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謎⑥
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朝九時を回った頃。朝日も昇ったため、再び通路の扉を開け灯りを点けると今度はユニットバスの方へ向かう。こちらの灯りも点けてから扉を開けて蛇口をひねりあえて冷たい水で顔を洗い、くたびれた白いフェイスタオルで拭う。
それから食事を摂ろうとしたが、喉を通らないと判断し冷蔵庫を漁る。近くのスーパーで購入した飲むタイプのプロテインを新しいコップに注いで無理矢理流し込んだ。室内に戻り、部屋全体の照明を点けると備え付けのクローゼットを開け、適当に服を見繕う。薄い水色のワイシャツに袖を通し、濃いグレーのスーツを身に纏うと愛用の銀のアナログ腕時計を右側に着け、自身の少し茶色がかかった髪をオールバックに整えてから、黒い冬用コートに身を包み部屋中の灯りを消してから玄関の鍵を施錠して自室を後にした。
識の部屋は七階建ての少し古いマンションだ。私立探偵つまりはフリーランスであるため、駐車場と最低限の生活、そしてなにより家賃の安さが決め手となり今ここに住んでいる。
(約束の時間には間に合いそうだな……)
昨日就寝前に朝倉からショートメッセージで集合場所と時間を提示され、承諾したのだ。晴れた空の下、愛車を走らせる。向かう場所は練馬区内で一番大きい公園だ。
待ち合わせ時間の二十分前に公園内の駐車場に車を停め、徒歩で公園内の待ち合わせ場所へと向かう。駐車場から比較的近い位置にある公園内のカフェレストランが目的地だ。
時間通りに着いた識が入ると、スマートフォンにメッセージが入る。朝倉からだった。
『おはようございます。一番奥の壁際の席を予約していますので、店員に私の名前をお伝えください』
ショートメッセージの通りにすると、店員に席へと案内をされた。えんじ色の長ソファーに座って既に飲み物を飲んでいる朝倉の姿があった。会った日と同じコートと鞄を左側に置き黒いスーツに青いネクタイをした彼は、識に気づくと右手を上げ左右に振った後立ち上がった。
「おはようございます、進藤さん。どうぞ、お座り下さい」
「おはよう、ございます。では遠慮なく」
(男同士で朝からカフェっていうのは……中々微妙だな……それも親しくない相手とっつーのも、な?)
着ていたコートを脱ぐと、識は左側の木製の椅子にコートと鞄を置き、右側の椅子を引いて座った。それを確認すると、朝倉がメニュー表を取って差し出してきた。
「どうぞ。飲み物くらいは飲んでも罰は当たらないでしょう?」
「そうですが……」
「あぁ、ご安心ください。経費が落ちますのでここは奢りです」
「そういう問題では……いえ、愚問でした。ではブラックコーヒーを一つ」
「わかりました。では注文しますね」
「お願いします」
識が注文したブラックコーヒーが来るまでの間、朝倉と何を話すべきか悩んでいると冬でかつ朝だというのにクリームソーダを飲み干した彼が口を紙ふきんで拭いてから、ゆっくりと声をかけてきた。
「どうやら、あまり寝られていないようですね?」
「わかりますか……」
「えぇ、それに顔色も悪いです。まぁそれが当然の反応ですから」
「当然……」
「そうです。大切な人を喪失した……自然かつ当然の事でしょう。むしろ、それでありながら協力して下さる事がありがたいですよ?」
(あまり嬉しくねぇな……)
「どうも。それより、ここを待ち合わせ場所にした理由はなんです?」
「ここが私のお気に入りだからですよ」
「はぁ……。そうですか」
「さて、と。では本題に入りましょうか」
朝倉は置いていた鞄を近くに寄せると漁り始めた。しばらくして取り出したのは少し大きめなスケジュール帳だった。朝倉はページをめくると、識に向かって再度声をかけた。
「今が十時十五分。永沢さんとの待ち合わせが十三時なのですが、それにご同行願えますか?」
