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第五話 認めたよ、グシャート君
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クエスト失敗から五日後。
治療魔法を受け回復した僕はレナジェとともに再びギルド長、ライハナサン様の元を訪れていた。
「……それで? 騎士グシャートよ。どうであった?」
その問いに僕は、静かに答えた。
「僕は……一人では何もできません。仲間がいて……いや、仲間がいるからこそ僕は盾を握れるのです。その事を、思い出しました。勇者テルスと聖女スセを追放したのは、過ちです」
しばらくの静寂の後、ライハナサン様が口を開いた。
「過ちに気づいても、取り返すことはできんぞ? ……騎士グシャートへの処分を求める声もかなり出ている。よって……Sランク認定は取り消し、騎士グシャートは一からやり直しとする。……それで良いな?」
覚悟はしていたけれど、やはりそういう処分になるか。
予想以上にダメージが大きかった。一からのスタート……固有能力も所持品も全てが初期に戻る。
「まぁ安心なさいな? アタシが指導員としてぇ着いていてあげるんだからぁ」
「……なぁレナジェ。なんで君は、僕を……見捨てないんだ?」
勇気を出して、僕はテルスとスセを追放してからというものずっと気になっていた事を訊いてみた。レナジェはめんどくさそうな顔をして、答えてくれた。
「……借りよぉ。アンタの記憶にない借りがあるのぉ」
そこで言葉を一端区切ると、レナジェが薄紫の長髪を揺らして、僕の目をまっすぐに見つめて言い切った。
「それに。稀代の愚か者を見捨てないとかぁ、女の子にモテそうでしょう?」
「……君は本当に女好きだな! 少しでも借りとやらを本気にした僕が馬鹿だったよ!」
叫ぶ僕にレナジェがボソリとなにかを呟いた気がしたが。自分の声が大きくて聞き取れなかった。
****
翌朝。
僕は鏡の前で自分と向き合っていた。グレーの切りそろえた短髪に黒の瞳が目に入る。うん、何度見ても冴えない容姿だ。
ちなみに、テルスは月のように綺麗な金髪で眉目秀麗、スセは赤みがかった茶髪の可愛らしい容姿の女性で、本当にお似合いカップルだ。……憎らしいくらいに。
……思えば、嫉妬していたのかも、しれない。だから、あんなことを酔った勢いとはいえ……。
「あああ! もう! 過去は過去だろうが、僕! しっかりしろ!」
桶に溜めていた水に思い切り顔面をぶち込み、無理矢理思考を切り替える。あ、やば。勢い良すぎてむせそう。というかむせた。
「ごほぉ!? げほげほ……うぇ」
そんなことをしていると、いつの間にかレナジェがいたらしい。何をしているのか? という視線が痛い。やめろ。わかってるから。うん、なにしてるのか自分でもわからないことをさ!
「で? これからぁ初級のクエストなわけなんだけどぉ。指導員のアタシを除いたらぁ、アンタ一人よぉ? ソロなのぉ? バカなのぉ?」
最後の言葉はいらないんじゃないかな……。自分でも自覚したし、さ。
治療魔法を受け回復した僕はレナジェとともに再びギルド長、ライハナサン様の元を訪れていた。
「……それで? 騎士グシャートよ。どうであった?」
その問いに僕は、静かに答えた。
「僕は……一人では何もできません。仲間がいて……いや、仲間がいるからこそ僕は盾を握れるのです。その事を、思い出しました。勇者テルスと聖女スセを追放したのは、過ちです」
しばらくの静寂の後、ライハナサン様が口を開いた。
「過ちに気づいても、取り返すことはできんぞ? ……騎士グシャートへの処分を求める声もかなり出ている。よって……Sランク認定は取り消し、騎士グシャートは一からやり直しとする。……それで良いな?」
覚悟はしていたけれど、やはりそういう処分になるか。
予想以上にダメージが大きかった。一からのスタート……固有能力も所持品も全てが初期に戻る。
「まぁ安心なさいな? アタシが指導員としてぇ着いていてあげるんだからぁ」
「……なぁレナジェ。なんで君は、僕を……見捨てないんだ?」
勇気を出して、僕はテルスとスセを追放してからというものずっと気になっていた事を訊いてみた。レナジェはめんどくさそうな顔をして、答えてくれた。
「……借りよぉ。アンタの記憶にない借りがあるのぉ」
そこで言葉を一端区切ると、レナジェが薄紫の長髪を揺らして、僕の目をまっすぐに見つめて言い切った。
「それに。稀代の愚か者を見捨てないとかぁ、女の子にモテそうでしょう?」
「……君は本当に女好きだな! 少しでも借りとやらを本気にした僕が馬鹿だったよ!」
叫ぶ僕にレナジェがボソリとなにかを呟いた気がしたが。自分の声が大きくて聞き取れなかった。
****
翌朝。
僕は鏡の前で自分と向き合っていた。グレーの切りそろえた短髪に黒の瞳が目に入る。うん、何度見ても冴えない容姿だ。
ちなみに、テルスは月のように綺麗な金髪で眉目秀麗、スセは赤みがかった茶髪の可愛らしい容姿の女性で、本当にお似合いカップルだ。……憎らしいくらいに。
……思えば、嫉妬していたのかも、しれない。だから、あんなことを酔った勢いとはいえ……。
「あああ! もう! 過去は過去だろうが、僕! しっかりしろ!」
桶に溜めていた水に思い切り顔面をぶち込み、無理矢理思考を切り替える。あ、やば。勢い良すぎてむせそう。というかむせた。
「ごほぉ!? げほげほ……うぇ」
そんなことをしていると、いつの間にかレナジェがいたらしい。何をしているのか? という視線が痛い。やめろ。わかってるから。うん、なにしてるのか自分でもわからないことをさ!
「で? これからぁ初級のクエストなわけなんだけどぉ。指導員のアタシを除いたらぁ、アンタ一人よぉ? ソロなのぉ? バカなのぉ?」
最後の言葉はいらないんじゃないかな……。自分でも自覚したし、さ。
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