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あなたには言えないこと
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◆ side M ◆
「やっ、はぁっ、ああっ!」
思わず大きな声が漏れた。
同時に、身体が大きく跳ねる。
今日にかぎって、彼はゆっくり優しい愛撫を繰り返していた。
もっと全部何もかも忘れられるくらいグチャグチャにされたいのに、ずっと優しい。
だから、そこを触られたのも、めちゃくちゃ優しくだったのだけれど、優しいまま、そっと触れられたクリトリスに、私は過剰に反応してしまったのだった。
「ダメ?」
私がクリを苦手にしていることを知っているので、彼は驚くこともなく確認してきた。
私がいつもどおりに感じ過ぎて哭いたとしか思っていないのだろう。
平気だと答えながら、私は昼間のことを思い出してしまっていた。
奏輔さんが仕事に出掛けていって、私も一度自宅に戻って洋服を入れ替えようと思っていたところに、博己から連絡が入った。
ついこの前、ひどい動画を撮られたばかりだ。
当然警戒はしたけれど、無視をする勇気は私にはなく、用件を聞くしかなかった。
「今日もソウは仕事でしょ? ちょっと出てきてくれない? 大丈夫、今日は僕は何もしないから」
別に信じたわけじゃなかったけれど、行くしかない。
「今日は家には行かない」と約束を取り付けて、待ち合わせることにしたのだった。
博己に連れられて訪れたのは、なんとも普通のビルだった。
本当に普通のオフィスビルだ。
小さな企業がフロアをシェアしているようなビルで、中もこざっぱりしている。
「ここ……?」
「そ。今日は人助け」
「人助けって……」
かまわず進んでいく博己についていくと、『コスメラボ』と小さく書かれたドアの前で電話をかけ始めた。
すぐに応答があって、ドアが開かれた。
「ありがとー、ヒロくん! 助かる!」
そう言いながら出てきたのは、綺麗なお姉さんだ。おしゃれなキャリアウーマンといった感じの雰囲気で、堅すぎずカジュアルすぎないカジュアルスーツコーデだった。
パーティションで区切られた簡素な応接スペースに案内され、珈琲を出され、名刺を差し出される。
まだ名刺交換なんてしたことがない社会人一ヶ月の私は、それだけであたふたしてしまった。
「本当にありがとう! なかなかモニターが見つからなくって」
「さすがに僕じゃ試せませんからね」
博己はははは、と笑っている。
(モニター? 試す? 私が、ってこと……?)
博己を見ても、答えは返ってこない。
でもそういえば、今日は人助けだって言っていたっけ。つまりはこのお姉さんの会社の製品を試して欲しいってことだろうか。社名も『コスメ』と書いてあったし、確かに化粧品じゃ博己には無理だろう。
そう考えを巡らせていると、お姉さんが箱を取り出した。
「今回試して欲しいのがこれなんだけど……」
箱から出されたのは、化粧品ではなかった。
正直なところ、化粧品でないことはわかったものの、それが何かは見ただけではわからなかったのだけれど、すぐに説明が始まって、それがいわゆる『大人の玩具』であることを知った。
まだ開発途中というそれは、見たことのないものだった。
簡単にいえば中と外の二点攻めローターで、クリ側にはシリコンイヤリングのような柔らかい留め具が付いていて、クリを挟み込む設計になっている。膣側は卵のようなころんとした形で、それらをつなぐようにプルプルと柔らかいものが繫がっていた。
「これでクリトリスを挟んで、こっちは中に入れるだけです。操作はスマホのアプリでできるので、煩わしいコードもありません!」
お姉さんは、嬉々として商品の説明をしてくれている。
「これを着けて、理論上は充電が二時間くらいもつので、まずは本当にそれだけもつかと、歩いたりしていて外れちゃったりしないか、あとはもちろん気持ちいいかどうか試していただけると」
ニコニコと説明してくれるお姉さんに、「できません、聞いてません」とも言えず、当然博己が助け舟を出すこともなく、私はさっそくフィッティングルームに押し込まれてその玩具を着けて過ごすことになってしまった。
クリップはシリコン製で痛くはなかったけれど、思ったよりもしっかり挟まれていて、卵状の方はバッテリが入っているのでそこそこ重くて大きい。きれいに呑み込まれているので落ちてくる気配はないけれど、存在感はかなりあった。
さらにそこに、スマホで操作できるバイブレーションが加わる。しかも、バイブレーションのパターンがいくつもあるらしく、一様でない動きが感じられる。
当然、操作は博己が握っていて、私の反応を楽しんでいた。
公称二時間というこの玩具は、結局二時間半稼働し、その間ずっと博己に遊ばれながらショッピングモールをまわっていた。
お姉さんにはいたく感謝されたし、確かに博己自身はリモコンを握っている以外に何をしてくるわけでもなかったけれど、とても奏輔さんに言えるような出来事ではなかった。
昼食もとらずに自宅に帰って、適当に洋服を詰め込む。
ふと赤いドレスが目に留まる。
奏輔さんと買ったゲームを思い出し、一緒に詰めた。
奏輔さんに激しくいじめて欲しい。
別に浮気したわけではないけれど、記憶を全部上書きして欲しくてたまらなかった。
(もっと……もっといじめて……)
