回してくる。
「なんだ、兄ちゃんもう入りそうじゃないか」
指が抜かれたと思ったら、今度はもっと太いものが当てがわれた。
腹の上に一人乗っているので見えないが、これはたぶん……
「んむぅぅぅ!」
(嫌だ!)
そうは思っても、身体はいうことを聞いてくれない。
酔ってさえいなければ、こんな素人くらいどうとでもなるのに。
ずぶり、と挿入ってくる感覚があった。
痛くはない。
身体は、痛くない。
「おいおい、兄ちゃん初めてじゃねぇだろ。どんだけ咥えてんだ?……ま、これなら遠慮なく」
根本までいっきに挿れられたソレが、今度は出し入れされる。
「んんんっ、むぅっ、んぐぅ」
(嫌だ……そこは、ダディエ殿に……)
涙が出た。
見知らぬ男に、ダディエと拡げてきた穴を犯されている。
犯されていること以上に、ダディエ以外のモノが挿入っているという事実が耐えられなかった。
それでも、酔った身体は快楽に反応し、中は異物を受け入れて絡みつく。
「んっ、んっ、ふっ、んっ……」
身体が快感を得るたび、心は闇に沈んでいき、心を手放した分、快感がまた増える。
きっともう、悦んで男を受け入れているようにしか見えないだろう。
男二人は、それぞれが一回ずつイくと、手首の縄も解いて、普通に解放してくれた。
ユリエルは、できるだけ男性を避けるようにして騎士団へと戻った。
途中で足の間に液が伝う気配がして気持ち悪かったが、立ち止まる方が嫌だった。
自室からダディエの部屋に入り、風呂場へと直行する。
シャワーを穴の入口に当て、中を洗う。
それでもまだ気持ち悪くて、自分で指を突っ込んだ。
入口がキュウ、と締まって、逆にうまく洗えなかった。
何度もシャワーを当てて、シャワーから水しか出なくなって、それでもまだしばらく続けて、身体が冷え切った頃ようやく風呂から上がった。
真っ暗なダディエの部屋で、ふらふらとダディエのベッドまで歩く。
ダディエのベッドに触れ、静かに布団に顔をうずめる。
心が戻ってきて、涙が溢れた。
(なんっで、こん、な……)
飲みすぎて抵抗できなかったのは、自分のせいだった。
騎士団の訓練された兵ならばともかく、あの程度の男が二人くらいなら、たとえ腕が縛られていても、十分逃げられたはずだった。
自分に魅了の体質があることも知っていたのに。
(なんで……)
ダディエに男色の汚名を着せていたこともしらず、のうのうと守られてきたのか。
(なんで……)
ダディエから享受する快楽を、勘違いしていたのか。
彼は部下を助けていただけなのに。
事実、ダディエのおかげで、男二人に襲われても割けずに済んだ。
全部、部下を守るための手段だった。
それがこんなに突き刺さるのは……
(そうか、僕はダディエ殿が好きなのか……)
今日何度目かわからない溜息に、侍女がピシャリと背中を打つ。
「いい加減腹を決めてくださいませ、ダディエ様」
侍女は、ダディエがまだ子どもの頃から身の回りの世話をしてくれていた者だ。
ダディエが騎士団に入ってからも、いつダディエが屋敷に戻ってもいいように部屋の管理をし、家からの使いを務め、商人を呼びつける手続きなんかもしてくれる、ダディエ付きの侍女だった。
「わかってはいるが……気が重い……」
「いつまでものらくらと逃げているからこういうことになるのですよ」
侍女は、「さっさと適当な格下令嬢と婚約しておけば良かったのに」と付け加える。
どちらが主かわからないくらい容赦がない。
「別に一生独身で良かったんだよ……『騎士として生涯国に忠誠を』とかでいいだろう?」
「王都騎士団程度では難しかったと思いますよ? せめて近衛騎士団くらいでないと」
「そこまで貴族くさいところじゃ意味がないんだよ……」
「お気持ちはわからなくもございませんが、ダディエ様は侯爵家のご子息ですから」
自覚が足りないのだと一蹴されてしまう。
「いずれにせよ、ジェリーニ家との縁談をお断りする術はございません。あちらの方が格上な上に、今回は旦那様が頼み込んで結んだ縁談なんですから」
自分が男色家だ、若い新人騎士を囲っている、という噂を払拭するためだけに組まれた縁談。
自分のツメの甘さが招いた結果とはいえ、その代償はとてつもなく大きい。
公爵家のフィーネ嬢とは、ほとんど会ったことがない。
ダディエは騎士団に入団して以降、王家主催のパーティーにしか出席していなかったし、フィーネ嬢も社交界に顔を出せるようになったのは二年前のことだ。