「それは構いませんが、こちらこそよろしいのですか?」
「当然です。相棒ですからね」
そう言い切る朝倉の目には、事件解決への熱意がこもっている様に感じられた――。
それから食事を摂ろうとしたが、喉を通らないと判断し冷蔵庫を漁る。近くのスーパーで購入した飲むタイプのプロテインを新しいコップに注いで無理矢理流し込んだ。室内に戻り、部屋全体の照明を点けると備え付けのクローゼットを開け、適当に服を見繕う。薄い水色のワイシャツに袖を通し、濃いグレーのスーツを身に纏うと愛用の銀のアナログ腕時計を右側に着け、自身の少し茶色がかかった髪をオールバックに整えてから、黒い冬用コートに身を包み部屋中の灯りを消してから玄関の鍵を施錠して自室を後にした。
識の部屋は七階建ての少し古いマンションだ。私立探偵つまりはフリーランスであるため、駐車場と最低限の生活、そしてなにより家賃の安さが決め手となり今ここに住んでいる。
(約束の時間には間に合いそうだな……)
昨日就寝前に朝倉からショートメッセージで集合場所と時間を提示され、承諾したのだ。晴れた空の下、愛車を走らせる。向かう場所は練馬区内で一番大きい公園だ。
待ち合わせ時間の二十分前に公園内の駐車場に車を停め、徒歩で公園内の待ち合わせ場所へと向かう。駐車場から比較的近い位置にある公園内のカフェレストランが目的地だ。
時間通りに着いた識が入ると、スマートフォンにメッセージが入る。朝倉からだった。
『おはようございます。一番奥の壁際の席を予約していますので、店員に私の名前をお伝えください』
ショートメッセージの通りにすると、店員に席へと案内をされた。えんじ色の長ソファーに座って既に飲み物を飲んでいる朝倉の姿があった。会った日と同じコートと鞄を左側に置き黒いスーツに青いネクタイをした彼は、識に気づくと右手を上げ左右に振った後立ち上がった。
「おはようございます、進藤さん。どうぞ、お座り下さい」
「おはよう、ございます。では遠慮なく」
(男同士で朝からカフェっていうのは……中々微妙だな……それも親しくない相手とっつーのも、な?)
着ていたコートを脱ぐと、識は左側の木製の椅子にコートと鞄を置き、右側の椅子を引いて座った。それを確認すると、朝倉がメニュー表を取って差し出してきた。
「どうぞ。飲み物くらいは飲んでも罰は当たらないでしょう?」
「そうですが……」
「あぁ、ご安心ください。経費が落ちますのでここは奢りです」
「そういう問題では……いえ、愚問でした。ではブラックコーヒーを一つ」
「わかりました。では注文しますね」
「お願いします」
識が注文したブラックコーヒーが来るまでの間、朝倉と何を話すべきか悩んでいると冬でかつ朝だというのにクリームソーダを飲み干した彼が口を紙ふきんで拭いてから、ゆっくりと声をかけてきた。
「どうやら、あまり寝られていないようですね?」
「わかりますか……」
「えぇ、それに顔色も悪いです。まぁそれが当然の反応ですから」
「当然……」
「そうです。大切な人を喪失した……自然かつ当然の事でしょう。むしろ、それでありながら協力して下さる事がありがたいですよ?」
(あまり嬉しくねぇな……)
「どうも。それより、ここを待ち合わせ場所にした理由はなんです?」
「ここが私のお気に入りだからですよ」
「はぁ……。そうですか」
「さて、と。では本題に入りましょうか」
朝倉は置いていた鞄を近くに寄せると漁り始めた。しばらくして取り出したのは少し大きめなスケジュール帳だった。朝倉はページをめくると、識に向かって再度声をかけた。
「今が十時十五分。永沢さんとの待ち合わせが十三時なのですが、それにご同行願えますか?」
「それは構いませんが、こちらこそよろしいのですか?」
「当然です。相棒ですからね」
そう言い切る朝倉の目には、事件解決への熱意がこもっている様に感じられた――。
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