優しすぎる奏輔の愛撫がもどかしくてたまらない。
いつも以上に敏感になっているクリトリスすら、もっと攻め立てて欲しいくらいだった。
「やっ、はぁっ、ああっ!」
思わず大きな声が漏れた。
同時に、身体が大きく跳ねる。
今日にかぎって、彼はゆっくり優しい愛撫を繰り返していた。
もっと全部何もかも忘れられるくらいグチャグチャにされたいのに、ずっと優しい。
だから、そこを触られたのも、めちゃくちゃ優しくだったのだけれど、優しいまま、そっと触れられたクリトリスに、私は過剰に反応してしまったのだった。
「ダメ?」
私がクリを苦手にしていることを知っているので、彼は驚くこともなく確認してきた。
私がいつもどおりに感じ過ぎて哭いたとしか思っていないのだろう。
平気だと答えながら、私は昼間のことを思い出してしまっていた。
奏輔さんが仕事に出掛けていって、私も一度自宅に戻って洋服を入れ替えようと思っていたところに、博己から連絡が入った。
ついこの前、ひどい動画を撮られたばかりだ。
当然警戒はしたけれど、無視をする勇気は私にはなく、用件を聞くしかなかった。
「今日もソウは仕事でしょ? ちょっと出てきてくれない? 大丈夫、今日は僕は何もしないから」
別に信じたわけじゃなかったけれど、行くしかない。
「今日は家には行かない」と約束を取り付けて、待ち合わせることにしたのだった。
博己に連れられて訪れたのは、なんとも普通のビルだった。
本当に普通のオフィスビルだ。
小さな企業がフロアをシェアしているようなビルで、中もこざっぱりしている。
「ここ……?」
「そ。今日は人助け」
「人助けって……」
かまわず進んでいく博己についていくと、『コスメラボ』と小さく書かれたドアの前で電話をかけ始めた。
すぐに応答があって、ドアが開かれた。
「ありがとー、ヒロくん! 助かる!」
そう言いながら出てきたのは、綺麗なお姉さんだ。おしゃれなキャリアウーマンといった感じの雰囲気で、堅すぎずカジュアルすぎないカジュアルスーツコーデだった。
パーティションで区切られた簡素な応接スペースに案内され、珈琲を出され、名刺を差し出される。
まだ名刺交換なんてしたことがない社会人一ヶ月の私は、それだけであたふたしてしまった。
「本当にありがとう! なかなかモニターが見つからなくって」
「さすがに僕じゃ試せませんからね」
博己はははは、と笑っている。
(モニター? 試す? 私が、ってこと……?)
博己を見ても、答えは返ってこない。
でもそういえば、今日は人助けだって言っていたっけ。つまりはこのお姉さんの会社の製品を試して欲しいってことだろうか。社名も『コスメ』と書いてあったし、確かに化粧品じゃ博己には無理だろう。
そう考えを巡らせていると、お姉さんが箱を取り出した。
「今回試して欲しいのがこれなんだけど……」
箱から出されたのは、化粧品ではなかった。
正直なところ、化粧品でないことはわかったものの、それが何かは見ただけではわからなかったのだけれど、すぐに説明が始まって、それがいわゆる『大人の玩具』であることを知った。
まだ開発途中というそれは、見たことのないものだった。
簡単にいえば中と外の二点攻めローターで、クリ側にはシリコンイヤリングのような柔らかい留め具が付いていて、クリを挟み込む設計になっている。膣側は卵のようなころんとした形で、それらをつなぐようにプルプルと柔らかいものが繫がっていた。
「これでクリトリスを挟んで、こっちは中に入れるだけです。操作はスマホのアプリでできるので、煩わしいコードもありません!」
お姉さんは、嬉々として商品の説明をしてくれている。
「これを着けて、理論上は充電が二時間くらいもつので、まずは本当にそれだけもつかと、歩いたりしていて外れちゃったりしないか、あとはもちろん気持ちいいかどうか試していただけると」
ニコニコと説明してくれるお姉さんに、「できません、聞いてません」とも言えず、当然博己が助け舟を出すこともなく、私はさっそくフィッティングルームに押し込まれてその玩具を着けて過ごすことになってしまった。
クリップはシリコン製で痛くはなかったけれど、思ったよりもしっかり挟まれていて、卵状の方はバッテリが入っているのでそこそこ重くて大きい。きれいに呑み込まれているので落ちてくる気配はないけれど、存在感はかなりあった。
さらにそこに、スマホで操作できるバイブレーションが加わる。しかも、バイブレーションのパターンがいくつもあるらしく、一様でない動きが感じられる。
当然、操作は博己が握っていて、私の反応を楽しんでいた。
公称二時間というこの玩具は、結局二時間半稼働し、その間ずっと博己に遊ばれながらショッピングモールをまわっていた。
お姉さんにはいたく感謝されたし、確かに博己自身はリモコンを握っている以外に何をしてくるわけでもなかったけれど、とても奏輔さんに言えるような出来事ではなかった。
昼食もとらずに自宅に帰って、適当に洋服を詰め込む。
ふと赤いドレスが目に留まる。
奏輔さんと買ったゲームを思い出し、一緒に詰めた。
奏輔さんに激しくいじめて欲しい。
別に浮気したわけではないけれど、記憶を全部上書きして欲しくてたまらなかった。
(もっと……もっといじめて……)
優しすぎる奏輔の愛撫がもどかしくてたまらない。
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