しかもダディエは女性に人気があり、パーティーに出れば多くの女性に囲まれてしまう。
公爵家令嬢とはいえ、小娘の入る余地などはなかった。
よって、ダディエはフィーネ嬢の顔もよく覚えてはいない。
姉である現王太子妃・ハーミアが美人なので、おそらくフィーネ嬢も美人なのだろうとは思うが、そういう問題でもない。
そもそも、王太子妃の実妹であるということが大きな問題だ。
公爵家な上に、王太子妃……いずれは皇后になる女性の実家。
侯爵家が公爵家に並べるほどの家柄であるとはいえ、ジェリーニ家は別格なのだ。
側室どころか、ちょっと他の女性と遊ぶということも難しくなるだろう。
王都騎士団に所属していることすら難しくなる可能性もある。
侍女の言うように、近衛騎士団レベルがふさわしいとされるからだ。
下手をすれば、騎士職ですらなくなってもおかしくはない。
王太子が王になれば、王の義弟。
望めば宰相クラスにもなれるのだから。
「よりによって、なんでジェリーニ家なんだ……」
「ちょうど成人を迎える婚約者のない女性なんて、そうそういらっしゃいませんもの。諦めてくださいな」
「はあぁぁぁぁぁ」
「ああもう、鬱陶しい! さあ、そろそろ参りますよ!」
侍女の前でどれだけ情けなく愚痴ろうとも、ダディエは侯爵家の子息だった。
馬車を降りてフィーネ嬢をエスコートに向かう様は、優雅で美しく、物語の王子様のようだ。
そういう所作が幼少期からの教育で叩き込まれているし、どう振る舞えば女性が落ちるのかもよくわかっていた。
最近はユリエルのことでいろいろと調子が狂っていたが、本来は女性と一夜限りの関係を楽しめる色男でもある。
いっそフィーネ嬢の方から婚約破棄にしてもらえれば良いのだが、かといって不遜な態度で家名に傷をつけるというわけにもいかないし。
「フィーネ様、お迎えにあがりました。ダディエ・ミルボーです」
片膝を着き、フィーネに頭を垂れて手を差し出す。
「……どうか、フィーとお呼びくださいませ、ダディエ様」
「では、私のことはダディ、と」
「ええ、ダディ」
フィーネ嬢は、差し出されたダディエの手にそっと自分の手を重ねた。
ダディエは顔を上げ、フィーネ嬢の手にキスを落とす。
「ではフィー、参りましょう」
一連の優美なやりとりに、フィーネ嬢の侍女らからは甘い溜息が漏れた。
馬車で二人きりになってから、ようやくダディエはフィーネ嬢の顔をまともに見た。
姉に負けず、フィーネ嬢はやはり美しい。
少し年より幼く見える愛らしい顔に、けれど不釣り合いなほど胸元は豊かで、締め上げたウエストは細い。
これが伯爵令嬢くらいならどれだけ良かったか。
「……フィーネ様、この度は父の勝手で申し訳ございません」
「フィーとお呼びください、ダディ。私たち、『以前からの許嫁』なのでしょう?」
フィーネ嬢は、事情も設定もきちんと理解されていた。
成人を待っていただけで、両家の間では以前から結婚を予定していた関係だということになっている。
「……ええ、そうですね、フィー」
「そんな顔をなさらないでくださいませ。私は、お相手が貴方で嬉しいですわ。……何度かお見かけして、お慕いしておりましたの。ですから、お父様からお話をいただいて、夢じゃないかと思ったくらいですのよ」
少し頬を上気させて話すフィーネ嬢は、より幼く、可愛いらしく見えた。
どうやら、嘘ではなさそうだ。
フィーネ嬢からの破談は望めそうにない。
いい加減、腹を括らなければ。
「……私も夢のようですよ、フィー」
ダディエは、美しい顔で微笑んだ。
ちょうどその頃、ユリエルは目を覚ました。
(ん……ここ、は……?)
まだ頭がぼうっとする。
(あれ……? 腕が……動かな、い……?)
額に手を当てようとして、自分の手が動かないことを認識する。
「お、こいつ起きたぜ」
(誰……?)
声を出そうとするが、声が出ない。
ユリエルはベッドの上に寝かされて、両腕を後ろ手に縛られていた。
口には猿轡がされていて、シャツのボタンは外されている。
部屋には二人の男がいて、一人は椅子に座って酒を飲んでいるが、一人はユリエルに覆い被さるようにしてニヤニヤと下卑た笑みを浮かべている。
「じゃあ、俺も愉しませてもらうかね」
飲んでいた男もユリエルに近づいてきた。
ユリエルの上にいた男が壁側に少し寄る。
そして、二人同時にユリエルの乳首を舐め始めた。
(んんっ!)
びくん、と身体が跳ねる。
意識のない時にも、すでに刺激されていたのだろう。身体は既に甘い反応を見せていた。
(やだ……逃げなきゃ……)
そう思うのに、まだうまく力が入らない。
たった今まで意識がなかったほど酩酊していたのだから無理もなかった。
「んんっ、むぅ、んぐぅ、……」
「やっぱ、意識ある方が反応がいいな」
「そろそろこっちもいただくかね」
一気に下を脱がされる。
力の入らない脚をバタつかせるが、手で掴まれ、そのまま持ち上げられてしまう。
「おい、こいつの脚持っとけ」
一人が言うと、もう一人が腹の上に跨って足首をがっしりと掴んだ。
「うお、いいケツしてんじゃん」
脚を持ち上げられているので、仰向けなのに穴まで丸見えだった。
(や……だ……)
「イイもん喰わせてやるよ」
そういうと、何かとろりとしたものを穴に垂らした。
指でぐちゅぐちゅと中にも塗り込む。
(なに……? なんか熱い……?)
塗られた辺りが、なんだか熱を帯びたような気がする。
その熱い辺りを指で擦られると、腰が揺れた。
「イイだろ? こいつは製菓に使うウイスキーシロップなんだが、アルコール度数が高くてキクんだよ」
言いながらも、ぐちょぐちょと中を掻き回してくる。
「なんだ、兄ちゃんもう入りそうじゃないか」
指が抜かれたと思ったら、今度はもっと太いものが当てがわれた。
腹の上に一人乗っているので見えないが、これはたぶん……
「んむぅぅぅ!」
(嫌だ!)
そうは思っても、身体はいうことを聞いてくれない。
酔ってさえいなければ、こんな素人くらいどうとでもなるのに。
ずぶり、と挿入ってくる感覚があった。
痛くはない。
身体は、痛くない。
「おいおい、兄ちゃん初めてじゃねぇだろ。どんだけ咥えてんだ?……ま、これなら遠慮なく」
根本までいっきに挿れられたソレが、今度は出し入れされる。
「んんんっ、むぅっ、んぐぅ」
(嫌だ……そこは、ダディエ殿に……)
涙が出た。
見知らぬ男に、ダディエと拡げてきた穴を犯されている。
犯されていること以上に、ダディエ以外のモノが挿入っているという事実が耐えられなかった。
それでも、酔った身体は快楽に反応し、中は異物を受け入れて絡みつく。
「んっ、んっ、ふっ、んっ……」
身体が快感を得るたび、心は闇に沈んでいき、心を手放した分、快感がまた増える。
きっともう、悦んで男を受け入れているようにしか見えないだろう。
男二人は、それぞれが一回ずつイくと、手首の縄も解いて、普通に解放してくれた。
ユリエルは、できるだけ男性を避けるようにして騎士団へと戻った。
途中で足の間に液が伝う気配がして気持ち悪かったが、立ち止まる方が嫌だった。
自室からダディエの部屋に入り、風呂場へと直行する。
シャワーを穴の入口に当て、中を洗う。
それでもまだ気持ち悪くて、自分で指を突っ込んだ。
入口がキュウ、と締まって、逆にうまく洗えなかった。
何度もシャワーを当てて、シャワーから水しか出なくなって、それでもまだしばらく続けて、身体が冷え切った頃ようやく風呂から上がった。
真っ暗なダディエの部屋で、ふらふらとダディエのベッドまで歩く。
ダディエのベッドに触れ、静かに布団に顔をうずめる。
心が戻ってきて、涙が溢れた。
(なんっで、こん、な……)
飲みすぎて抵抗できなかったのは、自分のせいだった。
騎士団の訓練された兵ならばともかく、あの程度の男が二人くらいなら、たとえ腕が縛られていても、十分逃げられたはずだった。
自分に魅了の体質があることも知っていたのに。
(なんで……)
ダディエに男色の汚名を着せていたこともしらず、のうのうと守られてきたのか。
(なんで……)
ダディエから享受する快楽を、勘違いしていたのか。
彼は部下を助けていただけなのに。
事実、ダディエのおかげで、男二人に襲われても割けずに済んだ。
全部、部下を守るための手段だった。
それがこんなに突き刺さるのは……
(そうか、僕はダディエ殿が好きなのか……)
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